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【軽くて小さいはアウトドアでの絶対正義!】「OM SYSTEM OM-1」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」で2日連続「白雲山」と「東ヌプカウシヌプリ」でナキウサギを撮ってきた

フォトグラファーライター齋藤千歳です。まもなく3歳になる息子と妻、家族3人で北海道の絶景や野生動物の姿などを撮影するためにキャンピングカーでの旅行を中心にアウトドアライフを楽しんでいます。

そんな筆者が仕事用にデジタル一眼レフを導入したのは、2000年くらいなので、もうすでに四半世紀の時間が経っています。その間に多くのカメラの常識が変化しています。先日数年ぶりにマイクロフォーサーズ規格のOM SYSTEMをメイン機材として1,200m級の山「白雲山」と「東ヌプカウシヌプリ」を2日続けて登り、それぞれのガレ場で準絶滅危惧種の「ナキウサギ」を撮影してきました。軽くて小さくて、堅牢なOM SYSTEMでの撮影が予想以上に快適だったので、ぜひみなさんにその様子をお伝えしたいと思います。

マイクロフォーサーズ規格のOM SYSTEMとは?

35mm判フルサイズの約1/4サイズの撮像素子を採用したマイクロフォーサーズ規格。カメラシステム全体がコンパクトで軽量なのが大きな魅力です。

軽量コンパクトで堅牢・アウトドアに最適なOM SYSTEMのカメラシステム

自分のアウトドアでの活動の様子を撮影し、記録しておきたいと考え、本格的なカメラに興味をもったことのある方なら、大部分の方が耳にしたことがあるであろう高性能デジタルカメラの代名詞的なフレーズがフルサイズや35mm判フルサイズという言葉ではないでしょうか? 要は撮像素子のサイズが35mm判フルサイズと呼ばれる約36×24mmというサイズで一般的なスマートフォンやデジタルカメラのなかでも大きなセンサーを使っているので、解像力などを高くしやすく、高性能なものが多く、プロ用の大部分がこの規格を採用しているのでレンズ交換式のデジタルカメラのなかでも高性能なカテゴリーといえます。

レンズの性能テストやレビューなどをライフワーク的に行っている筆者は当然、この35mm判フルサイズに対応したカメラシステムを使っているのですが、残念ながら重くて、大きくて高いという弱点があります。単純にいうなら35mm判フルサイズと比較すると、今回紹介するマイクロフォーサーズ規格を採用したOM SYSTEMの「OM SYSTEM OM-1」では撮像素子のサイズ(面積)が約1/4。マイクロフォーサーズ規格の撮像素子は35mm判フルサイズ規格の約1/4です。

撮像素子が大きいと、画素数(画像の解像度)を増やしても1画素あたりのサイズが小さくなりずらいのでS/N(※)がいい、すなわち画質が良いとか、センサー感度を上げてもノイズが出づらいとか、デジタルカメラの非常に基本的な性能を上げるためにプラスの効果が多く得られます。そのため、多くのプロ機、高級機がこぞってセンサーサイズの大きな35mm判フルサイズを採用しているのですが、弊害もあります。センサーサイズは基本的に面積なので2乗で影響しますが、カメラやレンズもこのサイズに合わせて設計する必要があるのでサイズ(体積)に3乗で影響してくるわけです。

※S/N(比)・・・信号とノイズの比のこと。この値が高いほどきれいな画像が得られ、暗いシーンでも画質の劣化が少なくて済む。

デジタルカメラの黎明期などには、より高画質を追求するために大きなセンサーは圧倒的に優位といえます。ですが、筆者がレンズ交換式デジタル一眼カメラをはじめて導入した25年ほど前には300万画素程度だったデジタルカメラの画素数は現在35mm判フルサイズの多画素モデルなどは6000万画素を超える高性能モデルラインアップされており、WEBでの記事を主体に執筆している筆者などは35mm判フルサイズのカメラのセンサーをひとまわり小さなAPSーCの範囲に制限して使うクロップなどで画素数を抑えて使っていることも珍しくありません。

