フォトグラファーライターの齋藤千歳です。北海道千歳市在住で北海道の絶景や野生動物などを撮影するために2歳の息子を含む家族3人でキャンピングカーを使った旅行を中心にアウトドアを楽しんでいます。OUTDOOR GEARZINEでは、「QOCL(Quality of Camping Life)向上委員会」と題してキャンプギアはもちろん、家電的なアイテムやハイテクガジェットなどを実際に使った感想をみなさんにお伝えしていきます。
そして、連載2回目にご紹介するアイテムは「タンスのゲン」の「スポットエアコン QL03」です。
連載2回目にして、突然「スポットクーラー? OUTDOOR GEARZINEなのに?」と思った方も多いのではないでしょうか。しかし、筆者の住む北海道でキャンピングカーでのキャンプ生活のクオリティを上げようと考えるとスポットクーラーは超重要アイテムといえます。まずはそのあたりの事情も含め、みなさまに解説していきたいと思います。
目次
タンスのゲン「スポットエアコン QL03」とは?
タンスのゲンの「スポットエアコン QL03」は約幅32×奥行31x高さ69.5cm、重さは約20kgとコンパクトなスポットクーラーです。冷風、除湿、送風が行え、本体背面の直径15cmの廃熱ダクトから熱を放出する構造になってます。消費電力は650W(50Hz:東日本)/800W(60Hz:西日本)で最大対応面積は木造建築は50Hzで7畳、60Hzで9畳、鉄筋・プレハブは50Hzで8畳、60Hzで10畳となっています。ちなみにスポットクーラーには室温を大きく下げる効果はなく、対応畳数はあくまで目安だそうです。ある意味移動可能な簡易クーラーともいえる「スポットエアコン QL03」ですが、実勢価格が送料無料で3万円以下と非常にリーズナブル。筆者は夏の非常に暑い時期のキャンピングカーキャンプだけでも、この「スポットエアコン QL03」で乗り切れないかと、実際に導入してみたわけです。
おすすめのポイント
- 送料無料で3万円以下と非常にリーズナブル
- 期待以上に室温を下げてくれるので本当に快適
- 本格的な工事なしでキャンピングカーにも、自宅にも設置可能
- 消費電力が最大でも800Wとキャンピングカーなどでも使いやすい
- 約幅32×奥行31x高さ69.5cmと思う以上にコンパクト
- 稼働音は〜65dBと我慢できないレベルではない
気になったポイント
- 重さが約20kgとキャンピングカーからの積み下ろしはひと仕事
- 部屋全体に効果が現れるにはそれなりの時間が必要
主なスペックと評価
項目 | タンスのゲン「スポットエアコン QL03」 |
---|---|
大きさ | 約幅32×奥行31x高さ69.5cm |
重さ | 約20kg |
消費電力 | 650W(50Hz)/800W(60Hz) |
電気代(1時間あたり) | 50Hz…約16.97円/60Hz…約20.88円 |
最大除湿能力 | 22L/日(50Hz)/25L/日(60Hz) |
稼働音 | 〜65dB |
風量 | 2段階 |
モード | 冷風、除湿、送風、スリープ |
オンオフタイマー | 1〜24時間(1時間刻み) |
冷却能力 | ★★★★☆ |
設置利便性 | ★★★★☆ |
移動利便性 | ★★★☆☆ |
快適性 | ★★★★★ |
満足度 | ★★★★☆ |
コストパフォーマンス | ★★★★★ |
静音性 | ★★★☆☆ |
詳細レビュー ~北海道のキャンピングカー・ライフに「スポットエアコン後づけ」がおすすめな理由~
わずか3万円でキャンピングカーにクーラーが付けられると確信!
