山で「風」を装備する時代がくるのか!?酷暑の山歩きを快適にするための切り札、モンベル「ファンブローライトベスト」をフィールドで使ってみた
暑さが厳しい夏山でも風を纏えば涼しく快適に歩けるのではないか
進む温暖化により気温は上昇し、夏の標高の低い場所での登山やハイキングは過酷になってきています。標高の高い山岳地帯は夏も過ごしやすいですが、問題はそこに辿り着くまでの道のり。登山口からのアプローチは標高が低いため、気温が高い中での活動により暑さ対策が必要です。
そんな時代の救世主となりそうなウェアがモンベルの「ファンブロー」シリーズです。その名の通りファンを取り付けることができるウェアなのですが、モンベルという日本を代表するアウトドアブランドが作るファンブローシリーズの実力がどれほどのものなのか、フィールドで確かめてきました。
いくつかバリエーションがあるファンブローシリーズの中で最も軽量であるファンブロー ライトベストを使ってみましたので、この記事ではその使用感や魅力をお伝えします。
モンベルのファンブローシリーズは山を知り尽くしたブランドが山で使うために設計され、快適に登山を楽しむための機能をふんだんに盛り込んだウェアでした。これからの時代の登山やハイキングにおいて選択肢の一つになるかもしれません。
目次
モンベル ファンブローシリーズ:ファンブロー ライトベスト&便利なオプション

左:ファンブローライトベスト、中:専用バッテリー、専用ファン、コールドパック、右:ファンブロー 3Dメッシュバックパネル
ファンブロー ライトベストは専用のファンとバッテリーが取り付けられる薄手のベストです。撥水加工が施された40デニールのナイロンタフタを採用したベストは軽量で、ファンを使用しないときには取り付け穴にベルクロで装着できるカバーが付属し、ウインドシェルとしても使用できます。
専用バッテリーは最大で19Vの出力ができるハイパワーバッテリーで、6V時なら30時間の連続稼働が可能になっています。ファンの風量は4段階で調節でき、ベスト内側に設けられたバッテリーポケットに収容できます。専用のファンは空気の流れを妨げにくい位置にファンを配置した独自の構造になっており、左側のファンは背中側、右側のファンは体の前面と、異なる方向に風を生みだすことで効果的に空気を送ることができます。電源ケーブルの差し込み口にラバーキャップが付いていることで水洗いも可能になっており、汚れた際のメンテナンスも容易におこなえます。
ファンブローシステム対応ウェアは快適性を高めるためのオプションが用意されており、ファンブロー 3Dメッシュバックパネルはベスト内部に取り付けるタイプの背面パッドで、バックパックを背負っても背中に空間を作り出すことでファンの風を循環させることができます。コールドパックセットはウェア内部の首元に設置されたメッシュポケットにぴったりと入る専用保冷剤で、直接肌に当たらないよう断熱材が巻かれているため、適度な冷たさをキープしてくれます。
実際のフィールドで使用してみた詳細レビュー【ファンブロー ライトベスト】
バックパックに干渉しない位置に設計されているから邪魔にならない
バックパックを背負うことを前提に設計されているファンブローシリーズは独自の構造によりバックパックを背負った時にファンが干渉しない場所に配置されています。

バックパックを背負った時に干渉しない位置にファンが配置されていることで邪魔にならない
ファンは厚みが約4.2cmありますが設置されている場所が絶妙で、真横よりも少しだけ背中側でありながら、バックパックが干渉しないギリギリの場所にファンがくるように設けられており、また歩行の際に腕の振りを邪魔しない場所に配置されています。
左右のファンは右と左で取り付け位置が違い、左側のファンは背中側、右側のファンは前面に風が送られるように設計されていることで使用時にバランスよく衣服内へ送風されます。

左右で取り付け位置が違う。左のファンが背中側、右のファンが前面に送風されることで全体にバランよく風が送られる仕組み
送風によってベストが膨らむため、通常よりもやや外側に腕を振るよう意識すると良いでしょう。これによりファンに腕が干渉するのを防げるため、歩行中に邪魔に感じることもありませんでした。
ファンがバックパックに干渉しない構造になっているとは言いましたが、横幅のあるバックパックやショルダーハーネスの構造によっては干渉する可能性もあります。そのため、購入前に必ずチェックした方がよさそうです。
バッテリーからファンへの配線も長さが調節してあるため邪魔にならない
使用前に気になっていたのが配線が邪魔にならないかどうかです。バッテリーから電力を供給するために配線は不可欠ですが、コードがあることで動きの邪魔になったり、またバックパックとの間に挟まることで痛みが生じるのではと懸念しておりましたが、まったく問題ありませんでした。バッテリーからファンまでのコードは余分なたるみがないように長さが調節してあり、またコードを通すループも設置されていることで、脱ぎ着のときも引っかかることはありませんでした。

