今シーズン見逃せない超軽量レインウェア 2018で、今年見逃せないレインウェアをずらっとご紹介しました。新作が多いし、機能も進化しているし、さらに軽くなっているし、デザインもかっこいいしで、どれにしようか正直迷います。超軽量レインウェアの基本的な話は「そもそも超軽量レインウェアって何がいいの?どんな人に向いているの?」を見ていただくとして、そのなかから今シーズン着てみたい3着を選んでみました。
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ついに軽量ウェア界に挑む
これまでは、寒さを防いだり、風雨にさらされて低体温になったりしないよう、安全第一でスタンダードな雨具を使っていました。でも、ちょくちょく低山も行くし、晴れた日の日帰り登山もするし、そろそろ軽量ウェア領域に一歩踏み込んでみてみるのもアリかもと、心がうずうず動き…。そこで筆者、とうとう軽量ウェアに選びに挑戦してみることにしました。
基準は200g以下、筆者が暑がりなので透湿性があり快適、見た目がナイス、というゆるっとした物差しでチョイスしています。「もっと本格的に!もっと細部まで見て!もっと価格を考えて!」と、もっともっとなご要望もあろうかとお察ししますが、「こういう見方もあるのね~、ふ~ん」くらいに受け止めていただければ幸いです。
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今回比較した超軽量レインウェアについて
今回の比較にあたっては先ほどの基準をもとに、ブランド・素材の種類・生地の厚さ・ポケット、ベンチレーションの有無など、さまざまな点も加味した結果、比較レビュー候補は以下の3着となりました。
どれも夏山の軽量例ジャケットとしての用途はカバーしているものの、ノースフェイスの新作はライトなオールラウンド、ノローナはスピードハイク、マウンテンハードウェアはトレイルランと、それぞれ力点を置いている部分が異なっています。
本来であればすべてのアクティビティで比較するのが公平だとは思いますが、今回はもろもろの都合により、夏山ハイクと近所でのランのみです。悪しからず。
テスト環境
- 2018年6月初旬に、青森県の百名山「岩木山(標高1,625m。約1,250mにある8合目登山口から登る)」にて着用。積雪は無し。天気は曇と霧。頂上付近の気温は約13℃。レインウェアの中にメリノウールのベースレイヤーの上に速乾Tシャツを着た状態でテスト。
- 同年7月初旬、夕方に海岸でジョギングをしながら着用。気温約30℃。レインウェアの中に速乾Tシャツを着た状態でテスト(湿気が多い状態を想定)。
- 雨がなかなか降らない気候だったので、弱雨と強雨を一般的なシャワーで再現し、テスト。
評価基準
- 防水性・・・レインウェアは雨から身を守るギアである以上、防水性は最も基本的な評価ポイント。
- 防風性・・・稜線上などの風が強い状況でどれだけ防風性(保温性)があるか。
- 透湿性・・・スペックだけにとらわれず、蒸れやすい状況でどれだけ身体をドライに保ってくれるのか。
- 快適性・・・肌触り、フィット感などの着心地のよさだけでなく、腕振りでのつっぱり感のなさなど。
- 重量・・・文字通りジャケットの重量。軽ければ軽いほどいいに越したことはない。
- 機能性・・・ポケットやフード・袖・裾等の作り、収納性など、全体的な使い勝手。
- デザイン性・・・思い切り主観です。何はともあれスタイリッシュに着こなせると気持ちがいい。
テスト結果&スペック比較表
各モデルのインプレッション
THE NORTH FACE オプティミストジャケット
ジャケットとしての着心地はダントツ!ライトなアウトドアにピッタリ
ココが◎
- ベンチレーションが大きいので蒸れずに快適
- 右のベンチレーションの中にポケットがある
- 袖がベルクロじゃなくボタン
- 色、形などデザインが良い
ココが△
- 撥水性が低い
- 襟が低いので水が入りやすい
- フードを被って頭の後ろのドローコードをしめた時、顔周りがゆるい
ベンチレーションが大きく貢献
迷うことなくノースフェイスのレインウェアでした。なぜか。それは、大きいベンチレーションがついているからですっ。
岩木山で着用した時、気温は10℃台と低く、標高はそこそこありましたが、歩くとだんだん暑くなってきて、ついに「汗・蒸れ」がやってきました。即座に2つのベンチレーションをシャーっと全開に。…なんて涼しいのでしょう。
袖のボタンもプチプチッと外し、外気を取り入れると、空気が循環して、さらに体は涼しくなり、か・い・て・き。
今回ベンチレーションの有る無しが、暑がりの筆者にとっては大きなポイントでした。
海岸でジョギングした時も、のっけから湿気はすごいわ、気温は高くて暑いわで、もちろんベンチレーションは開けたままです。夕方といえども気温30℃でレインウェアを着ていたら、さすがに暑いです。
