ということで、今回はおすすめのハイキングシューズについて書きます。一応前置きしておくと、登山靴てのは少し店内を歩いただけでは本当におすすめかどうかなんて判断できるとは思っていません。このため以下はあくまでも店内での試着+購入後数時間の試し履きによって「こいつ、いいヤツかも」ではなく履きつぶしたいと思った、そういう意味でのおすすめであることはご理解ください。
なお、このサイトではそのまま投げっぱなしで終わらせるつもりはもちろんなく、ここで挙げたおすすめ候補は徹底的に比較テストして後日レポートしますのでそちらもぜひご期待くださいね。
目次
なぜこんなにも軽量ハイキングシューズを履きつぶしたくなるのか
これからとことん履きつぶしたい軽量ハイキングシューズ10足(前半5足)
これからとことん履きつぶしたい軽量ハイキングシューズ10足(後半5足)
なぜこんなにも軽量ハイキングシューズを履きつぶしたくなるのか
山登りの初心者も、本格派も、まったり派も一足はもっておきたいのが軽量ハイキングシューズ
近場の山には飽き足らず本格的な登山を目指そうとする人にとって、高価で頑丈なトレッキングブーツ(登山靴)が最も適した装備であることは昔から変わりません。とはいえ、これを揃えればどんな山でもバッチリ、他の登山靴は必要ないかというとそうでもなく。日帰りや小屋泊まり程度のコースを軽装で歩くのに、これから紹介するハイキングシューズに勝るものは今のところ考えられません。
例えば急に今週末は時間がとれそうだ、となって前日いそいそと荷物をパックに詰める。朝、玄関からコイツに足を突っ込み、ふらっとそのまま頂上へ。硬いトレッキングブーツと違って平地でも歩きやすくて疲れにくいし、普通のスニーカーと違って悪路でも滑りにくい。多少泥が付いても防水生地だから水場でさらっと洗い流せます。そんな歩きやすさと気軽さのバランスが売りのハイキングシューズは、近場の低山ハイキングはもちろん、軽快な足運びの多いスピードハイキングにもピッタリです。
もうひとつ、山登りに興味をもった人の最初の一足はハイキングシューズが良いとも考えています。はじめにこうした歩きやすく安全な靴からスタートし、徐々に山での歩き方に慣れていけるというメリットもあるし、たとえすぐにトレッキングブーツを買い足したとしても、近場の山で重宝するハイキングシューズは絶対に無駄になりません。何より登山靴全体でみればなかなかお手頃な価格が多いですし。
今や軽量ハイキングシューズは新作ひしめく超激戦カテゴリ
一方アウトドア業界全体を見てもハイキングシューズカテゴリは2016年も相変わらず超激戦カテゴリ。数年前ならそんなハンパな靴、登山靴じゃないくらいの扱いだった(あくまでも個人的な感覚)のが、今ではこれまで硬派なアルパインブーツしか作っていなかったメーカーでさえこぞってこのカテゴリに新製品を投入してきているのが現状です。
それだけファストパッキングなどの軽量装備でのハイキングスタイルや、野外音楽フェスに行くようなライト層によるアウトドア・キャンプ人気の広がりが無視できなくなっているということでしょう。必然的に競争は激化し、次から次へと軽くて高性能で新しいアイデアの製品が登場するという、個人的に見逃せない状況になってきています。
ピックアップの基準など
今や数多くのアウトドアメーカーからさまざまなタイプのハイキングシューズがリリースされてきている状況ですが、今回はまず個人的なこだわりとして片足500g以下、ミッドカットのモデルを検討対象としました。500g以下(450g前後)とは普段履いている紳士用革靴の重量と同程度と聞けば、その軽さは実感してもらえるのではないでしょうか。もちろん500g以上のハイキングブーツにもいい靴はたくさんありますが、とことん軽量化を突き詰めた中での性能を比べたいということ、はじめて山靴を履くという人に優しいモデルということでそうしていますのでご理解ください。
ちなみにローカットか、ミッドカットかという点について、ローカットはより軽量で足首が自由に動く分、細かい足運びがし易いというメリットがあるものの、足首の捻挫などのリスクや外から小石やゴミが入りやすいなどのデメリットはあります。一方くるぶしまで覆っているミッドカットのモデル(海外の慣例にならって、これからは特にハイキングブーツと呼びます)の特徴はその逆。ぼくなんかの場合、山道をしょっちゅう細かいステップで走りたいわけでもなく、昔から捻挫しやすいタイプなので、少しでも安心なミッドカットのハイキングブーツが好きです。
