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【忖度なしの自腹レビュー】DURSTON Kakwa 40 革新的な超軽量・高耐久素材「Ultra Fabric」を採用した次世代のハイキングバックパックが完成度高すぎて泣ける

相変わらず進化の止まらないアウトドア道具の世界。

今回はここ1~2年で本場北米大陸を中心にアウトドア・ギア好きの間で話題沸騰中の新素材を使った次世代型バックパックの、おそらく日本で最初のレビューをお届けします。

北米を中心に現在の軽量山道具シーンをけん引しているといっても過言ではない新進気鋭のブランド、DURSTON GEAR(ダーストン)は、コテージブランド※の中でもそのユニークかつ実用的な製品たちによって、またたく間に確固たる地位を獲得してきました(詳しくは先日の軽量シェルターのレビューを参照)。

※新しいアクティビティやスタイル、あるいはニッチなニーズにフォーカスした先鋭的なギアを小規模に生産するアウトドアメーカーのこと。

そんなダーストンが開発した新しいハイキング向けバックパックが Kakwa(カクワ) 40 です。北米の三大ロングトレイルのひとつ、グレート・ディバイド・トレイルの北の終点の名前を冠したこのモデルは、もちろん新素材「Ultra Fabric」を採用しているという点も注目なのですが、それ以外でもやはりさすがはダーストン。「軽い」だけではないその緻密に計算された完成度の高さには、なるほどと膝を打つこと数知れず。例によってまだ残念ながら日本での取り扱いはないため試してみるには個人輸入するしかないのですが、間違いなく現在のハイキング・バックパックの世界をリードする今作はOutdoor Gearzineとしてもチェックしないわけにはいきません。

というわけで今回はこの軽量バックパックの最先端を試しに春の低山を歩いてみましたので、早速レビューしていきます。

DURSTON GEAR Kakwa 40の主な特徴

超軽量で耐摩耗性と引裂強度に優れた200デニールの新素材「Ultra 200 fabric」を採用した、800グラムを切る重量ながら驚くほど高い耐荷重能力を備えたハイキング向けバックパック。背面パネルには取り外し可能な軽量U字型アルミフレームとフォームクッションを内蔵し、重荷でもしっかりと腰に重心を載せることができる安定性の高い背面構造です。メインコンパートメントは約40L、外部ポケットには合計約15Lの収納を備え、軽量化した装備なら長期のテント泊にも十分対応する容量や使い勝手を実現。底が深く出し入れも容易なストレッチポケット、立ったまま出し入れできるサイドジップポケット、左右のヒップベルトポケット、ショルダーストラップのメッシュポケットなどの無駄を極力省きながらも十分な外部収納は、行動中の使い勝手が細部まで考えられて配置されています。

お気に入りポイント

  • 適切な荷重ポジションと抜群の安定感で軽量バックパックとは思えない快適な背負い心地
  • 競合モデルに比べてより多くの荷物にも耐えられる耐荷重性能
  • 背負い心地のプレミアムさからは考えられない軽さ
  • 軽量ながら非常に優れた耐久性と耐水性を備えた生地素材
  • 締めやすくフィット感にも優れた二重ストラップの逆引き式ヒップベルト
  • 収納性十分で出し入れもしやすいジッパーポケット付きサイドポケット
  • 伸縮性のあるショルダーストラップのポケット
  • 良心的な価格

気になるポイント

  • 背面の通気性が良くない
  • メイン収納へのアクセスにはロールトップの開け閉めが必要
  • 外部アタッチメントのカスタマイズ性が限定的
  • ハイドレーションスリーブがなく、ハイドレーションの孔もかなり小さい