実は筆者も登場当初などは35mm判フルサイズの約1/4しかないセンサーサイズで画質的に大丈夫なの? などと思っていたマイクロフォーサーズ規格ですが、ある意味でデジタルカメラの画質が一般ユーザーにとって成熟期といえる今、逆に注目すべきカメラ規格といえます。

なかでもOM SYSTEMのカメラは、アウトドアでの使用を想定したタフなモデルが多い。ここからOM SYSTEMなら、最小限の重さでアウトドアにも安心のタフネスと本格動物撮影に耐え得る高画質が得られるのではないか?と考えました。

そこで今回は、そのハイエンドモデルとなる「OM SYSTEM OM-1」と、35mm判フルサイズ換算で望遠端800mm相当でありながらわずか1,120g(三脚座除く)しかない「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」、さらにはより望遠性能を上げてくれるテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」の組み合わせで実際に2日続けて山に登り、ナキウサギを撮影してみようというわけです。この結果があまりにも快適だったので、ぜひともみなさんにシェアしたいと思います。

ちなみに、デジタルカメラ自体の高性能化の影響もあり、カメラが趣味というところからスタートした筆者であってもここ数年のハイエンドモデルの高価格化にはとてもではないですがついて行けない状況。アウトドア趣味での風景や野生動物の撮影、家族の記録のためのカメラとしては、友人・知人におすすめしづらい価格帯となっているのに対してOM SYSTEMはハイエンドボディの「OM SYSTEM OM-1」でも約27万円程度、超望遠ズームの「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」も17万円程度とかろうじて現実的な価格であるということも、今回OM SYSTEMのカメラシステムで撮影に出掛けてみた大きな理由です。

おすすめのポイント

  • マイクロフォーサーズセンサー採用により軽量コンパクトなカメラシステム
  • 軽量コンパクトであることにも起因するコストパフォーマンスの高い現実的な価格
  • アウトドアを強く意識したOM SYSTEMらしい堅牢なカメラシステム
  • 小型センサーを採用しているため望遠撮影に強く野生動物の撮影に優位
  • 「AI被写体認識AF」による簡単で素早いピント合わせは非常に快適
  • 電源が確保できない屋外でも安心な大型バッテリー採用で長時間駆動
  • 適度な画素数を採用しているため扱いやすい画像ファイルサイズ

気になったポイント

  • 超広角レンズなしでは広角側がやや物足りない
  • 「OM SYSTEM OM-1」自体は思ったほど小さくはない

主なスペックと評価

項目OM SYSTEM OM-1
大きさ約134.8mm(W)×91.6mm(H)×72.7mm(D)※突起部含まず
重さ本体のみ:約511g
有効画素数約2037万画素
防塵・防滴IP53 ※装着レンズとの組み合わせによる
ISO感度80(LOW)〜102400
撮影可能コマ数標準:約520枚/低消費電力撮影モード:約1,100枚
使用可能温度−10℃〜+40℃
形態利便性★★★★☆
画質★★★☆☆
操作性★★★★☆
AF性能★★★★☆
望遠性能★★★★★
コストパフォーマンス★★★★★
堅牢性★★★★☆

詳細レビュー

少しでも軽い荷物でナキウサギに会いに行きたいから「OM SYSTEM OM-1」

岩場の間から時折姿を現すナキウサギを超望遠レンズで素早く撮影する必要があります。そのため動体をしっかり撮影できる高いカメラ性能があると安心です。

「ナキウサギを撮りたい!」。夏になると筆者は、北海道を代表する可愛い動物のひとつであるナキウサギを撮影したくなります。準絶滅危惧種で氷河期に北海道に渡ってきて、そのまま帰れなくなり、北海道の高地に住み着いたと言われるナキウサギ。日本には北海道にしかおらず、正確には「エゾナキウサギ」というそうです。その愛らしい姿は多くの人をとりこにし「ナッキー」などの愛称で親しまれています。

