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【忖度なしの自腹比較レビュー】「モンベル×サーモス×SOTO」 山好きはどのチタン製真空断熱ボトルを買うべきか?

チタン製真空断熱ボトルもようやく「選べる」時代に

厳しい寒さのアウトドアシーンでは特に重宝する、保温性に優れた真空断熱ウォーターボトル。もちろん熱いお湯だけでなく、キンキンに冷えた水も温度をキープしてくれるため、冬だけでなく夏でも大活躍してくれます。

長らくステンレス製のボトルが主流でしたが、ぼくを含めコアな山好きからは、当然金属としてより軽量で強度の高いチタン製ボトルが待ち望まれていました。ただ残念ながらチタン加工は技術的なハードルも高く、これまでずっとサーモス社以外での選択肢はなかったのが現実でした(サーモスでは30年以上前からチタン製の真空断熱ボトルが存在)。

そんななか、ここ数年の溶接・加工技術の進歩等によってチタン製モデルが他メーカーからも徐々に登場。そして2023年末、山用保温ボトルではおなじみのモンベルからもチタン製モデルの新作が登場したことで、ついにチタン製保温ボトルが「選べる」時代がようやく到来したといえます。

そこで今回は、それぞれ似ているようで微妙に異なる個性をもったデザイン・性能・機能の国内ブランド製アウトドア向け3モデルを、主にアウトドア・登山向けとしてどれだけ使えるかを基準に、さまざまな観点から比較レビューしてみたいと思います。

今回比較したベスト保温・保冷ボトル候補3アイテム

今回チョイスしたのはアウトドア系ブランドからリリースされている、アウトドア・レジャー向けの500ml前後のチタン製真空断熱ウォーターボトル3アイテム。

THERMOS 真空断熱チタンボトル/FJN-500T

mont-bell チタン アルパインサーモボトル 0.5L

SOTO チタンボトル300 ST-TN30

評価項目については、下記の通り6つの指標を設定。

  1. 断熱性能・・・ウォーターボトルの基本機能。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。出来るだけ長い時間温度を保っていられるかを測定。
  2. 携帯性(重量・サイズ感・持ちやすさ) ・・・荷物の量がシビアなアウトドアではやはり携帯性に優れたものを選びたい。ここでは軽さと収納性、そしてボトルの持ちやすさ、落としにくさを総合的に判断。
  3. 蓋・飲み口・・・蓋の密閉性の高さ、蓋を開けてから飲むまでの素早さ、使いやすさ、そして飲み口の作りの良さにフォーカスを当てたのがこの指標。蓋がしっかりと締まり、最も速く簡単に、そして口当たりよく水分補給ができるボトルに高いスコアが与えられます。
  4. お手入れ・・・大きさや構造、パーツの数などによって、どれだけ簡単にお手入れできるかどうかを評価。使うたびに洗うものなので、外せないポイント。
  5. 容量・・・水を運ぶ道具である以上、限られた重量でもできる限りたくさんの容量を持ち運べる方がいい。
  6. 耐久性・・・強度の高いチタンではありますが、軽さを出すため極力薄くしています。従って加工や薄さによって傷つきやすさや凹みやすさ等違いが出るもの。可能な限り傷めつけて比較してみました。

性能・比較レビュー結果

性能と比較テスト結果一覧

魅力確かな性能と品質の高さ圧倒的なコストパフォーマンス及第点の断熱性能と優れた携帯性
アイテムTHERMOS 真空断熱チタンボトル/FJN-500Tmont-bell チタン アルパインサーモボトル 0.5LSOTO チタンボトル300 ST-TN30
イメージ
ここが◎
  • 高い断熱性能
  • 収納性
  • 十分な耐久性
  • スリムで持ちやすい
  • 端正なデザイン
  • 高い断熱性能
  • 3つの中でも最も低価格
  • 大きさのわりに軽い
  • 十分な耐久性
  • 優れた携帯性
  • キャップを開けてすぐ飲める
  • 持ち手があって持ちやすい
  • シンプルなパーツと広口で手入れも簡単
ここが△
  • 3つの中ではわずかに最も重い
  • 飲むまでの手間がかかる
  • 高価
  • 全体的に大きめでかさばる
  • 飲むまでの手間がかかる
  • デザイン性
  • やや断熱性能が低い
  • 内栓が無く広口のためこぼしやすい
  • 300mlと容量が少ない
  • 素材が薄く、衝撃に弱い
Outdoor Gearzine 評価
断熱性能★★★★★★★★★★★★★☆☆

携帯性(重量・サイズ感・持ちやすさ)