主なスペックと評価

アイテム名DURSTON Kakwa 40
容量約40リットル(外部収納計: 約15 リットル)
重量Mサイズ:775 g (うちフレーム90 g、フォームパッド15 g)
素材
  • Ultra 200 fabric
  • Heavy Duty polyester knit mesh
  • YKK AquaGuard zippers
女性向けモデルなし
サイズ/背面長
  • S:37 – 45 cm
  • M:42 – 50 cm
  • L:47 – 55 cm
背面パネル着脱可能なコの字型アルミフレーム
推奨最大耐荷重約20キログラム
ハイドレーションスリーブ× ※ハイドレーション孔はあり
メインアクセスロールトップ式(Y字トップストラップ付)
レインカバー×
ポケット・アタッチメント
  • 肩口にロードリフター
  • 人間工学に基づくS字シェイプのショルダーストラップ
  • スターナムストラップ
  • 逆引きデュアルストラップ式ヒップベルト
  • Y字トップストラップ付ロールトップ型メイン収納
  • フロントにオープン型のマチ付きメッシュポケット
  • 両サイドに入り口形状の異なるマチ付き大型サイドポケット×2
  • 右サイドに立ったままアクセスできるジッパー付きポケット
  • ヒップベルト左右に大きなジップポケット
  • 左右のショルダーストラップにストレッチメッシュポケット
  • ハイドレーションポート(孔)
  • フロントからボトムにかけて計8つのアタッチメントループ
  • 両サイドにコンプレッションストラップ
評価
快適性★★★★☆
安定性★★★★★
収納性★★★☆☆
機能性(使いやすさ)★★★★☆
耐久性★★★★★
重量★★★★★
拡張性(カスタマイズ性)★★★☆☆

詳細レビュー

新素材「Ultra 200 Fabric」による異次元の軽さと耐久性

いつの世も新しい生地・素材の登場はアウトドア・ギアの世界に大きなインパクトをもたらします。このバックパックに採用された革新的なテクニカルファブリック「Ultra 200 fabric」もまさにそのひとつ。

Challenge Outdoor社によって開発されたこの生地は、ダイニーマ® のブランド名でおなじみの「超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維」と高強力ポリエステル繊維をブレンドして織られた200デニールの布帛(織物)です。このため触った感触は一般的なナイロン生地などと同じようにしなやかで布っぽい質感をしています(当たり前ですが)。超軽量・高耐久な素材としてすぐに思い浮かべる生地といえばDCF(ダイニーマコンポジットファブリック)ですが、あちらはラミネート加工された不織布であり、バリっとしていてより厚みやゴワつきがあります。それに比べれば扱いやすく、コンパクトにしやすいというのが第一印象です。逆に言うと生地としてのコシは弱いといえなくもないので、その辺は好みの部分といえなくもないでしょう。

ただそれでいてこのUltra Fabricはコーデュラナイロンなどと比べても数倍の強度と耐摩耗性を備え、あのDCFと比べても同等以上の重量当たりの耐久性を備えていると言われています(DCFとの耐久性比較では現在草の根的にさまざまな検証が行われており、そこでは飛び抜けて強いほどではないものの、少なくとも明らかに劣っているということはまずないとは言えるようです) 。さらに裏地にはリサイクル素材のRUV™ フィルムがラミネートされることで、生地として優れた防水性を実現しています(ただ縫い目はシームテープされていないため、バックパックとしては完全防水ではありませんのでその点は注意)。

まとめると、Ultra Fabricはこれまで使用されてきた超軽量・高耐久生地と比べて「より軽量で、傷にも水にも紫外線にも強い」生地というわけです。

実際にこのバックパック、持ってみると分かるのですが、まず嘘みたいに軽い。その重さなんと「775g」。フレーム入りのバックパックとしては最軽量の部類に入る軽さです。それにも関わらずおよそ20キロの荷物にも耐えられ、コーデュラナイロンやダイニーマといった最も強度の高い生地よりも丈夫というわけですから、そのスペックのバグり具合には、脳が追いついてくれません。

さらに単に生地だけ丈夫なものを使用しているというのではなく、それに合わせて縫製も厚手糸での下の写真のようにダブルステッチにすることで(生地は強いのに)縫い目が解れやすいといった残念なことも起こらないよう考慮されています(ちなみにメーカー曰くバックパックの製造はArcteryxと同じ工場だとか)。

この辺りから、過酷なオフトレイルを過ごすことが多いカナディアンロッキーをフィールドとするダーストンならではの「耐久性に妥協しない軽さ」という哲学が垣間見えてきます。

背負い心地:超軽量にも関わらず圧倒的な背負いやすさと安定感の高さ

最新鋭のテクニカルファブリックという、分かりやすい新しさを纏ったkakwaですが、実際のところこのUltra Fabricを採用したバックパックはいくつかコテージブランドによって作られており、ここ1~2年で考えれば珍しくなくなってきているのも事実です。ただそれでもぼくがこのバックパックを泣くほど気に入ってしまう理由は、このバックパックの真の魅力である「恐ろしく洗練された、快適で安定した背負い心地の良さ」にあります。

