ミニマルさとタフネスを融合したEXPED「Lightning」シリーズが大幅アップデート。さらに死角がなくなった軽量バックパックの名作を実践レビュー
テント泊縦走やロングトレイルを歩くハイカーにとって、50L以上の大型バックパック選びには常に悩ましい問題が付きまといます。
近年主流となっている1kg以下のウルトラライト(UL)系バックパックは、軽さこそ圧倒的であるものの、食料や水を含めた総重量が10kgを超えてくると、長時間行動での肩や腰への負担が増し、歩行時のブレも気になり始めます。ただ、かといって重荷に強い従来型の山岳用バックパックを選べば、パック単体で2kgを超える重量が最初から背中にのしかかり、軽快さを失ってしまいます。
そんな軽さと耐荷重性能のジレンマに対するひとつの回答として、長年にわたり世界中のハイカーから支持されてきたのが、スイスのアウトドアブランド、EXPED(エクスペド)の「Lightning」シリーズです。無駄を削ぎ落としたロールトップ構造と、最小限ながら適所に配置されたの背面パッドと独自のT字型フレームシステムを組み合わせることで、1kg強の軽さと20kgを超える耐荷重を見事に両立させてきました。
その人気モデルが2026年シーズン、待望のフルモデルチェンジを果たしました。従来の背負い心地の良さはそのままに、長らくユーザーから要望の多かったフロントメッシュポケットやショルダーハーネスポケットが新設され、実用面での大幅なアップデートが施されています。
今回はこの新しくなったEXPEDの「Lightning 60」を背負い、10月のテント泊縦走などで試してきました。刷新された機能は実際のフィールドでどうだったのか。あるいは従来の課題は解消されたのか?じっくりとレビューしていきます。

EXPED Lightning 40/50/60 バックパックの主な特徴
EXPEDを代表する軽量バックパック、Lightning は、パック自体の軽さと、重荷での快適な背負い心地・安定性を両立した軽量バックパック。最大の特徴であるT-Rexキャリーシステムは、中央1本のアルミステーで腰と肩のパッドをダイレクトに繋ぎ、約1.2kgという軽量さでありながら最大22kgまでの荷重に対応します。従来のロールトップ1気室によるシンプルさと抜群のコンプレッション性能はそのままに、アップデートによってフロントに大型ストレッチメッシュポケットが追加され、さらにショルダーハーネスにもポケットとポールホルダーが追加され、収納性と行動中の利便性が大きく向上しました。ボディには耐摩耗性に優れた210D HMPEリップストップナイロンを採用し、軽量パックの軽快さと山岳パックの剛性・耐久性を高い次元で融合させたモデルに仕上がっています。
お気に入りポイント
- 必要な箇所に効率よく配置された肉厚パッドとT-Rexキャリーシステムによる、重荷でも快適な背負い心地
- 快適な背負い心地にもかかわらず軽量な本体重量
- 背中が全面密着せず、空間ができることで確保された適度な通気性
- 荷物の多寡にかかわらずパックのダブつきを抑え込み、歩行時の揺れを防ぐ秀逸な外周コンプレッションストラップ
- テント一式が余裕で収まり、朝の撤収・パッキングの手間を劇的に減らしてくれる新設の大型フロントメッシュポケット
- 岩場や藪でも気兼ねなく使える210D HMPEリップストップナイロンの高い耐久性
気になるポイント
- メイン気室へのアクセスが上部ロールトップからのみで、手軽にアクセスできない
- サイドメッシュポケットに入れたボトルは、背負ったままではまだやや取り出しにくい
- 新設されたショルダーハーネスポケットは、サイズ的にやや小さい
- ボトムのギアループがかなり短く、クローズドセルマットなどを直接外付けしにくい(荷物を少なくすればギリギリ取り付け可能)
主なスペックと評価