岩木山と同じようにはいきません。やっかいな汗・蒸れの方々はレインウェアにステイしていますが、フロントのジッパーを開けて、何回かバッサバッサとレインウェアを風に当てれば、彼らはそこそこいなくなってくれました。
防水性・保水性が気になるが、ノースフェイスのお家芸でカバー
気になったのは、雨の染み込みの速さです。弱雨の時点で生地に染み込んでしまいます。強雨となるとなおさら。
この場合、レインウェアが水分を蓄えてしまうので、風にさらされたり、長い時間雨にさらされたりしたら、体が冷えてしまう可能性が高いです。ここの軍配は、ノローナ氏、マウンテンハードウェア氏に譲らざるを得ません。襟が低い、フードのしまりがゆるいのも気になるところです。
しかし、発色のきれいさ、色の可愛さ、右のベンチレーション内に作られた秘密のメッシュポケットの芸の細かさなど、「ウルトラライトにこだわりましたからっ」感を前面に押し出してこない部分にも好感が持て、価格的にも無理がないのもグッドではないでしょうか。
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NORRONA bitihorn ultralight dri3 Jacket
雨具としてのプロテクションはバッチリ!軽量だからと侮れないミニマル&ハイテクレインウェア
ココが◎
- 保温性がある
- 着心地が柔らかい
- 裾、袖が伸縮ゴム
- 襟が高くかっこいい
- ロゴの配置がかっこいい
ココが△
- 価格が高い
- 防風・保温性が高くて逆に暑く感じることも
- スタッフサックやポケッタブル仕様ではないため収納性に欠ける
- ベンチレーション兼ポケットが中途半端な立ち位置
とにかくデザインがかっこいい
さすが北欧はノルウェー出身のノローナ、デザイン性では文句なしの満点です。着るだけでかっこいい。あっち向いてこっち向いてもかっこいい。北欧デザインのなせる技でしょうか。
一番好きなのはジッパーを全部閉めた時の襟の高さ。
雨風の侵入を防いでくれるのはもちろんのこと、見た目がかっこいい。フードをかぶってもかぶらなくてもかっこいい。いったいここで何回かっこいいを連発しているのかというほどかっこいいです。
背中とジッパーの引手にある、ノローナのロゴの配置具合も見逃せません。
余談ですが、ノローナのロゴはヴァイキングって知ってました?ノローナのヴァイキングは一般的に想像しがちな海賊ではなく、厳冬の山を超えてノルウェー国王を助けた山の英雄に由来しています。筆者、この度初めて知って勉強になりました。もとい、レインウェアにプリントされているロゴ(左胸にもあります)はリフレクタープリントで、暗いところでも反射してくれます。暗闇でも英雄が守ってくれている、というわけですね。
着心地・防風性に安心感
3アイテムの中で一番軽いのですが、最軽量というほど軽く感じず、マウンテンハードウェアの方が体感的に軽かったのは、気のせいでしょうか。日頃、荷物の軽量化に努めていますが、120gの軽さを感じることは難しかった…。その理由は生地にあります。マウンテンハードウェアと比べると、厚みがあり、しっかりとしています。風が吹く岩木山の山頂で3アイテムを交互に着て1分間立っているテストをした際に、「寒っ…」とならずにいられたのはノローナだけで、ランニング中に着て一番暑かったのもノローナでした。
裾と袖を伸縮ゴムにして軽くしている分、生地に重量をもたせたのかもしれません。雨テストでは弱雨強雨ともに生地への水の染み込みはなく、バチバチッとしっかり水をはじいてくれます。
適度な生地の厚さがあるので、一般的な登山をする人間としては着ていて落ち着きます。しかも着心地は柔らかい。ナイスですね。
わがままを聞いていただけるなら…
改善を希望する点は3つ。1つはポケット兼ベンチレーションを、ベンチレーションに特化してほしいところ。パンチングで小さい穴が開いているものの、ジッパーを全開にしても、暑く蒸れます。
いっそのこと脇下か前面にダイナミックなベンチレーションを作っていただければ、暑がりとしてはとてもありがたい。2つ目は収納性。収納方法は特にないので、丸めてフードにしまうスタンダードな方法をとりました。が、他2アイテムと比べるとかさばります。可能なら収納袋、さらに上をいってパッカブル仕様だと言うことなしです。3つ目はお値段。見目麗しい北欧デザインで、120gと超軽量で、生地は適度な厚さで柔らかので、コストが高くなるのはわかります。わかるのですが、お値段を見るとウェアに伸ばしかけた手を引っ込めてしまいます。これは大変もったいない。是非ともコストについては勉強して(関西風)頑張っていただきたいっ。お願いします(小声)。
Mountain Hardwear リロイジャケット
着て、動いた時に感じる「軽さ」は一番!ストレスフリーのふわ軽2.5レイヤーレインウェア
ココが◎
- ポケットへのパッカブル仕様
- サラサラな着心地
- 汗や水がすぐ乾く
- 実際の重量よりも軽く感じる
ココが△
- 生地が薄いため稜線の風を受けると寒さを感じる
- ベンチレーションがないため蒸れ感を感じやすい
重量以上に軽く感じるストレスのない着心地の良さ!