これまでいくつもの「超軽量」といわれるバックパックを背負ってきましたが、ここまで「普通の登山用バックパックとして背負える」バックパックは初めてかもしれません。びっくりするほど軽いにもかかわらず、10キロ以上の荷物でも背負い心地をあきらめる必要がないなんて、軽量化への熱心なストイックさを持ち合わせていない自分にとってこれほどありがたいことはありません(もちろんこれはぼくのような怠け者のための仕様ではありませんが)。

この完成された背負い心地の秘密は、成形されたU字型アルミフレームをはじめ、ロードリフターやデュアルストラップヒップベルトなど、細部まで計算された背面パネル構造にあります。

U字型アルミフレームとフォームパッドの背面パネル

まず背面には、チューブ状のアルミニウムでできた、背中のくびれに沿って湾曲したコの字型フレームが内蔵されています。同じ場所には軽くて薄いフォームパッドも入っており、クッションとして背中を保護しています(下写真)。

こうしてアルミフレームが背面の外周をフラットに保つことによって、フレームレスのパックやシンプルなI字型フレームのバックパックのように(荷物を詰め込んだとき)パック背面が樽状に丸まってしてしまうのを防いでくれ、なおかつ重心を身体近くの腰の上に載せるのに優れた役割を果たします。

どちらも取り外してしまうことはできますが、この極上の背負い心地を考えると、ほんの100グラムの重量を惜しんでそれを犠牲にするのはあまりいい選択とはいえません。

ショルダーストラップとロードリフター

ショルダーストラップは身体のラインに沿って微妙な S 字カーブを描き、上半身の動きを邪魔しにくい作りになっています。また左右のストラップは個別に縫い付けられるのではなくヨークで結合されているため、荷重が縫い目全体に分散されてストラップ付け根の耐久性を高めることに貢献しています(下写真)。

肩口には、超軽量バックパックには珍しいロードリフターが搭載されています(下写真)。このロードリフターを締めることによってパック上部の重心を背中に寄せて全体の荷重を身体に近づけることができ、さらにブレも防げることによって重荷での安定性を高めることができます。なんて贅沢なんでしょ(ため息)。

逆引きデュアルストラップ式ヒップベルト

最後にヒップベルト。こちらはフレーム先端とほぼダイレクトに連結されており、これによって腰への荷重を逃さず伝達することができています(下写真)。

ヒップベルト内側は微妙に凹凸感のあるパッドを内蔵した、通気性のあるメッシュ。ずば抜けてフワフワというわけではありませんが、さすがにそこまで贅沢は言えません。

それよりも要注目なのはヒップベルトのストラップです。上下二重に取り付けられたストラップはヒップベルト全体で腰を包み込むように締めることができ、また2本のストラップで前方に引く構造は滑車の原理によって1本で引くよりも小さな力で締めることができるため、ベルト周りの快適さは抜群です(下写真)。もうすべてのヒップベルトがこうであって欲しい。

最大推奨荷重

kakwaはこのしっかりと作り込まれた背面構造によって、超軽量パックとしては驚異的な公称最大約20キロという優れた耐荷重性能を実現しています。

ただ、実際に試してみた限り、さすがに20キロの荷物はフレームが耐えられたとしてもショルダーやヒップベルトの食い込みがきつくてちょっと厳しい気がしました。多くても15キロくらいが限界かと。とはいえ常識的には40リットル容量のバックパックにどれだけ荷物を詰め込んだとしても20キロいくことはほぼないと思いますので、よほどのことがない限り心配はないと思います。

いずれにせよ、自分がこれまでに背負ってきた(1.2キログラム以下程度の)軽量バックパックの中では飛び抜けて快適であることは間違いありません。万が一水場に乏しく、大量の飲料水などを背負って歩く必要のある奥深いルートを行かなければならないとしても安心です。

収納性と使いやすさ:最小限まで切り詰めてもなお、水準以上の使いやすさを保つスマートな収納類

はじめに断っておくと、kakwaの収納システムはともすれば「必要最低限」といえるかもしれません。この点についてはじめのうちは苦手な感じもあったのですが、これが不思議と使い続けていくうちに、それでもなお致命的な不満があるというわけでもなく、今ではその切り詰めた収納でもなおここまで不便を感じさせないという無駄のない合理的な作りにある意味、感心しています(もちろん好みはあると思いますが)。