| アイテム名 | EXPED Lightning 40/50/60 |
|---|---|
| 容量 | 60L |
| 実測重量 | 1240 g (L-XLサイズ) |
| メイン素材 | 210 D HMPEリップストップナイロン(PUコーティング, 耐水圧1,000 mm , bluesign 認証) リサイクル 600 D 82T ポリエステル(PUコーティング, 耐水圧1,500mm , bluesign 認証) フレーム: 6061-T6 アルミステー |
| 背面長調節 | ◯ |
| ハイドレーションスリーブ | ◯ |
| メインアクセス | ロールトップ方式 |
| 収納・機能 | ・無段階背面長調整機構のT-Rexフレームサスペンションシステム ・フルパック圧縮システム ・伸縮性のあるフロントポケット ・両サイドに伸縮性のあるウォーターボトルポケット ・上部ジップポケット ・インナーメッシュジップポケット ・ショルダーハーネスにストレッチメッシュポケット ・ヒップベルト左右にジップポケット ・インナーハイドレーションスリーブ ・フロントにアックス・ポールアタッチメント ・右脇にトレッキングポールアタッチメント ・上部・ボトム・サイドそれぞれに圧縮兼固定用ストラップ |
| 本体参考価格 (2026年11月1日現在) | 街からフィールドまでを頻繁に行き来する写真好きの日々の暮らしから週末旅行に |
| Outdoor Gearzine評価 | |
| 快適性 | ★★★★☆ |
| 安定性 | ★★★★★ |
| 収納性 | ★★★☆☆ |
| 機能性(使いやすさ) | ★★★★☆ |
| 耐久性 | ★★★★☆ |
| 重量 | ★★★★★ |
| 汎用性 | ★★★★☆ |
フィールドで実際に使用した詳細レビュー
今回は10月にテント泊縦走(総重量約15kg)と、日帰りで荷物を多めに持って(総重量約10kg)歩いてきました。
快適性と安定性(重荷での背負い心地):最小限の素材で最大限の背負い心地を実現する独自構造
Lightning を他の軽量バックパックと一味違うものにしている最大のポイントは、何をおいてもまずこの独自の「T-Rexキャリーシステム」がもたらす背負い心地の良さであるといえます。一般的に大型バックパックでは背面の輪郭部分をU字あるいは逆U字の堅固なフレームで覆うものが多いのですが、このモデルでは背面中央に通された1本の6061-T6アルミステーを軸に、腰骨全体を包み込むヒップベルトと、肩甲骨周りを支えるショルダーハーネスが直結している構造です。通常よりも少ない素材で軽量化しているにもかかわらず、しっかりと荷重は腰に乗り、肩への負担は感じられません。

実際に食料や水を含めて約15kgの荷物を背負って数日歩きましたが、荷重の大部分がしっかりと腰に乗り、肩への食い込みを感じることはありませんでした。前モデルから引き継がれている特徴として、腰と肩口という荷重がかかるポイントにのみ、贅沢なほどの厚みと強い荷重に耐えられる反発力のある高密度パッドが効率よく配置されています。

さらにパッドが配置されていない背中の中央付近には自然と空間が生まれているため、パックが背中全体にベタッと張り付くこともありません。10月の山行でも行動中は背中が汗ばむ場面がありましたが、この隙間から適度な通気性が確保されるため、不快な蒸れを感じにくい構造になっています。

シンプルながら使いやすい背面長調節機構
背面長はセンターステー上で無段階に調整できるため、自分の体格に合わせてミリ単位でフィッティングを追い込める点も高く評価できます。

容量が多くても少なくても、しっかり背中にフィットしてブレない盤石の安定感
今回のテストを通じて最も感銘を受けたのが、歩行時の圧倒的な安定性です。15kgの重荷を背負った那須三山の岩稜帯で振られにくいのはもちろんですが、10kg以下の比較的少ない荷物で歩いた時でもそのしっくりとフィットする安定感の高さは変わらずでした。
「T-Rexキャリーシステム」は上半身のひねりや足の運びにも柔軟に追従し、どんな荷物量でも常にパックが背中に吸い付いているかのような一体感があります。このブレにくさは、競合する他の軽量バックパックと比較しても頭ひとつ抜けた完成度です。