北海道仕様といえば聞こえはいいのですが、筆者が普段乗っているキャンピングカーにはサブバッテリーで駆動するキャビンスペース用のクーラーがありません。中古で購入したときから付いていませんでしたし、北海道は夏でも夜は比較的涼しいので問題ないと考えていたのですが……。今シーズンからは夏キャンプにも2歳の息子が本格的に参戦してきたのです。
夫婦ふたりなら多少の暑さはがまんすればいいでしょう。しかし、2歳の息子もいっしょとなるとそうはいきません。少なくともキャンプ場やRVパークに止まっているときはキャビン側のクーラーで室内を冷やす必要があります。
といったところで、筆者が主に活動している北海道では本気にクーラーが必要になるのは長くみて1〜2カ月、さらにスポットでいうなら真夏に数週間に期間になります。この短い期間のためだけにキャンピングカーに専用クーラーを後付けする経済力は筆者にはありません。キャンピングカー用のクーラー+取り付け工賃で軽く数十万、50万円近く掛かるという記事を読んだことがありますが、残念ながら筆者にはまったく無理です。それなら先に仕事部屋にクーラーを取り付けます。
そんなことを思いながら「タンスのゲン」WEBサイトで車中泊用アイテムなどをチェックしていた際にみつけたのがタンスのゲン「スポットエアコン QL03」です。価格は送料無料で税込約30,000円。キャンピングカーに専用エアコンを取り付ける価格の1/10以下になります。
内側からも、外側からもアクセスできる荷物入れがあれば、たいだい設置可能
タンスのゲン「スポットエアコン QL03」は本体サイズが約幅32×奥行31x高さ69.5cmです。このサイズが重要で約30×30cmであれば、キャブコンのキャビン部分の通路に置くことができるわけです。そして、室外機はなく直径約15cmの排熱ダクトで熱風を外に出すことができれば問題ないといいます。ダクトの長さは約24〜150cmの伸縮タイプ。
筆者のキャンピングカーもそうですが、多くのキャンピングカーの場合、キャビンの中からも、外からもアクセスできる荷物入れが装備されているのが一般的でしょう。この荷物入れの内側の開閉口に排熱ダクトをぴったりと取り付けて、外側の開閉口までダクトを伸ばして熱風を排熱できれば、基本的にキャンピングカーのなかに「スポットエアコン QL03」を設置できるというわけです。
当然、実際に稼働させるには家庭用交流電源が必要になりますが、RVパークやオートキャンプ場などで電源を確保できている状態なら、なんの問題もないわけです。またスポットクーラーは室温を大きく下げる効果はありませんが、「スポットエアコン QL03」は効果の弱い50Hz電源でもプレハブ8畳までの面積には対応するというので、より狭いキャンピングカーの室内なら十分な効果を発揮してくれるでしょう。
ちなみに筆者がキャンピングカー用として「スポットエアコン QL03」が気に入った理由のひとつは冷却能力が2.0kW(50Hz)/2.3kW(60Hz)がキャンピングカーのキャビンを冷やすのに十分なのにも関わらず、消費電力が650W(50Hz)/800W(60Hz)と低くく、1000Wクラスの電気容量で十分に使用可能な点です。電気まわりに何かと制限の多いキャンピングカーでは重要なポイントといえるでしょう。
実際にキャンピングカーへの取り付けは100均のアイテムだけでできてしまった
筆者のキャンピングカー「ヨセミテ・スポーツ」の場合、内側からも、外側からもアクセス可能な荷物入れはクルマの最後部にあります。この内側の開閉部に虫などが入ってこないように直径15cmちょうどの穴が空いた板を密着した状態で取り付け、この穴を通して外側の開閉部を開けた状態で熱風を排気できるようにすればいいわけです。
残念ながら、筆者には木材や金属の板などを加工する器用さも技術もないので、加工が容易な発泡スチロールなどの板を芯材にして布のガムテープを巻き付けて補強、これをファイスナーテープで荷物入れの内側の開閉ドアの部分に固定しようと考えました。材料のほとんどは100均で手に入りそうだったので、近所のダイソーに行ってみたわけです。
結果、購入してきたのが「発泡なんでも板 A2」1枚、「ファスナーテープ 接着タイプ」4つ、「コンパスカッター」1本、「粘着布テープ(黄)」2つ、「厚手幅広タイプ すきまテープ(グレー)」1つの計9点、税込990円分になります。
「発泡なんでも板 A2」に「コンパスカッター」を使って直径15cmの穴を開け、これに「粘着布テープ(黄)」を巻き付けて、「ファスナーテープ 接着タイプ」を使って荷物入れの内側の開閉部に固定したのが下に掲載した写真の状態です。「ファスナーテープ 接着タイプ」は実際には2つしか使いませんでしたし、隙間を埋めるつもりで買ってきた「厚手幅広タイプ すきまテープ(グレー)」は排熱ダクトがあまりにもぴったりとハマったので必要ありませんでした。そのため、総材料費は税込660円です。
実際に取り付けてみた筆者が、あまりに簡単に取り付けができたので驚きました。作業自体は1時間もかかりません。
思ったよりも冷えるし、予想以上に静かでとても満足
思ったよりもかなり簡単にタンスのゲン「スポットエアコン QL03」をキャンピングカーに取り付けることができたので気をよくした筆者は、早速、どの程度冷えるのか、実験してみました。
