最速レビュー:カシオ PRO TREK Smart WSD-F21HR 待望の心拍計測機能が追加。”本気で遊びたい”人のためのアウトドアスマートウォッチ
ついに”本気で遊べる”CASIO PRO TREK Smartが出た!もちろんこれまでも十分遊べたけどね。
毎月のように新機種が登場する近頃のGPSスマートウォッチ市場。ついにApple Watchでもオフライン登山地図が利用できるアプリが登場したりと、スマートウォッチの活用シーンが拡大することで益々競争の激しさも増していることは間違いないようです。そんなグローバルブランドがしのぎを削るなか、数少ない国内メーカーとして気を吐くカシオ計算機は、2019年9月13日、アウトドア向けスマートウォッチPRO TREK Smartシリーズの最新モデルWSD-F21HR(以下、F21)を発売しました。
今回の目玉は何といっても待望の心拍計測機能を搭載したこと。しかもこれまで通りの現実的な価格帯。毎回新機種を触らせてもらっている当サイトでは、今回も発売前のサンプル機を一足早く使わせてもらうことができましたので、どこが新しくなり、ぶっちゃけ使い心地はどうなのか?過去モデルなどと比較しながらその詳細をいち早くレポートしてみたいと思います。
目次
目次
外観・ハードウェア
大きさは元に戻り、軽量化
何はともあれまずは外観のチェックをしていきます。「F21」という型番が示すとおり、F30で小型化したボディサイズは、F21になって前世代(F20)の大きさに戻り、約 61.7 × 57.7 × 16.8 mmとややごついG-SHOCKのようなサイズ感です。この辺りは追加パーツとの兼ね合いで致し方ない部分もあったかもしれませんが、日常使いも考えるとF30で実現したコンパクトさがあればという気がしなくもありません。ただ、タッチパネル式腕時計としての操作性も考えると実際の操作感的にはこのくらいの大きさがちょうどよくもあり、すぐに慣れるので、この辺は好みの問題にもなってくるのかなぁと。
重量に関しては81gと、大きさの割に非常に軽量に感じられます。ほぼ同じ大きさのF20(1世代前)と比較しても10gほど軽量化しているだけでなく、小型化した最新モデルのF30よりも軽いです。
ソフトウレタンバンドは着け心地良好。ボタン周りは相変わらず使いやすく
ベルト周りは確実に改良されていました。ソフトウレタンバンドの幅はそのままで若干薄く、しなやかになり、穴が2つのダブルピンタイプバックルになってズレにくくなりました。
穴の間隔もこれまでよりも狭くなったことで、長さがより細かく調節可能になり、さらにケースとの接続部分に蛇腹状の遊びができたことでフィット感も向上。伸縮の大きいシリコンゴムベルトなどに比べても決して引けをとりません。
ボタン周りはこれまでと変わらず、右側に3つのシンプルな構成です。グローブをはめていても確実に押せる大きめサイズ、カチッと気持ちの良い押下感、誤動作を防止するガードなど操作感はさすが。ボタンで呼び出す機能は基本「マップ」「アプリメニュー」「アクティビティ(アプリ)」ですが、自分でカスタマイズできるという自由度もありがたいです。
二層液晶ディスプレイのUIは最新バージョンほぼ同等
F21のハードウェア構成は基本的にF20をベースにしてあるため、ディスプレイは前世代と同じ1.32インチ(320×300ピクセル)のTFT液晶です。それでも元々明るく高精細で日光の下でも見やすい画面は他モデルと比べても頭一つ抜け出た実力はあったので、今回も視認性についてはまったく問題ありません。
一方、演算処理機能ではF30と同じ性能を積んでいることなどから、一部の機能を除けば、F30とほぼ同等のソフトウェアとインターフェースが実装されています。例えばPRO TREK Smartシリーズの大きな特徴である二層ディスプレイ。最新世代で進化した省電力モノクロ表示によって、「日付・時間」だけでなく「高度・気圧・時間の一括表示」や「電池残量と歩数計」など、多彩な表示が設定可能です。
