arata ASP-R5 / R8レビュー:軽さ・断熱性・寝心地のバランスが半端ない。バリエーションの多さと価格もうれしい秀逸エアマットレス
登山用のマットレスは軽ければいいというものではないことは皆さんもご存じの通り。地面の冷たさを遮る断熱性も高い方がいいし、寝心地だって大切。そしてもちろん価格も。そのどれもが微妙にトレードオフの関係性になっているところが、スリーピングバッグ選びの悩ましいところだったりします。
そんなマットレス界隈に、Outdoor Gearzineではおなじみ日本アウトドア界の異端児、arataから、新作「ASP-R5」と「ASP-R8」が今シーズン届けられました。
前作(併売中)の「R7」では驚きの高断熱性能で注目を集めた「ASPシリーズ」ですが、今作では断熱性(R値)と重量、そして寝心地のバランスのさらなる高みを目指して基本構造から見直され、R値5.6(-20℃対応)の「ASP-R5」と、R値8.5(-40℃対応)の「ASP-R8」という2つのモデルを展開しています。
早速7~10月のフィールドで試してきたので、寒くなるこれからの季節に備えてこのマットの実力がいかほどなのか、実践レビューしていきたいと思います。

arata ASP-R5 / R8 エアマットレスの主な特徴
ASP-R5およびASP-R8は、内部に熱線を反射するコーティングが施されたPETフィルムの多層構造を採用し、内部の空気の対流を妨げつつ熱線を反射することで、軽量でありながら極めて高い断熱性を実現したエアマットレスです。厚さは両モデルとも9.5cmに設定されており、地面の凹凸をしっかりと吸収。厳しい素材設計によって高い耐圧性能を備えた軽くても丈夫な生地を採用し、さらに特筆すべきはレギュラーモデルの横幅が58cmに設定されていることで就寝中の腕落ちを防ぎ、快適さと実用的な軽さを両立しています。サイズが従来のレギュラー、マミー型に加えて「ショートやエクストラショート」といった、体格や用途に合わせた細やかなサイズ展開が用意されているのも特徴。導入しやすい価格設定となっている点も大きな魅力です。
お気に入りポイント
- R値5.6(ASP-R5)および8.5(ASP-R8)という、3シーズン・冬用とそれぞれに必要十分な断熱性能
- トップブランドに引けを取らない軽さ
- 十分な厚みとR7に比べてバウンド感の少なくなった快適なクッション性
- 横幅58cm(レギュラーモデル)の絶妙な横幅サイズが生む寝心地の良さ
- 海外のハイエンドモデルに匹敵する性能ながら、手の届きやすい価格設定
- シンプルで操作性も高く出っ張りも少ない新型バルブ
気になるポイント
- 20Dナイロンは実用十分な強度を持つが、岩場などの荒れた地面での直敷きには注意が必要
- 個人的にはエクストラショートに58cmの横幅があると軽量派にとってさらにベストなバランスだったように思う
- 付属のポンプサックは使いやすい反面、意外と嵩張る(別売の軽量ポンプなどの検討をおすすめ)
主なスペックと評価
| アイテム名 | arata ASP-R5 | arata ASP-R8 |
|---|---|---|
| サイズ | レギュラー:183 x 58 x 9.5 cm レギュラーショート:168 x 51 x 9.5 cm レギュラーエクストラショート:105 x 51 x 9.5 cm マミー:183 x 51 x 9.5 cm | レギュラー:183 x 58 x 9.5 cm レギュラーショート:168 x 51 x 9.5 cm マミー:183 x 51 x 9.5 cm |
| 収納サイズ | レギュラー:φ11x 24cm レギュラーショート:φ10 x 21cm レギュラーエクストラショート:φ8 x 21cm マミー:φ10 x 22cm | レギュラー:φ11x 24cm レギュラーショート:φ10 x 21cm マミー:φ10 x 22cm |
| マット厚さ | 9.5cm | 9.5cm |
| 重量 | レギュラー:460g レギュラーショート:355g レギュラーエクストラショート:230g マミー:370g | レギュラー:515g レギュラーショート:400g マミー:420g |
| 表面素材 | 20Dナイロン | 20Dナイロン |
| 断熱素材 | 熱線を反射するコーティングが施されたPETフィルムの2レイヤー構造 | 熱線を反射するコーティングが施されたPETフィルムの4レイヤー構造 |
| R値 | 5.6 | 8.5 |
| 季節対応 | 4シーズン | 4シーズン |
| 付属品 | 収納袋 ポンプサック リペアパッチ×2 | 収納袋 ポンプサック リペアパッチ×2 |
| Outdoor Gearzine評価 | ||
| 快適性 | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 断熱性 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 重量 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| 収納性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 使い勝手 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| 耐久性 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| 汎用性 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
詳細レビュー
断熱性:3シーズンのハイクから厳冬期登山まで、アクティティや季節に合わせてマッチする2タイプ

