比較レビュー:冬山の必需品、あるいは日々のマイボトル。保温・保冷ウォーターボトルを飲み比べてみた
冬であろうとも、登山中は大量の汗をかくため、水分補給は欠かせない。とはいえ凍えるような環境では、冷たい飲料水ばかりでは身体を冷やしてしまう。さらに気温の低いなかでの登山は、冷たい飲料水は凍ってしまうこともしばしば。そんなとき温かい飲み物は、芯まで冷やされた身体をほぐし、心身に再び活力を与えてくれる。
冬のアウトドアシーンで重宝するのが、保温保冷に優れたウォーターボトルだ。バッグのサイドポケットなどに収納している方も多いだろう。「保温・保冷」というだけあって冷たさもキープしてくれるため、冬だけでなく夏にも大活躍してくれる。昔と違って近年では日常使いからキャンプ、レジャー、そして本格登山向けまで、使えるモデルのバリエーションも豊富になってきた。デザイン、機能性にそれぞれ個性があるが、今回は主にアウトドア・登山向けウォーターボトルとしてのストライクゾーンを判断してみた。
目次
- 今回比較した保温・保冷ボトルについて
- テスト結果&スペック比較表
- 各モデルのインプレッション
- 驚いたのはデザインだけじゃない:FLSK ボトル
- トータルでの完成度の高さ:Hydro Flask 18 oz Wide Mouth
- デザインと使い勝手を両立:SIGG ホット&コールド ワン 0.5L
- 質実剛健の機能美が冴える:Klean Kanteen TKPro 0.5L
- 性能だけでなく環境への意識も高し:MiiR WIDE MOUTH 16oz
- 高性能かつ軽量・高耐久を追求:mont-bell アルパイン サーモボトル 0.5L
- 高性能と気軽さとを両立したマルチユース:STANLEY ゴーシリーズ 真空ボトル
- 登山での確かな実績を誇るロングセラー:Thermos 山専用ステンレスボトル FFX-500
今回比較した保温・保冷ボトルについて
先ほど書いたように、最近ではレジャーだけでなく、毎日の仕事で使ったり、キャンプや軽いアウトドアで使ったりと、ニーズに合わせて幅広いモデルが発売されている。このため基本的にはアウトドア系ブランドからリリースされている、アウトドアやレジャーに使用できる、500ml前後のモデルと範囲を絞って、定番ものから最新モデル、有名メーカーからベンチャー系ブランドまで、バリエーション豊富な以下の8製品をチョイスした。
- Thermos(サーモス)山専用ステンレスボトル FFX-500
- mont-bell(モンベル)アルパイン サーモボトル 0.5L
- STANLEY(スタンレー)ゴーシリーズ 真空ボトル 0.47L
- MiiR(ミアー)WIDE MOUTH 16oz
- Klean Kanteen(クリーンカンティーン) TKPro 0.5L
- SIGG(シグ)ホット&コールド ワン 0.5L
- Hydro Flask(ハイドロフラスク)18 oz Wide Mouth
- FLSK(フラスク) ボトル 500ml
評価項目については、下記の通り5つの指標を設定。
- 保温保冷・・・ウォーターボトルの根本的な機能。暖かいものは暖かく、冷たいものは冷たく。出来るだけ長い時間、飲み物の温度を保っていてほしいものだ。
- 携帯性 ・・・ウォーターボトルは、持ち歩くものだからこそ、携帯性に優れたものを選びたい。ここでは、携帯性として、軽さと収納性等を判断した。山でも街でも、持ち運びしやすさは、いいに越したことはないのだ。
- デザイン性・・・アウトドアのみならず、日常生活でも使うことが多いウォーターボトルだからこそ、ボトルフォルムによる、飲み物を口にする際の飲みやすさ、ボトルの握りやすさは、気になる点。使い勝手がいいデザイン性をジャッジした。
- お手入れ・・・大きさ、構造、パーツの数などによって、お手入れが楽であったり、面倒であったりするもの。日常やアウトドアでも使うものなので、外せないポイント。
