達人のU.L.パッキングってどんな感じ?04 シューズ選びのポイント&緩みにくい靴ひもの結び方

普段から何気なく履いているスニーカーでも、ハイキングやトレイルランニングならではの快適・安全に使うためのコツが存在します。

「Outdoor Gearzine Trailheadプレゼンツ 荒井裕介パッキング講座2016」まとめ動画シリーズ第4回のテーマは「ハイキングシューズ(ブーツ)」。テーマ自体は数分の動画ですべてを語り尽くせるわけはありませんが、トークでは山歩き(走り)のために必要な靴選びで荒井さんが普段感じている陥りやすい誤解や、荒井さんが実践しているシューズ紐の緩みにくい結び方などについて語ってくれました。

毎度ながらあくまでも個人の経験に基づくオピニオンですので、それぞれの結論を鵜呑みにするのではなく、個々人の賢明な判断力と広い心というフィルターを通して楽しんでください。

Outdoor Gearzine Trailheadとは?

「Outdoor Gearzineとはじめる秋の山登り」というテーマで2016年11月、2週間にわたって代々木公園近くのギャラリーにて行われたOutdoor Gearzine主催のリアル展示イベント。秋のおすすめ山道具の展示あり、道具の購入アドバイスコーナーあり、貴重なアウトドアギアの物販あり、テスト終了後の中古山道具のフリマあり、山岳写真家の荒井裕介さんのトークイベントありと、これから山に登りたい、最近山に登りはじめた人たちにも楽しめるさまざまな企画を実施、このサイトの読者の方にも、ふらっと訪れた山好きの方にも大好評のイベントとなりました。詳しい企画などはこちらの過去の告知ページをご覧ください

荒井裕介さん プロフィール

山岳写真家。SHARA PROJECT主宰。父親の知人がマタギであったこともあり幼少より濃密な自然に触れながら育つ。トラディショナルなトレッキングからU.L.ハイキング、スキー、MTB、ハンティングやサバイバル技術、アウトドアギアなど幅広いフィールドについて造詣が深く、刃物にも精通。毎年、秋冬にはハンティングのため山にこもり、解体処理から調理を山中で行うブッシュクラフターでもある。

「達人のU.L.パッキングってどんな感じ?」連載一覧

目次

ウルトラライトハイキングのパッキング術 ~シューズ選びのポイント&緩みにくい靴ひもの結び方~

例によって動画の登場人物は、左が荒井さん、右の聞き手がぼく(久冨)です。

動画音声書き起こし

シューズ選びで間違ってはいけないこと

荒井裕介:北アルプスとかを登る場合、脚力にもよるんだけどこれ(VASQUE St. Elias GTX)はちょっとオーバースペックです。

久冨:北アルプス?

荒井裕介:北アルプス、ドライなシーズンだったら。皆さんだいたい普段の登山で何キロ背負うかっていうと、10キロ前後ですよね。ぼくらは30キロ40キロ背負ってトレランのミドルカット。モントレイルとか、本当に(ローカットの)トレランシューズです。それで全然歩けちゃうんです、歩き慣れちゃえば。本当に(ガチガチの重登山靴が)必要かっていうと、逆に疲労が増すだけだったりします。

海外で4~5000メートル登る靴で日本の山2000とか3000メートル登っているのが大体なんですね。さらにアルパインルートを通っているのかっていうと、実際は一般登山道なんで。安全性を考えたらそれに越したことはないんですけど、足にギブス履いたまま山に登るのか、それとも自分たちの技術の向上を求めながらもうちょっとこういった軽い靴で対応していこうとするかと考えたら、後者の方がはるかに快適性は高いです。

アルプスの山岳レースとか、軽いローカットを履いてみんな走ってるでしょ?行けないことはないんです。ただ、行ける技術があるかないかはその人にしか判断できないので、山始めて何年目とか、どれくらいの荷物背負ってどれくらいの日数山を歩いてますとか、テクニカルなルートを通ってますとかそういったレベルに応じてミドルなのかローなのか、普通の登山靴なのかを使い分けてもらうのが正しい選び方といえます。

その他、柔らかい靴に変えたときでもちゃんとつま先だけは守られているかとか、自分の歩き方の癖(を考慮するのが大事)ですね。つま先が柔らかい方がいい、靴底も柔らかい方がいい、雪渓が少ないからこれでいい。雪渓があってもスパイクアイゼンなどで滑り止めが効くので。それは夏でもそれ使ってます。雪渓だけじゃなく、落ち葉が堆積しているような場所を歩く時でも使えるので狩猟中とかやぶこぎの時とかにも使います。あとは笹尾根。あとはハイマツ帯なんかも便利です。