しかし、涼しい高地にしか住まないナキウサギに出合うためには、山を登る必要があります。残念ながら運動不足の中年男性=おっさんである筆者には、ナキウサギを撮影するために超望遠レンズのカメラ機材+日帰りとはいえ雨具や行動食、山頂のナキウサギが住むガレ場である程度の時間滞在するための飲料水、いざというときの防寒具、携帯トイレなどを背負っての登山はそれなりにハードルが高いわけです。できれば、少しでも荷物を軽くし、ラクして登山を行いたい。

しかし、今回の記事にも掲載しているように商業媒体で十分に使えるクオリティは最低限必要ですし、素早く動くナキウサギをとらえるだけで高速なピント合わせや超望遠撮影には妥協できません。それらをいろいろと検討した結果、選択したのがOM SYSTEMのハイエンドボディ「OM SYSTEM OM-1」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」です。

さらに登山の様子などを撮影するための標準レンズとして「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を持っていきました。これで35mm判換算で24mm相当から1,120mm相当までカバーするカメラシステムがとりあえず準備できました。

さてそのトータルの重量ですが、

  • OM SYSTEM OM-1(約511g)
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(約1,120g ※三脚座除く)
  • M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14(約105g)
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(約561g)

上記の合計、2,297g。

ちなみに筆者が普段使っている35mm判フルサイズのメイン望遠ズームレンズ(150-600mmクラス)は、レンズ単体の重さだけで2kgを超えます。つまりカメラ本体+超望遠ズーム+標準ズーム+テレコンバーターでだいたい超望遠ズームレンズ1本分の重さしかないわけです。しかも、レンズの体積などは実質半分といった印象。圧倒的に小さくて軽いというアドバンテージがあります。

望遠端800mm相当の「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」の500ml容量のステンレス魔法瓶を並べたところ。超望遠レンズのコンパクトさが際立ちます。

白雲山で確信した「機材が軽い」というアドバンテージ

今年生まれたばかりだという幼い個体を撮影した1枚。何気ない写真に見えますが、高速シャッターのためISO感度は2000まで上がっています。

日本の国土面積の約24%を占める北海道。同じ道内と言っても、筆者の住む千歳市からナキウサギたちが住む大雪山系の山々はかなり遠いわけです。片道で有料道路を使用しても約2時間半、一般道でトコトコ行けば3時間半掛かります。往復なら5時間から7時間です。せっかく出かけるなら、ある程度まとめて撮影したい。そこでマイクロフォーサーズのOM SYSTEMを導入したことで、荷物がかなり軽くなったのでキャンピングカーに泊まって、初日は大雪山系の「白雲山」、2日目は「東ヌプカウシヌプリ」のガレ場(ナキウサギが住む、ゴロゴロとした岩場)でそれぞれナキウサギを撮影し、2日目の夜には自宅に戻るという結構タイトなスケジュールを立て、決行しました。

最近、北海道はヒグマの目撃が多いので、日の出の時間帯や夕暮れの時間帯、いわゆるかわたれどきやたそがれどきを避けて、筆者は登山をしているため、早朝と行っても7時過ぎに「白雲山」の登山口に到着。そこから山頂近くのナキウサギがよく現れるガレ場に向かいます。登山の時間は登りでだいたい1時間ちょっとです。登山口にはトイレが設置されていますが、登山道にも、山頂付近にもトイレはありませんので、ある程度の時間ガレ場に滞在してナキウサギを撮影するなら、必ず携帯トイレを持っていくことを忘れないでください。

ちなみにマイクロフォーサーズのOM SYSTEM一式を入れたバックパックは、前回35mm判フルサイズのカメラシステムを入れたバックパックの約半分のサイズ。重さは半分とまではいきませんが、かなり軽くなったので登山は非常にラクです。前回よりも15分程度早く、ガレ場に到着しました。

災害時などにも役に立つので携帯用トイレは常備がおすすめです。写真はキャプテンスタッグの「携帯用トイレ スッキリさん」。

予想以上に素早いインテリジェント被写体認識:AI被写体認識AFに驚く

いつどこに現れるかわからないナキウサギの撮影。フレーミングを変えても画面内の目を検出してピントを合わせてくれるAI被写体認識AFは本当に便利です。

「白雲山」山頂近くのガレ場について、その眺望を楽しんだ後、ナキウサギの撮影をはじめたのですが、「OM SYSTEM OM-1」を使って驚いたのがAF性能。実は、ここ数年デジタルカメラ全体の画質は進化していないという話もあるくらいで、画素数や画質はさほど劇的な進化がありません。

