一度知ったらやめられない!スノーシューを選ぶときに知っておきたい3つのポイント ~スノーシューの選び方~

スノーシューで雪を歩くと世界が変わる

雪、氷、風、寒さによって閉ざされた冬山の世界は、半端な覚悟では足を踏み入れることが許されない、敷居の高い世界であることは確かです。ただ一方で日常生活では目にしたことも無いような素晴らしい風景と、静けさのなかで雪を踏みしめる音だけが響く、冬でしか味わえない空気感・・・いずれも言葉にできない感動を与えてくれることは間違いありません。今まで見ていた自然がさらに奥深いものに見えてくるかのような、お世辞抜きで世界の見え方が変わる感覚。そんな雪の世界を最も手軽に体験できるのがこのスノーシューハイキングです。今回はそのスノーシューを楽しむために必要な道具の最新情報を調査し、自分の経験なども踏まえてレポートしてみましたので、さっそく紹介していきたいと思います。

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スノーシューとはどんなもの?

スノーシューとは、踏み固められていないふかふかの雪で覆われた大地を自由に歩くための道具。その歴史は遡ること数千年、人類が厳しい冬の大地で生活するために編み出した道具が原点にあり、実は「スキー」はスノーシューの北欧における進化系統であるともいわれています※。いずれにせよよりシンプル、軽くてコンパクト、そして普通の靴でも履くことができるスノーシューのおかげで、誰もが手軽に雪の中を縦横無尽に歩き回ることができるのです。

スノーシューがなぜ雪上を簡単に歩くことができるのか?その仕組みを理解するには「ボート」を思い浮かべてみてください。水面にボートを浮かべるのと同じように、雪上に接する部分の面積を広くすることによって大きな「浮力」を得ることができ、雪の上でも沈まないという仕組みなわけです。一般的に、荷重が大きければ大きいほど、または雪質が軽く乾いていればいるほど人は沈みやすいため、より大きな表面積のスノーシューが必要とされます。

※山と渓谷社『山岳装備大全』より

ワカンとの違い:雪山登山にはワカンの方が有利!?

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ラッセルからの急な斜面や氷・岩などの固い斜面にはアイゼン+ワカンのコンビが最強

スノーシューは中央アジアを起源としながら世界中に伝播していったわけですが、ここ日本でも独自の進化を遂げてきました。それが「カンジキ(ワカン)」です。ワカンもスノーシューも同じ雪上を歩きやすくするためのものですが、西洋と日本での環境・用途が異なるため、どちらがよいと言うことは一概に言えません。ただ、個人的な経験では日本で冬山登山のために利用する場合においては、比較的ワカンの方がアドバンテージがあります。その辺りを以下の比較表にまとめてみます(あくまでも比較上での特徴です)。

素材 スノーシュー ワカン
特徴 基本的に乾雪・深雪・平坦な場所を長時間歩く場合に最適 日本のような乾雪・湿雪、雪・氷、平坦・急峻、様々な地形で柔軟に対応したい場合に最適
メリット
  • 浮力が大きいため、乾いた軽い雪ならワカンよりも歩きやすい
  • かかとが自由な分、平地ではワカンよりも歩きやすい
  • 取り付けが簡単なモデルが多い
  • 様々なデザインや機能のモデルがあり、スタイリッシュ
  • 軽い・パッキングが楽
  • 価格が安い
  • 深い雪でも足運びが楽
  • 狭いトレースでも歩きやすい
  • アイゼンが付けられる
  • 浮力が少ない分雪を踏み固めたりし易い
  • トラバースの際にも足裏を斜面に平行におけるので安全
  • 急斜面の下りでかかとを使えるので歩きやすい
デメリット
  • 重い・パッキングしづらい
  • 大きくて狭いトレースの場合歩きにくい
  • 価格が高い
  • 深い雪にハマると大きなサイズが災いして足を回しにくい
  • アイゼンを付けたまま履けない
  • 浮力が大きい分雪を踏み固めづらい
  • トラバース(斜面を横切る)の際に、足首を柔軟に使えない分、歩きづらい
  • 急斜面の下りはかかとが使えず滑りやすい
  • 相対的に浮力が小さいため、乾いた軽い雪だとスノーシューよりもハマる
  • 平地ではスノーシューよりも歩きにくい
  • 取り付けが面倒
  • デザインや機能がやや画一的でスタイルがややイケてない

