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「トレランシューズの軽快さ×マウンテンブーツのタフさ」が導く日本のファスト&ライト新基準。八ヶ岳の岩稜帯で体感した SCARPA「リベレクロス2ミッドGTX」の異次元の足さばきと圧倒的安定感を実践レビュー

今シーズンは雑誌PEAKSの企画に参加し、そこで新作トレッキングシューズをたくさん履かせてもらうことができました。その際、多くの優秀なモデルがそろうその実践テストで僕がどうしても忘れられない、強烈なインパクトを残してくれたシューズがありました。

それが今回ご紹介する、イタリアの名門登山靴ブランド「SCARPA(スカルパ)」から登場したファストハイキング向けミッドカットブーツ「リベレクロス2ミッドGTX」です。

古くから靴づくりのメッカとして知られるドロミテ山脈の麓で熟練の靴職人たちが集まり、高品質な登山靴を作り始めてからおよそ90年。その伝統を守りながら、近年はより軽快で柔軟なフットウェアにも注力するようになり、トレイルランニングからインスピレーションを得たデザインも増えてきました。「リベレクロス2ミッドGTX」まさにこの流れに沿った最新作というわけです。

「マウンテンブーツの安定性や強さとトレイルランニングシューズの軽快さを高次元で融合」と一言で言ってしまえば簡単なのですが、実際に履いてみるとこのブーツはそんなありふれたフレーズでは片づけられない「何か」があり、その細部まで突き詰められたこだわりの深さと絶妙なバランスチューニングには目を見張るものがありました。

トラディショナルな頑丈さと現代的なスピード感を兼ね備えたこのハイブリッドブーツは何が優れていたのか?どんなスタイルにマッチする(しない)のか?実際のトレイルで検証したパフォーマンスを詳細にレビューします。

SCARPA リベレクロス2ミッドGTXの主な特徴

SCARPA リベレクロス2ミッドGTX(以下、リベレクロス2)は、スカルパが長年培ってきた本格的なマウンテンブーツづくりのノウハウに、現代的なトレイルランニングのDNAを注入した「ファスト&ライト」のためのミッドカットシューズです。同ブランドの受賞歴のあるトレイルランニングシューズ「リベレ」シリーズの名を冠していることから分かるように、スカルパのハイキングシューズの中でも最も速く、最も軽快なパフォーマンスを実現しています。GORE-TEX ePEメンブレンを採用したアッパーは非常に軽量でありながら柔軟かつ優れた耐久性を提供。適度な衝撃吸収性と反発性により、長時間のランニングでも疲労を軽減するミッドソールは踵に搭載された「DSTフレーム」が着地時のねじれとブレを制御し、安定感をもたらします。アウトソールにはトラクションとブレーキ性能に優れたオリジナルの「Presaソール」を採用し、岩場や不整地での確実なステップを可能にします。トレイルラン並みの軽快なフットワークと、荒れたテクニカルな路面にも動じないタフさを両立し、現代のスピードハイキングに求められる「絶妙な洗練さ」を備えたハイブリッドシューズに仕上がっています。

おすすめポイント

  • トレランシューズのような俊敏性と、登山靴の確かなサポート力を高い次元で両立した抜群のバランス
  • 柔軟性と高いプロテクション、防水性を兼ね備えたアッパー
  • 岩稜帯での優れたエッジング性能とダイレクトな足裏感覚を発揮するテクニカルな岩場での足さばきの良さ
  • 地面の凹凸からのダメージを防ぎ、着地時のブレやねじれを防ぐ抜群の安定性
  • ぬかるみでのグリップ力と岩場の立ちこみやすさ、トレイルの走りやすさをバランスよく兼ね備えたアウトソール

気になったポイント

  • (良い悪いは別にして)一般的な登山靴と比べれば軽量ブーツの部類には入るものの、超軽量・シンプル志向のハイカーにとってはまだ重く、剛性が強い。
  • (良い悪いは別にして)高クッションの厚底シューズに慣れている人にとってはクッション性が物足りないと感じる場合も。
  • 全体的にタイト目なフィット感
  • やや高価

主なスペックと評価

項目 SCARPA リベレクロス2ミッドGTX
重量 445g(#42、1/2ペア)
アッパー
  • メッシュ+TPUフィルム(単層構造)
ミッドソール
  • 2D EVA-CM
  • DSTフレーム
アウトソール
  • Presa HIK-06
防水透湿 GORE-TEX® ePE bluesign®
Outdoor Gearzine 評価
快適性 ★★★★☆
重量 ★★★☆☆
グリップ ★★★★★
堅牢性 ★★★★★
安定性 ★★★★★
クッション性 ★★★☆☆

