比較インプレ:ランニングスタイルから考える、冬ランにぴったりな防寒ランニングジャケット
立春が過ぎ、暦ではもう春ですが、まだまだ寒い日が続きますね。明日は走りに行こう!と意気込んで準備している時に、テレビから「明日は寒くなるでしょう」と聞こえてくると尻込みしてしまいます。
そんな気温の低い季節のランニングにピッタリの防寒着といえば、防寒ランニングジャケット、またの名をアクティブインサレーション・ジャケット。従来までのいわゆる「防寒着」としてのミッドレイヤーと比べ、保温性と透湿性のバランスがよく、さらに高い機動性も確保されているため、動きの中でも寒さや不快感を感じにくくなっています。防風や撥水等、アウターとして必要な機能もある程度備わっていることから、厳冬期にもランニングするアマチュアランナーから、自分のような山を走るトレイルランナーまで、活動し続けるアスリートのためには最適な防寒着といえます。
そこで今回も様々なメーカーから発売されているアクティブインサレーションのなかから注目のアイテムをピックアップして、幅広い視点から比較してみました。ご自身の使用目的・用途などと照らし合わせてみてください!
目次
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今回比較した防寒ランニングジャケットについて
以下は今回比較した4モデル。冷やしすぎず、温めすぎず、動きやすさも考慮された、冬のトレイルを走るためにデザインされたインサレーションジャケットをチョイスしてみました。※()内は中綿素材
THE NORTH FACE ベントリックストレイルジャケット(Ventrix)
体側面から腕内側までストレッチ素材を使用。体幹前後部と、最も広い面積をスリットの入った通気性の良い中綿に守られた保温性重視モデル。Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケット(フルレンジ)
体幹正面・腕の前面に中綿・体側面から背面・腕の後側にワッフルニットを使用し、通気性も確保したハイブリッドモデル。Outdoor Research DEVIATOR HOODY(Polartec Alpha)
Polartec Alphaを採用し、保温性と通気性が高次元でバランス良いモデル。中綿の面積がもっとも少ないモデル。Salomon Pulse Warm Jacket(独自中綿)
体幹前後面上部に中綿を使用し、他の部分は厚めのストレッチ生地で防風・防滴にバランスよく対応した、コストパフォーマンスの高いモデル。
テスト環境
評価項目については、以下の5点を指標に設定しレビューしました。
- 保温性・・・行動中に着るジャケットといっても、防寒着としてしっかりと保温性が確保されているか。
- 透湿性(快適性)・・・アクティブインサレーションとして、行動中の発汗を処理する透湿性も重要な指標です。
- 機動性・・・快適であっても動きにくくて着ずらいのでは意味がない。走ることに対してストレスなく集中できるか。
- 機能性・・・インサレーションとしての性能以外で、ランニングやトレランで役立つ機能がどれだけ備わっているか。
- 重量・・・単純に重量だけでなく、実際に走った時に感じる重量感も評価しました。
以上の5点を意識して、いつものロードやアップダウンの多いトレイルでのランニングで数回テストしました。
テスト結果&スペック比較表
各モデルのインプレッション
Outdoor Research DEVIATOR HOODY
ここが◎
- 透湿性
- 重量
- 機動性
ここが△
- 耐候性
- 耐久性
Polartec Alphaを体幹正面部から首回りにかけのみに使用し、その他の部分には Polartec Power Gridを使用すことにより積極的に換気をし、絶妙なバランスで保温性と透湿性を保ってくれます。他のモデルが ”保温性が良く、通気もできる” のであれば、このモデルは “通気性がとても良く、保温もできる” という、突出した透湿性を持っています。
走り出せば体幹部分はすぐに温まってきますが、他部分はかなり通気が良いので、全体の印象は暖かいというより、寒くないという印象です。防風性・撥水性もある程度あるのですが、それも体幹前面部のみなので、風が強かったり雨が降ってくると、すぐ冷えてききます。体幹部は適度に温めてくれるので、走っているときは問題ないのですが、ストップ & ゴーが多いと体が冷えてきてしまします。それ故ストイックに活動を続ける人のための行動着です。ただ、悪天候時用に防風・防水ジャケットを携行しているのであれば、これほど心強いものはないでしょう。ガンガン山中をストレスなく走りぬきたい人には、最高の選択です。
Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケット
ここが◎
- 透湿性と保温性のバランス
- 肌触り含めた着心地のよさ
ここが△
- かさばる
体幹部正面・腕の前面に東レが開発したフルレンジ・インサレーションという中綿を配置し、体側面から背面・腕の後側にはワッフルニットを使用し、保温性・通気性を確保したモデル。着心地はとてもよく、着た人のみが味わえる瞬間のあのフワッと感は、幸せな気分にさえしてくれます。
走り出すとすぐ体が温まってきて、登りに差し掛かると顔からは汗が出るけど、体はそこまで蒸れないという釣り合いの取れた状態に保ってくれます。全体の伸縮性も程よく、トレイルランニングの動作では、ストレスは感じませんでした。
撥水性もしっかりとあるので、小雨や少量の雪くらいであればアウターは不要です。中綿も化繊なので多少濡れても保温性が低下することはなさそうです。最低限の防風性はあるものの、通気性も良いことから強風が吹くと抜けてくるような感覚はあるので、よほどの好天でない限りはウィンドブレーカーや薄いレインジャケットも準備しておくべきです。
見ての通り背中がごそっと抜けているので、流石に長時間止まっていると、背中から徐々に寒さが襲ってきます。やはりここは保温用ではなく、行動用のアクティブインサレーションなんだと思い知らされます。またかさばるため、使い方としてはやはりリュックに入れて持ち運ぶウェアではなく、ずっと着続けるためのウェアになりそうです。
THE NORTH FACE ベントリックストレイルジャケット
ここが◎
- 保温性
- 軽量性
- パッカブル
ここが△
- 若干中綿量が多めなので、走行時暑く感じることも
体側面から腕内側までストレッチ素材を使用。そこ以外にはストレッチ性の中綿を配置し、今回の中では最も中綿部分が多いモデルです。その中綿には細かいスリットが入っていて、体を動かす度にスリットが開閉し、湿気を逃す独自のベントリックス™テクノロジーを採用しています。
保温力は今回比較したモデルの中でもピカイチで、ある程度の低温でも走り出せばすぐに温まってきました。ロードでのランニング時には、袖口から汗が垂れてくるほど。防風性・撥水性もかなり高く、よっぽどの悪天候でない限りこれ一枚でいける心強さがありました。
驚くのは、その中綿量にもかかわらず重量は200g強と最軽量であること。実測値は166gと今回の比較対象外の保温性を確保したアクティブインサレーションの中でも最軽量の分類ではないでしょうか。
また唯一のパッカブル仕様になっていて、左のポケットに仕舞い込めば、500mlペットボトルほどの大きさになります。一枚持っていると万能に使える、頼り甲斐のある相棒になりそうです。
Salomon Pulse Warm Jacket
ここが◎
- 山・街ランに使いやすい汎用性
- コストパフォーマンス
ここが△
- 生地が厚く重い
- 完全なアウター向けで重ね着には向かない
他の3モデルと比較すると若干系統の異なるモデルです。体正面胸部・後背部に中綿を使用し、それ以外はやや厚手のストレッチ性フリース生地を使用。多少の風雨も防いでくれます。スペック自体は悪くなく、保温性・透湿性も十分。実際着て走ってみると快適なランニング環境を作り出してくれます。
しかしやはり他のモデルと比較してしまうと重みを感じ、相対的には窮屈さを感じます。これは中綿部分以外のストレッチ生地が厚めなことが原因のようです。中間着というよりは肌寒い時のランニングアウターといった感が強く、実際この上から薄手のジャケットを羽織って走ると、ゴワゴワしてかなり気になってしまいます。
その分、価格は他のモデルの半額程度と、コストパフォーマンスはかなり高いです。また見た目も、機能を最優先して見た目が奇抜な切り返しをしているわけでなく、アウターとして自然なルックスなので、肌寒い日は普段着でも使用できそうです。というか、唯一普段着で通用しています。山よりもロードを走ることが多い方は、このモデルを選択するのは全然アリだと思います。