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比較レビュー:今シーズン注目の登山向け中型バックパックを背負ってみた 2018

山に入るために、欠かせないバックパック。山生活で、欠かせないギアや食料をはじめ、時として、着替えやアメニティ。軽さ、背負い心地、収納性、使い勝手、耐久性などなど、行動範囲にもよるが、その選択ポイントはまちまちだ。とはいえ、体にフィットするものを選ぶのが、何よりも最優先だろう。日帰りから、2~3泊の山行で、何かと重宝する35~40Lのバックパック。このサイトでも少し前に今シーズン注目のバックパックについてお届けしたが、今回はそれらを実際のフィールドで背負い比べてみた。

今回の比較候補となったバックパックについて

テスト環境

主に丹沢山脈、北鎌倉、箱根外輪山といったフィールドで、試させていただいた。また、パワースポーツの大会設営(奥久慈トレイル、山中温泉トレイル)等でも、一部モデルをテスト(デイリーユースとして、1週間程度の長期出張でも対応できるものもあった!)。

  1. 軽さ・・・山に行くからには、軽い方がいいに決まっている。単なる重量に加え背負い心地にもよる軽さも考慮して、ジャッジさせていただいた。
  2. 快適性・・・背負いやすさ。ショルダー、ヒップ、バックなどにおける、クッション位置やパッドの感触などが大きく左右する。
  3. 安定性・・・重い荷物を背負って、ブレや揺れを感じるか、否か。ショルダーとヒップの構成具合。背面にスペースがあるモデルは不安定な傾向にある。
  4. 収納性・・・食料・水、衣類など必要用途に合わせたモノを、バックパックには詰め込む。また、休憩時などには、出し入れもする。ストレスレスなアプローチが望ましい。
  5. 機能性・・・軽くて、収納性が高くても、アウトドアフィールドで、長けた機能性を持ち合わせていないと、バックパックとして、なかなか難しい。通気性、アジャスト、レインカバー、ハイドレーションなどなど、山ならではの機能性を評価した。

テスト結果&スペック比較表

総合 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
アイテム GREGORY パラゴン38 MILLET サースフェー 40+5 Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L Osprey エクソス 38 deuter フューチュラプロ 36 Thule オールトレイル 35L mont-bell グラナイトパック 40
参考価格 25,920円 22,680円 25,920円 19,440円 21,600円 19,224円 16,416円
重量 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★★
快適性 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆
安定性 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆
収納性 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
機能性 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆
スペック
アイテム GREGORY パラゴン38 MILLET サースフェー 40+5 Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L Osprey エクソス 38 deuter フューチュラプロ 36 Thule オールトレイル 35L mont-bell グラナイトパック 40
サイズ展開 68/58/48/38L 40/30L 36/28/20L 58/48/38L 40/36L 45/35L 70/60/50/40/30L
レディースモデル 〇(メイブン) 〇(エイジャ) △(大容量モデルのみ)
重量(g) 1360 1540 1357 1160(M) 1580 1260 1170
生地   N/420D CORDURA_ LITE PLUS FABRIC 34 OX
N/300D ROBIC TWIN CHIP
本体:4.2オンス・210デニール・リップストップ・コーデュラ・ナイロン100%。ポリウレタン・コーティングとDWR(耐久性撥水)加工済み。裏地:3.3オンス・200デニール・ポリエステル100%。ポリウレタン・コーティングとDWR加工済み メイン=100Dハイテナシティナイロン、アクセント=100Dハイテナシティナイロン、トリプルチェックドビー、ボトム=210Dハイテナシティナイロン 600D ポリエステル、210D ポリアミド 420Dドビー織りポリエステル, 330Dリップストップ・ポリエステル 本体:210デニール・バリスティックRナイロン・リップストップ[ウレタン・コーティング]
背面:E.V.A.フォーム
アクアバリアサック:ハイドロプロR2レイヤー[70デニール・ナイロン・リップストップ]
メイン収納へのダイレクトアクセス × × × ×
背面調整 × × × × ×
天蓋の取り外し × × × × 〇(オプション)
付属レインカバー × × 不要
その他           Thule VersaClick対応ヒップベルトは別売りアクセサリによってカスタマイズ可能 トップリッドは別売り

各モデルのインプレッション

GREGORY パラゴン38

デイリーから3DAYS登山まで大本命パック

ココが◎

ココが△

相変わらず安定感と快適性の高い背面。その特性を失わないギリギリの軽量化は見事。

普段の旅行でも、1、2泊の山行用にでもガンガン使えそうなバックパックだ。ウェア、水・食糧を一気にしまい込むにはもってこいの収納性。その上、トップが大きく開くため、アクセスがとても楽チン。背負い心地は、肩周り、腰、背中とものの見事にフィットする。アジャストもジャストな調整できる。そして軽い(1.36kg)。背面は「マトリックス通気システム吸湿発散性メッシュ」という素材で包まれた「フォーム-マトリックス・バックパネル」を採用。通気と湿気発散を長けているため、山でありがちな背中のムレを、極力抑えている。また、軽量アルミニウム合金シャーシとエアロロンサスペンション、3Dショルダーハーネスやトルソーによる体型に合わせたフィッティングが可能。なので、背負い心地はバツグンにいい。さすが、人間工学に基づいた製品づくりをしているグレゴリーだけある。他にもショルダーハーネスには、サングラスを傷つけずに収納するサングラスクイックストウ、メッシュコンパートメント内にはレインカバーを。トレッキングポール・アタッチメントも完備。スピードハイクにも最適な一品だ。

