比較レビュー:登山ショップ店員のおすすめトレッキングシューズを履き比べてみた

最も歩きやすく、疲れにくいトレッキングシューズを選んでもらった

登山用に設計された靴には、登る場所や季節によっていくつものタイプが存在しますが、低山から日本アルプスまで、雪のない道なら日本全国どこへでもいける、最も広範囲に活躍してくれるのが今回レポートするトレッキングシューズ(ブーツ)。

以前のエントリでまとめましたが、最適なトレッキングシューズの選択にはとにかく「実際にフィッティングすること」が大事。その意味で自分にぴったりの登山靴との出会いは、どれだけ多くの知識をもってしても最終的には”縁”のようなものだと言えなくはないわけで。だからということでは決してないのですが、今回最高のトレッキングシューズ候補を選ぶにあたっては、数多ある候補を自分で最後まで絞り込むのは止め、最終的にどちらかで迷った時には「登山ショップ店員のおすすめを選ぶ」という縛りでピックアップしてみました。おそらく、ショップによっては本当に自分で履いてお気に入りのモデルを推してくれたのもあれば、売れ筋商品プッシュしてくれたものもあるでしょう。ただどちらであったとしても、それがそのショップのおすすめであることは間違いありません。それもひとつの縁、未知の道具たちとの一期一会がどんな化学反応を見せてくれるのか? そんなことに期待しながら、それでは早速いってみましょう。

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今回比較したトレッキングシューズについて

今回ピックアップするにあたっては、店員さんにだいたいこんな感じでリクエストをしています(実際にはここまで明確にはしていませんが)。

  • 北アルプスの一般ルートを数泊で縦走できるくらいのサポート力と耐久性。
  • 歩きやすいにこしたことはないが、最低でも万が一の時に軽アイゼンが付けられる程度のソールの硬さ
  • 怪我したくないのでミドルカット以上。
  • なるべく軽い方がいい。

なお今回に限ったことではありませんが、評価はあくまでも編集部が行なった個別テストに基づく独自の見解を多く含んでおりますので、(今回の靴などは特に)すべてのユーザーに対して同じような評価・感想を保証するものではありません。情報の最終的な取捨選択は訪問者様各自の判断でお願いいたします。

比較テストアイテム

Salewa MOUNTAIN TRAINER MID GORE-TEX

Garmont RAMBLER GTX

Arc’teryx Bora2 Mid GTX ミッドハイキングブーツ

VASQUE St. Elias GTX

SIRIO P.F.430

テスト環境

2015年8~11月に上越・八ヶ岳・南アルプスなどのさまざまな地形で、同条件の下履き比べテストを行ないました。

DSC00184

実地テストによる詳細評価

総合順位1位2位3位4位5位
アイテムSalewa MOUNTAIN TRAINER MID GORE-TEXGarmont RAMBLER GTXArc’teryx Bora2 Mid GTX ミッドハイキングブーツVASQUE St. Elias GTXSIRIO P.F.430
ここが◎高いグリップ力、岩場などでの安定性、適度なフィット感、サポート力耐久性、足首のサポート力を含めた高い安定性、快適な履き心地快適な履き心地、多様な地形での歩き易さ、軽さ平地での歩き易さ、価格軽さ、悪路でのグリップ力、耐久性
ここが△耐久性(若干)重量、柔軟性価格、耐久性不整地・斜面・岩場でのグリップ力フィット感、サポート力、クッション性
快適性
(25点)
2223242019
グリップ力
(20点)
1917171616
安定性
(20点)
1718171513
耐久性
(15点)
1112101112
重量
(10点)
86979
価格
(10点)
66386
総合点(100点)8382817775
スペック
重量630g720g600g689g590g
アッパー素材360° full rubber rand
1.6mm suede leather
Highly wear-resistant fabric
1.8mmスエードレザー
コーデュラナイロン
EVA フォームコアを備えた 2 層のストレッチナイロン monomesh
TPU を使用した耐摩耗性に優れたフィルム
2.3mm防水ヌバックレザー
成型ラバートゥキャップ
アッパー:ペルワンガー・スウェード(1.6~1.8mm)
コーデュラナイロン
スティールシューレースフック
防水GORE-TEXGORE-TEXGORE-TEXGORE-TEXGORE-TEX
カラーバリエーション××
参考価格32,400円30,780円45,360円24,800円31,320円