詳細レビュー

このブーツを見たとき、真価を発揮する最適なフィールドとして「岩稜帯がメイン。軽快に駆け抜けるスタイルで日帰り~数泊程度のコース」が直感的に浮かびました。そうして選んだのは、5月の八ヶ岳の権現岳からキレット越えでの赤岳周遊コース。ここは樹林帯や岩場、時々残雪。鎖場の連続する急な岩稜帯の通過ありで距離も短くない、中級者向けコース。本当は10kg程度の荷物の軽快スタイルで行きたかったのですが、テストも兼ねて、荷物の重さは15kg程度で行きました。実は個人的にいつか歩いてみたかったトレイルのひとつだったのですが、結果としてこの1足のパフォーマンスをフルに引き出す最適なルートであったように思います。

フィット感・快適性

手に取ってみてまず感じるたのは、岩稜帯を歩けるブーツとしては想像以上に感じる軽さでした。アッパー生地もかなり薄い。テクニカルメッシュ素材にTPUを組み合わせたというアッパーは、無駄を省いた単層構造になっていることで軽さをキープしつつ、ハリのあるTPUが強度と形状安定性を両立させています。

足を入れた第一印象は、決してランニングシューズのような「柔軟・フワフワ・密着フィット」といったものではなく、あくまでも「登山靴」ベースの(どちらかというと)硬めのフィット感。逆に言うとサイズや足型があっていれば高いホールド感を備えているといえます。実はPEAKSテストで初めて履いた時はワンサイズ大きかったこともあり、正直フィット感の印象は良くなかったのですが、このテストに合わせてワンサイズ小さいものを履いてみると、その印象が大きく覆りました。箱から出してすぐにトレイルに飛び出せるだけの柔軟性を備えつつ、しっかりと足をホールドしてくれます。

このホールド感の高さは、靴を一周してアッパーからミッドソールまで覆うように包み込む頑丈なTPUランドによっても補強されています。これにより足が靴の中で浮きにくく、ブレを抑制してくれると同時に、岩に擦りつけても折れた枝に引っかかっても安心のプロテクションを実現しているわけです。

メッシュ部分はスースーするほどそこまで通気性が高いわけではありませんでしたが、全体として薄い作りのため熱が籠るということはありませんでした。

先ほども少し触れましたが、サイズ選びにはややシビアだと感じました。スカルパ一般で言えることかもしれませんが、全体的に細身なラスト(木型)を採用しているようなので、標準的な足幅や幅広甲高のハイカーは、普段のサイズより1つ上のサイズが無難かもしれません。いずれにしても購入前は実際に試着することをおすすめします。

プロテクション・耐久性

一見すると、TPUフィルムとテクニカルメッシュを組み合わせた薄手の単層アッパーは、荒れた岩場では頼りなく見えるかもしれません。しかし、今回のハードな岩稜帯テント泊でのテストを経ても、岩との摩擦による擦り切れやデラミネーション(剥離)はほとんど見られず、耐久性は想像以上に強固です。

つま先からサイド、踵にかけて配置された軽量かつ頑丈なTPUランドが、ガレ場や木の根との衝突から足を完璧に守ります。また足首を包み込むミッドカットのカラーは、アキレス腱への不快な圧迫を防ぎつつ、砂利や小石、残雪(スピンドリフト)の侵入をシャットアウトし、足元を保護するディテールも抜かりありません。

その分、やはりランニングシューズ・メーカーの作るハイキングモデルのような極端な軽さはありません。しかしだからといってこのブーツが軽快でないかというとまったくそうではなく、テクニカルな地形を軽量スタイルで歩ける靴としては異次元の軽さを備えていることは間違いありません。

パフォーマンス

歩きやすさ・クッション性・反発性

ミッドソールは「デュアルデンシティEVAクッション」を採用。つまり密度の異なるEVAを組み合わせて、最小限のボリュームで最大限の効果を上げるための効率性を追求した構造。これは例えばHOKAのようなフカフカとした極厚のマキシマリスト系クッションでもなく、同時にペラペラのミニマリスト系クッションとも異なり、「適度なクッション(衝撃吸収)」と「走ったり攀じ登ったりするときのレスポンス(反発性とエッジング性能)」のバランスを備えたソールです。今回のような変化に富んだコースを履いてみると、このソールバランスは非常にマッチしていることが分かりました。北米など大陸系の横に長いトレイルではクッション性や足裏感覚を重視する方が有利かも知れませんが、日本のように高低差と地形変化の激しいコースでは、正直こちらのバランス型の方がうってつけなのではないかと思う。

