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Review:SALOMON アウトライン フルジップ フーディー & アウトラック フルジップ ミッド アクティブな旅を追い求める人のための最善手

それほど遠くない過去、アウトドア好きのクローゼットにはさまざまなフリースジャケットが詰め込まれていました。涼しい気候の山歩き用に薄手のストレッチフリース、森林限界を超える岩場の稜線用に防風フィルムの入った防風フリース、心地よい肌触りの暖かな厚手フリースと、フリースは長い年月をかけて素材と機能を進化させていき、豊富なバリエーションを積み重ねてきました。これまでのアウトドア防寒アパレルのど真ん中であったことは間違いありません。

しかし近年、Polartec社をはじめ多くの素材メーカー・アウトドアブランドによって通気性を兼ね備えた新しい中綿の断熱ジャケット(アクティブインサレーションジャケット)が生み出されたことで、昔に比べてフリースの地位は盤石とは言えなくなってきてるのも確かです。

ただしっかり調べてみれば明らかなように、そうした新しい中綿製品とて、すべての状況でフリースに勝る選択肢であるわけではありません。いくらアクティブインサレーションの使い勝手が良いといっても、目的や状況によって、一番「使える」というケースはまだまだ無限に存在しています。

その意味で、SALOMONからこの秋リリースされたアウトライン フルジップ フーディーアウトラック フルジップ ミッドは、この時期のように寒さがさほど厳しくない状況でアクティブな活動を志向する場面では、まだまだ最高の中間着として手放せないということを実感させてくれるものでした。

今回はそれぞれに微妙に異なる個性を備えつつ、絶妙なバランスを実現した万能フリースジャケットについて、それぞれの特徴を比べながらおすすめの使い方を見ていきたいと思います。

アクティブであり続ける人のための保温と通気の絶妙なベストバランス。アウトライン フルジップ フーディー & アウトラック フルジップ ミッドの主な特徴

アウトライン フルジップ フーディー

アクティブなアウトドア探求者にとって1年を通して活躍できる超軽量のテクニカルフリース。軽量・薄手の生地と、身体のラインに沿ったActive fitの裁断と適度な伸縮性のMerrow® ステッチよって動きやすさとレイヤリングしやすさを提供。肌に触れる裏地は速乾性のあるリブ加工によって汗や湿気を外に逃がしやすくします。ヘルメットの下にピッタリとフィットするスキューバフードはアウターとの隙間に入り込む首周りの冷気をシャットアウトしてくれます。

お気に入りポイント

  • 軽くてコンパクト
  • 動いているときの保温性と通気性のバランス(暑すぎず、寒すぎず)
  • 4方向の高い伸縮性
  • アクティブフィットで表面の滑りがよいのでレイヤリングしやすく、アウターとの重ね着もスムーズ
  • レイヤリングした際に首元のぬくもりを高めてくれるバラクラバ式スキューバフード
  • サムホール

気になったポイント

  • 止まっているときの保温性と防風性といったプロテクションは期待できない
  • バラクラバフードの縁は若干緩め

アウトラック フルジップ ミッド

負担にならない軽さと日常からフィールドまでどこへでも着ていける汎用性が魅力のテクニカルフリースジャケット。軽量で裏地にゆるいリブ編みを施し、適度な暖かさとともに空気の流れを確保します。フラットシームのMerrow® ステッチを採用し、スリムなシルエットながら圧迫感のない心地よいフィット感と快適な着心地を提供します。アウトドアアクティビティだけでなく日常でも気兼ねなく羽織れる幅広い汎用性を備えながら、高いコストパフォーマンスも魅力です。

お気に入りポイント

  • 軽くてコンパクト
  • スリムながらストレスなく快適な着心地
  • 暖めすぎない絶妙な通気性
  • ハンドウォーマーポケット
  • コストパフォーマンス

気になったポイント

  • より厳しいアクティビティへの対応力(動きやすさ・湿度コントロール)

主なスペックと評価

項目スペック・評価
アイテムアウトライン フルジップ フーディーアウトラック フルジップ ミッド
イメージ
実測重量220g(Mサイズ実測)252g(Mサイズ実測)
素材
  • 本体:93% ポリエステル、7% ポリウレタン
  • ポケット部分:100% ポリエステル
  • 100% ポリエステル
ポケット
  • 左胸ジップポケット
  • 左右ハンドウォーマージップポケット
保温性★★★☆☆★★★☆☆
快適性★★★☆☆★★★★☆
動きやすさ★★★★★★★★★☆
レイヤリングしやすさ★★★★★★★★☆☆
通気・速乾性★★★★☆★★★☆☆
重量★★★★★★★★★☆