快適性

とにもかくにも、履き心地の悪い靴では何もはじまりません。長時間、強い重力と摩擦力が加わるトレッキングシューズではどれだけちょうどよいフィット感で快適に履き続けられるかが最も重要な要素のひとつ。その快適性を評価するとき、編集部では靴を履いたとき、そしてしばらく歩いた後で主に以下のような点に着目します。

  • 足を入れ、靴ひもを締めたときのフィット感
  • つま先の空間の余裕具合
  • 立ったときの足裏のクッション性
  • かかと周りのフィット感、サポート力、固定感
  • 汗処理、通気性能

これらの項目のほとんどで高評価を得ていたのはArc’teryx Bora2 Mid。ありそうでなかったアウターとインナーの二重構造が、足と靴の間に余分な空間を作らず、足全体を包み込むようにやさしくフィットしてくれます。いわゆるベロ部分(シュータン)のない、インナーむき出しの甲部分は通気性も抜群。一方独自のヒールロックシステムをもつGarmont RAMBLERは、かかと周りの適度なフィット感が抜群で、他のどの靴にも真似できない心地よさ。その他、柔軟なアッパーレザーをもつSalewa MOUNTAIN TRAINER MIDは、シューレースの締め加減に対する感度が高く、取り替え可能な2種類のフットベッドを含めてより繊細なフィット調整が可能です。

グリップ力

体重を乗せたときにどれだけスリップしないでしっかり力を地面に伝える事ができるかを評価するのがこの項目。山では思った以上にさまざまな条件の地面を歩かなければならず、室内や街で履くような平板な靴底はまったく役に立ちません。ここから各シューズメーカーはそれぞれのコンセプトに基づき、重荷でもヘタれない硬さの材質、深い泥濘でも滑らない深い溝、詰まった泥を排出しやすい溝のパターン、岩場の小さな足がかりでも踏ん張りのきくつま先などの各要素を、耐久性と重量とのバランスを考えながら設計していきます。

今回のテストで目立ったのはSalewa MOUNTAIN TRAINER MIDの万能さ。岩場での安定性を重視しつつ、泥や雪などの悪路にも強いビブラム製ソールVibram Alpine Approachは、足を置いたときのブレーキ感、踏み出すときの踏ん張り・安定感共に抜群。靴が違うだけでこれほど歩き易さが違うのかと思わせてくれる完成度でした。一方、今回のなかで最も硬いソールをもつGarmont RAMBLERは、オーソドックスな形状ながらも悪路や急斜面での安定感が秀逸。その他Arc’teryx Bora2 Midは、柔らかめのソールがともするとグリップ力を損ねるのではと思いがちですが、随所で計算された独自のソールパターンにより岩場から木道まで、幅広いシチュエーションでの高いグリップ力を発揮してくれました。

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悪路でも優れたグリップを見せてくれたのは左から Salewa MOUNTAIN TRAINER MID、Garmont RAMBLER、Arc’teryx Bora2 Mid。

安定性

どれだけ足の形にフィットする靴を選んだとしても、歩いたときでも足が靴の中でしっかり固定されるかどうか、足首のサポート力と可動性のバランスといった、履いた瞬間のフィット感を長時間の歩行中でも維持し続けられる能力(=安定性)は、靴の構造(特に踵から足首にかけての構造)によって違ってくるものです。ここで何をおいてもまず声を大にして言いたいのは、Garmont RAMBLERの際だって優れた心地よさとサポート力をもった踵の収まり具合。足を入れた瞬間、踵を心地よく挟み込む踵から足首にかけてのラグジュアリーな感触が、歩き始めて縦横に力が加わってもブレることなく、非常に安定した歩行を続けさせてくれます。逆にSIRIO P.F.430はグリップもフィット感もそこそこにあるのですが、かかとのホールドが甘く、靴の中でのブレが無視できないくらいに感じられてしまいます(足型が合わないだけとう可能性もあり得ますが)。

