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SALOMON X ULTRA ALPINE GORE-TEXレビュー:アルプスの稜線を軽快に歩く、タフネスと安定感を備えた快適ハイキングシューズ

極上のフィット感とトレイルでの歩きやすさ・疲れにくさで多くのファンから愛され続けるサロモンのハイキングシューズ、X ULTRAシリーズから、また興味深い新作が登場しました。この秋冬シーズンにリリースされたX ULTRA ALPINE GORE-TEX は、X ULTRAシリーズの快適な歩き心地はそのままに、タフな地形にも対応する堅牢さと安定したサポートを実現したアルパイン・アドベンチャー対応のハイキングシューズ。

早速この夏中央アルプスをこのシューズで歩いてみたので、特徴や実際に履いてみてのインプレッションをお届けしていきたいと思います。

SALOMON X ULTRA ALPINE GORE-TEXの主な特徴

サロモンの人気ハイキングシューズ X ULTRAシリーズの最新モデル X ULTRA ALPINE GORE-TEX(以下X ULTRA ALPINE)は、平易なトレイルだけでなくアルプスの厳しいトレイルまでを軽快に歩くためにデザインされたハイキングシューズ。ヌバックレザーとつま先のラバー補強による堅牢なアッパー、前足部を支える新たなシャーシ構造「Edging Chassis テクノロジー」、衝撃吸収力に優れた「EnergyCell™」搭載のミッドソール、サロモン史上最も粘着性の高いラバーコンパウンドによって構成された「Alpine Contagrip®」のアウトソールなど、滑りやすく不安定な岩場でもブレずに安定した足運びを可能にし、長時間の歩行をより疲れにくく快適にサポートします。タフでテクニカルな地形での登山やハイキングはもちろん、高いサポート力や堅牢性を犠牲にすることなく快適さと俊敏さを備えたハイキングシューズを求る人にも最適です。

おすすめポイント

  • 優れたフリクションで岩場でも安定したグリップ力と踏み込みやすさを備えたアウトソール
  • 歩きやすさと横方向のねじれにくさ(ケガしにくさ)を両立した高いサポート力と安定性
  • ヌバックレザーと厚手ラバー補強による強い衝撃や摩擦に対する堅牢さ
  • 相変わらず優れたフィット感とホールド感・クッション性による快適な履き心地
  • GORE-TEXによる安定の防水透湿性

気になったポイント

  • ソールは柔軟で歩きやすい反面、前足部は(多少硬めとはいえ)岩場での立ち込みに対してはややたわみやすい

主なスペックと評価

項目SALOMON X ULTRA ALPINE GORE-TEX
公式重量420g
ドロップ11mm(トゥ18mm / ヒール 29mm)
アッパー
  • 合成素材/レザー
  • ガセットタン
  • Active Support
  • Quicklace™
ミッドソール
  • Edging Chassis
  • EnergyCell™
アウトソールAlpine Contagrip®
防水透湿GORE-TEX®
Outdoor Gearzine評価
快適性★★★★☆
重量★★★☆☆
グリップ★★★★★
クッション性★★★★☆
プロテクション★★★★★
安定性★★★★★

X ULTRA ALPINE GORE-TEXでアルプスの稜線を縦走してみた

より堅牢なアッパー構造で衝撃や摩擦にも安心

厳しい山岳環境に対応することを想定して設計されたというX ULTRA ALPINEは、まずXAシリーズの中でも特に堅牢なゴツいボディが眼に飛び込んできます。アッパーは厚手の合成繊維と、周囲を覆うしなやかで堅牢なヌバックレザーによって構成されており、さらにつま先部分には分厚いラバーの補強がなされ、衝撃や摩擦に対する強度は本格的な登山靴と比べてもまったく遜色ありません。

厚手の合成繊維とヌバックレザーによって耐久性十分なアッパー生地

つま先は厚手のラバーで補強され、たとえ岩角にぶつけても痛みがなく安心。

事実、今回のテストでは、樹林帯の一般的なトレイルを歩く分にはもちろん、3,000mクラスの稜線に出て、鋭利な岩角につま先が当たっても、岩肌に靴を擦り付けながら鎖場を攀じ登ってもまったく損傷が見られないほどに優れたプロテクションを備えていました。

