今回取り上げるのは、GREGORYの代表的バックパックとして名高いBALTORO(女性モデル:DEVA)。
ええ、分かってます。2008年に誕生し、2015年版の現行モデルも世界中で絶賛の嵐、日本でも当然ながら大人気を誇る、まさにバックパックの王様といっても過言ではないこのモデルのレビューが今さらってことは。
ただ、ここ最近になってようやくBALTOROをはじめいろいろなブランドの大型バックパックを集中的に試すようになって、このパックの素敵としかいいようのない魅力に触れるにつれ、こりゃぁレビューしないまま素通りしてしまうのは罪だと痛感したわけであります。
加えて、なにやら公式店舗では既に現行モデルが「OLDモデル」となり、在庫一掃セールがはじまっている模様。そう、実はこの名作も来春には何らかのアップデート待ったなしということで、もし購入を迷っている人がいたら、実は今がチャンスかもしれない。
そこで今更ではありますが、BALTOROはやっぱりすげえ使いやすいよってことで、このパックについての話をこのサイトなりに書きたいと思います。BALTORO、あるいはGREGORYというと、とかく「フィッティング」やら「バックパックは着るもの」という言葉ばかりがクローズアップされがちですが、このサイト的に感じているBALTOROの魅力とは、その優れたフィッティングという哲学の背景にある「実際に使う身になってとことん考えられたユーザー本位の徹底」だと思っています。それについて、BALTOROを例にとって語ってみます。
2018年モデルのレビューも公開しています。以下のリンクからどうぞ↓↓↓。
Review:GREGORY BALTORO 65が2年ぶりのアップデート。驕らず前へと歩き続ける、バックパックの最前線
目次
あらゆる体型にフィットさせようという心意気
GREGORYの創設者であるウェイン・グレゴリーはバックパックを背負うものではなく着るものだと語ったと言われています。これはバックパックが「衣服を身に纏うように身体に正しい荷重分散でピッタリとフィットする」ことの重要性を意味しているのですが、これ実際には言うほど簡単なことではありません。
まず大前提として、しっかりと荷重を腰を中心とした背中全体に分散させるフレーム構造をもった背面システムが必要です。それに加えて、その背面が、それを利用するあらゆる体型の人にマッチしなければならない。欧米人に比べてかなり痩せ型の自分は、しっかりとした優秀な背面フレームであると分かっていながら結局「でも自分には合わない」とあきらめた経験の何と多かったことか。
並のバックパックであれば、ある程度の人が満足できる優れた背面システムであれば十分その出来を誇っても問題ないでしょう。BALTOROがスゴイのは、そうした「秀逸なフィット」を「俺」だけではなく「万人が・どんな状況でも」フィットするようにきちんと考え抜かれているところです。そうした単なるフィッティングの良さに止まらない、ユーザー本位の姿勢にはグッときてしまいます。
具体的に見てみると、まず購入段階でトルソー(S/M/L)・ショルダー(S/M/L)・ヒップベルト(XS/S/M/L/XL)を体型に合わせて細かくチョイス可能であるところは注目に値します(専門店のみ)。注文から数ヵ月かかるようないわゆるセミオーダーレベルの製品でないと難しいような細かなフィッティングがこの時点で可能なのには、ちょっと涙出てきます。グローバルに展開するブランドであれば、それくらいは手間がかかってもいいからぜひ対応して欲しいものです。
行動中も、ずっとフィットさせようという気遣い
使う人の立場に立ったフィッティング哲学は、当然体型だけではなく地形や姿勢などといった行動中のさまざまな状況でも忘れられていません。独自の背面システム「レスポンスA3(オートマティック・アングル・アジャスト) サスペンション」を見てみます。一言でいうと、個人の体型やシチュエーションに合わせて自動で角度調節がされるオートフィット機能がついショルダーハーネスとヒップベルトです。例えば、ショルダーハーネスは背面長に合わせて2段階に高さを変更できるだけでなく、角度も柔軟に変わるため多様な肩幅の背中にフィットする、また身体の傾きに対しても肩に正しく荷重がかかるようになっています。さらにヒップベルトはフレームに固定されながらも歩行時の腰骨の動きに追従して上下に(しかも左右が独立して)動いてくれるため、しっかり腰をベルトで固定しているのにもかかわらず非常に心地よく歩けるのです。
その他ショルダーとヒップに使用されているパッドの低反発ベッドのように絶妙なクッション(下写真)や、
尾てい骨上部のクッションを継ぎ足す取り外し可能なEVAシム(ランバーチューン、下写真)、
そして腰骨部分の滑り止め「シリコン・グリップ・オーバーレイ」(下写真)など、随所にわたる快適な運搬体験へのおもてなしがグッジョブ過ぎる。
どんな用途でも心地よく使える基本的な作りのよさ
フィッティングの部分ばかりがクローズアップされがちなGREGORY BALTOROですが、むしろぼくが本当にスゴイと感じているのは、やっぱりユーザー本位を徹底していないと考えられないだろう収納やアタッチメントなど使い勝手の部分での細やかなチョイスだったりします。
そこには「一般的な収納」と「ある用途に特化した収納」がバランスよく、そしてどれもが丁寧な作りで備わっていることで、BALTOROは旅やロングトレイルだけでなくある程度テクニカルな登山にも幅広く使えてしまうとてつもない汎用性を実現してしまいました。ここではいつものレビューでは細かすぎてなかなか取り上げにくい部分も紹介しながら魅力を語ってみます。
左右で異なる機能のサイドポケット
右サイドには口が斜めに開いて取り出しやすいボトル・アクセサリー収納用ポケット、左サイドには口が上に向いた伸縮・固定力の高いメッシュポケット。特にボトルポケットは使わないときには収納でき、口紐で落ちないようになっているなど非常に丁寧に作られています。これによってサイドにはボトルを入れるという人も、テントポールやマットなど長物を付けたい人もどちらも満足できるし、なおかつ両サイドに2つのストラップが配置されているためスキー板などにも対応できる。左右のサイドアタッチメントを別々の仕様にすることはやや勇気が要ることですが、今のところ不便が生じることはまったくなく、この決断をした人には感心するしかありません。
ストレスのないアクセス!
