カメラやスマートフォン、地図、コンパス、サングラス、レーション(行動食)……ハイキング中にすぐ取り出したくなるものは意外と多いもの。そうした小物入れの類いには、古くからウェストポーチやフロントバッグなどさまざまなモデルが流行廃りしてきましたが、近年ではウルトラライト・ハイキング人気と日常でも使えるファッション性の高さが相まって、ここ日本では「サコッシュ(sacoche)」と呼ばれる肩掛けタイプのサブバックが人気を集めています。
さてこのサコッシュ、ぼくを含めてほとんどの人は大きさやデザイン、せいぜいポケットの数くらいしか考慮していなかったかもしれません。でも本当に山で使いやすいモデルとなると、実用性や安全面など、いろいろと味わい深く、奥の深いコツが隠されていました。そこで今回はさまざまなシーンで使い込んだ荒井さんならではの視点でおすすめのサコッシュ、そして選び方のポイントについて語ってくれた模様をお伝えします。
毎度ながらあくまでも荒井さんの経験に基づくオピニオンですので、それぞれの結論を鵜呑みにするのではなく、個々人の賢明な判断力と広い心というフィルターを通して楽しんでください。
「達人のU.L.パッキングってどんな感じ?」連載一覧
- 01 荒井裕介さんの厳選されたバックパックの中身とは?
- 02 パッキングの極意はスタッフサックの使い方にあり
- 03 スリーピングバッグ&スリーピングパッド活用術
- 04 シューズ選びのポイント&緩みにくい靴ひもの結び方
- 05 上手なパッキングのコツと賢いバックパックの選び方
目次
ウルトラライトハイキングのパッキング術 ~サコッシュは”縦長”がおすすめ~
例によって動画の登場人物は、左が荒井さん、右の聞き手がぼく(久冨)です。
動画音声書き起こし(補足アリ)
久冨:サコッシュとか、サブバック系の話ってどうですか?
荒井裕介:はい、サコッシュ使われている方ってどれくらいいます?サコッシュはどこの使ってます?グラナイト(Granite Gear)?山道(山と道)?
お客さん:えーと、アトリエ(ブルーボトル)。
荒井裕介:サコッシュはですね、できれば横長じゃなくて縦長の方が本当は使いやすいです。
今は横長タイプが多いんですよ。でもこれって、こうなる(脇下に挟まる)とすごい使いにくいんです、ある程度の容量入ると。縦だと、ここ(胸のやや下前方)に入るんですよね。たったこれだけなんですけど、これで安全性スゴイ変わるんです。サコッシュってあくまでもハイキング用のものなので、横でもいいんですけど、できればハイカーズデポ的な、縦長のサコッシュの方が使いやすい。サコッシュっていろんなの出てるんですけど、未だにハイカーズデポの使ってます。
ちょっと改良しちゃったのが、細引きをストラップの中に通しちゃって、外にグロメット付けて、ギュって引っ張るとサコッシュがひゅって上がるようにしちゃった。そうすると、鎖場とか足上げが必要な場所で邪魔にならないので。普段長くしておいて(危険な場面で)ぎゅーっと上げて行けると。
お客さん:山道(山と道サコッシュ)も上までもってきます。
荒井裕介:そうですよね、だから短い方がいいんですけど。ちょっと脱いだダウンとかを入れようとすると(サコッシュが膨れて)すごいことになるんで、横型よりも縦型。サコッシュの中にあまり物を入れないよという人ならばこの(手のひら程度の)サイズ。あのPEAKSの付録ぐらいのサイズでいいです。あれぐらいのサイズのサコッシュで間に合わないものは外に付けない。
ハイキングメイン、低山メインであれば横型じゃなくて縦型。それが一番安全な方法なのと、横型って蓋がついているものがあればいいんですが、意外と少ないんですよ。蓋がついていると今度は出し入れがしにくいんですけど。縦型のものって、下に重量がかかってあまり容量がないと、一回(上下)半分でもってぐるって折り返すと雨の日に雨が入りにくくなる。グッと折り返して留めちゃうんです。そうすると雨が入らなくなる。