★★★★☆★★★☆☆★★★★★
蓋・飲み口★★★☆☆★★★☆☆※オプションの交換用アクティブリッドなら★★★★★★★★★☆
お手入れ★★★☆☆★★★☆☆★★★★☆
容量★★★☆☆★★★☆☆★★☆☆☆
耐久性★★★★☆★★★★☆★★★☆☆
スペック
容量バリエーション500ml500ml200/300ml
実測重量 (g)207.4195.1139.2
本体寸法 (直径×高さcm)約Ø6.5 × 23.5約Ø6.8 × 22.5約Ø6.2 × 21.4
公式保温効力 (6時間)95℃±1℃ → 69℃以上(室温20±2°C)95°C → 70°C以上(室温20±2°C)非公表
公式保冷効力 (6時間)4℃±1℃ → 10℃以下(室温20±2°C)4°C → 10°C以下(室温20±2°C)非公表
参考価格14,300円(税込) 7,370円(税込)¥9,900円(税込)

各モデルのインプレッション

総合的な性能と品質の高さではBEST:THERMOS 真空断熱チタンボトル/FJN-500T

すっきりとしたスタイリッシュなボディのFJN-500T

登山専用のステンレス製断熱ボトル「山専ボトル」によって日本の山ヤで知らない人はいない存在のサーモス(テルモス)ですが、実に30年以上前の1988年からチタン製モデルを開発しています。ただ当時はやはり高価な割にそこまで軽くなかったりしてどうしても一般ユーザーには高嶺の花的なポジションであったことは否めません。ただ3年前に発売されたこの第3世代は価格こそそれなりに張るものの、先代に比べて大幅に軽量化されながら相変わらずの高い断熱パフォーマンスを備え、かつて極限に挑む登山家や冒険家たちのために生まれた歴史を踏まえた優れた耐久性や機能的も文句なし。その上高級感のあるスタイリッシュなフォルムで所有欲まで満たしてくれる完成度の高いモデルです。

断熱性能については、冷凍庫での独自のテストや冬山でのフィールドテストでも高い温度を長時間キープ。お昼にカップラーメンを食べるのも不可能ではなく、前夜にお湯を作っておいて朝一で食事や温かいコーヒーを飲むソロキャンプなんてことももちろんできちゃいます。ちなみにステンレス製の山専ボトルと比べると(下写真)内蓋のダブルスクリューせん構造がシンプルになったりゴム製の滑り止め等が省かれたりしていますが、断熱性能はそこまで落ちておらず、ボディもスリムで握りやすくなっていたりするので、使い勝手に関してほとんど気になりません。

現行から一世代前のステンレスモデルFFX-500(左)とFJN-500T(右)を分解したところ

アウトドアで利用するうえで何よりも代えがたい、高い性能とその性能をどんな状況でも享受できる高い信頼性をもったモデルといえます。とはいえやはり価格だけはネックとなるのは致し方ないところでしょうか。

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フットワークの軽さではBEST:SOTO チタンボトル300 ST-TN30

滑らかな飲み口、直飲みタイプのチタンボトル300

2022年に初代が登場した際に思わず「こんなのを待っていた」とつぶやかずにいられなかった、SOTO(新富士バーナー)の断熱ウォーターボトル市場初参入のチタン製断熱ボトル。まともな魔法瓶メーカーなら決して決断できなかったであろう思い切った「割り切り」が随所に見られ、通常の見方では物足りないその特徴が、あるシーンでは逆に「魅力」として浮かび上がる。場面によってはこれ以上なく最適な選択肢となり、ぼくにとって決して見過ごすことのできないボトルとなっています。

何といっても魅力は「とにかく軽量でコンパクト、シンプルな作りで手入れも簡単」なこと。ただその代わり保温性と容量、耐久性はそこそこ。とはいえ早朝に入れた熱々のお湯はお昼頃までは温かく飲むことができますし、300mlの容量は短い行動時間での飲料用なら十分な量とも言えます(500mlがあればなお良しなのは確かですが)。

内栓は無く、ゴムパッキン付きの蓋のみのシンプルな構造

秋冬の短いルートや緊急事態を避けられる見通しの高いルートで、山頂でカップラーメンを作れなくてもいいけど一杯の熱いコーヒーが欲しい時、可能な限り荷物を軽くコンパクトにする必要がある場合にはドンピシャといえるボトルです。

コストパフォーマンスでは圧倒的にBEST:mont-bell チタン アルパインサーモボトル 0.5L

厳冬期の北海道で使用してもその高い断熱性能を実感したチタン アルパインサーモボトル 0.5L(左)、軽快さで飛び抜けたチタンボトル300(右)

