夏の軽量スタイルだけではもったいない自由度の高さ。Big Agnes「フライクリークUL ジップキルト」は春夏の1枚使いから冬の重ね使いまで器用にこなす、1年中手放せない超・快適軽量ダウン・キルト
ここ数年の軽量スタイルでのハイキングやファストパッキングの普及に伴い、キルト型のスリーピングバッグ(寝袋)はすっかり定着したといっていいかもしれません。このサイトでは10年以上前から無駄を省いた軽量コンパクトさと、開放感のある自然な寝心地といったキルト型スリーピングバッグのメリットに着目し、「Enlightened Equipment」をはじめとした世界標準のブランドや製品を紹介してきました。
そんなキルト型シュラフの普及が止まらない昨今、各メーカーから多様なモデルがリリースされる中、ついに スリーピングシステムの トップブランドのひとつ、Big Agnes から興味深い新作が登場しました。それが今回紹介する「フライクリークUL ジップキルト」です。
この軽量キルトは、温暖な季節の軽量テント泊ハイキングに最適である点はもちろんですが、キルトの開放感とマミー型寝袋の密閉性を兼ね備え、その他独特の構造やギミックによって他にはないカスタマイズ性を備えている点がこれまでのキルトとは一味違います。それによってこれからの秋冬シーズンにおいても活躍するポテンシャルを秘めているといえます。
ということでさっそく、この晩夏~秋口にかけて使用してみたインプレッションをお届けします。

Big Agnes フライクリークUL ジップキルトの主な特徴
Big Agnes フライクリークUL ジップキルトは、キルトの開放感とマミー型寝袋の密閉性を兼ね備えた、汎用性の高い超軽量キルト型スリーピングバッグ。寒い夜にはジッパーを閉じて筒型の寝袋として、リラックスタイムには広げてブランケットとして使える汎用性の高さが特徴。中綿には撥水加工が施された850フィルパワーの高品質 DownTekダウンを封入し、裏返して足元まで完全に覆われたマミー型シュラフへと素早く変形させることができる独自のフットボックス構造によって、全体重量を434gという軽さに抑えながらより効率的な暖かさを確保しています。シェルとライニングには、廃棄された漁網をリサイクルして作られたNetPlus 10Dリップストップナイロンを採用し、環境への配慮と軽量化を両立しています。
お気に入りポイント
- キルトとマミー型シュラフをシームレスに行き来できる独自のフットボックス構造
- 高品質な素材と細部まで洗練されたデザインにより軽量さと快適さを両立した汎用性の高さを実現
- 気温に応じて温度調節が可能なジッパー開閉
- 環境負荷の少ないPFASフリーの撥水加工とリサイクル素材の採用
気になったポイント
- 下限温度域が高めなので、単体使用では暖かい時期に限られる
- 薄手の10D素材とジッパーの相性により、開閉時に生地をやや噛みやすい
主なスペックと評価
| 名前 | Big Agnes フライクリークUL ジップキルト |
|---|---|
| 適応身長 | 183cm |
| 収納サイズ | 直径15×28cm |
| シェル素材 | NetPlusテクノロジー10Dリップストップナイロン(撥水加工) |
| 中綿素材 | 850FP Downtek™ PFC-Free 撥水加工ダウン |
| 重量 | 434g |
| フィリング重量 | 227g |
| 使用温度域 | ・コンフォート:15℃ ・リミット:12℃ |
| 幅 | ショルダー:152cm、ヒップ:137cm、フット:91cm |
| 付属品 | コンプレッションスタッフバック、保存用袋 |
| Outdoor Gearzine評価 | |
| 快適性 | ★★★★★ |
| 保温性 | ★★★☆☆ |
| 重量 | ★★★★☆ |
| 収納性 | ★★★★★ |
| 使い勝手 | ★★★★★ |
| 耐久性 | ★★★☆☆ |
| 多用途性 | ★★★★★ |
詳細レビュー
保温性:単体使用ではスプリング・サマーシーズンにぴったり。秋冬は3シーズンと組み合わせて
まずはじめに断っておくと、このシュラフの単体での(ISO基準での)快適温度は15℃(下限温度は12℃)。イメージとしては夏の高山や3シーズンの低山ハイクに最適な温度域帯となっており、この記事を書いている10月時点では日本の中級山岳以上で単体で寝るにしてもやや物足りない可能性が高いです。
ただ、体感的にはこの数値は非常に「慎重な」数字と考えてよいのではないかとも感じます。参考までに自分は実際にシルバーウィーク標高1,400m付近、気温は5℃前後で寝泊まりしましたが、その時でも寒さは感じませんでした(もちろんその時は防寒着も着ていたし、マットもR値4前後ではありましたが)。経験上、キルト型シュラフは保温性レーティングがあまり当てにならないことも多いのですが、このモデルもやり方次第で数字以上に高い断熱性を確保できるのではないかと思われます。とはいえ、やはり「これからの季節に単体で使える最適なシュラフ」を探している場合はさすがにちょっと立ち止まって、他の選択肢も当たってみるといいかもしれません。
こうした前提の上で評価すると、まず基本的に、この軽さに対する保温性の高さは特筆すべきものがありました。その秘密はまずビッグアグネス特有の「ダイヤモンドキルティング構造」にあります。