着用してみて「軽っ…」と思わず言ってしまいました。ノローナの方が軽いのに、マウンテンハードウェアの方が体感的には軽く感じます。ふわっと軽く、なんのストレスも感じない着心地。さらにいえば、「今何か着てる?」とまで思います。
独自素材のドライQ先生が奮闘
着心地が「ふわ軽」なんだから、防水性は「染み重」なんでしょ?ノンノン。雨テストでは、染み込み無し。強雨でも水は染み込まず、バッチリはじきました。これはすごい。1位のノースフェイスはじんわり染みて保水したのに、この薄さで水をはじくとは。
かつ、3アイテムの中で唯一フードの「つば」がせり出しており、雨が目に入るのを防いでくれます。「雨からキミを守るから」という情熱をひしと感じます。
雨からザックを守るよ
背負うザックが、ウェアの中に入るのも見逃せない機能です。トレランをされている方のザックなら余裕で入ります。
ただ、一般的な登山をしている筆者のザックを背負ってから着てみましたが、さすがにやっぱりちょっと厳しいでしょうか。
10リッター程度が限界かもしれません。無理をして着るとジッパーが壊れるので、ここはさすがにあきらめてレインカバーなどで対応する必要があります。
普通の山登りにはやや不利なベンチレーションと生地の薄さ
今回総合評価ではノースフェイス氏とノローナ氏にやや水をあけられてしまった、マウンテンハードウェア氏。何が原因だったのか。それは暑くて寒いから、です。「盆地じゃないんだから」という声も聞こえてきそうですね。
まず、ベンチレーションが無く、体にまとった蒸気や熱を換気できない。だから暑い。岩木山山頂で1分間立っているテストをしたら、生地が薄く保温性が無いので「寒っ」。最後の20秒ほどは寒さを耐えるような状況でした。できれば胸ポケットの内側の生地をメッシュにして、ベンチレーションを兼ねたポケットにしてほしかった…。これだけでも換気力が違うのに、惜しい。
ただ、これにはある程度分からないでもない事情もあります。それはこのモデルが日本有数のトレイルランナー、上田瑠偉選手のフィードバックを元に開発されている、トレイルランに特化したモデルだから。常に走って発汗し続けているような状況ですから、雨が降っていても、ほぼほぼずっと「暑い」わけで、極端な寒さを感じる状況も少ないのだろうと思われます。その意味では、登山のような平常ペースで動くアクティビティではなく、がっつり汗をかくこと前提での高心拍数系アクティビティであれば、もっとフィットしただろうことが予想されます。着用時のストレスのない動きやすさや、ポケットへのパッカブル仕様の利便性などは確かなのですから。
まとめ
「実際に着てみないとわからんやん」、身もふたもない感想ですね。めっちゃ軽いやん、かっこええやん、快適そうやん、と思って買ってみても、現地で使ってみるまで自分にフィットするかどうかは正直わかりません。そこで、購入する際の材料になればと、皆さんの代わりに試して、その結果をお伝えしている次第です。
どれも基本的なレベルは高いものでしたが、防水性重視、見た目重視、快適さ重視、軽さ重視と皆さんが重視するポイントはさまざまです。このたびのウェアは、うまい具合に特色がわかれる3アイテムでした。
最低限のプロテクション機能は軽量のレインウェアでも持っているので、今回をきっかけに、安全第一のレインウェア界から軽量レインウェア界へ、足をずんずん進めていこうと計画中の筆者でした。