- 使い勝手・・・構造のシンプルさ。高い耐久性や耐衝撃性。グローブしたままでも扱いやすいなど、環境やユーザーの状況・状態を考慮した使い勝手のよさをジャッジ。
テスト結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
※1保温効力(6時間)…室温20℃±2℃において、製品に満たした熱湯が95℃±1℃のときから6時間放置した後の湯の温度
※2保冷効力(6時間)…室温20℃±2℃において、製品に満たした熱湯が4℃±1℃のときから6時間放置した後の湯の温度
各モデルのインプレッション
驚いたのはデザインだけじゃない:FLSK ボトル
今までにないスタイリッシュなデザインのウォーターボトル。当サイト編集長が今年のISPOで一目惚れし、満を持して試してみた。メーカー独自のステンレス真空二層構造に加え、内部の銅コーティングの壁が保温性をより強化。保温18時間、保冷24時間のキープというのがメーカーの謳い文句だが、ほぼ間違いないだろう。テストした中で、ダントツの温度キープ力だった。高級ステンレス鋼を採用しているため、サビにいくく、汚れも落としやすい。よくありがちな、コーヒーなどの色移りやニオイも残りにくい性能を持つ。ボトル本体と蓋とパッキンのみのシンプル構造。スリムボトルゆえに、やや中を洗いにくい気もするが、工夫次第でなんとでもなるし、専用クリーニングビーズを使えば超ラクラク。欲をいえば、ボディにグリップ性があればよかった。
トータルでの完成度の高さ:Hydro Flask 18 oz Wide Mouth
チャーミングなロゴデザインが印象的なウォーターボトル。ステンレスの二重壁真空断熱構造により、保冷最大24時間、保温最大6時間を誇る。温度差で表面が結露することはない。耐久性・耐錆性に優れた18/8ステンレスを採用。寸胴タイプのフォルムは、飲み物を美味しく保ち、お手入れもカンタンだ。素材には人体に悪影響を及ぼすビスフェーノールA(BPA)を一切含んでいない。ボトル表面には、独自のパウダー加工には施され、濡れた手でも握りやすく滑りにくい。柔軟で耐久性の高いストラップは、手に引っ掛けやすい大きさで、ちょうどいい。蓋はハニカム断熱キャップで、ボトル内部の温度をキープ。ただ、蓋を開けた際に液だれを起こしやすいのが、ちょっとマイナスポイント。
デザインと使い勝手を両立:SIGG ホット&コールド ワン 0.5L
1908年、スイスで創設された金属加工の専門メーカーSIGG。老舗のウォーターボトルは、ドイツのグッドデザイン賞「GERMAN DESIGN AWARD WINNER 2016」受賞するほどの、研ぎ澄まされたデザイン。口にする際、(グローブをしたままでも)片手でワンタッチ操作ができるユーザビリティー溢れる優れもの。とりわけ、アウトドアシーンでは光るポイントだ。錆びにくく、耐久性の高い18/8ステンレスを採用しており、保温効力の高まるステンレス製真空2重構造。本体に含まれる金属ジルコニウムが、真空層の酸素や湿気と結合することで、容器内の熱や冷気を外に逃がさない真空効果を高めている。さらに、真空面の内側に銅のコーティングを施されており、内側での一層高い熱反射性保っている。保温効力は68℃で6時間。片手で使える点は、高く評価できるが、洗浄時には少々苦労をするのは否めない。
質実剛健の機能美が冴える:Klean Kanteen TKPro 0.5L
