Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

Review:SALOMON X ULTRA 3 GORE-TEX® 快適から「ド快適」へと進化した定番ハイキングシューズを新旧モデル比較してみた

これまでの登山靴から一度も感じたことのなかった柔らかい履き心地──。2年前、はじめてSALOMON X ULTRA 2に足を入れた瞬間のことは今でも覚えています。シューズ周りが保護された、いわゆる登山靴であることは見た目から明らかなのですが、履いてすぐ感じられるアッパーの包み込むようなフィット感と柔らかい履き心地はまさにランニングシューズのそれでした。

そんな同ブランドの定番快適ハイキングシューズが今シーズン全面的にリニューアル。第三世代となる最新モデルX ULTRA 3 GORE-TEX®が登場しました。

最新バージョンがどれだけ進化したのか新旧比較チェック

あの忘れがたいほどのフィット感は最新バージョンでどう変わったのか。そこが楽しみなのはもちろんですが、それに加えて前作で感じていたこのシューズの苦手部分がどれだけ克服されているのかもチェックしておきたいところ。唯一無二の特長を備えた一足だけに、立派に育っていて欲しい。ここまでくると期待と不安で我が子を見守る父親状態です。

そこで今回はこのシューズを、これまで履いていたX ULTRA 2と新旧比較しながら、典型的なハイキングコースをはじめできる限り厳しいコンディションのなかも歩いてみて、そのインプレッションをレポートしていきたいと思います。

例によって今回のレビューは実際にフィールドで試用したインプレッションをはじめ、SALOMON製品担当者へのインタビューにより、メーカー・ユーザー両面の情報によってできる限り多面的に解説していきます。

目次

X ULTRA 3 GORE-TEX®の大まかな特徴

ハイキングなどで長い距離をより気持ちよく歩きたければ、靴は軽く、柔らかい方がいいことは言うまでもありません。とはいえ荷物を背負って不整地を歩くためにはある程度の堅牢性が不可欠なことも確かです。登山靴としての強さを備えながら、スニーカー並みの歩きやすさを実現し、ひたすら長い距離を、どこまでも快適に歩けるシューズはないものか。研究開発の末2012年に生まれたのがSALOMONX ULTRAシリーズです。

自分は前モデルを使いはじめてから2年ほどの経ちますが、長時間履き続けても疲れを感じさせない快適な履き心地から、近郊の日帰りハイキングをはじめキャンプなどのライトなアウトドアでもかなりお世話になっています。

第三世代となった今作は、同ブランドが長年培ってきた独自のアッパー構造「SensiFit™」をはじめとした細部の改善によって抜群のフィット感がさらに向上しました。アッパーパネル、ミッドソールに内蔵されたシャーシ、そしてアウトソールが一体化した最新技術「ディセントコントロール」によってヒールのホールド力が向上し、安定性もさらにアップ。アウトソールのヒール部分には新たにブレーキ性能を高める特殊なパターンを採用し快適に山道を駆け下りることを可能にします。より完成度の高まった新しいX ULTRA 3 GORE-TEX®は、長いトレイルを快適に歩くために必要な機能をバランスよく詰め込んだ、同ブランドにおける不動の定番ハイキングシューズです。

主なスペックと評価

項目 スペック・評価
重量 380g
アッパー生地 耐水性テキスタイル、防水合成素材
アウトソール High Traction Contagrip®
防水 GORE-TEX®メンブレン
快適性 ★★★★★
重量 ★★★☆☆
グリップ ★★★☆☆
プロテクション ★★★★☆
安定性 ★★★★☆
総合点 ★★★★☆

何がどう変わった?詳細比較レビュー

このシューズはヨーロッパを代表する165kmのロングトレイル、TMB(ツールドモンブラン)を快適に歩くというコンセプトで開発されたといいます。ならばテストはできる限りそれに即したコースの方がこのシューズの良さを引き出せるのではないか。さらに、湿った路面や樹林帯など、日本の低山特有の自然要素を加味した上で試すことができればより信頼度の高いテストができるというものです。

こんなわがままな要望に応えてくれ、なおかつ東京から日帰りが可能な試し履きルートが、ありました。相模湾から東京湾へ全長約10kmにわたって三浦半島の内陸に連なる山々を横断するルート、通称「三浦アルプス」です。

あいにく前夜から当日昼まとまった雨が降り続いたため、ルートは絶好の悪コンディションとなっています。ということで、さっそくこのコースでX ULTRA 3 GORE-TEX®(以下X ULTRA 3)を試し履き、さらにはX ULTRA 2 GORE-TEX®(以下X ULTRA 2)を左右同時に履き比べるなどしながら違いをチェックしてみます。

アッパーの違い:フィット&快適性がさらに進化

まずはすぐに目に飛び込んでくるアッパー(外観)の違いを見ていきます。基本的な素材感・デザインはほとんど変わりなく、一見するとほとんど違いがないようですが、細かく見ていくとどんどん違いが分かってきます。そして重要なのは、それらによってこれまでこのモデルの長所であったフィット性の高さと柔軟な足あたりがさらに進化し、おまけに軽量化までしているという点です。

例えば正面のシューレースホールは、前モデル(下写真左)に比べて4列から5列へと増加し、さらに金属パーツは削減されました(下写真右)。足を靴底から隙間なく包み込むように締め上げるサロモン独自のアッパー構造「SensiFit™」がより密になったことで、ホールド感の向上は明らかです。ローカットモデルに採用されている、おなじみのシューレースシステム「クイックレース」も均一な締め上げによって高いフィット感に寄与し、締めやすさも相変わらずです。

もうひとつ大きなポイントは、今回のアップデートによりアッパーパネルが縫製(下写真上段)から圧着(下写真下段)になったことです。より薄い素材でなおかつ縫い目がなくなったことによってアッパーはさらに柔軟に、そして結果的に軽量化も実現されています。