山専ボトルの強力なライバルである「アルパイン サーモボトル」に、ついに登場したチタンモデル。

コップカバーの外栓とパッキン付きの内栓による構造や見た目はステンレスモデルとほぼ変わらず。ただ強度を確保し得る極限まで薄くし、熱の流出を抑える反射加工を施した真空二重構造は、先行するサーモスのモデルと比べて頭一つ抜きん出た軽さを実現しながら、断熱力では拮抗した性能を備えています。そして何よりも驚きなのは、ここまで高いパフォーマンスを達成しながら他2モデルと比較しても圧倒的に高いコストパフォーマンス。

注ぎ口のある内栓とコップの外栓による、魔法瓶としては一般的な構造

シリコーン製のプロテクターや直飲みタイプに飲み口を変更できるアクティブリッドなどのオプションも充実していることもありがたい。ずんぐりしたボディとやたら主張の強いロゴは好みの問題かもしれませんが、それを除けば相変わらずのモンベルらしい実益重視の魅力が詰まったボトルです。

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各項目詳細レビュー

断熱性能

寒冷地と通常の室温の2つの環境で温度変化を計測

真空断熱ボトルの性能で最も基本的な部分である、断熱性能について、サーモスとモンベルについては公式スペックが記載されていますが、SOTOは公表されていません。そこで実際のところはどうなのかも含めて、決して厳密とはいえないまでもどの程度保温力があるのかをテストしてみました。

テストは2回。1回目は沸騰したばかりのお湯を各ボトルに注ぎ、それらを厳冬期の冬山を想定して中が -16℃ 前後になる冷凍庫に入れ、7時間後の温度を測定するというもの(下写真)。

沸騰したお湯を入れ、7時間冷凍庫にて保管

2回目は、同じように沸かしたお湯をボトルに入れ、通常の室温(17~23℃度くらいを行ったり来たり)で保存し、5・6・7時間後の温度を測ったものです。それぞれでの温度変化は以下のような感じでした。

■ボトルを-15℃前後の冷凍庫に入れて7時間後の温度

経過時間 (時間)THERMOS FJN-500T (℃)mont-bell チタン アルパインサーモボトル (℃)SOTO チタンボトル300 (℃)
096.897.394.4
768.767.541.5

■ボトルを20℃前後の部屋に置いて5・6・7時間後の温度

経過時間 (時間)THERMOS FJN-500T (℃)mont-bell チタン アルパインサーモボトル (℃)SOTO チタンボトル300 (℃)
095.093.193.2
576.275.462.3
673.372.358.1
768.268.353.3

あくまでも家庭用の設備や機器を用いた簡易なテストであることを一応理解していただいたうえで、結果はサーモス・モンベルについては6時間後に95℃前後の水温が6時間後でも70℃以上をキープし、7時間後でも60台後半(飲もうとすると熱っと感じるくらいの温度)と、公式の測定値とさほど大きな差異は無くむしろ控えめに書いているといってもいい温度変化となりました。

一方SOTOのボトルは通常の室温では6時間後に約58℃、寒冷状況では7時間後に約42℃と、2モデルと比較すると残念ながら保温性能はやはり一歩も二歩も劣るという結果となりました。ちなみにイメージとしては、個人差もありますが60℃前後のお湯は飲むにはちょっと熱めのお湯、50℃前後のお湯はがぶがぶ飲める温いお湯といった感じでしょうか。SOTOを使うなら山頂でカップラーメンなどは端から考えられず、ちょうど温かい飲料が飲める程度と理解しておく必要があります。

またSOTOの場合、外気が低温状況での温度低下スピードがさらに激しくなっている点にも注意が必要です。サーモス・モンベルの方は、外気が低温であったとしても(上の冷凍庫)室温の時と結果はほとんど変わりません。この理由はキャップの構造にあり、SOTOのような広口かつ外栓のみの構造ではどうしてもキャップを伝って熱がどんどん逃げていきやすくなってしまうため、外気の影響を受けやすくなってきます。

携帯性(重量・サイズ感・持ちやすさ)

重量・サイズ感

チタンを選ぶ最も大きな理由のひとつはその軽さにあるのはいうまでもありません。コンパクトさも含めた携帯性の高さはチタンという高価な買い物をする以上、当然求めたくなります。容量の違いがあるとはいえ、ここではSOTOの軽量・コンパクトさは圧倒的です(もちろんいろいろなものを諦めたからこそ実現されている分けですが)。

そしてさすが後発であるモンベル、サーモスを明らかに意識しているようで、サーモスよりもちょっとだけ(10グラム前後)軽くなっています(ちなみに公称の断熱性能についてもサーモスよりも微妙に高いといった気の配り方はさすが)。とはいえ10グラムという差は実際に使ってみると、よほど敏感な人でない限りはさほど気にする必要はないかと思われます。それよりも個人的にはこれから話す「持ちやすさ」の方が気になりました。