メイン収納

まずメイン収納に関してはロールトップ型という以外、特別なことは何もありません。水や汚れの侵入を防ぎ、荷物の量に応じて容量を拡張しやすいという特徴がありますが、相変わらず開閉動作はやや億劫です。こればかりは(もう2023年なのだから)ジッパーでメイン収納にアクセスできるようであって欲しいと個人的には思います。

なおここには二重に調節可能な Y 字型のストラップが配置されており、テントマットなどのかさばるアイテムを上部に固定することができます。

サイドポケット

よく考えられていて使いやすいのが非対称のサイドポケット。左ポケットは底が深い作りでボトルや長物アイテムをしっかりと収納し、さらに大きめのアイテムも入るジッパーポケットが付いています。紙の地図や手袋、キャップ、スナック、大きめのスマホなどもパックを背負ったままアクセスできます(下写真)。

右ポケットは開口部が斜めになっていることにより、こちらも立ったまま簡単にアクセスできます(下写真)。ちなみに左右どちらのポケットもウォーター ボトル2本分くらいの十分な広さがあり、伸縮性があるので固定力もまずまずです。

フロントストレッチメッシュポケット

フロントのメッシュポケットは耐久性の高いポリエステル素材を使用しており、下部にはマチが施されていることで普段はフラットですが大きめのアイテムを収納する際には拡張することができます。レインジャケットから行動食、サンダル、ウォーターボトルやフィルター、ゴミ袋など思った以上に何でも入るので、かなり便利(下写真)。

ヒップベルトポケット

ヒップベルトにはYKK AquaGuard 耐水ジッパーで開閉する大きめのポケットが左右に備えられています。見た目以上に幅と奥行きがあり、食べ物や日焼け止め、ヘッドランプやハンドタオルはもちろん、自分の6.7インチスマホもぎりぎり入る大きさで、非常に助かりました。

ショルダーストラップポケット

ショルダーストラップには中央にデイジー チェーン、そしてストレッチメッシュポケットが付いており、ここにもスマホやカメラ、ソフトフラスクやペットボトルなど手元に置いておきたい小物を入れておくことができます。最近では当たり前になりつつありますが、その辺もきちんと押さえておいてくれるのはありがたい。

バンジーコード用ループ

フロントからボトムにかけて、バンジーコードなどを追加できる小さなループが6か所ほどついています。ただこのループは3mm程度のバンジーコード2本がかろうじて入る程度の非常に小さい孔のため、あまり自由度が高いとはいえないかもしれません。それでも下のように自分で用意したトレッキングポールループなどを新たに付け加えることである程度収納を拡張することができます(下写真、バンジーコードは別売)。

ハイドレーション対応

kakwaにはハイドレーションチューブをメイン収納内部から外に出すための孔が設けられ、ショルダーストラップにもチューブを固定するストラップがあります。このため基本的な使用で困ることはないものの、残念ながら内部にハイドレーション用のスリーブはありません(下写真)。

まとめ:トップクラスの軽さと快適さを両立した、これからの軽量バックパックのスタンダード

軽さと快適な背負い心地の両方でトップクラスを実現した DURSTON GEAR Kakwa 40 は、「軽いのがいい、けれど他の要素(丈夫さや快適さや利便性)もできる限りあきらめたくない」という最近の欲張りなニーズに見事に応える、ハイクオリティで洗練された超軽量バックパックでした。軽量でありながら一般的な登山向けバックパックと同等の丈夫さと使い勝手を備えた超軽量バックパックの最前線は、本格的なULハイカーはもちろん、これから超軽量素材で作られたバックパックを試してみたいと思っているUL初心者まで幅広いハイカーに受け入れられるポテンシャルを秘めているといえます。

kakwaが見せてくれた新しい景色は、フレームレスの極端な超軽量バックパック程度の重さにわずか数百グラムちょっと足すだけで、クラシックな登山用バックパック並みの快適さが実現できてしまう(極めつけは価格も良心的)という世界です。これはあらためて考えると画期的なことであり、このバックパックの登場によって、超軽量バックパックはこれまで行きつけなかった新しい時代に突入したといっても過言ではありません。ウルトラライトと従来のハイキングといったこれまでの境界線はどんどん消え、その区別は益々不要なものになる。そんな未来を予感させるのに十分な、新しい感動を与えてくれるバックパックをぜひ試してみてはいかがでしょう。

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