大型バックパックで荷物が少ない場合、パック内部に隙間ができて荷物が動き、歩くたびにパック全体が揺れてしまいがちです。しかしLightning 60は、パックの側面から前面にかけてジグザグに張り巡らされたコンプレッションストラップが非常に良くできています。

ストラップを引くだけでパック全体の奥行きとボリュームが均一に絞られ、荷物が少ない状態でも生地のダブつきが一切生じません。バックパックをショルダーストラップに引き寄せるロードリフターや、ヒップベルトに引き寄せるコンプレッションストラップもしっかりと搭載されています。


収納性(パッキングしやすさ)と機能性(使いやすさ):便利な収納・アタッチメントが大幅増加でより使いやすく
2026年モデルのアップデート最大の進化ポイントは、実はこの収納面。まず目を引くのは何といってもフロントに搭載された大型フロントメッシュポケットの存在でしょう。

前作までのモデルでは、メイン収納への入り口が上部のロールトップ1箇所しかなく、フロントポケットも存在しませんでしたが、今作では非常に使いやすいストレッチメッシュのスタッシュポケットが追加されました。ここには行動中にさっと取り出したいレインシェルやタオル、行動食バッグなどかさばるいろいろなものが入れておくことができます。

個人的には「撤収した後のテントが入るほど余裕のある大きさ」という点が特にツボでした。
通常朝テントを撤収する際には、テント本体はバックパックの下の方にパッキングするため、一度バックパックの中の荷物を出して詰め直すか、やむを得ず一番上に無理やり押し込む必要がありました。しかし新設されたフロントメッシュポケットは、フロントは破れにくい布帛、サイドには伸縮性の高いメッシュ地で、十分なマチも取られており、引っ張るとテント一式がそのまま収まるほどの余裕があります。中の荷物をすべてパッキングし終えた後でも、最後に撤収したテントやレインウェアを外側からさっと差し込むだけで出発できるため、寒い朝の撤収作業もかなりスムーズになります。
ただ、とはいえ、メイン気室へのアクセスがロールトップからしかできない(ダイレクトアクセスジッパーが備わっていない)という点は、この大容量パックにしては依然としてやはり不便と言わざるをえません。
構造自体はシンプルな縦長の1気室であり、行動中にパックの底や中ほどにある防寒着などを取り出したい場面では、やはり上部から荷物を掘り起こす必要があります。ここにサイドアクセスジッパーなどが1つでも備わっていれば、収納面でも死角のない仕上がりになっていたと感じます。
パッキングを苦にしない基本的な収納と行動時のストレスを軽減するアタッチメント類
その他の収納面も見ていきましょう。各部のポケットやアタッチメント類も現代のハイキングスタイルに合わせてアップデートされていました(細かい点ではあと一歩詰めてほしい部分も)。
トップには財布やキーなど小物を入れておけるジップポケットが前モデルから引き続き配置されています。

ヒップベルトにも小物用メッシュジップポケットが。大型ではないスマホやケア用品などを入れておくのに便利です。

ショルダーハーネスには新たにストレッチメッシュポケットと、トレッキングポールを固定できるホルダーが追加されました。前作では別売りのポーチなどを後付けする必要があったため、標準装備されたことで利便性は確実に向上しています。

ただ、実際に使ってみるとショルダーポケットの開口部と容量がやや控えめで、大型のスマートフォンや行動食を出し入れするには少し窮屈さを感じました。欲を言えば、もう一回り大きなサイズ感であればさらに使い勝手が良かったはずです。

また、両サイドのメッシュポケットは深さもあり、ナルゲンボトルやテントポールを安定して収納できますが、差し込み口が真上を向いているため、バックパックを背負ったままの状態でボトルを取り出すには体が硬いとかなり苦労します。入り口にもっと角度をつけるか、斜め前方からもアクセスできる2ウェイ仕様になっていれば、行動中の水分補給がより快適になったでしょう。