相変わらず優れたフィット感とホールド感による快適な履き心地

sensifit™の流れをくむ極上のフィット感を生み出すアッパー構造

X ULTRAシリーズといえば、何よりも足に吸い付くようなフィット感が魅力という人は少なくないでしょう。このモデルでもその理想的なフィット感は健在で、今回は甲部分のシューレース上部の可動式ウィング「Active Support」を搭載した「SensiFit™」由来のアッパー構造によって、足全体を包み込むような高いホールド感が歩行中ずっとキープされてくれました。

さらに直感的で素早い操作が可能な「クイックシューレースシステム」と組み合わせることで足全体が均一な圧力で適切に固定されます。その自然でブレずに一歩一歩正確な着地感が得られる感覚は心地よいものでした。

足全体を包み込むようなフィット感が、締めつけ過ぎず緩すぎない快適な履き心地を提供してくれる。

このローカットモデルには素早い操作と緩みにくさでおなじみの「クイックシューレースシステム」が搭載されている。

シュータンとアッパーは一体となっている「ガセットタン」構造はよりフィット感を高め、小石の侵入なども防ぐ。

また足首周り・シュータンに配置されたパッドも、他のモデルと比較して多少クッション性が高い印象。今回やや重めの荷物を背負って長時間歩いていましたが、それでも足回りに擦れや圧迫感を感じることなく過ごすことができました。

足首周りにはクッション性の高いパッドが潤沢に当てられ、肌当たりも良好。

新開発のシャーシ構造「Edging Chassis」は硬く不安定な路面でも安定感抜群、さらにストライドもスムーズ

起伏の激しい不安定な地形でも安定感を保ちながら、同時にハイキングシューズとしての俊敏性と推進力も失わない。言葉にすると簡単ですが、実際に形になっているシューズはあまり見たことがありません。これに対するサロモンのひとつの答えが、今回前足部を支える下部に搭載された「Edging Chassis」です(下写真)。

「Edging Chassis」が縦方向に対してはより推進力を増し、横方向に対しては着地時の横ブレを抑制するように機能する。

Edging Chassis テクノロジーの模式図

これはミッドソールの前足部に搭載されたプレートで、前足部には横方向に数本のスリットが入り、また外側には垂直にフロントウォールが立ち上がった構造になっています(右図)。

これが前足部の屈曲(=縦方向)に対しては踵からつま先までの自然なローリングを可能にしつつ、着地時の左右のブレ(=横方向)に対してはねじり剛性が高まったことによってフロントウォールがサイドをしっかりと支え、衝撃による足の横ブレを最小限に抑えてくれます。

つまり岩場の多い山岳地帯の不安定な路面に対して、着地の際に足がズレたり(もっと深刻な時には捻ったり)することなく安全確実に足を置くことができ、しかもそこからブレずに無駄のない動きで踏み込みへとつなげることができるというわけです。

ミッドソールには高い反発力と衝撃吸収力を兼ね備えた柔軟な「EnergyCell™」が搭載されており、歩いたり、走ったり、岩を飛び越えたりといった強めの衝撃にもしっかりとクッションが効いてくれます。硬い路面の突き上げなどに苦しむこともなく、少々の重荷での長時間の行動でもクッションがヘタることもありませんでした。

ただ、この柔軟性は歩くという点では申し分なかったものの、岩場で立ち込む際にやや硬さ不足を感じる部分もありました(上写真)。通常のハイキングシューズとしては硬めのソールとはいえ、硬いプラスチックのシャンクが入った登山靴と比べれば柔らかいので、重荷で岩稜帯を攀じ登るようなアルパインブーツではない点は理解が必要です。

サロモン史上最も粘着性の高いラバーコンパウンドと計算されたラグパターンによる岩場でも「滑らず、踏み込める」アウトソール

X ULTRA ALPINE は従来とは異なる地形でのパフォーマンスを想定してデザインされていることもあり、アウトソールに採用された素材や構造もシリーズの中で独特の作りとなっています。