これは縦横に縫い目が走る一般的なシュラフに比べ、全体としての縫い目を減らしつつ、同時にダウンの偏りを防ぐという工夫で、ダウンの偏りを防ぎコールドスポットの発生を抑えて常に高いロフトを保つよう設計されています。
中綿には850フィルパワーの高い復元力を備えた高品質ダウンが封入されており、パッキングを解くと瞬く間にはち切れんばかりにロフトが膨れ上がります。世の中のダウン製品には「ほんとに850FP?」と疑いたくなるようなモデルもまれにある中で、この張りを見れば、これは間違いないといえるでしょう。
しかもダウン自体にはPFASフリーの強力な撥水加工(DownTek)が施されており、ダウンの弱点である結露や雨などによる湿気や濡れへの耐性は高く、長期山行などで保温性がだんだん低下していってしまうといったリスクは確実に軽減されています。

また、確かに単体使用で深い秋冬や春先の寒さに使うのはキツイとはいえ、もし今手持ちのシュラフが3シーズンシュラフしかないという方にとっては、この夏用シュラフを組み合わせてレイヤリング運用することで、冬用シュラフとして活用することができると考えればコストパフォーマンス的に悪いわけではありません。

フルレングスのジッパーを開いてキルト状にし、3シーズンシュラフの上から被せることで、保温力を大幅にブーストすることができます。850フィルパワーの高品質ダウンと防風性のあるシェルが空気の層を追加するため、これからの秋冬シーズンのテント泊にも十分に対応可能です。個人的にはシュラフ2つを重ねて使うよりも、シュラフとキルトを組み合わせる方が快適さも、そしてパッキングしやすさも勝ると思っています。何がベストかはそれぞれの好みも関係しますが、年間通じて冬山をそんなにやらないという人にとっては、嵩張って扱いにくい冬シュラフ1つよりも柔軟な運用ができるという可能性は確実にあります。
快適性:軽くて優しい極上の寝心地、さらに高通気キルト型から高断熱フードレスマミー型までカスタマイズ可能な適応力
保温性のところでも少し触れましたが、とにかく復元力の高い850FPのダウンによるふんわりと軽い感触は本当に「最高」のひとことです。おまけに10Dの超極細糸で密に織り上げられたナイロン生地はダウン抜けを防ぐとともに、非常にしなやかで心地よい肌触り(しかも漁網をリサイクルして作られたNetPlus®糸)。安価なナイロン生地にありがちな、ペタッと張り付くような不快感がまったく感じられないのには流石と言いたくなります。