車内の温度が32.2度のところから15分おきに直接「スポットエアコン QL03」からの冷風が当たらない位置に配置した温度計の温度を計測しています。
時間(分) | 温度(℃) | 湿度(%) |
---|---|---|
0 | 32.2 | 56 |
15 | 30.7 | 50 |
30 | 28.7 | 50 |
45 | 27.7 | 53 |
60 | 27.0 | 54 |
公式ページでも解説されていたとおり、「スポットクーラーには室温を大きく下げる効果はない」ということですが、それでも時間が経てば室温は確実に下がっていきます。確かに室外機有りの固定式の家庭用クーラーのように室温がドンドン下がっていくといった印象ではありません。しかし、冷風の直接当たらない位置に置いた温度計の示す温度以上にキャンピングカーのキャビンのなかは涼しくて快適です。キャンピングカーのキャビンを冷やす程度なら確実に使えると確信したわけです。なお動作音がかなり大きいのではと心配していたのですが、スペック表どおりMAXで65dB程度、筆者が計測した限りでは60dB程度と気にならないとはいいませんが、暑さと引き換えなら十分に我慢できるレベルといえます。
そして、つい先日、実際にキャンプ場で使う機会に恵まれました。普段から撮影などでお世話になっている新千歳空港から約10分という好立地の「フォーエバーキャンピングパラダイス」で、筆者にしては珍しく家族でレジャーキャンプを楽しみました。7月の頭だったのですが、雨模様で湿度が高く、それなのに暑いという北海道にしては珍しい蒸し蒸しと暑い条件でした。「フォーエバーキャンピングパラダイス」は施設内の一部でWi-Fiや家庭用電源が使用可能なので、筆者は1日550円追加料金はかかりますが電源の使えるエリアで「スポットエアコン QL03」の実践テストを行ったわけです。
「スポットエアコン QL03」では短時間に急激に室温が下がるわけではないので、あらかじめ2段階のうちの強での冷風運転で、室内を冷やし湿度を下げ、適度な温度になったところで弱冷風で快適な温度を保つと行った使い方をしました。すると、屋外のタープの下や焚き火の近くで遊んだ後、キャンピングカーのなかに入ると明らかに涼しくて快適なのです。今後は「スポットエアコン QL03」なしで夏のキャンピングカーキャンプは行いたくないレベル。湿度も温度も低いキャンピングカーという逃げ場があると体力の消耗を防ぎながら、アウトドアをより楽しめるという点でも非常にありがたいアイテムです。2歳の息子は「フォーエバーキャンピングパラダイス」の広い敷地で外遊びを存分に楽しみ、「スポットエアコン QL03」で十分に冷えたキャンピングカーのなかで就寝はもちろん、昼寝も熟睡で終始ご機嫌でした。子どもの熱中症対策としても、冷えたキャンピングカーの室内が確保できていることは心強く感じました。大満足の結果です。
まとめ:キャンプに出掛けないときは自宅でも活躍する「スポットエアコン QL03」
筆者のメインフィールドである北海道は夏でも夜になると涼しいという特性があるので、キャンピングカーにクーラーを取り付けるだけで数十万といわれるとなかなか踏み切れないわけです。また、北海道で本格的にクーラーが必要になる7月の中旬以降から8月の中旬くらいまでに何回、何日キャンプに行くのか? と、コストパフォーマンスについて考えはじめると新車のときにクーラーを付けなかったキャンピングカーに、後付けでクーラーを付けるのはかなりハードルが高いといえます。
タンスのゲン「スポットエアコン QL03」は実勢価格が3万円以下、耐久性などがどこまであるかは疑問ですが100均の材料で筆者がキャンピングカーに取り付けるための部材の製作料を入れても3万円程度。年間数日かもしれませんが、これで夏のキャンプで家族全員が快適に過ごせるなら、かなりコストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
しかも「スポットエアコン QL03」は重量20kgほどしかありませんので、キャンプに行く予定のないときは、キャンピングカーから下ろして自宅で使うことが可能です。付属の窓用パネルを使えば、高さ65cm以上、226cm以下(66〜81cm、116〜119cmを除く)の窓に熱風の排気ダクトが装着できるので、多くの部屋で使えます。
実際、筆者はどうしても寝苦しい夜などは、寝室に「スポットエアコン QL03」を設置して使っています。積み下ろしは多少面倒ですが、キャンプの時以外もしっかりと活躍してくれるので、コストパフォーマンスは抜群といえるでしょう。
密閉度が低いので、どこまで効くかには疑問もありますが、その気になればテントのなかでも使えますので、夏キャンプの暑さをどうにかしたいという方はキャンピングカー以外でも検討してみるのもありかもしれません。
タンスのゲン「スポットエアコン QL03」の詳細と購入について
製品の詳細についてはタンスのゲン「スポットエアコン QL03」をご覧ください。
撮影協力
撮影協力:フォーエバーキャンピングパラダイス
齋藤千歳(サイトウ チトセ・Saito Titoce)