また足首周りのカットは両サイドがしっかりと捻りを防ぐように高く、後ろ部分は可動性を高めるためにくりぬかれているため、スピーディーな足さばきと下りでの捻挫防止を両立した万全の作りです。実際に歩いていて上下動の大きな動きで窮屈だと思ったことも、また足を捻りそうになったこともありませんでした。

ドロップ(前後の高低差)もかなり高め(独自調べでは10mmらしい)で、ヒール部分には十分なクッションが備わっており、長時間歩行での疲労を和らげ、自然な体重移動とスムーズな足運びをサポートしてくれます。クランポンは非対応ながら、春先の残雪期や残雪混じりの稜線トラバースで簡易的な軽アイゼンやチェーンスパイクを合わせても、相性的には問題なさそうです。

トラクション・グリップ・滑りにくさ

アウトソールには独自開発の「Presa HIK-06」が採用され、粘り気のある「SuperGum」ラバーコンパウンドが土踏まずの直下に搭載されています。

広く、深く、エッジの効いたラグパターンは、湿った泥、砂、締まった土の急坂、そして軟雪(ソフトスノー)の上で素晴らしい嚙み込みを見せ、高い推進力と制動力を発揮します。

特に「SuperGum」ラバーコンパウンドがぬかるみの急な下りでもしっかりと地面に食い込んでくれるので、泥混じりの滑りやすい路面でもしっかりと安定した着地を行うことができました。この辺の細かな設計が積み重なって、タフな地形での抜群の安定感を生み出している、そんな印象がそこかしこから感じられます。

あくまでもハイキングブーツであることから、つま先にはクライミングゾーンなどの明確な登攀機能はありませんが、長い鎖場続きの岩稜帯を歩いた限り、つま先部分の精度は抜群でした。二本足で歩けるギリギリの急斜面で、細かいホールドに荷重をかけて登るようなスクランブルでしっかりとしたエッジング性能を発揮し、十分な剛性はテクニカルな地形で安心感を与えてくれます。

また踵部に配置された「ダイナミック・スタビライザー・トーション(DST)フレーム」は、重荷でかかとから着地してもしっかりとねじれ剛性を発揮し、不意な足首のひねりを防いでくれました。このパーツは、これがあるとないとで評価は大きく変わったと思うほどにこのブーツの優れた安定性を支えていると感じられます。

防水性

新しい「GORE-TEX ePEメンブレン」も相変わらず信頼性抜群です。足首上までのシュータン一体型構造によってぬかるんだトレイルやシャーベット状の雪の中を歩き続けても、足首の上から入り込まない限りは内部への浸水はゼロで済みます。蒸れで足裏や指先が汗でグショグショになるような感覚も今のところはなく、相変わらず優れた透湿性が真夏のハイキングでも安心です。

まとめ:日本の高山ハイキングにぴったり。ハードでテクニカルなルートでも、軽快に、アグレッシブに駆け抜けたい人のためハイブリッドブーツ

おすすめのシーンとスタイル

  • アップダウンが激しく、泥やガレ場、岩稜帯や残雪など路面状況がめまぐるしく変わる3シーズン(春夏秋)のテクニカルなトレイル
  • 1日の行動距離が長く、ペースの速いファストハイキング・スピードハイク
  • 軽快に動きたいけれど、足首の保護は譲れない軽量バックパッキング(1泊〜数日のテント泊)

こんな人におすすめ

  • 「トレランシューズでは足元のプロテクションや剛性が物足りないが、足さばきの自由度が制限される伝統的な登山靴には戻りたくない」という、軽快さと安定感、そのどちらも譲れないハイカー。
  • 難しい地形でもスピードと安定性を両立させ、より山での行動範囲を広げたいステップアップ志向のファストハイカー。

リベレクロス2ミッドGTX」は、軽量性とプロテクションという相反する要素を、先端技術とスカルパらしい熟練した匠のクオリティで見事に調和させた、完成度の高い軽量ハイキングブーツです。その絶妙なバランスの良さはともするとウルトラライト派には少しカッチリしすぎ、クラシック派には少々スポーティに映るかもしれませんが、この完成度の高いオールラウンダーこそ、実はその両方が求められる日本の山岳風景に「最も効率よく、安全に山を駆け抜ける最適解」となるかもしれません。しっかりとサイジングをしたうえで、ぜひとも試してみてもらいたいと思える1足でした。