バッテリーとファンを接続するコードは余分なたるみがないように設計されており邪魔にならない
樹林帯で大活躍!汗を吸ったウェアを速乾してくれるから常にサラサラ
やはり最も気になっていたのは登山においてファンがどれほどの効果をもたらしてくれるのかどうかです。さっそく実力を確かめるべくフィールドへと出かけてきました。テストを行ったのが5月ということもあり、標高の低いエリアはすでに夏日を観測する日も少なくありませんでした。自分がテストした日も25℃を超え、じっとしていても汗ばんできてしまう気温で、ファンブローの効果を確かめるには絶好のコンディションでした。

登山開始から10分もしないうちにじんわりと汗をかき始めたので、さっそくスイッチを入れファンを稼働させてみると、ファンからの送風が襟元を抜けるように流れ、体を冷却してくれます。送風によりウェアは大きく膨らみ空間ができ、そこに風が送り込まれてくることで常に風が通る心地よさを感じることができました。
風が直接体を冷やしてくれることもかなり効果があり、暑さを感じにくく快適に行動することができましたが、個人的には汗によるベタつきが起こらないことが最も快適に感じたポイントでした。送り込まれた風は脇や首元から抜けていくため、汗によるベタつきをおさえつつも、汗の溜まりやすい脇や冷却に効果的な首を風により冷やすことができ、暑さ対策として高い効果を実感できました。
ベースレイヤーは汗を吸い上げてくれますが、長時間の行動で汗をかき続けるとウェアの保水力を上回り、飽和状態となってベタついてきます。ベースレイヤーは速乾性能が高いため、飽和状態になったとしてもすぐに乾いてくれますが、乾くまでには多少の時間を要します。乾くまでの時間が短いとはいえ、汗で濡れたウェアはベタつき不快感は避けられませんが、ファンを使いウェア内に強制的に風が送り込まれ続けることでベースレイヤーは常にドライに近い状態を維持することができるため非常に快適でした。

強制的な乾燥による「汗冷え」に注意
ファンがあることで常にドライな状態をキープしてくれるのは快適ですが、注意も必要です。すでに汗でぐっしょりと濡れた状態でファンを稼働させると濡れたウェアは素早く乾いてくれますが、汗冷えには気をつけなければいけません。一気に乾かすことで同時に体温まで奪われないよう注意しましょう。
さまざまなシチュエーションで試したみた中で、最も快適だったのは風の少ない樹林帯で行動している時です。標高が低くても稜線上や開けた場所では風がよく吹いており、そのような場所ではファンブローは必要以上の風を受ける形になるためあまり快適とは言えず、むしろ汗冷えに注意が必要ですが、樹林帯の中を目的地を目指して登っている時は非常に快適でした。
チェストベルトやウエストベルトは使用しない方が効果が高い
荷重を分散させるためにチェストベルトやウエストベルトを活用しますが、これらは風の通り道を塞ぎ、送風効果を半減させてしまいます。つまり、ファンブローが最大の効果を発揮するのは、これらのベルトを使用しない状態です。そのため、重い荷物を背負う長距離の縦走や泊まりがけの山行において、ファンブローの導入は適さないと感じました。
むしろ、日帰りハイキングなど軽荷で行動でき、チェストベルトやウエストベルトを必要としないシーンでこそ、その真価を最大限に発揮できると感じました。

チェストベルトやウエストベルトを使用すると送風されるスペースが遮られてしまい効果は半減してしまう。
ファンとバッテリーで560g、普通のウェアと比較した時に感じる「重さ」は否めない
実際にフィールドで使ってみた体感として、着心地に関して気になる箇所はなかったものの、それはあくまでも「ファンが付いているウェア」として見ていることが前提です。当然、ギミックのない普通のウェアと比較してしまうと、着心地の良さ(軽さやしなやかさ)は比べるまでもありません。

送風に必要なバッテリーとファンは合わせて560g。ズシりと感じる重さ
ファンは涼しく、汗の速乾を助長して快適さを提供してくれますが、ファンとバッテリーを合わせると総重量は560gになります。ファンブロー ライトベスト単体は147gで、、そこに560gが加わることでズシりと感じる重量感は否定できません。また、どうしても腰回りにファンが二つ搭載されていますから、腕の振りにも多少の気は使います。
ゆっくりと息の上がらない速度でハイキングや登山を楽しむ分には気になりませんでしたが、アクティブに行動するシーンや、スピードを求めるようなシーンではこの重量がネックになるので注意が必要です。
ファンは4段階で調節可能、最大で30時間の連続稼働
山中には電気がないため、バッテリーを消費し切ってしまうとファンブローシステム一式はただの荷物になってしまいます。この点は明らかなデメリットといえますが、専用のバッテリーはパワフルで大容量です。正式な容量は公表されていませんが、風量を4段階で調節できる機能を備えており、第一段階である6Vの電力による送風では、連続で30時間もの稼働が可能です。自分が試した中では、もっとも快適で実用的な風量は第二段階の9Vだと感じましたが、9Vの出力でも連続9時間の稼働が可能。日帰りの山行であれば、よほど長い行程でない限り、下山まで稼働し続けることができるでしょう。