持ちやすさ

秋冬はグローブをしたままウォーターボトルを扱うことも多く、ボトルを握った際のグリップ性は見逃せません。持ちやすい形状になっていたり、ゴム製のグリップなどが付いていれば滑りにくくなるのですが、今回の3モデルはどれもそうした仕様にはなっていません。違いといえば、SOTOのボトルはスリムで握りやすく、表面に凹凸感をつけて滑りにくくなっているのが好印象。サーモスはすべすべでやや滑りやすいがステンレスモデルよりもスリムになっていて手の大きさに収まりやすい。モンベルはこの中では最も太っちょであるがゆえに相対的には持ちにくさを感じてしまいました。

蓋・飲み口

構造上飲み口が広ければ広いほど、また内・外栓によって空気層が多く作られていればいるほど、その分断熱効果は低下します。ただ、そうなってくると飲み口はより複雑でパーツも多くなり、飲むまでの手間が増えてしまいます。

こうした視点から飲み口を比べてみると、サーモス・モンベルの2モデルは断熱性能を重視した内栓とコップになる外栓の二重構造、一方でSOTOは断熱性能よりも飲みやすさ・シンプルさを重視した直飲みキャップ構造。このため飲み口の心地よさや飲む・仕舞うといった使い勝手という点で評価するとすれば、SOTOのシンプルさに軍配が上がります。

サーモスとモンベルの飲み口は共にコップでほとんど差はありませんでしたが、サーモスの場合注ぎ口が「細口・広口」と注ぐ量を調整できる2パターンの口になっている点でやや親切な作りといえます(下写真)。

ただ、モンベルの場合、別売りオプションで提供されている「交換用アクティブリッド」なるパーツがあり、飲み口をこちらに交換すればSOTOに勝るとも劣らず素早い操作が可能となる点は見逃せません。

お手入れしやすさ

ボトルの構造はシンプルに越したことはありません。構造がシンプルならば飲むときにも手間がかからないし、お手入れもしやすい。逆にパーツがたくさん使われているモデルは飲むまでに手間がかかり、毎回のお手入れの際の分解も億劫です。その点でおすすめの大本命はやはりSOTO。サーモス・モンベルに関しては、どちらもほとんど差はなく、手入れのしやすさに関しては可もなく不可もなくといったところでしょうか(下写真)。

SOTOのボトルは飲み口も広く、部品も少ないのでお手入れもしやすい

耐久性

今回のラインナップはボディの素材自体はすべてチタン製で大きな差異はないように思えますが、加工方法や厚みが異なるため、当然重量はもちろん、耐久性も変わってきます。ただその微妙な差異までは計測不可能なため、自分で可能な範囲で外壁の強靭さを試してみました。

試したといってもぐりぐり思い切り押してみたり、硬い地面にちょっとした高さから落下させてみたりしただけですが、それでもSOTOのボディの繊細さはすぐに分かりました。親指でぐいぐい押すと結構凹みます(下写真)。これは重量と引きかえに外壁も極限まで薄くそぎ落とされているからということは容易に想像できます。普通に使う分にはまったく問題ないのですが、万が一大きな衝撃を与えてしまったときには少し注意が必要です。他の2アイテムに関しては薄いといえどもそこまで柔ではなく、ステンレス鋼ほどではないとはいえ耐久性は問題なさそうです。

SOTOは他の2モデルと違い、ボディを親指で強く押すと、意外と簡単に凹みができてしまった……

まとめ:それぞれに良さがある3モデルは自分が優先するポイントで選ぼう

さまざまな角度からの評価を合わせてみると、3モデルにはそれぞれ他にはない魅力を備えており、単純にどれが一番というのは一概には言えないなかなか難しい結果となりました。

その前提で、あえて今回の比較レビューでの個人的な結論を出すとすれば、まず価格を除いた性能・機能・デザインで最もおすすめなのはサーモス。トップメーカーとしての品質の高さは今回あらためて感じられました。山専ボトルにあった野暮ったいデザインも見違えるように垢抜けて、機能も見た目もまったくスキがありません。

一方で、軽快さ重視のアクティビティしかしないならSOTO。ぼくの場合でいうと通常の雪山にはサーモスですが、特に日帰りバックカントリーなどスピード・軽さ重視でゆっくり熱々のお湯を必要としないケースではこちらを持っていくでしょう。

最後にモンベルですが、多少かさばってもいい、機能とコスパを最も重視する(見た目は特に気にしない)場合ならノーチョイス。この価格でこれだけのパフォーマンス・拡張性を備えているのは、文句なしに素晴らしいの一言です。

山の上ではまだまだ寒さも終わっていません。これからも気をつけて、良い道具で、良い旅を。