上の表をまとめますと、起伏の変化が激しく、乾雪・湿雪・岩・氷などの変化も激しい日本での登山においては、ワカンの方が有利な場合が多いです。ただ平地での歩きやすさや浮力の大きさ、走破性の高さなど、比較的安定した地形でより快適な歩行ができるのはスノーシューの方に分があります。

どんな靴に合わせるの?

モンベル(mont‐bell) シンプルオーバーシューズ ブラック BK M

オーバーシューズは雪用のブーツやゲイターがなくても手軽に防滴・防寒効果を得ることができる。

スノーシューを履くための靴は、何もゴツい冬用の登山靴である必要はありません。極端な話し、固定さえできれば何を履いても構わないのですが、一般的には「ハイキング・ブーツ(防水)」「ウィンターブーツ」または「冬用登山靴」を履くことが多いです。春~秋用のハイキングブーツの場合、雪の中で使用するには足が冷えてしまう恐れがありますので、そういう場合には左写真のような「オーバーシューズ」という靴の上から履く防寒防雪ギアを使うとより万全です。

 

他に何が必要なの?

ATLAS(アトラス) ELEKTRA 2ピース ロックジョーポール (女性向け) 1831132

スノーシュー用の長さ調節ができて石突きが広いストックがおすすめ。

(モンベル)mont-bell GORE-TEX アルパインスパッツ イージーフィット 1129435 UMR ウルトラマリン L

ゲイター(スパッツ)は GORE-TEX の防水透湿機能が優れたモデルがおすすめ。

一般的にスノーシューで遊ぶ際には、スキーと同じようなストックを使います。ストックを使わなくても歩けないことはないですが、バランスをとるために必要以上の体力を使用しますので、ストック無しでスノーシューをすることはまったくおすすめできません。また、雪の中を歩くときには「ゲイター(スパッツ)」と呼ばれる、ブーツの上部を雪が入らないように覆う道具もあると万全です。

スノーシューの種類:経験と用途によって選ぶべし!

前置きが長くなりましたが、ようやくスノーシューの選び方について解説していきます。現在スノーシューは用途によって大きく3つの種類があるのが一般的です。

タイプ 平地・緩斜面向け 山岳(バックカントリー)向け ランニング(レース)向け
用途 平地~緩斜面を歩くのに最適化されたモデル 平地だけでなく急斜面の登下降も想定して作られたモデル 基本的に圧雪された地面で走るシーンに最適化されたモデル
特徴 初心者に最適 バックカントリーや冬山登山に最適 雪上ランニング・レースに最適
強み
  • シンプルな作りで簡単に取り付けや調整ができる
  • クランポン(雪面に食い込む金属製の爪部分)が控えめで軽量、歩きやすい
  • 価格が安め
  • 取り扱いが楽・安全
  • しっかりと地面を捉えられるようなグリップ力のあるクランポン
  • 急坂を登りやすくするヒールリフトが付いていることが多い
  • 激しい動きでもずれないフィット感の高いバインディング
  • 耐久性の高い素材
  • 軽量かつ”しなり”と”剛性”のバランスがとれたフレーム
  • 必要以上の浮力は不要なためフレームが極力小さくなっている
  • 左右の足が干渉しにくいフォルム
  • 最も軽い
  • 軽量かつ最小限のクランポンで足の運びが楽
弱み
  • 急斜面ではグリップが弱く滑りやすい
  • 耐久性は低い
  • 個体差はあるもののバインディングがシンプルな分、緩みやすい
  • 個体差はあるもののバインディングはより複雑
  • 慣れないと内側のフレームを引っかけやすい
  • 価格が高め
  • クランポンが大きく鋭いため扱いづらい
  • 急斜面やトラバースなど複雑な地形は登りにくい
  • グリップ力が弱いため急斜面では滑りやすい
  • 耐久性が低い
  • 軽量・シンプルな作りのためバインディングがずれやすい

ズバリどのタイプがおすすめ?