最後にもうひとつ当然のことですが念のため、他人が進めるから、人気があるからといってその靴があなたにとっても良い靴だとは限りません。それについては以前こちらの記事でも書きましたが、必ず試し履きして自分の足に合うことを確認してくださいね。
これからとことん履きつぶしたい軽量ハイキングシューズ10足
THE NORTH FACE Ultra Fastpack II Mid GORE-TEX
軽快さ★★★☆☆☆安定性
まずは今回の買い替えまでずっとスタメンを張ってくれたお気に入り軽量ハイキングブーツの後継モデルから。発売当初はそのあまりの軽さに「所詮はノースフェイスの登山靴なんでしょ」といった食わず嫌いの人が(ネット上では)多かったように思います。ただ実際のところこのブランドは山岳レースなどを中心に昔から既に多くの実績を積み重ねてきており、そのノウハウを活かしてハイキング方向に乗り出してきたのがこのシューズなわけで。
ぼくの使っていた前モデルは今作よりも軽い400gで、当時はじめて歩いたときの軽快さといったら、それはそれは衝撃的でした。アウトソール(地面との接地部分)は安心のビブラム製で悪路でも滑りにくく、アッパーも薄手ながら摩耗・破れなどもなく、登山靴として十分な実力を証明してくれました。
今期リニューアルされたモデルは432gと若干重くなりました。直接的な要因は不明ですが、アッパー素材は感触的には前よりも若干しっかりした硬めの作りに。アウトソールにはあらゆる地表でグリップ力を発揮するというビブラム Megagripラバーを新たに実装。ミッドソールには衝撃吸収・安定性・プロテクションを向上するTNF独自のCRADLE™GUIDEテクノロジーを採用し、各所でよりハードな地形にも対応するように進化しているようです。
La Sportiva Core High GTX
軽快さ★★★★★☆安定性
ハイキングは多くの場合暑い時期に行うため、靴の中は想像以上に汗でびっしょりになってしまいます。だからこそ靴下は綿ではなくウールや化繊推奨ですし、シューズはできる限り通気性を高めて中をドライにしておきたいもの。とはいえ登山靴に必要な防水メンブレンが通気の邪魔をしてしまうというジレンマを抱えていました。そこで2015年にGORE-TEX社が生み出した画期的な技術が、高い防水性と最高度の通気性を両立させた GORE-TEXⓇ SURROUNDⓇ。ぼくが体験した限りその実力は間違いなく、もし靴の蒸れで悩んでいる人がいたら迷わずこの技術を採用しているモデルをおすすめするでしょう。
網目状の樹脂でアッパー全体を覆う見た目はその未来的なインパクトもさることながら、軽さ、強度、高い通気性を可能にしているというスグレモノ。踵の IMPACT BRAKE SYSTEM による高いグリップ力・耐衝撃性は他のモデルで既にその素晴らしさを体験しているスポルティバ愛用者としてはまったく心配していません。
ところでこのモデル、昨年から日本でよく見かける SYNTHESIS GORE-TEXⓇ SURROUND™ とは違います。実はこちらは海外で昨年から販売していたにもかかわらず日本では未発売であったハイカットモデル。それがなんと今年ようやく一部の店舗でのみ発売されているとのこと。性能的にはほとんど変わらないのですが、SYNTHESIS の方はミッドカットにもかかわらず実際のところはローカットと呼んでもいいくらいに踵が浅かったので、これぞまさに鬼に金棒、アムロにνガンダム。迷わず入手しました。
Salewa HIKE ROLLER MID GORE-TEX
軽快さ★★★☆☆☆安定性
これは忘れもしないソルトレイクシティで行われた Outdoor Retailer 2015で見かけて以来、発売を待ち焦がれていたハイキングブーツ。イタリア育ちの先鋭的なデザインがマジ素敵。軽くて、格好良くて、でも見た目だけで無くチャレンジングな機能も盛りだくさん。
ビブラムの新開発アウトソール Vibram RollinGait System は、踵からつま先までが明瞭なカーブを描き、着地における衝撃吸収からつま先での踏み込みまで自然な体重移動をサポート。特にダウンヒルでは筋肉の疲労を軽減(素晴らしい!)。もう何度か履いてますが足の運びが捗る、捗る。
さらには靴の両側に取り付けられたオプションのシューホール。ここに靴ひもを通せばより深く足全体を締め上げることができ、足のホールド感・フィット感はMAXに。ただここに紐を通すと案の定、靴ひもの長さが全然足りなくなるため、別途長い靴ひもが必要というお茶目な一面にはこの際目を瞑っておきます。