まずここで採用されているコンパウンドタイプ「Alpine Contagrip®」は、先行して春夏に発売されている「S/LAB アルパインウェイ」で初披露されたコンパウンドで、サロモン史上最も粘着性の高いラバーコンパウンドが使用されているとか。何よりもまず表面のツルツルとした岩の表面にしっかりとグリップすることを第一に意識されていることが分かります。実際、はじめてこのソールで岩場を歩いて、その岩に吸いつくようなフリクションの高さには驚かされました。

さらに興味深いのがラグパターン。つま先・前足部内側・前足部外側・後足部の4つのエリアでそれぞれ、

  • つま先は細かなホールドを捉えやすく
  • 前足部内側は岩場でのスリップを防ぎ
  • 前足部外側は踏み込み時の力を路面に伝えやすく
  • 後足部は着地時にしっかりと衝撃をコントロールしやすく

と、まったくコンセプトの異なる形状のパターンを組み合わせることで、岩場を含めた多様な地形でのアクションに対して最適なパフォーマンスを提供するようなデザインです(上写真)。この計算されたラグパターンによって、特に足の置き方を意識しなくても、自然と着地時には滑りにくく、踏み込めば地面を蹴ってくれ、登攀時にはホールドを捉えることができました。

この複雑に配置されたラグパターンのおかげで、高山地帯のトレイルを安全・快適に「歩く・走る・登る・下る」ことが、ここまで程よいバランスで実現されているという感触は今までにないものでした。テクニカルな岩場での安定感といったアプローチシューズ的な性格と、多様なオフロードで足を自然に前へと向かわせてくれるハイキングシューズ的な側面とが高いレベルで両立されたサロモンならではの高次元のバランスは、このシューズのユニークな魅力であるといえそうです。

GORE-TEX防水透湿機能によって、ぬかるんだトレイルや沢筋の渡渉でも靴の中に水が入る心配はなし。

まとめ:テクニカルな地形での軽量登山やハイキングに、あるいは安定感と堅牢性を犠牲にすることなく快適で俊敏なハイキングシューズを求める人に。

森林限界を越えた高地でのハイキングでは、砂利や岩などの凸凹で滑りやすい路面での安定性が求められます。これまでは安定性を高めようとするとどうしても硬くてゴツくなりがちで、その代わりに快適な歩行で大切な軽快さと柔軟性を犠牲にしなければならないことが多くありました。その点、このシューズはそこから一歩進んで安定感と堅牢性を犠牲にすることなく快適さと俊敏さを両立した、新しい魅力を備えたアルパイン・ハイキングシューズといえます。

テクニカルな岩場を軽快に歩けるシューズという意味では、いわゆる「アプローチシューズ」というものがありますが、確かにこのシューズの感覚はそれと近いものがあります。ただアプローチシューズとして考えると、(この後お話しするアウトソールの構造にも言えることですが)このモデルはもっと歩くときの俊敏性と快適性に優れており、ランニングシューズの技術に長けたサロモンならではの歩く楽しさ・心地よさを感じることができました。

ちなみに今回このシューズで歩いた中央アルプス(千畳敷~木曽駒ケ岳~空木岳)は、宝剣岳への一部の鎖場では多少チャレンジングな部分も無くはなかったものの、おおむねこのシューズで歩くにはピッタリのルートでした。特に八丁坂を登ってから広がる木曽駒ケ岳までの3,000m級の広い稜線歩きは、初心者でもすぐにアルパインの絶景が楽しめるおすすめルート。そんな従来の X ULTRAシリーズでは届きにくかったアルプスへの扉を開いてくれるのがこの X ULTRA ALPINE GORE-TEXです。足場の不安定な山岳でのハイキングを楽しみたい人から、堅牢さと軽快さをどちらも捨てたくないタフなハイカーまで対応する非常に完成度の高いハイキングシューズは、マイルドな低山から険しいアルプスまで、日本の多様な地形を軽快に歩くための新しい選択肢になるだろうと確信しました。

なお、X ULTRA ALPINE GORE-TEX には今回のローカットモデルの他にミッドカットモデルもあるので、より重荷でのサポート性を重視したり、ケガしにくさや安心感を求めるならば、ミッドカットを選ぶことを強くおすすめします。

「SALOMON X ULTRA ALPINE GORE-TEX」の詳細と購入について

最新モデルの入荷情報や製品の詳細については公式通販サイトをご確認ください。