詳細レビュー

動いているときの適度な断熱性(保温性)と通気性との絶妙なバランスが好感触

アウトライン フルジップ フーディー(以下、アウトライン)・アウトラック フルジップ ミッド(以下、アウトラック)とも、フリースの中でもロフト(断熱層のボリューム)は少なめであり、そこまで高い断熱性は期待できません。ただ、もともとこのタイプのフリースは寒い中じっとしているときにも暖かくなるといった高い断熱性を狙ったものではなく、汗をかきながら動いているなかで、断熱(保温)と同時に、通気(速乾)もさせることで、涼しい天候のなかで活動する際に適度な暖かさ(寒くなさ)が感じられる状態を保つように作られています。

この適度な通気を可能にしているのが、リブ編み仕様の裏地(下写真)。アウトライン(下写真左)の方はより高い発汗量を想定してリブの密度と高さを高めに、アウトラック(下写真右)の方はよりマイルドなシーンを想定して肌に触れる部分を多くした、浅めの広いリブとなっています。

フリースは、生地の糸の間に形成された微細な空気のポケットに身体の熱を閉じ込めることによって衣服内を暖かく保ちます。そこで肌に触れている部分では保温される一方、触れていない溝部分には空気の流れができることによって、ハイクアップやランニング時には発熱・発汗を抑え、湿度をコントロールしてくれます。

具体的な着用シーンとしては、例えば暖かめの天候であればアウターとして外からの涼しい空気を取り入れ、身体をよりクールに保つことができます。また肌寒い環境ではウィンドシェルやハードシェルの下に中間着として着れば、激しいアクティビティ中でもムレを抑えながら適度な暖かさを保つレイヤリングに役立ちます。ちなみに生地には水をまったく吸収しないポリエステルなので速乾性も高いです。

このようにアクティブなシーンでの利用を想定するならば、薄手の高通気テクニカルフリースは「行動中に暖かさとドライをバランスよく保つ」のにこの上なく上手に働いてくれます。残雪から梅雨前、あるいは秋口から降雪前にかけての季節のファストパッキングやトレイルラン、バックカントリーにクライミングといったアクティブな活動では、まだまだこれ以上に便利な1枚はありません。

それはいわゆる最新の通気性を備えたアクティブインサレーションといえども同じ。試しに今回のアウトラインとアクティブインサレーションの代表モデルを着て走ってみたときの快・不快の感じ方がどう違うのか、サーモグラフィーで測りながら確かめてみました。

上の写真はアウトラインと通気中綿を備えたアクティブインサレーションで気温7℃前後のフィールドを一定時間走った直後、ジャケットの外側・内側の温度をサーモグラフィで測定した写真です。

左列のアウトラインでは、羽織った状態で体熱が逃げている(上写真左中。温度が体温に近い)のに比べて、右列のジャケットでは、ジャケットの外側までは体熱が逃げていない(上写真右中。温度が外気温に近い)ことが分かります。ある意味保温性はあるとはいえるのですが、逆に言うと熱が籠もっている(=暑い)といえる状態。

やはりいくら通気性があるといっても、化繊中綿ジャケットでは断熱層を外側の生地で閉じ込める構造上、どうしても瞬間的な通気スピードには限界があります(もちろん生地をまったく張り合わせていないポーラテック アルファ ダイレクトなどは別)。そこまで寒くない季節では高負荷なアクティビティで行動中に着るならば薄手の高通気テクニカルフリースの方が適しているというのはこうした理由からです。

ジャストなフィット感と、4方向ストレッチによる動きやすさはずっと着ていたくなる気持ちよさ

2つのモデルともに動いているときにバタついたり突っ張ったりしないActiveフィットに、よりダイナミックなストレッチを可能にするMerrow® ステッチを採用していますが、着た感じのシルエットと着心地には微妙な違いがあります(下写真)。

アウトライン(上写真左)の方は胴回り・腕周りともに身体にしっくりと貼りつく感じ。それもそのはず、こちらの生地ではポリエステルに若干のポリウレタンを混紡しているためストレッチ性が抜群に高く、着たときにピッタリと身体にフィットしよりタイトに感じられます。一方アウトラック(上の写真右)はポリエステル100%のためストレッチは弱めで、シルエットもフィット感も微妙に余裕があり、そのおかげで締めつけ感がなく動かないときはより快適です。どちらがいいということではなく、動きのなかで使いたいか、着てくつろぎたいかという目的次第で、どちらのフィット感もとても気に入りました。