サンダルの選び方

荒井裕介:テン場で履くサンダル、あれはルナサン(LUNA SANDALS)とかああいった(底のしっかりしている)のがいいです。クロックスは間違っても持っていかないでください。いざ登山靴が壊れた時にサブで履けるものが山用のサンダルだという認識を持ってもらって。その他キーン(KEEN)のつま先のあるものとかがいいです。クロックスなんて、速攻、通っちゃうんです、ものが。例えばよく靴が壊れてクロックスで横尾から上高地まで歩いてる人がいるんですけど、その場合、岩が靴底を通ってしまう時があるんで。そこまで来て遭対協のお世話になるのかっていう話になってくるので、それならルナサンとかキーンとかのちゃんと歩けるものを持っていくのがベストですね。

久冨:しっかりとしたアウトソールを持ってるやつですね。

荒井裕介:走れるサンダルが前提ですかね。それだったらまだあのビブラムの五本指のヤツを持っていく方が慎重に歩くと思うんで。あれ痛いすからね。あれで富士山走ったとき死ぬかと思いました笑。

緩みにくい靴ひもの結び方

荒井裕介:トレランシューズが今流行ってて、これも意外とトレランのイベントなどでやるんですけど、こうやって(一般的なスニーカーと同様に最後までクロスして)紐を通す結び方、これ間違いですからね。紐の最後は(対角側ではなく)本来こっち(上部のホール)にいくべきものですからね。最後の一個はここに行くべきものなんです。なんでかというと、「×」のまま締めてしまうとズレやすいままですが、最後に上部を通すと、これでズレないんですね。緩まないです。テント外についている紐調整するやつ(ガイライン)と原理的には同じです。トレランシューズの紐が長いのはなぜかというと、ゲイター履くことが前提なんで。

久冨:要は最後に屈曲を2回入れて摩擦で止めるという感じですね。

荒井裕介:ゲイターを履くことが前提なので、余分な結び目は甲の部分に最後入れるんです。ゲイターで覆ってしまうので、紐は外に出ないんですね。これで絶対にこの緩みが変わらないので、縛り直すこともないです。こういう風に紐をちゃんと入れてあげることも大事です。例えばシューレースホールの補強部分をよく見てください。みんな1個ずつなんですけど最後の2個は繋がってます。それに気づかずみんな普通のスニーカーのみたいに通すので、緩んでこけるんですよ。足首がサポートされてないって言いますけど、アッパーがしっかり締まって固定されていると着地もぶれないので、捻りにくいです。アッパーが緩んでくるからぶれるんで。

久冨:それはローカットのトレランシューズ、いわゆるスニーカー限定の話ですか。

荒井裕介:そうですね。ミドルカットの場合も緩まない結び方というのがあります。

靴に足を入れて結びはじめると、みんな(紐をフックにかけていく後半部分で)下から上にかけますよね。そのとき、最後のフックだけ紐を上から下にかけるんですね。そうすると通ってきた紐と結び目が摩擦するんですよ。そうすると緩まない。これは昔の革のごっつい重登山靴を履いていた人たちの結び方です。このやり方をすると緩まない。この紐の縛り方一つで登山の快適性が変わってくる。

もうひとつよく陥りがちなのが、最後の結び目はきつく縛ったんだけど、(フックの下から一段目)甲から足首のあたりが緩むんだよねという人がいるんですよ。その場合どうするかというと、フックの一段目を上からかけてあげて、次(中段)を下から上、で最後フックの最上段をまた上から下にかけてあげると、もう絶対に緩まない。足首のところでかけてあげると足首のところで緩まないので、下りなどの緩みやすい場面でもこうやって結んであげると大丈夫です。

久冨:(引っ掛ける後半部の)最初と最後ということですよね。

荒井裕介:そうですね。でさらに。これ意外とテン場で使えるんですけど。みんなサンダル持ってく人が多いと思うんですけど、こうやって紐全体をゆるませた時に、最後のフックの一番上を下から上にかけてると抜けちゃうんですけど、上から下にかけているときには紐の末端が下向いてくれるので、邪魔ならないで脱ぎ履きできる。こうすると、このままサンダル代わりにすることもできる。特にテン場滞在が目的でなければサンダルはいらなくなると。

動画解説

シューズ選びについて

荒井さんの話はやや極端な印象も受けたかもしれませんが、根本的な考え方の部分では非常に大切なことを語っています。このサイトでも「トレッキングシューズの選び方」などで何度か書いていますが、シューズ選びでよく陥りがちな「北アルプス行く?じゃあ重登山靴」といった古い常識で靴を選ぶのは間違いだということです。