ボトム部分に配置されたループは、従来モデルではクローズドセルマットなどを通して外付けすることが容易でしたが、今作ではこのボトムループが微妙に短くなっており、荷物をがっつり詰めた状態ではクローズドセルマットがギリギリ取り付けられませんでした。外付け派のハイカーにとっては、別途ストラップを用意するなどの工夫が必要になるため、ここは惜しい変更点と言えます。

重量と耐久性:最軽量クラスではないが、この軽さでこのタフネスは唯一無二
本体生地には、210デニールのHMPE(超高分子量ポリエチレン)で補強されたリップストップナイロン、擦れやすいボトム部分には600デニールのリサイクルポリエステルが採用され、耐久性はまず問題なし。重量は実測で約1.2kg(S/Mサイズ最小重量1,190g)。単なる数値だけを見れば800g〜1kgを切るストイックなUL系バックパックには及びませんが、22kgまでの荷重に耐えるアルミフレームと肉厚なパッドと堅牢な生地を備えていることを考えれば、驚異的とも言える軽さであることは間違いありません。同じような容量と性能を備えた山岳用バックパックは、一般的に2kg前後あることを踏まえると、約800gもの軽量化を果たしながら背負い心地を犠牲にしていない点こそが、このモデルの唯一無二の魅力です。
軽さと耐久性を両立しながら、入手しやすい価格も魅力
近年のUL系バックパックでは、軽量化しながら強度を保つためにダイニーマやウルトラファブリックといった希少な素材を使用し、結果として価格も手の届きにくいものになってしまっていることは否めません。その点、Lightning の生地は確かな剛性とうれしい軽さを備えつつ、価格的にも通常の山岳向けバックパックと同程度の水準を保っていることは、ファッションではなく純粋に山を楽しみたい自分のような人間にとってもうれしい限りです。
汎用性・拡張性:クセのないつくり、荷物の大きさが変わっても変わらない「使い心地の良さ」

シンプルなつくりで必要最小限のポケット類、さらには優秀なコンプレッションストラップ類を組み合わせることで、容量が変わっても一定の背負い心地の良さを保てるという点は大きな強みです。夏場の1泊2日や小屋泊といった30〜40L程度の荷物量から、春秋の長期テント泊や冬山装備を含む60Lフル容量まで、1つのパックで破綻なく対応できます。また、アイスアックスループやデイジーチェーンも備わっており、アルパイン寄りの山行にも応用が利きます。
また今回のアップデートで容量が「45 / 60」というラインナップから「40 / 50 / 60」という3タイプに拡張されたことも大きなニュースです。40リットルという1泊前後のテント泊向けモデルから数日の縦走にも対応する60リットルまで、より守備範囲が広がったといえるでしょう。個人的には60リットルでも優れたコンプレッション機能によって少ない容量も対応してくれることから、このモデルに限っては迷ったら大きめサイズを買っても後悔はしないと思っています。
まとめ:前作までの良さを失わず弱点を克服し、さらに高まった完成度。軽量スタイルビギナーからベテランまで全方位でおすすめ
2026年にアップデートされたEXPED Lightning シリーズは、いわゆる純粋なUL系バックパックと比べれば最軽量ではないものの、この軽さにも関わらず圧倒的に丈夫で重荷に強く快適で、おまけに使いやすい。一方で従来の山岳用バックパックと比べれば、この快適さと強さ、使いやすさにもかかわらず、はるかに軽量で軽快に歩ける。前よりも快適で使いやすくなった今回のアップデートによって、より「双方の美味しいところを高い次元で融合させたと」自信を持ってい言えるようになったといえる気がします。
メイン気室へのサイドアクセスジッパーがない点や、ボトムループの短さ、サイドポケットの角度など、細かな収納・機能面で惜しい部分は残るものの、今回のモデルチェンジで大型フロントメッシュポケットとショルダーポケットを手に入れたことにより、前作までの弱点はかなり解消され、前作にあった不便さは今回ほぼ気にならない程度になっていると感じます。
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