
パタゴニア「テラヴィア・パンツ」シリーズレビュー:穿いた瞬間からその心地良さにうっとり。この夏からスタメン必至、軽快さが桁違いの軽量トレッキングパンツ
トレッキングパンツというと、どうしても登山ウェアの中でも後回しにしがち。でもだからといって「ある程度丈夫でさえあれば、あとは見た目で選べばいいや」と、まさかそんな風に考えている人はいないでしょうか?
気持ちは理解できます。ぼくもはじめはそちら側の人間でしたから——。ただ自分はこのサイトをはじめてから優れたトレッキングパンツに出会ったことで、その考えは変わりました。今考えてみれば当然のことですが、実のところトレッキングパンツだって快適で安全な登山のためには欠かせないアイテムのひとつなのです。そんなトレッキングパンツの威力をまざまざと体感できるのが、パタゴニアの「テラヴィア」シリーズ。
発売前の展示会で脚を通した瞬間からその心地よさにうっとりしてしまったこのトレッキングパンツは、「テラヴィア・ピーク・パンツ」の登場によってラインナップがさらに分厚くなりました。そこで今回は、最新モデルを含めた3モデルを同時に履き比べてみることができたので、これらの3着を実際のフィールドで着比べてみてその魅力や最適シーン、気になるところなどについてレビューしていきたいと思います。
目次
パタゴニア「テラヴィア・パンツ」シリーズ(テラヴィア・トレイル・パンツ、テラヴィア・ピーク・パンツ、テラヴィア・アルパイン・パンツ)の主な特徴
パタゴニア「テラヴィア・パンツ」シリーズは、アウトドア・アクティビティに求められる動きやすさと快適な穿き心地を備えた軽量トレッキングパンツ。下半身の広い可動域と無駄のないシルエットを追求した股・膝部分の巧みな立体裁断と、4方向への適度な伸縮性を備えたしなやかな生地を提供。バタつきを最小限に抑えた細身のシルエットは、大きな動きに対しても余分なストレスを感じさせず、絶妙なフィット感を提供します。温暖な季節の登山をはじめ、テクニカルな高山トレッキングや過酷なスルーハイクなど、さまざまな季節や目的にマッチする3種類のモデルがラインナップ。
「テラヴィア・トレイル・パンツ(上写真)」は3モデルの中でも最も薄手軽量で抜群の通気性を備えた軽快トレッキングパンツ。サラとした肌触りで清涼感のある生地は日本の蒸し暑い季節のハイキングでも汗を素早く拡散し、一日中ドライな状態をキープします。
一方「テラヴィア・ピーク・パンツ(上写真)」は優れた耐久性と防風性を備えたミッドウェイトのリサイクル・ナイロン・ソフトシェル生地を採用し、幅広い季節での岩場や高山、オフトレイルを含んだ長期縦走など、過酷な長距離スルーハイクに耐え得るタフさと快適さを兼ね備えています。
「テラヴィア・アルパイン・パンツ(上写真)」は、クライミングでの使い勝手を想定したモデル。大胆な立体裁断とストレッチ性によってクライミングでのダイナミックなムーブでもストレスを極力感じさせないデザイン。他にも脚の内側に摩擦や摩耗から保護するパネルを配置するなど、外岩で充実した一日を過ごすのに最適な作りになっています。
ハイキングや縦走からバリエーションルートまで、フィールドでのアクティブな一日を最小限のリスクで快適に過ごすためのパフォーマンスと機能性を備えた「テラヴィア・パンツ」シリーズは、アウトドアでの冒険をマルチにサポートしてくれます。それぞれレギュラー・ショート丈の2タイプをラインナップ。
※一部モデルはウィメンズモデルもあり。
お気に入りポイント
- 見事な立体裁断と抜群のストレッチ性による驚きの動きやすさ
- すっきり細身で無駄のないシルエットと心地よいフィット感
- 蒸れを即座に解消する高い通気性(トレイル・アルパイン)
- 快適さを妨げず適材適所に施された補強パネル(ピーク・アルパイン)
- 十分なポケット類
気になるポイント
- DWR(耐久撥水)加工はやや弱く感じられた
スペックと評価
アイテム名 | メンズ・テラヴィア・トレイル・パンツ(レギュラー) | メンズ・テラヴィア・ピーク・パンツ(レギュラー) | メンズ・テラヴィア・アルパイン・パンツ(レギュラー) |
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公式重量(g) | 315 | 550 | 340 |
生地 |
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ポケット |
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ウエスト | 部分的に伸縮性を備えたウエストバンド(ベルトループ付) | 取り外しと微調節が可能なベルト(ベルトループ付) | 微調節可能でかさばりを抑えたウエストバンド |
裾 | ハイキングブーツに対応するマチ付きジッパー | ベルクロ調節可能で、フロント中央のフックでブーツのレースに固定させることも可能 | 目立たないショックコードとコードロックで調節可能 |
Outdoor Gearzine 評価 | |||
快適性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
機動性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