予算が許すのであれば山岳向けを選んでおけば間違いありません。理由は単純に、山岳向けにできなくて緩斜面向けにできる機能がないからです。もちろん扱いや歩き方に多少の慣れは必要ですが、そこはすぐに乗り越えられます。ただ、往々にして高価になりますので、そこだけは悩ましいところ。ここからはあくまで経験上ですが、ネット通販のみの無名激安ブランド等でない限り、日本で入手できる4大スノーシューメーカー(MSR、ATLAS、TUBBS、TSL)であればどれもそこまで大きな優劣はないため、気楽に予算とビジュアルで選んでしまって大きな間違いはないのではないかと(最終判断は自己責任で)。ぼくだけかもしれませんが、スノーシューなどのウィンターギアって、細かい機能差だけじゃなくビジュアルも結構重要な問題ですよね。

最適なスノーシューの選び方 ~3つのポイント~

さて、自分に最適なカテゴリが分ったところで、次は実際にスノーシューを選ぶ時に、ビジュアル以外どこをチェックすればよいのか、3つのポイントをまとめてみました。

※ランニング用のスノーシューは用途が特殊なため、この記事では左から2つの「平地・緩斜面用」と「山岳用」スノーシューについて取り上げたいと思います。

1:フレーム(&デッキ)・・・長すぎても短すぎてもNG 材質による違いにも注目!

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左からワカン、MSR LIGHTNING ASCENT(22インチ)、ATLAS 1225(25インチ)

フレームとはスノーシューを取り囲んでいる枠の部分をいい、さらにフレームの中に張りがある場合、その部分をデッキと呼んでいます。フレームについてまずチェックするのはその大きさについてです。当然のことながらフレームが大きければ大きいほど浮力が大きい一方で、重量が重くなる(歩きにくい)可能性がありますので、大きいほど良いというわけではありません。大体どのモデルもいくつかの長さが用意されているので、どのくらいの長さが適切なのか分らない場合には店員さんなどと相談し、「自分の体重 + 荷物」がそのスノーシューの適合荷重に収まるかどうかを確認するのがよいでしょう。

そしてもうひとつ、特に注意したいチェック項目は材質による違いです。その昔木や竹であったフレームは、現在ではほとんどがアルミ等の金属か、プラスチックに取って代わられています。比較的平坦で乾いた深雪の多い北米で発展した「チューブ状のアルミフレーム」は、平らな深雪で歩きやすい一方、斜面でのグリップ力が小さいのが特徴。一方、起伏が激しく様々な雪質に対応する必要のあったヨーロッパで発展した「プラスチックフレーム」は、深雪ではアルミに劣るものの、フレーム自体にグリップ力があり斜面に強いのが特徴です。日本の山はではどちらかというとヨーロッパに近いため、その意味ではプラスチックフレームの方がより適していると思われますが、MSR の LIGHTNING ASCENT のようにアルミフレームでグリップ力を高めたモデルも登場し、双方弱点を克服するような改良が進んでいるのが現状といえます。

2:バインディング・・・取り付けやすく、緩みにくいものが◯

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バインディングの違いで着け外しのスピード、フィット感がぜんぜん違います。しっかり試着して比べてみましょう。

バインディングとはシューズをスノーシューに固定する部分をいいます。メーカーによっても、タイプによっても固定方法は様々。こればかりは実際に試着して試してみるのが一番早いのですが、ここでチェックすべきポイントは2つ。つけ方・調節の仕方が簡単かどうか、そして歩いている最中でも緩みにくいかどうかが重要なポイントです。スペックでしか確認できない場合でも、この2つは比較材料としてきちんと押さえておきましょう。また、踵にヒールリフトがついているかどうかも要チェックです(日本の山で使うのであればほぼ必須の装備だと思っています)。