ここ最近のエアマットレス市場は「断熱力のインフレ」とでもいうべき状況が訪れていて、さまざまなブランドから出る新製品はこれまで考えられなかった高い数値のモデルが登場しています。そんなわけでこの新作マットレスの「R値8.5(ASP-R8)」にも驚かなくなっている自分がいるのですが、冷静に考えてこの数値はありえないほど高いものであることは言うまでもありません。厳冬期の冬山も想定されたこの優れた断熱性によって、地面が冷え込む秋口のテント場では当然のことながら、背中から体温が奪われる感覚はまったくありませんでした。
この高い断熱性の秘密は、内部で多層に設置された熱線反射フィルムにあります。そもそもマットレスの断熱性を上げるために必要なのは内部の空気がなるべく動かないようにする(対流させない)ことと、自分の体から発せられる輻射熱をフル活用することです。ASP-R5/8 シリーズではこの熱線反射フィルムがマット内部の空気の対流を起きにくくし、さらに体温を適切に反射して保温力を底上げしてくれるよう働いてくれます。
かつてはマット内部に断熱材を封入することで対流を抑えてデッドエアを溜める仕組みもありましたが、その場合どうしても重量と嵩張りに限界が出てきます。その点このフィルム方式は断熱性を高めるだけでなく、重量を抑えることにも貢献しており、だからこその「軽量・高断熱」なわけです。ちなみに内部のフィルムが多ければ多いほど高いR値をたたき出すようなのですが、断熱性と重量の絶妙なバランスを考えた結果、国内の3シーズンから軽い雪山までを含んだシーズンに対応する「R5」には2枚、「R8」には4枚挿入されています。
快適性:地面の凹凸を十分に吸収してくれる十分な厚みと広い肩幅もカバーする十分な横幅
表面の形状は前モデルのR7のように無数のドット状の小さな気室で構成されたものではなく、よりフラットで凸凹の少ない横方向のチューブ型になっており、より凸凹感が減って寝心地の向上、また溶着部分のトラブルの減少、軽量化などさまざまなメリットが生まれました。さらに以前までのフィルム構造モデルにありがちな、マットに乗ったときに生じるカサカサとしたノイズも抑えられており、静寂な環境での安眠を妨げません。

また9.5cmの厚みは横向きに寝た際にも肩や腰が底付きする感覚がなく、よほど凹凸した不整地でも安心して体を預けることができます。ただここまで分厚いとエアマット特有のフワフワ感はあるので、エアマット自体が好みでない人にとっては相変わらず気になるかもしれません(その点サーマレスト ネオロフトの寝心地はエアマットにもかかわらず別格)。

特に嬉しいのは、レギュラーモデルに採用されている「横幅58cm」という仕様です。

海外製マットの標準的なレギュラーサイズ(約51cm)では腕が落ちやすく、ラージサイズ(約64cm)ではテント内の空間を圧迫しがち。前モデル(R7)は56cmでしたが、さらに伸ばした今回の58cmという幅は、寝返りのしやすさとスペース効率を両立している個人的にはちょうどいい幅だと思いました。

しかし、できることならばこの58cmをすべてのモデルに共通させてほしかった。個人的にはR5の最軽量モデル「エクストラショート型」が58cmだったらどんなに良かっただろう!夏のファストパッキングや沢登りで、軽量化を図りながらもぬくぬくと快眠が得られる唯一無二の超軽量マットレスに間違いなくなったはずです。
重量・コンパクトさ:これだけ高断熱・快適なのに携帯性もスグレモノ