バッテリーで4段階の風量調節が可能。残量が一目でわかるインジケーターもついている
より強力な風を送り込んでくれる13Vや19Vの送風時は、風量が強く体をしっかりと冷やしてくれますが、気になるのは稼働音です。轟音とは言わないまでも大きな音が出るため、送風の効果を適度に感じつつ、自然の中にいることをリラックスして楽しめたのは9Vの出力時でした。
専用バッテリーは他のデバイスと電力供給ができない
専用バッテリーの充電には専用のACアダプターが必要で、インプット、アウトプットも専用のソケットを採用しているため、他のデバイスへ電力を供給することはできません。山では電力は貴重ですから他のデバイスへの電力供給が可能だったり、スマホでも使えるソケットで充電が可能であればより汎用性が広がるのにと少し贅沢なことも考えてしまいました。
秀逸すぎるオプション「3Dメッシュパネル」は絶対に使った方がいい!背中のベタつきを解消!
ファンブローシリーズを使うのであれば絶対におすすめしたいのがファンブロー 3Dメッシュバックパネルです。これがあるのとないのではファンによる送風効果は雲泥の差がでると感じました。
通常、バックパックを背負うと背中と密着するため、発汗時にもっとも汗が溜まりやすいのが背中です。そのためバックパックと背中の間に通気性を持たせるための専用アイテムまであるくらいですから、登山時においてバックパックと背中が密着することによる不快感は万人が共通して抱える悩みと言えます。
3Dメッシュパネルはウェア内部の背中に取り付けて使用することでバックパックと背中に隙間を作ってくれます。そしてその隙間にファンからの送風により風が流れることでドライに保つ効果があり、不快感を軽減させることができました。

バックパックと設置する背中が汗により濡れないという快適さは一度味わってしまうともう手放せなくなってしまいそうなほどです。実際には気温や汗のかく量によって多少の濡れによるベタつきは生じましたが、それでもびっくりするほどの快適さに自分は驚きました。
1番気温が高い瞬間は首元を冷やしてくれる「コールドパック」で乗り切る

ファンブローシステム対応ウェアには首元の内側にポケットが設けられており、そのポケットには専用の保冷剤「コールドパック」を入れることができるようになっています。ファンでの送風に加え、保冷剤での冷却をすれば暑さ対策としてより高い効果を得ることができます。近年の気温上昇を考えれば、保冷剤を使い体を冷やすのは合理的とも言えます。コールドパックの効果が持続するのは3時間であるため、長時間の保冷はできず、また常温に戻ってしまうと再冷却はできないためただの荷物になってしまいます。しかし、山頂を目指す山行であれば、もっとも気温の高い「歩き出しの標高の低いエリア」で保冷剤を用いて暑さ対策をするのは非常に効果的でした。
このコールドパックは2個セットになっており、保冷バックなどにいれて携帯することで最大で6時間の間、首元を保冷することができます。
ファンブローシリーズ専用のコールドパックは通常の保冷剤と違い、内部に断熱材が入っていることで適度な冷却になるよう設計されています。通常の保冷剤を使用する場合、冷えすぎによる低温やけどのおそれがあるため、使用する際は必ず専用のコールドパックを使いましょう。
フード付きの「ファンブロー ショートスリーブパーカ」はフード装着で顔周りへ風を供給してくれる
登山の暑さ対策として非常に有効で、快適な山歩きをサポートしてくれた「ファンブロー ライトベスト」。実は、同シリーズの「ファンブロー ショートスリーブパーカ」も非常に優秀だったため、最後に合わせてご紹介します。
ファンブロー ショートスリーブパーカは、ファンブロー ライトベストと同様のファン・バッテリーを装着できる半袖パーカです。素材には、コットンのような風合いに撥水加工を施した「70デニール・フルダル・スパンライク・ナイロン・タッサー」を採用。ハリのあるしっかりとした着心地で、取り外し可能なフードも備えています。

ライトベストとの大きな違いは「半袖」と「フード」の2点ですが、これがフィールドでは大きなアドバンテージとなりました。
袖があることで、風が肩から抜けるベストとは違い、腕までしっかりと送風されます。その結果、冷却・乾燥できる範囲がぐっと広がりました。また、フードを被れば日差しを遮りながら頭部へと風を流せるため、さらに涼しく行動できます。
厚手の生地は通気性自体は低いものの、ファンを稼働させればウェア内を風が効率よく循環し、頭部へと抜けていきます。ファンのポテンシャルを最大限に引き出したいハイカーにとって、このファンブロー ショートスリーブパーカも有力な選択肢になるはずです。
まとめ:「風」を携帯して快適な山登りを!ファンブローシリーズは汗のベタつきを解消してくれる便利なウェアだった
モンベルのファンブロー ライトベスト、ファンブロー ショートスリーブパーカをはじめとするファンブローシリーズを紹介しました。暑さ対策として有効で、快適な登山を実現させてくれるモンベルのファンブローシリーズは実用的に用いるレベルに便利なアイテムでした。何度かフィールドで試してみた結論としては、長期の縦走や、シビアな道具選定をしなければならないような山行にこそ向きませんが、日帰りの登山や、長く樹林帯を歩くような場所ではファンブローにより風を身に纏うことで快適な山登りができるでしょう。
執筆:Yosuke.C(ヨウスケ)

不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。
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