さらにこれはさすがに直接実感するまではいかなかったのですが、メーカーによればトゥキャップも形状が変更されたことにより、プロテクション性能はそのままに軽量化と柔軟性(=フィット感)の向上に繋がっているといいます。

ソールの違い:悪路での安定性&グリップ力が進化

ここからは三浦アルプスを実際に走破したときに感じた細かいインプレッションについて書いていきます。

しばらく歩いてみて真っ先に感じたのはX ULTRA 3の高い柔軟性と着地での安定感。つま先で強く地面を蹴り出すように歩いても前足部は柔軟に曲がり、踵も浮いたりせず、靴全体が足の動きに追随してくれる感覚を味わえました。さらに踵で強めに着地してもブレにくい。よりスニーカーで歩いているような一体感に近づいた気がします。前モデルでも相当柔軟性の高いシューズであったのはずなのに、両方を同時に履いて歩いてみると前モデルの方が微かですが硬さが確かに感じられてしまいます。

三浦アルプスは200m程度の低山だがアップダウンが連続し、砂利・泥・木の根・露出した岩等の多様な地形、さらに見通しの悪い密林が続く。途中で「アルプス詐欺!」と叫びたくなった。

これには何より先述したアッパーのフィット感・柔軟性向上が影響しているのは確かです。さらに取材で分かったのは、今回のX ULTRA 3から採用された「ディセントコントロール」というソールの一体化技術の進化。トレイルランニングの技術が応用されているというこの仕組みではアッパー、ミッドソール、シャシー、アウトソールが一体化して連動性を高めることでネジレを制御し、荷重が大きくなる下りでの安定性を特に高めています。

下りの安定という意味では、X ULTRA 3ではソールパターンにもうひとつの大きな変化が。下はヒール部分のソールパターンを比較した写真ですが、今回のモデル(下写真左)には前モデル(下写真右)にはなかった横方向の溝が大々的に追加されています。これが踵で強く着地したときでもグリップ力を高め、下りはさらに安定します。トレイルランニングシューズでよく見られる構造です。

外周と内側で異なる配合の素材を駆使し、グリップ力とクッション性を両立したソール「High Traction Contagrip®」は、X ULTRA 3から中心周りのラグ間隔が少し広くなっています(下写真左)。これによって特に土・泥への食い込みと排出がスムーズになり、悪路でのグリップ力がやや向上しています。

過信は禁物!?相変わらず濡れた岩場はちょっと苦手

オフロード全般での安定したグリップや歩きやすさなど、オールラウンドな性能を重視した結果、濡れた岩場でのグリップ力に関しては、そのシチュエーションに強いソール(同ブランドの「Contagrip® Premium Wet Traction」やvibram社の「MEGAGRIP」など)と比べるとさほど高くありません。岩場の多いルートへ積極的に向かう人にとっては悩ましいところです。いずれにせよ濡れた岩場では、通常の路面と同じノリで強くつま先で蹴り出したり、踵で勢いよく着地しようとするとスリップしがちですので、足裏全体をフラットにして慎重な足運びをする必要があります。

写真の岩はまだ粒子が荒い方なのでそこまで危険ではなかったが、すべすべした岩が濡れていると足取りも緊張する。

ラインナップの違い:多様なニーズ・足型・性別にきめ細かく対応

足首が不安な人にうれしいミッドカットモデル

もちろん今回のモデルも、ローカットモデルに加えて足首をより保護したい人のためのミッドカットモデルが揃っています。ミッドカットモデルではクイックシューが紐締めである部分以外、ほぼ同じ構造です。重量と引き換えに足首のサポート力は高くなりますが、歩きやすさという点では基本的に変わりません。

日本人の足型から新設計したワイドモデル

またミッドカットモデルのみ、今回のモデルから足型が幅広のタイプX ULTRA 3 WIDE MID GORE-TEX®も追加されました。これが実は今回のアップデートでの大きな目玉のひとつ。というのもこのワイドモデル、単にノーマルの足型を広くしたというのではなく、本国フランスからシューズ職人が来日し、日本人の足型データに基づいてこのためだけにゼロから新たに作り上げたラスト(足型)を使用しています。さらに日本人テスターによるフィードバックもしっかりと取り入れているといいますから、もしかすると日本人であるぼくたちは最初からこちらを基準にサイズを合わせていった方がフィットするのかもしれません。

解剖学的構造からパーツが特別設計された女性用モデル

ウィメンズモデルもメンズモデルと同様のラインナップが用意されています。実はこの女性モデルも単なるスケールダウンというのではなく、女性の解剖学的構造に対応するよう、各パーツを特別設計したつくりになっています。

まとめ:こんな人におすすめ

あれだけ感動したアッパーのフィット感がさらに進化していたことにまず驚きでした。シューズ全体で柔軟性と安定性がバランスよく向上しています。長い距離での疲れにくさを意識した作りは足運びをより軽やかにし、のんびり歩いたり、時には軽快に駆け下ったりとを純粋に楽しむことができます。

軽めの荷物を背負って森林限界あたりまでの山々であればアップダウンもものともしない快適な歩行を約束してくれるでしょう。日常靴からの延長感覚で履けることから、初めての一足にも最適なシューズです。

濡れた岩場などに対してはやや苦手なのでそこはやや注意は必要ですが、ハイキング・キャンプ・旅行など、そこまでハードではないシチュエーションで長い時間歩くすべてのアクティビティに最適な一足といえそうです。また今回はフィッティングの際にはぜひワイドモデルでも試してみることをおすすめします。

製品の詳細について、問い合わせ等はSALOMON公式サイトもあわせてご確認ください。

モバイルバージョンを終了