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Review:クラウドファンディングで話題の超小型トランシーバー、BONX miniをスキー・ハイキングに使ってみたら

アウトドアでは、少し離れた相手と会話したい場面がちょくちょくあります。例えばバックカントリースキーでは斜面を一人ずつ滑り降りることが多く、自分が滑り降りたあと、上の相手にスタンバイOKの合図を送ったりします。その他クライミングや沢登りでは、壁や滝の上下で支点のセッティングなどを行ったりするため、その時は大声や笛での交信が不可欠です。ハイキングでもペースに差が開いて相手と距離が開いてくると、お互いの声は届きにくくなります。

そんなとき、携帯電話が普及するはるか前から山での通信手段として一般的な無線機(トランシーバー)なら、相手と通信できることは確かですが、免許や申請、携帯するにしても重くてかさばるしと、軽く持ち歩くにはあまりにも大げさです(遭難時の緊急用としてはこれほど頼りになるものはありませんが)。

そんなわけで、山の中でいつでも気軽に会話ができる、軽量・コンパクトな通信デバイスがあればどれほど便利かと常日頃思っていたところ、ふと目に止まったのが、現在絶賛クラウドファンディング中の超小型トランシーバー「BONX mini」。細かいことは考えず、脊髄反射的にポチってしまったその数カ月後、縁あって先に試させてもらえることになりました。この冬スキーとハイキングで使用してみたので、そのレビューをお伝えします。

「行動中、ちょっとした距離の相手と気軽に話せるデバイスが欲しかった」BONX miniは何ができるのか

まず、このデバイスはどんな仕組みで何ができるアイテムなのか、Bonxホームページより要約してみました。

Bonx miniは、「雪山で滑りながら仲間同士気軽に話したい」という思いから生まれた小型コミュニケーションデバイス、Bonx Gripの最新小型モデル。Bluetooth接続されたスマートフォンとインターネット接続さえあれば、いくら遠くにいたとしても最大10人までによる、普通の会話のような双方向通話が可能となります。発話検知技術や独自アルゴリズムのノイズフィルターによって、従来のトランシーバーと比べてストレスのない高音質を実現。電波が不安定な場所でも、自動再接続機能や遅延最小化アルゴリズムによって最小のストレスで話し続けることができます。

使い始める前に:初期設定を済ませる

Bonx miniの本体は片耳用のイヤホンが1つ、それに専用の充電器がセットという仕様です。最近よく見るようなワイヤレスBluetoothイヤホンと比べても違和感がないほど超小型( 縦×横×厚み = 約50 × 約17 × 約17mm)。何はともあれまずは専用の充電機能つきケースに入れて充電しておくことを忘れずに。

専用の充電ケースはそれ自体にバッテリーが内蔵されており、約1時間で充電可能。

充電している間に、スマホの方ではアプリをインストール。充電が完了したらデバイスの電源を入れて、イヤホンとスマートフォンをペアリングし、初期設定を済ませます。

ペアリングされたら、早速耳に装着してみます。見た目からの想像以上に、装着しているか分からないくらい軽い。さらにイヤホンは回転するツノ状の突起を耳の溝に合わせることで気持ちよくフィットし、思ったよりも外れにくくて着け心地はかなりイイ。こういうのを待っていた!

着け心地、外れにくさとかなり好感触。

その後、スピーカー・マイクのテストで問題なければ、無事初期設定は完了です。

早速スキー場で使ってみる

最初にBonxを試用したのは上越地方のスキー場でした。天候にもやりますが基本なかなか会話が届きにくいし、それなりに大人数でスキーをしているとペースがずれてきたりして散り散りになることも多いもの。そんなときに常時会話ができていれば、お互いの状況を把握できるし、利用価値は高いはずです。

先程の初期設定を済ませたBonxのうち、誰かがまずアプリ上でトークルームを開設し、そのトークルームに入室する(ルームキーを入力する)ことで、他の利用者とリアルタイムでハンズフリーの会話ができるようになります。

誰かがトークルームを開設し、そのトークルームのルームキーを入力することで双方向通信が可能になる。

距離に関係なく普段どおりに会話できる便利さを実感。ニット帽の上からでもマイク感度は問題なし

ゲレンデで使用してみて、当然ですがまず遠く離れていても普通の話し声で相手と会話ができている状況に少し感動します。音質はトランシーバー以上ですが、LINEやSkypeなどの音声チャット並みというほどでもないか。何れにせよ聞きづらいということはまったくありません。

利用中は耳の上からニット帽を被っており、マイク部分も完全に覆った状態でしたが、マイクの感度は非常によく、ともすれば自分の周りの人が喋っている他人の声まで拾って相手に聞こえていました。晴れの日以外、風と雪のスキー場でも使用してみましたが、どの状況でも会話のスムーズさでは特に差はなし。お互いのペースを気にせずスキーを楽しんでいても、すぐに合流できるので単純に便利さを実感できます。