MILLET サースフェー 40+5

ビギナーからベテランになるまで!使えるバックパック

ココが◎

ココが△

折り畳み式ヒップベルトポケットは、サイズを気にせず小物類を安心して入れられる。

まず背負ってみて、感じるのは背面クッションのソフトなあたり心地。これは、最適な当たり心地と、雑菌繁殖を抑止する目的で使われる、水はけに優れたフィルターフォームというクッション材によるもの。 この素材こそが、フラット構造の負荷分散性と、快適なドライ感を両立している。本体部は、420デニールの丈夫なコーデュラナイロンを採用。サイドにも、軽量性に配慮した300デニールのリップストップナイロン生地を採用。耐引き裂き、耐磨耗に優れており、万が一破れたとしても、繊維自体が丈夫なため、切り口が裂けにくい。サイドメッシュポケットにも、開口部が2つ。背負ったままでもドリンクボトルを出し入れ可能だ。また、スマートフォン、小銭入れなどが収納できる大型ポケットをヒップベルトに装備。 ポケットを使用しない時は、折りたたんで面ファスナーで留めておけば、邪魔になりません。チェストハーネスには、ICカードや補助食、小型のスマートフォンなどを収納でる小さなポケット付き。 1930年代に、ショルダーストラップ付きのバッグを、初めてこの世に送り込んだミレー。長年の経験により培われた耐久性と機能性は、ビギナー、ベテラン問わず、頼りになること、間違いない。

Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L

Pataファンも待望!中型バックパックシリーズ

ココが◎

ココが△

外部のストレッチポケットは正面・サイドともに大きく出し入れが容易。

トップロード型バックパックシリーズ「ナイン・トレイルズ・パック 」。その最大容量の36Lを試してみた。重さは1.357kgと軽量で、1~2泊の山行にちょうどいい収納力。リップストップ・コーデュラ・ナイロン(210デニール)による耐久性、ポリウレタンコーティングによる耐久性撥水加工と、山屋にとっては嬉しい素材だ。トップ部を外すと、メインコンパートメントに素早くアクセスできる。開口部はドローコードで調整できるため、ギアの詰め込みかなりスムーズ。外側の大型ストレッチポケットや、サイドのストレッチポケットの使い勝手もかなりいい。適度な伸縮性で、ドリンクやウェアをしっかりとホールドして、収納できる。背面には通気性を考慮したモノメッシュのバックパネルを採用。自身の背中に密着されるタイプだが、まずまずの通気性だ。厚めのパッド入りのショルダーストラップゆえか、肩まわりにほど良くフィット。改善点はと言うと、ドローコードのサイドに設けられたジッパーが少々ゆるい感じが……(一気に大きく開いてしまう)。また、ウェストのポケットにはもう少しマチが欲しいところだし、通気性とフィット感が高められていたら、なお、よかった。

Osprey エクソス 38

軽さはダントツ!スペック平均値も高し!

ココが◎

ココが△

近年のオスプレーではおなじみになりつつある軽さと快適性を両立させた大胆なメッシュパネル。

とにかく軽い1.16kg!。(見た目もびっくりの)スーパーエアスピードサスペンションで、通気性はかなり期待できる。実際に使ってみて、背面の蒸れ感は一番感じなかったと思われる。背負ってみた感じは、ソフトな感触のショルダーベルトが肩まわりをしっかりホールドしてくれ、3Dテンションメッシュバックパネルがしっかりとフィットする。また、パッキング面も優れている。メインコンパートメントの開口部分にあるドローコードは、片手でスムーズに操作できるし、Ospreyお馴染みの大型ストレッチポケット、サイドポケットは横からも上からもアプローチ可能だ。脱着式のトップポケットを外した際、トップを覆うフラップジャケットも備えているのは、嬉しい。改善点は、やはり、ヒップベルトの脇にポケットが欲しいところだ。また、フォルムを保つ、硬いアルミフレームが、主張しすぎている気もしなくはない。とはいえ、通気性も、軽さもダントツ。ウルトラライトハイクを始めたい方に、まず試してもらいたい。

deuter フューチュラプロ 36

スタンダードなバックバックに、ディテールがキラリ!