堅牢なステンレスカップ付きのため、やや大きめで今回のなかでは最も重い(致し方ない)。無骨なまでに格好良く、シンプルなフォルムのウォーターボトルだ。キャップは少しひねれば注げるポアスルーテクノロジーを採用。360度どの位置からでも注げる。カップもダブルウォール構造で、手の中にしっくりくるフォルム。グローブをしたままでもラクラク扱える。採用されているKlean Coat™は、 従来のパウダーコートと比べて4倍の強度を誇る。グリップ性が高いざらついたボトル表面もプラス評価。プラスチックは一切使用されておらず、18/8ステンレスとシリコーンのみのClimate Lock™ダブルウォールの真空断熱構造。ボトル内側は電解研磨が施こされ、有害な製造工程はなく、もちろんBPAフリーだ。臭い移りもしずらく、大きめのボトルゆえに、手入れがしやすい。カップ付きのモノであれば、まず、これをチョイスすべき。
性能だけでなく環境への意識も高し:MiiR WIDE MOUTH 16oz
ダブルウォール真空断熱構造のシンプルなウォーターボトル。内面は金属臭がしない18/8メディカルグレードのステンレススチールを採用。また、外面は手に持ちやすいハードシェルパウダーコート塗装が施されている。BPAフリーで、フタも手に引っ掛けやすいフォルムだ。アウトドアシーンでもなにかと使いやすい。ボトルはTemp Deflector™テクノロジーによって、温度が外に放出されるのを防いでいる。シンプルな作りは嬉しいが、アイスキューブの入るワイドマウスゆえか、外気との触れ具合が大きく、保温保冷の効きが弱い気がしなくもない。取り組みとしては、売上の一部が追跡可能なクリーンウォーター&ヘルスプロジェクトに適用され、世界中の水、教育などに不自由している地域をサポートしている希少なボトルだ。
高性能かつ軽量・高耐久を追求:mont-bell アルパイン サーモボトル 0.5L
コップカバー付きのコンパクトな登山用ボトルだ。本体表面には強度に優れたSUS304ステンレス鋼を、内面には腐食に強いSUS316ステンレス鋼を使用した真空二層構造。また、熱の流出を抑える反射加工を施されており、6時間ぐらいなら、保温保冷ともに期待通りだ。コップつきでもシンプル構造。日常でもフィールドでも使いやすい。利用方法としては、内栓をゆるめて、中身の飲み物をコップカバーに注いでから、口にする。コップカバーと底カバーはシリコンでできており、置いた時の安定感はかなりいい。アウトドアなどの屋外での利用には、なかなか嬉しいディテールだ。内栓のゆるませ加減が、やや分かりづらいのが減点ポイント。
高性能と気軽さとを両立したマルチユース:STANLEY ゴーシリーズ 真空ボトル
スタンレーのマルチユースモデル、ゴーシリーズ。真空断熱構造で、57度以上で6時間。8度以下で6時間を保つものの、他社と比較するとやや弱いかもしれない。飲み口は、家庭用の氷も楽々入れられるくらいの大きめの直径6cm。フタとボトル本体のみの構造で、お手入れはしやすいタイプだ。食洗機も使用可能。とはいえ、バックパックのサイドポケット等に収納するには、若干大きいかもしれない。フタは最新の合成樹脂トライタンを採用。中身が見えるスケルトンタイプで、フィンガーループを装備していて、持ち運びがカンタンだ。生涯保証の割には、3500円程度とリーズナブルな価格設定。エントリーモデルとしては、手頃に選択できるモデルだが、保温保冷面に、ひと工夫ほしいところだ。
登山での確かな実績を誇るロングセラー:Thermos 山専用ステンレスボトル FFX-500
グローブをしたままでも扱いやすいボディリングの「山専用サーモス」。ボディは36mmの口径を採用。ステンレス製真空二重構造で、77度以上の温かさを6時間はキープ(室温20度)する。ボディに備わっているシリコン製リングは、握りやすく、落下時等のダメージも抑制。底部のシリコン製底カバーも落下時等の衝撃を抑えるもの。ボディの傷つき防止の工夫が施されている。また、底面が広く安定した形状で、高いホールド性のノンスリップコップは、滑りにくく、グローブしたままでも扱いやすい。アウトドアシーンならではの機能面が色々と長けているボトルだ。とはいえ、ダブルスクリューせんが、どうしても他社と比較すると複雑。お手入れ面でマイナス。シンプルさも追求してほしい。