イヤホンが丸々ニット帽に覆われてしまっても、会話はスムーズにできた。

不安定な電波状況ではやっぱり強いとは言えない

一方で若干心配していた電波の弱い場所での脆さや寒冷地でのバッテリーの持ちについてはやや期待はずれに終わったと言わざるを得ません。

まずスキー場の中でも林間コースなど電波の届きにくい場所に入ると音声で「電波が届きにくくなっている」というアナウンスがあり、最悪切断されてしまいました。サイドカントリーやバックカントリーで使用すれば、その頻度は激増するだろうことは想像に難くないです。もちろん前提としてネット環境がつながっている状況で使用できるデバイスであることは分かっていたのでこれは仕方のないことと諦めはついていましたが、「不安定な電波環境でも驚きの接続安定性を実現」という部分に少しだけ期待していただけに、これは残念。

ただ他のグループトークアプリと違って、一度切断されたとしてもまた電波状況が良くなれば自動的に繋ごうとしてくれるので、特に手間を掛けなくても電波が良くなればまた話せるようになります。その点については他のグループトークアプリを使用していた人にとっては大きなメリットと感じる人もいるようです。

バッテリーの持ちにも注意

さらに予想外だったのはバッテリーの寿命が思った以上に早かったことです。公式ではイヤフォン本体のバッテリーは最大約3.5時間もつとありましたが、0度前後のスキー場で使用していたときには持って2時間。朝使い始めたと思ったらあっという間に利用できなくなってしまいまいした。昼休憩で(充電ケースに入れて)充電すれば午前午後使えるという話もありますが、それでも不満なしというには無理があるレベルです。バッテリーについては最終出荷バージョンでは改良がなされるということらしいですが、それに期待したいところ。

半日屋外で利用するとなると、特に低温下でのバッテリーの持ちの悪さはかなり気になった。

ハイキングで使ってみる

バッテリーの持ちは気温が低い場合だけなのか?そしてさらに電波状況が不安定になりかねない普通のハイキングならどうか?そんなことをあらためて確かめて見るべく、今度はハイキングでも試用してみました。場所は富士山の前衛の山々、河口湖近辺にあるハイキングコースです。

静かな場所でも、声以外の雑音は入らずスムース会話が可能。息づかいも気にならない

同じように普通に会話する際のスムーズさ、自然さには非常に満足でした。スキー場では気づかなかったのですが、会話の音だけをしっかり拾ってくれ、逆に登りで息が切れてきたときでも荒い息づかいがマイクに入ることもなく、前後で普通に顔を上げることなく、お互いの姿が見えなくなったとしても心配なく話しながら登ることができるのは非常に便利です。

電波の弱さとバッテリー寿命はここでもやはり厳しい

ただ、スキー場で確認していた電波の不安定な状況は低山の樹林帯ではもっと酷くなり、故に会話の途切れや遅延はスキー場以上に頻繁に起こるようになってしまいました。またバッテリーの持ちについては、スキー場での試用よりは確かに良くなったとはいえ、3時間程度で完全にバッテリーが切れました。「最大約3.5時間」のスペックからすればそんなもんなのかもしれませんが、そもそもこのスペックであれば日帰りのハイキングにずっと使えるものではありません。

またこれもハイキングで気がついたのですが、このBonx miniは、前モデルのBonx Gripに備わっている生活防水・耐衝撃機能の他、風切り音低減機能が省略されているため、稜線上で風が吹いたときにはダイレクトに風切り音が入ってきてしまいました。これを防ぐためにはオプションで発売される予定の風防などが必要でしょう。

まとめ:BONX miniはトランシーバーの代わりになるのか?

電波の不安定なアウトドアで離れた者同士が簡単に会話できる、軽量・コンパクトなガジェットと聞けば喉から手が出るほど欲しかっただけに、大きな期待をかけて使ってみました。

結論からいうと、スマホのグループトークアプリと比べれば格段に使いやすいということは言えると思いますが、そもそも過酷なアウトドアのなかでトランシーバーとして使えるスマートなガジェットを求めている、その意味でハードルの高いユーザーからすれば惜しいアイテムと言わざるを得ません。

「接続された状況」であれば使い勝手は抜群で、装着の違和感や会話のストレスなどはこれ以上ないくらいに快適でした。公道やキャンプなど管理区域、海辺・湖畔などの開けた場所など、電波の比較的安定した場所で、おもちゃと割り切って使用するのであれば期待通りに便利なグッズであったことは間違いありません。ただ、肝心の接続性とバッテリーについてはアウトドアの中でも管理区域外、つまりバックカントリーで使用するアクティビティで頼りにするにはやや物足りなかったのは事実。前モデルのBonx miniに比べてハードウェアとしての魅力はグッと向上しているだけに、ここから(無線並みの強力電波を求める分けではなく)数十メートル程度でいいからハンズフリーで手軽に安定した常時通話が可能なデバイスであればと、我儘な要求と知りつつ進化を望むところです。

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おすすめポイント

  • 違和感のない軽さと高いフィット感
  • 会話しながら滑れる、歩けるという純粋な楽しさ、便利さ。
  • お互いのペースを気にせず行動してもお互いの状況が把握できる安心感。

気になったポイント

  • 樹林帯など、山道やスキー場によっては電波が途切れやすい。
  • 途切れていなかったところでも、電波が弱い場所ではかなり音声の遅延(タイムラグ)が発生する。
  • 電池の寿命が短い(3時間程度で使えなくなるとなると、日帰り1日のハイキングではすぐ切れてしまう。またスキーなど低温下ではもっと短かった)
  • 風切り音が防げない(別売りの風防必須?)