大型バックパックになればなるほどありがたいのが、トップリッドを開かないでメイン収納にアクセスするためのジッパー入り口です。その方法はさまざまななパターンがありますが、今のところ最も使いやすいのがこの逆U字型の開閉なのではないでしょうか。
2つの縦方向に開閉する大きめのコンパートメントをもったトップリッド(天蓋)については、口が上に向いているということで小物の探しやすさと取り出しやすさは間違いなくトップクラス。
TPUコーティングが施された防水性のヒップベルトポケットにはデジタルガジェットを入れておくのにピッタリ。ただぼくのiPhone SEは入りましたが、そろそろ大きさのアップデートが必要のようです。
サイドキック・パックの完成度
普段はメイン収納の内側にあってハイドレーションポケットとして機能し、必要となればさっと引き出してサブパックに変身するサイドキック・パック。収納時点から使う時までのムダのなさといい、背負ったときの機能性まで含めて完成度高杉です。
表に出ない細かいパーツにいたるまで抜かりのない使い心地
よく「神は細部に宿る」といいますが、それはBALTOROを使ってみるとよく分かります。ユーザー本位の哲学が極まっていると感じたのがコードロックからバックルに至るまで、いちいち使い心地抜群の細かいパーツ類です。隅々まで上質さを感じさせてくれるのはさすがGREGORYのフラッグシップといえます。
不満もないわけではない
使い心地自体に何の不満もない分けですが、より高みを目指す意味ではまだまだもっとよくなって欲しい部分がないわけではありません。まず機能満載ももう少しシンプルにできるのではないかという問題。特に両サイドにある薄いジッパーポケットは、ここまで機能的な収納に囲まれるとやや用途に苦しみます。ボトム部分にあるメイン収納へのアクセスも、U字ジッパーが底部まで届くので不要ではないかと思っています。いずれも古くからある一般的な収納なのでなかなかカットするには決断が要りますが、遅かれ早かれやがてなくなるだろうと思う機能です。
一方トップリッドにはデイジーチェーンなどスリングを通すループが欲しかった。ここまで汎用性重視できていて、そこを削る理由が分からなかった。
まとめ
最初に書いたとおり全体的に特徴をレビューではなく個人的にグッときたポイントを中心に書いているので、参考になるひと、ならない人がいるかもしれません。それ以前に、今回はあまりにも多くの人が評価しているということで、なるべく人の受け売りにならないようあえて他の人の感想やレビューを極力触れないようにして書いたため、もしかしたら結構ズレたことを書いているかもしれません。
その上でここまで書いてきたように、GREGORYのパックを背負うことは背負っている自分に満足するというような薄っぺらなものでは決してありません。また単なる上質なソファーを購入するような感覚とも違います。フィッティングの快適さもさることながら、同時に徹底的にユーザー目線で作られた機能性の数々が「ものを運ぶ道具」としての高い完成度を可能にし、それが良い道具を使っているという、アウトドアの醍醐味的な満足感に繋がっています。
春から冬まで、旅から縦走まで、長い距離のアウトドアアクティビティならほぼすべてに対応してくれる高級車は、いつの時代でも誰に対してもブレずに極上の乗り心地を提供してくれます。この機会に、アウトドア愛好家ならば一度は試してみてはいかがでしょうか。
GREGORY BALTOROの主なスペックと評価
スペック | |
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項目 | GREGORY BALTORO 75 |
素材 |
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カラー |
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サイズ(背面長) |
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容量(リットル) | 75 |
重量(実測) | 2,690g(ショルダーM/ヒップベルトSサイズ実測、レインカバー込) |
寸法 | 35 × 71 × 36 cm |
バリエーション |
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メインアクセス | トップ・フロント・ボトム |
背面システム | レスポンスA3(オートマティック・アングル・アジャスト) サスペンション |
背面長調整 | ◯(購入段階で男女別の背面長が3つのサイズ展開、ショルダーハーネスにも3つ、ヒップベルトには5つのサイズがあり、合計15種類の組み合わせの中でパーツを選択可能 ※ショルダーハーネス、ヒップベルトのサイズ交換は「テクニカルフィッティングディーラー」対象店舗のみにて対応) |
ハイドレーション対応 | ◯ |
レインカバー | 付属 |
収納・機能 |
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評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
重量 | ★★★☆☆ |
安定性 | ★★★★☆ |
使いやすさ | ★★★★★ |
収納・機能性 | ★★★★★ |
汎用性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
総合 | ★★★★★ |