ASP-R5のマミー型で370g、エクストラショートならなんと230g。厳冬期仕様のASP-R8のレギュラーでも515gという重量は、老舗専門ブランドの同等R値を持つモデルと比較しても遜色のない重量です。
特にエクストラショートは収納時のコンパクトさも出色の出来で、中身だけなら500mlペットボトル程度。軽さを最優先しつつ十分な寝心地を実現するかつてない良バランスに感動ものでした。

極端に素材を削るのではなく、十分な厚みと断熱層を確保した上でここまでの軽量コンパクトさを実現している点は高く評価できます。に収まり、かさばりやすい冬期装備のパッキングにおいて大きなアドバンテージとなります。
使い勝手・機能性:
空気の注入と排出が1口で可能な一体型のフラットバルブは、前モデルに比べてサイズや形状が見直されて構造がシンプルになり、軽量化が図られていました。裏側というよりも角っこに付いているので圧力調節などもしやすく、またグローブを着用した寒冷地での操作性も向上しているといえます。

バルブの口ははじめからワンウェイタイプになっており、注入する際には空気を流し込むだけ。ドライバッグとしても利用可能な付属のポンプサックを使えばスムーズに空気を充填できます。

ただこのポンプサック、約80gの重量と嵩張りがネックで、個人的にはオプションで販売されている28gの電動ポンプ「AirPump」を使用するのがスマート。他社のマットレスや浮き輪などにも使用できるので、一つ持っているといろいろと便利です。


空気を抜く際にはバルブの内蓋を押し開けるか、引き出して固定しておくことで、一気に空気が抜けるようになっています。原始的といえば原始的だけど、十分機能しています。

耐久性:軽量モデルなりの慎重な扱いは求められるが、高い耐圧性で満足のいく品質は確保されている
表裏の生地には手触りのしなやかな20デニールのナイロンを採用しています。どちらかというと耐久性というよりは軽量性に振った素材で、基本的には薄手であるため、テント外の岩場などでの直敷きは避けるのが無難です。ただ、今回のマットは数千回に及ぶ高圧サイクルテストをクリアしたという高い耐圧性能を備えており、マットレスのトラブルの中でも最も多いと言われる「圧力によるパンク」に対しては非常に強いといいます。テストでは無理に圧力をかけたわけではありませんが、心配するような場面はありませんでした。もちろん万が一のパンクに備えて実用的な5cm角の大型リペアシートが2枚付属しているので、フィールドでもまずは安心です。
まとめ:軽さ・断熱性・快適さ・価格・バリエーションの多さ。総合的なバランスの高さで、きっとハマる人は多いはず(個人的にはエクストラショートが神ってる)
近年、軽量化を重視するハイカーの間で、背面側の保温材を省いた「キルト型スリーピングバッグ」の人気が台頭してきています。ただこのシステムは背面の断熱を完全にマットに依存するため、冬期や高所での底冷えをどうカバーするかが重要です。ASP-R5 / R8 をテストしながら、個人的にこのマットはキルト型に合わせるマットとしてかなりフィットすると直感しました。重量を切り詰めつつできる限り高いR値を求め、さらにはサイズもギリギリまで切り詰めたい。そして価格をできる限り安く収めたい。そんな「キルト型スリーピングバッグ使いハイカー」のポテンシャルを最大限に引き出すための優れた選択肢となるに違いありません。
特に個人的には「5.6」という高い断熱性と「230g」という異次元の軽さ・コンパクトさを兼ね備えた「ASP-R5 エクストラショート」はこの夏の山行で大活躍。今では(横幅が51cmなところだけは除いて)手放せないお気に入りになりました。そしてこの先の冬に向けては横幅58cmの「ASP-R8 レギュラー」を使うのが楽しみです。
もちろん、アルプスの厳冬期登山など寒さの厳しい山岳で十分な保温性を確保したい雪山登山者にも適しています。
確かな断熱スペック、日本人の体格やテントサイズに寄り添った設計、そして導入しやすい価格。ASP-R5 / R8 は、就寝時の寒さに悩むハイカーにとっての新たな選択肢として非常に完成度の高いエアマットレスといえそうです。
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