また、アウトラインの方はわずかに袖が長めですが、それは便利なサムホールを内側に忍ばせているから(下写真)。手の冷えを抑えるだけでなく、重ね着するときに袖が通しやすくて便利です。

胴の長さは微妙にアウトラインの方が短くなっており、ピッタリフィットして滑りやすい表面やサムホールと合わせて、アウトラインの方は中間着としてレインウェアやハードシェル、ダウンジャケットの中に着やすい、レイヤリングしやすい仕様になっています(下写真)。

一方でアウトラックは相対的に長めの着丈など、よりアウターとしても羽織りやすい感じです。袖口と裾周りはテープ処理されており、軽さとほつれにくさだけでなく、暖かさを封じ込め全体的に引き締まった印象を与えてくれます(下写真)。

目的や利用シーンへの一貫性が感じられる細部のあしらい

アウトラインのぴったりとフィットするバラクラバスタイルのスキューバフードは被らなければ首周りの冷気の侵入を防ぐ地味ながら嬉しい防寒作用を提供してくれますし、被っても薄手のためかさばらずにヘルメットの下に違和感なく合わせることができます(下写真)。

どちらのモデルもフルジップのため、大量に汗を抑えたいという場合には腕まくりしてジッパーを全開にすれば、あっという間に熱気は吹き飛んでいきます(下写真)。

ポケットは、主に有酸素運動やレイヤリングを想定したアウトラインの方はバックパックやハーネスをしていてもアクセスしやすいチェストポケットが備わっています。ちょうど5.6 インチの小さめスマホならばギリギリ入る大きさです(下写真)。

一方日常での利便性も考慮しているであろうアウトラックは、手をを置くのに便利で手を暖められる左右のハンドウォーマーポケットが配置されています(下写真)。

持ち運びも苦にならない軽さとコンパクトさ

Mサイズを実測値ですが、アウトラインで220g、アウトラックで252gとフリースジャケットの中でも特に軽い部類に入ります。当然圧縮したときもこの通り小さくまとめられるので、携行してもパッキングを圧迫しません(下写真)。

悪天に対するプロテクションには期待してはいけない

高い通気性能によって活動中の余分な暑さを取り除くことにかけては優れている反面、一方で必要以上の寒さや強い風、雨にはどちらのモデルも無力と言わざるを得ません。このため、寒さ・強風・雨天などの過酷な環境で耐え忍ばなければならない場面が想定される場合は、必要に応じてウィンドシェルやソフトシェル、レインシェル、ハードシェルなどを必ず用意しておきましょう。

まとめ:暖かくても寒くても。快適保温のためのベースとなる1枚

分厚いフリースジャケットの場合、どうしても着れば暑すぎ、脱げば肌寒くなるというシチュエーションが避けられません。その点、今回のような薄手の高通気テクニカルフリースは、夏は高山で、冬はアクティブなシーンまで、1年中幅広いシチュエーションで活用できる可能性を秘めており、その意味ではまだまだ非常に利用価値の高いジャケットです。

特に今回のアウトラインは適度な保温性と高い通気性、動きやすさをバランスよく備え、行動中に一枚羽織っておけば身体を冷まさずに適度に湿気を放出してくれるので、寒さの中でのファストパッキングやトレイルラン、バックカントリー、クライミングといったハイテンポな状態が持続するアクティビティではかなり役立つ一着といえるでしょう。

さらに、もし万が一この1着では物足りないほどの寒さであっても、この上にもう1枚適度な防寒ジャケットを重ね着してしまえるので、厳冬期のためだけのヘビーなインサレーションを用意する必要はありません。この単体利用にとどまらない使い勝手のよさも魅力で、その意味では防寒対策を考えたときに、ベースとなる「キホンの1着」という考え方もできそうです。

一方、アウトラックは特定の目的に特化していない反面、日常での着やすさと高いコストパフォーマンスも捨てがたい魅力。冬前の今の季節に限らず、これから本格的な寒さを迎えるにあたっても備えておいて損はない1着でしょう。

SALOMON アウトライン フルジップ フーディー & アウトラック フルジップ ミッドの詳細と購入について

製品の詳細についてはアウトライン フルジップ フーディーアウトラック フルジップ ミッドそれぞれの公式通販サイトもあわせてご確認ください。