ココが◎

ココが△

ドイターのメッシュパネルはクッション性の高いヒップベルトとシームレスに構成され、快適度は抜群。

背負ってみた感じ。エアコンフォートセンシックプロのメッシュパネルのおかげもあり、背中の密閉度はほぼ感じない。適度なフィット感、通気性が得られそうだ。ヒップフィンには、ECL(エルゴノミック・コンフォート・ロック)という仕組みを採用。ヒップベルトのパッドが腰骨にフィットし、パックは体の動きに適した荷重バランスを保つ構造になっている。生地の主な素材は、600デニールのポリエステル。かなり耐久性は強いとみた。使用頻度が高めなものは、外部ポケットとサイドポケット、ヒップベルトポケットに収納するといいだろう。トップ開口部のドローコードはやや細め。そのため、滑らかな動作が可能だ。フレームの影響もあり、メインコンパートメントに少々クセがあるが、下部のポケットがかなり大きめなので、許容範囲か……。SOSラベル、(さりげなく収納されている)レインカバー、ハイキングポールループなど、際立ったディテールは、光るものがある。

Thule オールトレイル 35L

カスタム好きのハイカーには、たまらない!

ココが◎

ココが△

この容量でジッパーアクセスを採用しているため、コンパクトかつすっきりとしたデザインが魅力。

正直、今回、人生初のスーリーだった。独特のメインコンパートメントは、上部ジッパーを引くと、大きめの四角い開口部が現れる。確かに中を確認できるし、取り出しもしやすい。だが、トップ部がのけぞる感じで、ダラんとなってしまい、若干煩わしい気が……。側面部のジッパーからはもう一つのコンパートメントがあるものの、セパレートになっていなくてもいい気がしなくもない。背負い心地は、パッドがあるため、まずまずだ。このモデルクラスでは、珍しく背面長の調整機構を備えている。体型に合わせたアジャストにとても重宝する機能だ。フォルム的に型崩れしにくい作りだが、肩まわりのホールドが、きつめな気がする(好みにもよるが)。通気性については、背面パネル、ヒップベルト部など、改良が望まれる。ヒップベルトに設けられたカスタマイズ可能なポールフォルダーは、独自のアクセサリーをカスタマイズできるようだ。個人的にはポケットのままがベストだと思うが、好みに合わせてマニアックな選択ができるのはありがたい。耐久・耐摩耗性は申し分なさそうだ。

mont-bell グラナイトパック 40

丈夫な生地構成なのに、軽い!トップ開口部は、ガバッと!

ココが◎

ココが△

ライナーの「アクアバリアサック」があればレインカバーは不要。思い切って外せばさらなる軽量化も可能。

持ってみた感じ、40Lのわりにはかなり軽い。本体330デニール、側面210デニール、底部1000デニールと、耐久性と撥水性の富んだ仕上がりだとなっている。背負ってみると、やや内側に寄り気味のショルダーハーネス、背面部の密閉加減が気になった。背中の蒸れを解消するエアースルーバックパネルを採用しているそうだが、効果はあまり期待できそうにない。トップ部はワンタッチ式の留め具で、開口部はかなり大きめだ。フラップジャケットはフック式で固定されていて、脱着がしやすい分、(不意に)外れやすい。サイドポケットには、折りたたみの傘なども収納できるよう、もう少し深さが欲しいところ。ヒップベルトは腰骨を包み込む感じで、安定はしているが、通気性はいかほどだろうか。また、やはり、ヒップベルトにポケットが欲しい(泣)。ハイキングから冬山登山、アルパインクライミングまで幅広めのモデルとされているが、ちょっと厳しい面があるかもしれない。とはいえ、低コストのモンベルと、甘んじれば、使ってみる価値はある。

まとめ

今回試したモデルは7つ。どれもハイドレーションに対応していて、容量は35~40Lと中型モデル。基本的には1泊2日。パッキングちょっと頑張れば、3.4日でもイケるモデルばかりをテストした。まず、総合的に狙い目ど真ん中は、GREGORY パラゴン 38LPatagonia ナイン・トレイルズ・パック36L。軽さ、収納性、機能性、快適性、安定性の全ての面で高評価だった。この2モデルに共通していえることは使い勝手がいいメインコンパートメント、外部の大型ストレッチポケット、サイドポケットとヒップベルトポケット。ベーシックな点ではあるが、やはり山行でウェアやドリンクを素早くアプローチできるのは重宝する。

また、軽さと使い勝手を求めるなら、Osprey エクソス38だ。1.16kgで、大型ストレッチポケット、サイドポケットを備えており、安定性も長けている。ワイヤーフレームの関係でメインコンパートメントが湾曲している点が気になるが(慣れればOK)。

機能性で長けているのが、ミレー サースフェー40+5。裂けにくく、高耐久の生地、目的別の収納機能、落下防止やアプローチしやすいポケット、レインカバーなど、玄人でも納得の機能が多い。また、deuter フューチュラプロ 36は外部の大型ストレッチポケット、サイドポケットとヒップベルトポケットとスタンダードな作りだが、SOSラベル、ハイキングポールループなど、ディテールが光った。

クセのあるカスタム好きには、THULE オールトレイル 35Lがおすすめ。軽さ、安定性、収納性もそこそこで、背面長の調整機構機能や、カスタム可能なヒップベルトポケットといった、オリジナリティが際立った。

最後にmont-bell グラナイトパック40。言わずもがなのコスパサイコーモデルだが、収納性、耐久性等はまずまずなものの、割り切りすぎてラップジャケットの外れやすさやポケット類、通気性といった使い勝手部分ではイマイチ。次バージョンにはその辺を含めた細部のブラッシュアップに期待。

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