ですが、多くのカメラ好きがここ数年のデジタル一眼カメラの劇的な進化としてあげるのがAF性能の進化でしょう。「OM SYSTEM OM-1」にもディープラーニング技術を活用し開発されたAI被写体認識AFが搭載されています。「OM SYSTEM OM-1」の場合、画面内の人間の顔以外にフォーミュラカー、バイク、飛行機、ヘリコプター、鉄道、鳥、動物(犬、猫)の目を追い続けて、人間の操作では追い切れないピント合わせを実現するとあります。

この被写体認識タイプのAFの性能が最近のカメラでは、すでに人間の操作では追い切れないレベルに達しており、ナキウサギなどの野生動物の撮影でも劇的な効果を発揮します。従来の被写体認識しないタイプのカメラでは逃していたシャッターチャンスを、かなりの高確率でものにしてくれるのです。いまや動体の撮影では必須と言える機能ですが、複雑で高速な演算を必要とする機能のため、より新しい高級機ほど高性能な傾向が強い機能でもあります。この被写体認識タイプのピント合わせを「OM SYSTEM OM-1」はAI被写体認識AFで快適に実現してくれます。

最高連写速度が約120コマ/秒の高速連写にも対応した「OM SYSTEM OM-1」は、野生動物などの動体を非常に気持ちよく、撮影できるカメラです。

被写体検出AFで犬や猫などの動物の検出を選択しています。AI被写体認識AFは一度使うとその快適さから手放せなくなる機能です。

防塵・防水等級IP53の堅牢で軽量なマグネシウム合金ボディは安心

せっかく山に登ったなら、さまざまな姿を撮影したいので、撮影時間は長くなります。このときにバッテリーの持ちがよいのは非常にありがたい性能です。

OM SYSTEM OM-1」はBLX-1という大容量リチウムイオン電池を採用しているためCIPA試験基準による方法で520枚の撮影が可能です。ちなみに筆者が実際にナキウサギなどを撮影している条件ではバッテリー1本で半日以上の撮影ができました。おかげでバッテリー残量などを気にすることなく、朝の7時から帰路の16時過ぎまで、しっかりと撮影できたわけです。

しかしながら、筆者の場合、撮影現場でナキウサギを撮影するだけでなく、そこにたどり着くまでの登山の様子なども撮影する必要もあります。当然、登山道では両手を使って登らなくてはいけない場所などもあり、カメラを完全にかばえないこともあるわけです。そのため、筆者のカメラには細かなキズがたくさん付いています。「OM SYSTEM OM-1」は軽量コンパクトではありますが、ハイエンドのプロ機。そのため、ボディはマグネシウム合金製でしっかりとシーリングされ防塵・防水等級はIP53に対応。登山道などでも安心して首からぶら下げて歩けます。ただし、レンズ側の防塵・防滴に対応していないと意味がないので注意してください。

プロ向けのハイエンド機である「OM SYSTEM OM-1」はデータバックアップの信頼性がより高いダブルカードスロットを採用。この点も心強いのです。

キャンピングカーの中で確信したマイクロフォーサーズでも十分な画質

昼間の屋外での撮影ですが、掲載した写真でISO感度は1000。心配していた高感度ノイズもWEBでの使用サイズ程度ではほとんど気になりません。

筆者が普段使っている35mm判フルサイズのカメラは、有効画素数が4,000万画素オーバーです。これに対して「OM SYSTEM OM-1」は有効画素数は約2,037万画素。画素数については、WEB媒体などモニターでの表示を中心に考えれば、8Kモニターであれば約3,300万画素まで表示可能ですが、現在のところ一般的な4Kモニターでも約800万画素しかありません。8K画質が当たり前の世界になれば、もしかすると2,037万画素は物足りなくなるかもしれません。ただし現在、ご覧いただいているOUTDOOR GEARZINEの掲載写真でも長編が1,760×1,173ピクセル(約200万画素)程度。ちなみにOUTDOOR GEARZINEの画像サイズは、ほかのWEB媒体に比べても大きいほうです。データサイズなどを考えるとWEB媒体で8Kクラスの画像が容易に扱えるようになるのは、かなり未来ということになりそうです。筆者は現状作品撮影でもない限りカメラの画素数は基本的に2,000万画素あれば十分と感じています。