3:クランポン・・・数と大きさ、そして角度が重要

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クランポンの違いによって地面を捉える面積が大きく違います。

クランポンとは、シューズの裏にあるギザギザした爪・スパイク・エッジの部分のことをいいます(「クリート」とも)。これも各メーカー・各製品で様々な素材・形状・大きさがあり、これによって斜面に足を置いた際のグリップ力(滑りにくさ)が大きく違ってきます。こちらも実際に雪の斜面を歩いてみないとハッキリとした違いは分りませんが、購入前にそれをある程度予測する方法が無いわけではありません。クランポンの大きさ(量)を見比べてみると、製品によって実際の足裏部分にしかついていないものから、フレーム全体の広範囲に配置されているものがあることが分ります。さらにそれらの配置されている向き(角度)についても、歩行方向と平行にしか無いものから、さまざまな角度に計算されて配置されているものがあります。スノーシューは、このクランポンの数と大きさ、そして角度によってグリップ力に大きな差が出てくるのです。例えば MSR LIGHTNING ASCENT のようにクランポンが外側(フレーム)に広範囲に配置されている方が、ATLAS 1225 のように足裏部分だけに配置されているモデルよりもグリップ力は高くなるでしょう。

スノーハイク~バックカントリーまでオールマイティにおすすめのスノーシュー4選

MSR LIGHTNING ASCENT

数あるスノーシューの中でも最高級品の部類に入りますが、それだけに完成度が高く、スノーシュー界のロールスロイスと呼ばれているとか。まず何と言ってもフレーム全体がブレードになっているため圧倒的なグリップ力を誇り、バインディングもシンプルでどんな靴にもフィットし易くなっています。ヒールリフトももちろん付いて急斜面でも問題なし、重量もそこそこで、総じてほぼ欠点が見当たらない!強いていうならばフレームのギザギザが危なっかしいところでしょうか。

ATLAS 1225

北米のスノーシューメーカー ATLAS のこのモデルの一番のウリは圧倒的なバインディングの使い易さですね。「足を入れてバンドを引っ張るだけ」というワンアクションで即座に履けるスノーシューはおそらくこいつだけです。急斜面での登坂性能はそこまで高くはなさそうですが、とりあえずパウダーでの快適さでは頭ひとつ抜け出ているのではないでしょうか。

TSL SYMBIOZ EXPERT

TSL は、数年前まで日本でもかなり存在感のあったフランスのスノーシューメーカーですが、なぜかこのところ(日本では)見かけなくなってきている気がします。とはいえスペックを見る限りでは北米のメーカーにはない独自の進化を遂げているようで、非常に興味深い一品です。普通スノーシューは、言ってみれば基本的には「固い板」のはずなのですが、こいつは違います。小刻みな溝と特殊なプラスチックにより、フレーム全体とバインディングがしなやかにしなる「ハイパーフレキシビリティ」構造を開発。より柔軟な自然な歩き方ができるようになっています。足首のベルトもラチェット方式で簡単にしっかりと固定できるので、かなり使いやすいのではないかと。

TUBBS FLEX VRT

ダイヤル式のバインディングがいかにもスノーボーダー向けっぽいと感じられる、アメリカの老舗スノーシューメーカー TUBBS。デザインもかなりイケてますし、こういうひねくれた進化の仕方、意外と嫌いじゃないです。

まとめ

スノーシューは世界の各地域で微妙に異なる形で発展してきたため、「アメリカで1番」=「日本で1番」とはなりにくいのが注意したいところです。単純な売れ行きに惑わされず、目的と重視したい機能に合わせて優先順位を付けていけば、きっと最適なモデルが見つかるはず。最適なものが見つからないとしても心配は要りません。よほどの激安モデルでもない限り、どれも深刻なほど大きな差はありませんので、難しいことは考えず、フィーリングとファーストインプレッションで選んでもキット幸せになれるでしょう。

というわけで次回はおすすめスノーシューのがち比較レポートをお届けする予定ですので、乞うご期待!

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