ハイキングで実際に使ってみた
専用ウオッチフェイス「ハートレート」は見ていてワクワクする
F21を装着して街ラン、登山、トレイルランと一通り試してみました。
何といっても今回の新作の目玉は心拍計測機能です。まずこの機能の一般的な使い方についてみてみます。このモデルには、計測された心拍数をリアルタイムに表示してくれる専用ウォッチフェイス「ハートレート」が用意されています(下写真)。
通常は直近24時間での「最大 / 最小心拍数」と「心拍ゾーン履歴」が文字盤周囲に表示されています。これが内蔵の加速度センサーによって「歩く/走る/自転車」を感知すると、自動で計測モード画面に切り替わり、計測をスタート。すると「現在の心拍ゾーン」と「現在の心拍数+1日の最大 / 最小心拍数」が表示されます(下写真)。最近ではランニングをはじめとして、心拍数を活用して効率的なトレーニングを実践する人も増えてきているようですが、このウォッチフェイスなら現在の様子が一目瞭然。トレーニングをサポートしてくれることでしょう。
計測したデータは履歴として保存され、
この心拍数計測、時計には装着中常にリアルタイムで表示されているのですが、これを履歴として何らかのアプリに記録・保存して、いわゆるライフログのように利用する機能は現在のところ実装されていないようです。個人的には例えばGoogle Fitで常時心拍数を記録して、健康維持や生活改善に役立てるといったところまで先走って期待していただけに、そこはちょっと残念。
ただ、カシオにその点を確認したところ「前向きに検討中」
大幅に進化した純正アプリ「アクティビティ」が一気に常用アプリに躍り出たか!?
心拍計連動で、誰でも簡単に”バテない歩き”を実現
登山やトレイルランなどのアクティビティで、心拍数計測機能をフル活用する場合は、上記のウォッチフェイスよりも、純正アプリ「アクティビティ」を利用すのが便利です。これまではYAMAPばかり使っていて、正直ほとんど使うことはなかったのですが、F21からは冗談抜きでその関係性が一転するかもしれません。
「アクティビティ」アプリの大きな進化点のひとつは、トレッキング中、リアルタイムに確認できる指標の中に「現在の心拍数(心拍ゾーン)・VO2MAX値」が追加されたことです。さらに自分のターゲットとなる心拍ゾーンを事前に設定しておけば、そのゾーンを越えた際に、表示とバイブレーションで通知してくれる機能があります。この辺り、他のアプリではSTRAVAアプリでリアルタイム確認までは可能、YAMAPでは今のところ確認も記録もできません。
現在の心拍数(心拍ゾーン)が分かると何が便利か。ここで詳細な説明は難しいため大雑把にいうと、心拍数は自身の運動強度と密接にリンクしており、心拍数を見ることで自分が今体力の限界値からどれくらいの割合で動いているのかが分かる、つまり、オーバーペースにならないような運動量をキープしたり、逆に筋力やスタミナを向上させるための効率の良いトレーニングをしたりと、自分が望んだムダのない運動が可能になるのです。
もうひとつ、VO2MAX値は、1分間に体内に取り込むことのできる酸素の最大摂取量を示し、この値によってその人の持久力がある程度分かるという数値です。一般人の平均は40ml/kg/分、オリンピック長距離選手レベルは80~90ml/kg/分と言われたりもしているそうですが、計測する装置によっても、統計によっても定まった結果はありません(実際F21のVO2MAX値も少し甘い数字のような気がした)。絶対値ではなくあくまでも自分の値がトレーニングや経験によって向上していく様子を楽しむものとするのが健全ではないでしょうか。
なお、登山やトレイルランでの心拍計を使った目的別歩き方のコツについてはここでサラッと紹介するだけではもったいない、自分的にももう少し掘り下げてみたいテーマではあるので、次回のレビューで詳しくやっていこうと思います。お楽しみに!