実は画素数よりも筆者が気になっていたのが画素ピッチの狭さ。「OM SYSTEM OM-1」の場合3㎛ほどになります。これは35mm判フルサイズで考えると約8,000万画素のカメラに相当する画素ピッチです。この画素ピッチの狭さから高ISO感度時にノイズが大量に発生することを恐れていました。しかし、実際に撮影したナキウサギのデータを、この日車中泊したキャンピングカーでノートパソコンのモニターで確認したところ、思ったよりもノイズが少なかったのです。ナキウサギの撮影は比較的日の光が良く当たるガレ場で行うので、さほどの高ISO感度を使うことがないように思われますが、超望遠レンズでの手ぶれや被写体ブレを防ぐために高速シャッターを使うのが一般的でそのために高ISO感度を使用することが珍しくありません。さすがに普段使っている35mm判フルサイズ機に比べるとISO感度ノイズは多いのですが、APS-Cサイズの多画素機を基準に考えるとかなり差し迫った画質になっているといえるでしょう。

また、最近、筆者はWEB記事の仕事が多く、WEB媒体用のフルHD程度にリサイズすることが多く、高ISO感度でもノイズは気にならないので「OM SYSTEM OM-1」は仕事でも十分以上に使えると確信したわけです。

白雲山からの下山の際に薄暗い登山道で撮影したカエル。ISO感度は2500ですが、WEBで使用するサイズではノイズが気になることはないと思います。

2日目「東ヌプカウシヌプリ」も疲労の蓄積も少なく気持ちよく撮影できた

東ヌプカウシヌプリの山頂で撮影した1枚。多くの人は山頂ではなく、その先のナキウサギがいるガレ場が目的地なので通過地点といった印象です。

近くの道の駅で仮眠をとり、2日目は「東ヌプカウシヌプリ」に登りナキウサギを撮影しました。東ヌプカウシヌプリは標高1,252mの山ですが、山頂までは約1時間、その奥のナキウサギたちがいるガレ場までは1時間半程度と聞いていたのですが、OM SYSTEMにしたためか荷物は軽く、前日の白雲山登山の疲労もほとんどなく、1時間ほどで気持ちよく登れました。ちなみに好みもあると思いますが、風景を楽しみながら登るなら白雲山のほうがおすすめで、ナキウサギたちとの遭遇率の高さなら東ヌプカウシヌプリがおすすめといった印象です。どちらも登山道もわかりやすく、登山時間も短いので初心者でも問題のない登山コースといえるでしょう。とはいえ、当たり前ですが、しっかりとした装備を用意して登る必要があるのは当然です。

東ヌプカウシヌプリ登山でも、カメラ機材が35mm判フルサイズ用の時に比べて、圧倒的に軽いので非常に気持ちよく登山ができました。

望遠端800mm相当の超望遠ズームレンズにプロ向けのカメラボディ、1.4倍のテレコンバーター、さらに標準レンズを入れても2kg程度と非常に軽いのでとてもラクです。

超望遠に強く、圧倒的に軽くて小さいレンズシステムは非常にラク

テレコンバーターを使用して35mm判換算1120mm相当での撮影が手軽に手持ちで行えるのも、カメラ+レンズのシステム自体が非常に軽いメリットです。

35mm判フルサイズのカメラシステムで撮影しているとき、筆者は野生動物の撮影には150-600mmの超望遠ズームを使っています。これに対してマイクロフォーサーズ規格のOM SYSTEMでは「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」で十分。撮像素子サイズが1/4なので、35mm判の200-800mm相当の撮影を「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」で行えます。しかも重量は約1,120g(三脚座除く)と35mm判フルサイズ用の150-600mmクラスの約半分です。