この軽さにもかかわらず、アッパーはスエードレザーを中心とした化繊とのハイブリッド構成のため、履き心地的にはランニングシューズというよりもしっかりした軽登山靴といった感じ。走るための靴ではないですが、少しハードな使い方でもビクともしないだろう安心感はあります。
Salomon X ULTRA MID2 GTX
軽快さ★★★☆☆☆安定性
ハイキング向けのミッドカットというと、このモデルの他にもさまざまなラインナップを揃えているサロモンですが、今回このモデルをチョイスしたのは、そんな多彩なラインナップのなかでも軽さと安定性というバランスが最も良くまとまっていたから。もちろん他のモデルも捨てがたいクオリティ。このカテゴリがブームになる前からこういったスポーツとトレッキングのクロスオーバーした靴を度々作ってきたメーカーだけあって、やっぱり年季が違います。
今回あらためて感心したのが、同社が長年培ってきたアッパーのフィット技術 SENSIFIT の忘れがたいフィット感の良さ。足の両側からがっちりと包み込むように締め上げてくるフットホールドがとにかく心地よく、フィット感は抜群です。基本的にアスリート向けシューズでの実績を積み重ねてきたブランドだからか、ソール周りは今回選出した中では柔らかい方といえます。つまり、歩きの快適さや足の自由度は高い一方、本格登山靴からは遠目に位置にしていると思われますので、その辺のポジショニングさえ間違えなければ必ず満足のいくチョイスになるはずです。
mont-bell ラップランドブーツ
軽快さ★☆☆☆☆☆安定性
性能は必要十分、コスパは抜群という意味ではやっぱり外せないモンベル。特徴としては軽量シューズという割にアッパーにはレザーでがっちり補強された部分が多く見られるなど、ランニングシューズよりの柔らかい靴に比べるとそこまでのフィット感と足の自由度が望める靴ではありません。いわばトレッキングブーツの軽量版という印象が強いので、逆に言うと登山靴的な強靱さと履き心地の方が安心するという人にはフィットすると思われます。
とはいえアウトソールには粘着性が高く、濡れた岩場や木道でもグリップを発揮しやすい独自技術、トレール グリッパーⓇを採用しているところからも、湿度の高い日本のトレイルに合わせている感じがまたニクい(ただ、消耗は早そう)。
感覚的には特別細身の足型という気はしないのですが、今年から幅広の足型に合わせたラインナップも追加するという隙のなさ。さすがすべての日本人のためのナショナルブランド。もちろん男女、ローカット・ミッドカットモデルも忘れていません。
次ページ:これからとことん履きつぶしたい軽量ハイキングシューズ10足【後半5足】
MERRELL CAPRA BOLT MID GORE-TEX
軽快さ★★★★★☆安定性
陽気なカウボーイブーツ職人が腕試しに作ったハイキングブーツから、野外フェス人気を引っ張ってきたお洒落アウトドア靴まで30年余り。一昔前までは「何か、チャラい・・・」と遠ざけていたことは確かです(スイマセン)が、じっくり知ってみると実は幅広いユーザーに向けてアウトドアシューズを提供しているごく真面目なブランドでした。
そんな常にアウトドア・カルチャーの最前線を駆けてきたメレルがここにきて目をつけたのは「ヤギ」。なぜ、今、山羊なのか?といっても牧場でモグモグしているヤツではなく、急峻な山腹の斜面をものすごい速さで駆けていく野生のアレ。
彼らの荒れた岩場をものともせず自在に駆け回る強靱な蹄をヒントに生まれたのが、カプラシリーズの左右に割れた蹄型のアウトソールです。外側の蹄部分(写真の白い部分)は柔軟性が高いゴムになっていて滑りにくく、ここが硬い岩肌もしっかりと捉えるようになっており、一方内側(写真の黒い部分)はより硬い素材の部分は泥や悪路に強く、より衝撃を吸収しやすくもなっています。
montrail SIERRAVADA MID OUTDRY
軽快さ★★★☆☆☆安定性
トレランシューズの元祖として名高いブランド、モントレイルは今でこそトレイルランニングやアドベンチャーレース向けのブランドというイメージがどうしても強い(ぼくもバハダでずっとお世話になっている)のですが、実際には当時ゴツかったトレッキングブーツをもっと軽くて快適な履き物にしようとスタートした、トレッキング由来のアウトドア・シューズブランド。そのモントレイルが2016年、アメリカのハイカーなら誰もが知るシエラネバダ山脈の名を冠した靴をひっさげて、ハイキングの世界に戻ってきました。