さらにこのシュラフが素晴らしいのは、これが単体キルトとしての極上の快適さだけにとどまらないところです。まずシュラフを広げると、普通の1枚のブランケット。このキルトモードにした際はマミー型では決して味わえない開放感が味わえます。

気温が高い夜には足元を出して容易に温度調節が可能です。

次にキルト状態のまま、もう少し寒さを防ぎたいと思った場合は、独自に配置されたフットボックスを裏返し、そこに足を入れることで温度調節が可能です。

そしてここからさらに冷気の侵入を防ぎ、身体の熱を閉じ込めたいと思ったら、今度は両端のジッパーを閉じて、フードレスのマミー型形状にカスタマイズすれば、より隙間風を防ぐことができるようになります。

他にも、フライクリークUL ジップキルトには手持ちのスリーピングパッドに固定するためのループが4箇所備わっており、キルトスタイルのときに両サイドから冷気が入り込んだり、キルトがマットからずれたりしないように調整することができます。

重量・携帯性:重量を気にするハイカーにとって納得の軽量・コンパクトさ
総重量434g、収納サイズは直径15×28cm(さらに圧縮可能)という軽量コンパクトさは、スタッフサックに入れた状態でも非常に小さく、ザック内のスペースが気になるということはありません。もちろんこれ以上軽量コンパクトで保温性の高いスペックの製品がないわけではないのですが、この圧倒的な軽さとコンパクトさは、夏のファストパッキングはもちろんのこと、冬期用の追加レイヤーとして携行する際にも、パッキングの負担を最小限に抑えてくれるでしょう。

その他の機能性:快適な寝心地を追求する細部の配慮
ここまででまだ取り上げていない細部のこだわり、快適さへの追及について挙げてみます。
例えば肩口やジッパーの裏側にはドラフトチューブが配置され、空気の流れを遮断して温もりをキープしてくれます。

また携行用のスタッフサックの他に、家で風通しよく保管しておくのに役立つ大きなメッシュバッグも付属しています。

耐久性:低いわけではないが、極限まで軽量化を突き詰めている以上多くは望めない
10Dリップストップナイロンは軽量ながら耐久性についても十分配慮しているとはいえ、軽量化を追求しているキルト型モデルである以上、岩肌やテント内の突起物による引っ掛けには注意を払う必要があります。またセンタージップの噛み込みによる生地の引き裂きリスクなども考慮すると、それなりに取り扱いは丁寧に行った方が良いかなと感じます。
まとめ:「完全なキルトから完全なフードレスマミー」まで変幻自在。使い方次第では軽量スタイルのハイカーが年間通して活躍するポテンシャルを秘めた逸品
フライクリークUL ジップキルトは、軽量化を追求するハイカーにとって、季節を問わず機能する汎用性と自由度の高さが魅力の高品質キルト型スリーピングバッグでした。
他社の代表的なキルト型スリーピングバッグと比較した場合、フライクリークUL ジップキルトが優れている点は、足元が広げられないキルト型でもなく、完全に密閉できないキルト型でもない、つまり「完全なキルトから完全なフードレスマミーまで変化できる幅広い対応力」という点にあるといえます。
夏場には、これ一つで涼しく快適な睡眠環境を構築できるため、温暖な地域でのハイキングや荷物を限界まで削りたいファストパッカーに最適でありながら、一方で秋冬シーズンは手持ちの3シーズンシュラフにインナーまたはアウターキルトとして重ね着するためのブースターとしても活躍してくれる。
夏専用の極薄シュラフとして考えるとやや高価なことは確かですが、冬山のレイヤリングシステムを完成させる軽量パーツという視点で考えれば、一年を通して常に欠かせない1枚となるでしょう。さらにキルトという特性上、山だけでなくキャンプでのブランケットや車中泊での布団としても役立ちます。自分だけの効率的なスリーピングシステムを模索しているハイカーは、一度試してみてはいかがでしょう。
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