アウトドアでの撮影の場合、単純に重量が半分というだけでも大きなアドバンテージなのですが、撮像素子サイズが約1/4なのでレンズが像を結ぶ範囲も約1/4で済みます。そのためレンズを軽量コンパクトにまとめながら、高画質化も可能といったメリットもあるのです。要はコンパクトで軽量、高性能なレンズが設計しやすいということになります。しかも、軽量コンパクトなので高画質化しても価格を抑えやすいというメリットもあるのです。

ただし35mm判フルサイズのカメラはクロップという機能を備えており、使用する撮像素子の範囲を限定することで、多くのカメラの場合、同じ焦点距離のレンズで1.5倍相当の画角で撮影することが可能です。150-600mmクラスだと225-900mm相当の撮影が可能になります。筆者は900mm相当クラスの撮影に慣れてしまっているので「OM SYSTEM OM-1」でのナキウサギの撮影には「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」にプラスして「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」を持っていきました。重さはわずか約105g。このテレコンバーターは明るさが1段分暗くなる代わりにレンズの焦点距離を1.4倍に伸ばしてくれるので撮影可能な範囲は280-1,120mm相当になります。ボディ+超望遠ズームレンズ+テレコンバーターで2kg以下でありながら、1,000mm相当の超望遠撮影が可能なのもOM SYSTEMの大きな魅力でしょう。

またOM SYSTEMのボディ単体で最大7段分の手ぶれ補正機能も強力なのですが、カメラシステムが軽いので、筋力がなく、超望遠撮影にも慣れていない方でも、かなり簡単に超望遠レンズでの撮影を手軽に楽しめるのも「OM SYSTEM OM-1」を含むOM SYSTEMの大きな魅力です。実際、今回のナキウサギの撮影では手ぶれ写真が少なかったのに筆者も驚きました。慣れていても、やはり機材が軽いほうが手ぶれ写真は減るようです。

本体重量約100gの「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」をいっしょに持っていけば1,100mmを超える画角での撮影も可能です。

もうひと息広角のレンズがほしくなるのは致し方ないところ

24mm相当は決して画角が狭いわけではありません。しかし、登山道などを撮影していると、さらに超広角がほしくなるのも事実です。

撮像素子サイズが小さいため、レンズ表記焦点距離の2倍相当の画角が得られるマイクロフォーサーズ規格ですが、ナキウサギの撮影のような望遠撮影では、この特性がプラスに働きます。ですが、より広い範囲が撮影したい広角撮影ではレンズ表記焦点距離の2倍の画角になることがマイナスに働いてしまうわけです。しかし、筆者が今回持っていった「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」のようにOM SYSTEMの標準系ズームレンズは広角端12mmクラスが多く、35mm判換算で約24mm相当の画角が得られるので、標準レンズとして画角の狭さが気になることはありませんでした。ただし、当然超広角の画角がほしくなるシーンもあり、そういったシーンでは「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」といった14mmスタートの超広角ズームレンズがほしくなったのは事実です。

もし今回のカメラシステムに「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」をプラスしたとしても約534g。システムの最広角が14mm相当から最望遠が1,120mmでカメラボディ1台、レンズ3本、テレコンバーター1つで重さは約2831g。その他のアクセサリーなどがあるにしても、これだけのシステムで3kg以下、しかも強力な被写体認識AFに、手ぶれ補正、堅牢な防塵・防水ボディでしかも軽量コンパクトでコストパフォーマンスも高いのですから、アウトドアにぴったりのカメラシステムといえるでしょう。

開放F4.0通しの明るさで広角24mm相当から望遠端では200mm相当までをカバーする「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」は非常に優秀な標準系レンズです。