耐久性

長もちするかということ以外の、摩擦や引裂きに対する強度や外からの圧力に対する剛性などはGarmont RAMBLERSIRIO P.F.430が強いという印象。ただ他のモデルがそこまで弱いかというとそういうことでもなく、あくまでも相対的な順位として上の2つが頭ひとつ抜けていただけで、どれも耐久性は十分といえるでしょう。

重量

「靴の100g は荷物の500g に相当する」なんて言葉があるくらい、トレッキングシューズの重量は他のギア以上に気を遣いたいもの。最も軽量なのはSIRIO P.F.430。ただ、飛び抜けて軽さを実感できたかというと、実際のところ、実感として最も足の運びが軽快に感じられたのはArc’teryx Bora2 Mid。靴自体が軽いことは確かに重要ではありますが、数十グラムの差であればしっかりフィット性の高い靴の方が足にかかる荷重がより均等に分散され、結果として重さを感じにくくなるということも忘れてはいけません。

今回の比較まとめ:「おすすめ中のおすすめ」はこれだ

適度なフィット感と高いグリップ、テクニカルな地形にも強いプロ仕様:
Salewa MOUNTAIN TRAINER MID GORE-TEX

1935年ドイツで生まれ、イタリアで育った老舗は、日本ではあまりなじみのない名前かもしれませんが、実は斬新なデザインと新しい技術に常に貪欲な曲者。最近日本法人が設立されたこともあり、これから注目のメーカーでもあります。水道橋のアウトドアショップで見かけたコイツはアプローチシューズの軽快さ・グリップ力と、アルパインブーツ的な安定性と保護性能を併せもった、この上なくバランスの良いトレッキングシューズでした。一般的な登山道も、テクニカルな岩場もまったく苦にせず、長期間の歩行でも疲れにくい。デザインもなかなか(イタリアらしい?)で、今のところ欠点が見当たりません。意外とスッキリしたフォルムは高尾山登山から槍ヶ岳まで、違和感なく溶け込んでくれるでしょう。

信頼の堅牢性と至高のフィット感は万人におすすめ:
Garmont RAMBLER GTX

銀座の某ショップにてピックアップ。最近の流行である「軽さ」とか「通気性」とか微塵も言わずに、ひたすら従来の登山靴に求められてきた要素である耐久性や重荷・悪路での安定性、そしてもちろん履き心地のよさをまっすぐ進化させていったのがガルモント。何よりもその安心感が飛び抜けていて、ちょっとレベルの高い山にチャレンジしようとするすべての人に自信をもっておすすめできます。その安心感はきっと履いた瞬間の”踵”で感じられるはず!

ただ、一度本国で倒産騒ぎがあったようで日本での取り扱いが来期以降、見えてなです(アメリカでの展示会では来季モデルを出展してましたので、どこかが経営を引き継いでいるようですが、詳細は不明です)。

快適・軽快なスピードハイカーのための本格トレッキングシューズ:
Arc’teryx Bora2 Mid GTX ミッドハイキングブーツ

アークテリクスのシューズ参入第一弾は、取り外し可能な二重構造、シュータンレス、カスタムソールパターンなど、隅々まで新機軸が盛り込まれたまさに意欲作。コロンブスの卵的なアプローチに、はじめは胡散臭くもあり、価格も高いしで敬遠していましたが、履いてみて納得。この上なく快適なフィット感と通気性は、一度味わってしまうと他の靴に移れなくなるくらいの中毒性。ある意味非常に危険です。

詳細についてはこちらにてレビューしました。ぜひ参考に。

できる限り客観的な指標をもとに評価したつもりですが、人の足の形、歩き方は千差万別。皆さんの評価も少しずつ違ったものになると思います。かように運命の一足との出会いは決して簡単な道ではありませんが、今回のレポートが少しでも参考になれば幸いかと。

最後に、今回あまり言及していないVASQUE St. Elias GTXも決して悪い靴ではないということを言わせてください。オールレザーにもかかわらず最初から足になじみ、平地歩きでも疲れにくい柔らかいソール、それでいて本格的な縦走も十分こなせる高い剛性とグリップは非常に使い勝手良し。どちらかというと低山歩きが多く、しかも革の感触や風合いが好みの人ならむしろこちらの方が満足できるハズ!?

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