比較インプレ:トレイルランにピッタリのハイドレーションは?実際に走って比べてみた
トレイルランでは、高いパフォーマンスを継続するためにこまめな給水は欠かせません。登山でも、こまめな給水はバテにくくなるので効果的です。ただ、トレイルランやスピードハイクでは、水分補給の際にいちいちザックを下ろしているのでは時間のロスになります。そこで、すぐに給水できる仕組みが必要になってきます。
最近ではソフトフラスクやボディーボトルなど、ザックの前面に収納するタイプの給水方法も増えてきました。しかしストレスフリーの給水としてまだまだ人気なのが、ハイドレーションシステム。今でこそ一般的なギアとして認知されているようですが、はじめてこの道具が登場してきたころの衝撃は忘れられません。
レースなど(特に長距離)ではこれらを併用する選手も多くいます。背面のハイドレーションには水、前面のボトルにはスポーツドリンクやお茶など、種類を分けていれることでバリエーションをもたせられたり、残量をマネジメントしやすいといったメリットがあります。距離やエイドステーション数に応じてアイテムを選択できる幅が広がりつつあり、パッキングの工夫次第で自分なりのプランが立てられるのも楽しいものです。
今回は、そんな給水システムのなかでも容量や仕組みなどのバリエーションが豊かなハイドレーションを実際に使って比べてみました。
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目次
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今回比較したハイドレーションについて
スタンダードなモデルから個性的なモデルまで、日本の正規ルートで入手可能な合計6モデルをピックアップ。トレイルとキッチンでテストしました。なお、容量は長距離での使用を想定し2Lに統一しています。
- CAMELBAK(キャメルバック) クラックス リザーバー 2.0L
- OSPREY(オスプレー) レザヴォア 2L
- SOURCE(ソース) リザーバー ワイドパック 2.0L
- Hydrapak(ハイドラパック) Shape Shift 2.0L
- GEIGERRIG(ガイガーリグ) HYDRATION ENGINES 2.0L
- Platypus(プラティパス) ビッグジップLP 2.0L
評価項目については、下記の通り5つの指標を設定。
- 飲みやすさ・・・飲み口の大きさ・水流の出やすさなど、実際に走りながら飲んでみると、飲み心地はかなり違います。また海外製品はややもすると日本人にとって使いにくい可能性も。
- 補給のしやすさ・・・場合によってはエイドで水を補給する必要もあり、素早く補給できるに越したことはありません。
- 収納性・・・パッキングは極力小さくしたい多くのランナーにとって、収納しやすさは重要指標のひとつです。
- お手入れ・・・細い給水口やチューブ、複雑なバルブなど、洗いにくい部分が多いハイドレーションですが、もちろん衛生に気をつけなくていいわけはありません。どれだけきちんと配慮されているかを評価します。
- 使い勝手・・・重量、チューブの身体へのセットしやすさ、漏水防止のロック機構、オプションパーツの豊富さなど、上記以外での使い勝手全般について評価しました。
テスト結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
各モデルのインプレッション
使用中も使用後も使いやすい:Hydrapak Shape Shift 2.0L
ここが好き
ここが惜しい
- 欲を言えばもう少し飲み口の流量が多ければ…
No.1の飲みやすさ:CAMELBAK クラックス リザーバー 2.0L
ここが好き
- 給水口がダイヤル式で大きく広がるため給水しやすくパック内部のメンテナンスが容易(ただしうっかりしていると蓋が斜めに閉まることがあるので、水漏れ注意)
- バルブは大きめ。強く噛まなくても流量が多く、飲みやすい
- バクテリアの発生を抑えるハイドロガードを備えている
ここが惜しい
- 形状が特殊でザックを選んでしまい汎用性に欠ける
全体的なバランスのよさ:Platypus BIG ZIP LP 2.0L
ここが好き
- パック内にバッフル(隔壁)が縦長で水残量の変化に伴う形状変化を抑え身体への負担を軽減してくれる
- 飲み口バルブが取り外せるので衛生面も安心
- パック開口部のスライドバーに繋がるゴムが十分に伸びるため、補給の際にストレスが少ない
ここが惜しい
- 縦長な形状でパックによってはサイズが合わなかったり、小柄なひと向けではない
- パック内のバッフル(隔壁)が長く裏返せないためメンテナンス性は弱い
補給から給水までのストレスが少ない:SOURCE ハイドレーションパック ワイドパック2.0L
ここが好き
ここが惜しい
- バルブキャップは揺れてしまうのでトレランでは不要(取り外し可能)
- バルブの分解時にバネが中にある特殊な形状
いつでもスマートにパックに収納:OSPREY レザヴォア 2L
ここが好き
- 背面にあるプレートにより水残量の多少にかかわらず形状が変わりづらいため長時間行動の疲労を軽減させてくれる
- バルブの分解が容易でメンテナンスが簡単
- マグネット式のホースクリップが標準で付属(ただしランニング中に外れないようなセットが必要)。
ここが惜しい
- スライド式の補給口は堅牢な作りすぎて開閉しにくい
唯一のスプレータイプもトレランにはやや不向きか:GEIGERRIG HYDRATION ENGINES
ここが好き
ここが惜しい
まとめ
それぞれ良い面・悪い面が共存しているなか、最もクセがなく、給水・補給・収納・手入れと全体を通して扱いやすかったのはHydrapak。その他、飲みやすさと補給のしやすさに特化するならCAMELBAKも捨てがたい。Platypus、SOURCEはバランスがいいという印象です。OSPREYはクセがあるものの、パックへの収納しやすさは秀逸です。基本の作りはHydrapakと似ているので、そこからメンテナンス性と引き換えに唯一無二の収納性を手に入れたという感じでした。
一方、GEIGERRIGは空気圧で水がスプレーされるという異次元の飲み心地のよさがあるものの、エアーポンプが煩わしい、空気がパンパンに入った状態では容量が大きくなるという点が、トレイルランでは致命的に使いにくくなってしまうため、今回は残念な順位になってしまいました。用途さえ間違わなければ、非常にユニークで優れた製品であることは間違いありません。
シビアな状況でスムーズな補給と給水が求められるトレイルランでは、ラクに補給できる構造のバルブ、ハイドレパックを引き出さずに補給できるような構造、切り詰めた小さいパック内でも安定するような収納性など、重視される点が登山とは異なる部分も多くあります。ハイドレーションを購入する際は、自分の使用するシーンと各モデルの特性とを突き合わせながら、また使用する想定のバックパックをもっていくなどして、自分だけのベストマッチを見つけてみてください。
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東條 一矢
茨城県に育ち学生時代は水泳を中心に活動。社会人でトライアスロンデビュー。社会人1年目に第1回日本山岳耐久レース(=ハセツネ)を完走。マウンテンスポーツの達成感に心酔する。30代で埼玉県に転居独立。奥武蔵をT氏に案内されトレランとウルトラマラソンに魅了される。現在では国内のトレイルレースを中心に活動。信越五岳、上州武尊、KOUMI100のロングレースを連戦完走。また、NPO法人小江戸大江戸トレニックワールド、NPO法人彩の国ウルトラプロジェクト(SUP)でレースサポートを手掛ける。またギアの性能を引きだしトレランの安全確保の啓蒙に励んでいる。
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