まとめ:いまやマイクロフォーサーズのOM SYSTEMで十分なことに驚いた

大きさ、重さ、画質、価格などすべてのちょうどいいOM SYSTEMはおすすめ

写真を撮るために山に登るのか、山に登ることを楽しんでその様子を撮影するか、なにを優先するかによってカメラのセレクトは異なっていいと筆者は思います。

いまから約25年前から、デジタルカメラの専門誌の編集者などをやってきた筆者は、当然より高性能なカメラやレンズを追い求め、さまざまなカメラやレンズをテストしてきました。そして、ここ数年レンズ性能は進化しているものの、デジタルカメラ本体の画質はさほど進化していない状況を感じていたのです。ある意味、現在のところ、これ以上の画質、画素数を市場やユーザーが求めていない成熟期にデジタルカメラ市場全体が入ったのでしょう。

そこで筆者が再び気になっていたのが35mm判フルサイズの約1/4という小型の撮像素子を採用したマイクロフォーサーズ、なかでも筆者の好きなアウトドア向けに堅牢なボディのハイエンドモデルを提供しているOM SYSTEMです。今回はプロ向けという位置付けの「OM SYSTEM OM-1」を使ってみたのですが、テクノロジーの進化といった時代背景を含めて、すべてがちょうどいいというのが、2日連続でナキウサギのいる夏山に登った感想になります。

撮像素子が小さいということでサイズ、重さや大きさでは大きなアドバンテージが得られるマイクロフォーサーズ規格ですが、画質面では撮像素子の大きな35mm判フルサイズなどが基本的に優位。1画素あたりの大きさを示す画素ピッチがかなり小さくなるので、2,000万画素といっても画質面の不安も感じました。しかし、実際に使って、高ISO感度での超望遠、高速シャッターもテストしましたが、WEBの商業媒体での使用を考えても十分以上。趣味の撮影や趣味を撮影するなら完全にオーバークオリティであるように感じます。

また筆者は実際にナキウサギを撮影して「OM SYSTEM OM-1」のインテリジェント被写体認識:AI被写体認識AFは十分に素早く実用に十分と感じました。時折、本体だけで100万円が見えてくる価格帯の他社のプロ用ハイエンド機に比べて「OM SYSTEM OM-1」のAI被写体認識AFが遅く感じるといった評価も目にしますが、カメラ本体価格が20万円ちょっとの「OM SYSTEM OM-1」とはクラスが違うように感じるわけです。

筆者が現時点でOM SYSTEMの「OM SYSTEM OM-1」がちょうどいいと感じる最大の理由は大きさ、重さ、画素数、画質、ファイルサイズ、AFや堅牢性などのカメラ性能もありますが、実はこの価格がかなり重要な要素だと思っています。山に登ってせっかくなのでナキウサギの姿を撮影したい、山の美しい風景を撮影したいといったアウトドアなどの趣味ありきで、その趣味の様子を撮影したいと思う方などには、圧倒的な高画質・高性能よりも、ちょうどいい価格と大きさ、性能を実現したカメラのほうが向いているように感じるのです。その点において技術的な時代背景も含め、少し小さな撮像素子を採用したOM SYSTEMのマイクロフォーサーズは非常にちょうどいいカメラシステムだと筆者は感じているわけです。筆者もしばらくアウトドア関連の撮影は「OM SYSTEM OM-1」を中心に使い込んでいこうと思っています。

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OM SYSTEMの「OM SYSTEM OM-1」の詳細と購入について

製品の詳細については「OM SYSTEM OM-1」をご覧ください。

齋藤千歳(サイトウ チトセ・Saito Titoce)

元月間カメラ誌編集者。北海道の絶景や野生動物の姿を追い求めているうちに、キャンピングカー・車中泊でのアウトドアライフにどっぷりハマっていました。現在2歳の息子、そして妻と全道を巡っているうちにカメラ・レンズはもちろん、アウトドア・キャンプ、子育て、PCガジェット、料理に、ダイエットまで経験したすべてを撮影し、執筆するフォトグラファーライター。OUTDOOR GEARZINEではキャンプ及びキャンピングカーでの生活クオリティを上げる「QOCL(Quality of camping life)向上委員会」を中心にさまざまな記事を執筆していく予定です。

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