最適なシューズ選びで大切なのは自重と荷物を含め、靴にかかる全体重量がどれくらいか。かつてちょっとした泊まりの登山でも相当な重さになってしまっていた時代であれば「北ア→泊まり→重い」ということで上の推測は正しかったのかもしれませんが、軽量で丈夫な装備が溢れ、技術的にも進歩している現在では多くのハイカー重量は大して重くないのが現状です。ならばわざわざ相当な重荷でも耐えられるような固いソールや、強い荷重でもひねりにくいような高い足首などは必要ない、という判断も当然あっていいと思います。自分の場合を振り返ってみても、長期の縦走をすることが少なくなったこともありますが、今では冬以外でハイカットのブーツを履くことはほとんどなくなっています。

ただ、だからといって誰もが重さだけで即軽くて柔らかい靴を選んで良いということにもならないのが難しいところで。目的地の地形、自分の脚力・技術力、捻挫しやすさなどを考慮することも忘れてはなりません。その意味でははじめは多少重たくてがっちりめの靴から入って、徐々に軽くしていくというのが安全な経験の積み方でしょう。ただどのようにして「最適な一足」に辿り着くかは人それぞれだとしても、より軽くて柔らかい靴の方が快適で歩きやすいことは間違いありません。

ちなみに、最後に出てきたスパイクアイゼン(チェーンスパイクやチェーンアイゼンなど呼び方はまちまち)は冬の低山や、これからの残雪歩きに非常に便利なので超おすすめ。凍ったトレイル・道路からちょっとした積雪や雪渓などでも十分にグリップしてくれますし、軽アイゼンと比較してコンパクトだし、靴裏全体に爪が分布しているため歩きやすい。もちろん12本爪アイゼンと違ってどんな靴でも装着できますし、何よりも着脱が楽なところが素晴らしい。

自分が使っているのはCAMPのアイスマスターというモデルで、これはスパイク部分のプレートが安定しているので耐久性も高いのが気に入っています。あるいはモンベルでもほぼ同じような使い勝手のものが手に入ります。こちらはスパイク部分が簡易なので、耐久性は少し劣るかもしれませんが、使い勝手的にはそこまで大きく違いません。

靴ひもの結び方ついて

トレランシューズの靴紐の正しい通し方はもしかするとご存じの方も多かったのかもしれないのですが、自分は知らなかった。。動画では見にくかったかもしれないので下の写真で補足しておきます。

確かに写真右ように紐を通すだけでかなり緩みにくくなります。ちなみに、2月に発刊された「RUN+TRAIL Vol.23」ではこれよりもさらに緻密なシューズセットアップ方法が載っていましたので、興味のある方はぜひそちらも参考にしてみてください!

次に、ミドルカットのハイキングシューズについても、緩みにくい締め方を紹介していました。こちらはかなり古くから言われていることなので知っている人も多いかもしれませんが、こちらも動画では分かりにくかったという方のために補足の写真を作ってみました。シューレースフックの最後を上から下にかけるようにすることで、緩みにくくなるという方法(下写真)。

さらに、甲から足首の位置にある、シューレースフックの最初も上から下にかけるようにすることで足首部分もさらに緩みにくくする結び方(下写真)。

もうひとつ、テント場での脱ぎ履きしやすい結び方についても拡大写真を補足しておきます(下写真)。普通にユルく引っ掛けていって、最下段のフックを外し、最上段のフックは上から下に引っ掛けるだけとします。確かに脱ぎ履きは楽で、それでいて絶妙に解けないw

実際のところ「靴紐の結び方」を試しにgoogleやYoutubeなどで探してみると分かるのですが、アウトドアに限らず世界中でさまざまな方法が紹介されています。もし気が向いたらまとめてみようとは思いますが、本当に「え?」というアクロバティックな結び方もあったりするので、みなさんでも探してみると面白いかもしれません。

最後に、個人的には現時点ではこれと同じ方法で十分満足はしていますが、上のはあくまで「緩みにくい」結び方であって、ぼくの場合さらに、結び目を「解けにくく」する方法をもうひとつ加えています。おそらく知っている人もいるかと思いますが、最後にその方法を紹介して終わります。百聞は一見にしかずですが一言でいうと、一般的な蝶結びの最後で、蝶結びの輪の部分をさらにもう一回結び目の穴に通す。これだけで、登山靴に多く、強いが解けやすい丸紐でも格段に解けにくくなります。

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