あとこのショルダーストラップを(肩から)外した状態で、口をもってぐるぐるっと巻いてザックにポイと入れちゃうと簡易防水的な感じで使える。
それから(サコッシュの前部についている)ストレッチ(のポケット)部分は、横型よりも縦型の方が伸びるって思ってください。横型の場合、ここ(ボディ)は増えるんだけどここ(入口)が伸びないので、結局は入らない。だからここのストレッチの部分がついているなら縦型の方がはるかに入る。前に伸びるので。だから、容量どこで増やすかっていうのは、こういう(縦型で前に増やす)増やし方はそれほど邪魔にならないです。以前あったフロントバックとかはこういう増やし方なんですが、同じ考え方でサコッシュもできれば縦で。横だとどうしても脇に持ってくると干渉してしまうのと、シェルのベンチレーションに引っかかるんです。脇の下にチャックついてるジャケットありますよね。あれの紐とサコッシュの付属品がスゴく引っかかるので、脱ごうと思ったら脱げないとか、サコッシュ引っ張ろうと思ったら引っ張れなくて、シェルのが丈夫なのでサコッシュが切れちゃうことがあります。だから、干渉を考えるのであったら縦ですね。
その他サコッシュをこうやって(バックパックを背負いながら)使う時に、ウェストハーネスと干渉したことのある人っています?以前いたんですよね。(アルパイン系のバックパックを背負いながら)ここ(胸下)のところでサコッシュぶら下げるのってすごいデメリットが大きいのですね。その場合、サコッシュの紐を後から自分で足しちゃって、サコッシュの位置をここ(ハーネスの下)にしちゃうんです。ここに紐を通してきちゃって、ヒップベルトで留めちゃうんです。そうすると歩いている時にばたつかない。その代わり紐で調整できるようにしてあげて、ちょっと邪魔になりそうな時には上方に上げられるようにする。
久冨:ウェストベルトに挟んじゃう?
荒井裕介:そう、ウェストベルトにここを挟み込んじゃう。そうすると腰袋みたいな状態になって、背負ってるときは邪魔にならないんですけど、急峻なところに行くとなったら紐を上げられるようにしてあげます。
やっぱり改良が必要なんです、サコッシュはあくまでもハイキングベースなので。ロングトレイルだとこれ(ウェストベルト)ないのでここで十分なんですが、アルパインザック使う時にはロングトレイルとは勝手が違うので、そういった改良がどんどん必要になってきます。
(書き起こし終わり)
荒井裕介さん プロフィール
山岳写真家。SHARA PROJECT主宰。父親の知人がマタギであったこともあり幼少より濃密な自然に触れながら育つ。トラディショナルなトレッキングからU.L.ハイキング、スキー、MTB、ハンティングやサバイバル技術、アウトドアギアなど幅広いフィールドについて造詣が深く、刃物にも精通。毎年、秋冬にはハンティングのため山にこもり、解体処理から調理を山中で行うブッシュクラフターでもある。
Outdoor Gearzine Trailheadとは?
「Outdoor Gearzineとはじめる秋の山登り」というテーマで2016年11月、2週間にわたって代々木公園近くのギャラリーにて行われたOutdoor Gearzine主催のリアル展示イベント。秋のおすすめ山道具の展示あり、道具の購入アドバイスコーナーあり、貴重なアウトドアギアの物販あり、テスト終了後の中古山道具のフリマあり、山岳写真家の荒井裕介さんのトークイベントありと、これから山に登りたい、最近山に登りはじめた人たちにも楽しめるさまざまな企画を実施、このサイトの読者の方にも、ふらっと訪れた山好きの方にも大好評のイベントとなりました。詳しい企画などはこちらの過去の告知ページをご覧ください。