まずそのあまりに快適な履き心地には誰もが驚くはず。今回紹介する中でも一二を争うくらい、ソールのクッション性が抜群にイイ。さらにテープ状でなおかつ間隔の詰まった7つシューホールは非常に締めやすく、緩みにくく、個人的に大好きなホールド感がまたイイ。
その他、主だった機能だけでも、トレッキングブーツのDNAが息づいたアッパーの確かなプロテクション、トレランシューズで培われたミッドソールの対衝撃吸収力、柔軟性、クッション性(トレイルシールド・フリューイッドフォーム)、さらにGORE-TEXⓇを凌ぐといわれているOutDryⓇ防水透湿メンブレンなど、楽しみな特徴が盛りだくさん。お世辞でも何でもなく、アクティブなハイキングスタイルが注目されつつある今、このモデルの登場によってぼくが最も期待しているフットウェアブランドのひとつとなったことは間違いありません。
TECNICA TCROSS MID SYN GTX
軽快さ★★★☆☆☆安定性
もしこの特集をしなかったらずっと出会うことも無かっただろうイタリアの老舗ブランドは50年以上の歴史を誇り、プラスチック製スキーブーツのパイオニアとしてウィンタースポーツでは名を馳せていた老舗中の老舗。それがトレッキングブーツの世界でもここまで技術力のある先進的なブランドであるとは正直はじめて知りました。
かかとのクッション性を向上し、足首のひねりを軽減するヒールシステムや、緩いカーブを描き着地から蹴り出しまでの自然な動きをサポートする独自ソールシステム(TRS)、そして足の可動性を失わずにプロテクションとホールド感を保つアッパー構造など、経験と技術力に裏打ちされた機能は思った以上に隙が無く、かなり高い完成度が想像されます。というのも、まだ実は手元に届いておらず・・・昨年の展示会で出会った感触のメモから書き起こしています。しかしあの時の感動はホンモノであり、今でも忘れていません。きっと確かなモノのはず。今後の比較テストに乞うご期待です。
VASQUE インヘイラーⅡ GTX
軽快さ★★★★☆☆安定性
VASQUE はイタリアの靴職人による伝統的なオールレザーブーツの印象が強いブランドではありますが、近年ではそのベースを活かしてトレイルランニングやパフォーマンスハイキング(同社での呼び方)への進出も盛ん。昨年発売されたモデル(インヘイラー)とスペック的にはほぼ変わらない新作ですが、相変わらずとにかく軽い(実測US9.5サイズで435g)。
その軽さとも関係しているであろうアッパー素材は想像通り薄く、表面はラフなメッシュ地、防水ブーツなのにとんでもない風抜けの良さがこの靴最大の特徴です。踵とつま先のプロテクションをあえてくり抜いてまで配置されたベンチレーションにも本気を感じます。
adidas TERREX FAST R MID Gore-Tex
軽快さ★★★☆☆☆安定性
言わずと知れたスポーツアパレル界の王様アディダスですが、実はアウトドア向けフットウェアの歴史は長く、世界的な登山家であるラインホルト・メスナーのためのアプローチシューズを作ったことにはじまります。技術的にもデザイン的にも攻めているモノを見ると応援したくなる自分としては、試す機会を今か今かとうかがっていましたが、このモデルは色々な意味でまさにうってつけでした。
まず色合い、デザインから既にしていわゆる”アウトドア”ではないのですよ。どこからどう見ても adidas。さすがです。甲からつま先にかけてのアッパーはうっすいうっすいナイロン生地。でもちょっとパリっと硬めの感触なところがやや取っつきにくいかったのですが、まぁ慣れの問題かと。
とにかく他のシューズとは明らかに異なるアプローチでやってきた TERREX FAST R には底知れぬ可能性を感じます。ということで、詳細は比較テストレポートでのお楽しみ!
トレッキングシューズについてはこちらの記事もおすすめ
- 自分の足に合ったトレッキングシューズを選ぶための5つのポイント
- トレッキングシューズのフィッティング方法とチェックするべき6つのポイント
- 比較テスト:登山ショップ店員のおすすめトレッキングシューズを履き比べてみた
参考:シューズの種類による一般的な特徴比較まとめ
※1 トレラン用シューズの場合、アウトソールのゴムが硬く深めになり、不整地での安定性は高まる一方で、クッション性はランニングシューズのそれよりは落ちる傾向にあります。
同じハイキングシューズでもローカットモデルの場合、※2の項目についてはランニング・トレランシューズなどと特徴が近くなり、より軽くて自由な足運びが重視されます。