アクティビティ「トレイルランニング」が新たに追加
アクティビティアプリで見逃せないもうひとつの追加機能は、「トレイルランニング」カテゴリの追加でしょう。ここでは標高などの高度情報と、距離や速度などの水平情報がどちらも表示されるので、ランでも登山でも難しかった、痒い所に手が届く表示が可能です。それだけでも十分な進化なのですが、うれしいことに、さらに他のアスリート向けスマートウォッチで可能でであった「表示内容の柔軟なカスタマイズ」も可能となり、決定的に使いやすくなりました。
「トレイルラン」アクティビティでのデフォルトの表示項目は以下。
- 「地図」画面
- 「心拍ゾーン・現在の心拍数 / 距離 / 標高」画面
- 「高度推移グラフ」画面
これがカスタマイズでは上・中・下段に表示項目が分かれた画面を最大4画面(+地図)にまで増やすことができ、それぞれに自分の好みの項目をある程度細かく表示させるように設定可能です。ただ、なぜかトレイルランニングやランニングではこのカスタマイズ可能な指標の中に現在VO2MAX値が選べないというおかしな状況です(トレッキングではデフォルトで確認可能なのに!)。
アクティビティが終了すると、計測したデータがGoogleドライブ™ へ自動的にバックアップされ、スマートフォン上のGoogleカレンダー™ などでアクティビティに対応したデータが確認できます。トレッキングでは「活動時間 / 上昇高度・速度 / 下降高度・速度 / 移動距離」が記録され、トレイルランニングでは「活動時間 /
またGoogle Fitでも運動として保存されており、そこでは「ルート表示 / 運動時間 / 距離 / 歩数 / 消費カロリー / 平均ペース」が表示されていました。
ルート取込が可能になってナビゲーションとしてされてめちゃくちゃ使える!
最後に細かいけど便利な進化点を。アクティビティを開始する前にYAMAPなどからダウンロードしたgpxファイルを取り込んで、あらかじめルートを地図に表示させてナビゲーションしながら地図表示が可能になりました。これは地味にイイよ。特に道の不明瞭な雪山なんかではものすごく重宝するでしょう。
最後にやっぱり気になるバッテリー消費は?
念のためバッテリーの消費量についてもチェックしました。F21はF30で搭載された省電力モード(エクステンドモード)がないため、登山やトレイルランニングでは通常使用を利用することになります。
朝、99%の状態からスタートし、機内モードにしたり画面の明るさを最低にしたりといった省エネ設定を気にせず利用、休憩含めて6~7時間後ゴールした時の電池残量は50%前後でした。厳密に比較はしていませんが、今のところF30シリーズの通常使用と変わらない程度、つまり長い距離の日帰り登山でも特に省エネ設定にしないと無理なんて心配はぎりぎり必要ない程度の持ち具合といえそうです。
まとめ:何気ない自分の歩き・走りを知る楽しさ、安全さに気づくと、アウトドアはもっと楽しく。
単純に心拍計が搭載されただけでなく、それを効果的に利用するアプリもしっかりと用意された新しいPRO TREK Smartは、これまでスマートウォッチで自分の行動データを分析したことがない人に、山登りの新たな楽しみ方を提供してくれるに違いありません。そしてこれまで細かいデータが取れないからとPRO TREK Smartをある種オモチャ的に見てきた人にとっては、その印象を覆すに十分な使い勝手の良さに驚くことでしょう。そして忘れてはならない、競合に渡りあえるコストパフォーマンスの高さも魅力です。
F30に比べるとサイズ感的には日常感が後退しましたが、逆にアウトドア派ユーザーが本気でソトアソビするアウトドアスマートウォッチとしてならより満足度の高いデバイスになったといえそうです。
次回はこの心拍計付きスマートウォッチをさらに使い込むために、用途・目的別の実践的な使い方をレビューしていきたいと思います。なお今回お借りしたサンプル機は開発中のものなので、実際の
詳細についてやお問い合わせははこちら(公式製品ページ)へ。
さらにメーカーによるお役立ち情報や最新情報などはPRO TREKのFacebookページで発信中です。