保温性 | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
通気速乾性 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
重量 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
機能性 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
詳細レビュー
パタゴニアのアウトドア用ウェアの何が好きかって、さまざまな意見があるとは思うけど、自分にとっては何を置いてもその「高い次元でのバランスの良さ」に尽きる気がしています。それは例えば見た目。山山してなくて、いい意味ですごくナチュラル。色味もセンスがいい。次は履き心地。山用だからといって、肌触りやフィット感、動きやすさで決して着る人に我慢を強いてこない。自然で快適な着心地の良さ。そして最後にパフォーマンス。研究開発を怠らず、流行に流されず、常により強く、軽く、安全で快適なものを追求しているから安心して厳しい山で使える。これらをすべて兼ね備えているブランドはそう多くない。
いきなり結論からいってしまうと、今回取り上げる「テラヴィア・パンツ」シリーズは、これこそ自分の考えるパタゴニアの魅力「バランスの良さ」をこれ以上なく体現しているアイテムだと、4月の低山ハイクから梅雨入り前の中~高山トレッキングでテストして実感してしまったのでした。
フィット感と快適性:びっくりする肌触りの良さとフィット感で、穿いた瞬間からその心地よさにうっとり
どのモデルも、シルエットは太すぎず細すぎず、かといって過度にテーパードされているようなこともなく、バタつきを抑えつつ窮屈感も抑えた自然で下半身のラインがきれいに見えるスリムなストレート。股上も深すぎず、野暮ったさとは無縁の品の良いシルエットがかなり好感度高し。
もちろん、このスリムさによって動きが制限されてしまうことはまったくありません。最初に書いたように、このテラヴィア・パンツの最も優れた魅力は、下半身の動きを妨げない、まるで穿いていないかのようにスムーズな機動性の高さ。プレス向け展示会で試しにテラヴィア・アルパイン・パンツを穿かせてもらったのですが、足を入れた瞬間、サラサラでしなやかな裏地の肌触りの心地よさと共に驚かされたのがここ。
その秘密はまずリサイクル・ポリウレタンが14%(「ピーク」は8~9%)とたっぷり混紡された4方向に伸縮するメイン生地にあります。当然ながらストレッチ性が抜群なので、関節の動きに対してまったく違和感なく生地が追従してくれます。
さらに下半身の動きを計算に入れた立体裁断も健在。膝をグイっと曲げても、屈伸運動でしゃがんでも、とにかく、身体にかかる抵抗感・不快感のなさは格別です。
膝には立体的なダーツが施されていたり、股下のマチの作りなんかも、さすがはかつてあのギ・パンツやM10を世に送り出したパタゴニアと言わんばかりに、腿を思い切り上げてみても見事なツッパリ感のなさ。一見するとシンプルな見た目にも関わらず、優れた動きやすさを実現する手の込んだパターンが秀逸。動きやすさと自然な外観を両立しています。
3モデルとも動きやすいという点では共通していますが、その中でもあえて差をつけるとすれば、アルパイン > トレイル > ピークという感じ。
立体裁断のカッティングと生地の伸縮性の点から、アルパインが最も動きやすさという点で優れていました。ただトレイルとの差はほとんどないといってもいいくらいで、それに対してピークは生地が頑丈な分他2モデルと比べると差は感じます。
また(特にトレイル・アルパインの薄手・高通気生地はでは)肌面に触れる裏地は滑らかでサラサラと乾いた肌触りが最高に気持ちいい。夏場などでは膝を大きく曲げた時に汗ばんだ生地が肌と引っかかって非常に不快でストレスフルですが、そんなときでも余計な突っ張り感はありません。
動きやすいトレッキングパンツは、当たり前ですが危険な岩場や急坂であればあるほどそのありがたみが分かります。緊張を有する場面でも足の上げにくさを感じたりツッパリ感もほとんど感じない。どんな状況であっても自分のムーブに集中できることは地味ですがとても大切です。
耐久性:モデルによって必要十分なボリュームに最適化された補強
山岳アクティビティに必要な丈夫さ、耐久性は決しておざなりにはしてはいけないということをパタゴニアは分かっている。そのことを裏付けるように、テラヴィア・パンツシリーズにはそれぞれのモデルで想定されるアクティビティに適したレベルで必要十分な最適化された補強がなされています。軽さ・快適さと耐久性との良バランス。ここもこのモデルの魅力です。
例えば岩場や高山での着用を想定しながら機動性や通気性も損ないたくない「アルパイン」では、臀部と腿・裾内側部分に防風性と耐摩耗性を高めた薄手ソフトシェル生地という必要最低限のマッピング。
一方で同じ岩場や高山などのテクニカルな地形を想定していながら、季節も距離もより過酷な登山を想定した「ピーク」では、全体的な生地の厚みを増すだけでなく素材もポリエステルではなくリサイクル・ナイロンとより耐久性を意識したチョイスに。そのうえで前面と臀部にはより伸縮性の高いドビー織生地、その他には耐久性の高い二重織りのソフトシェルというコンビネーションでプロテクションと動きやすさ・防風性・通気性をバランスよく提供。縫製ももちろん万全です。
機能性:実用性十分な豊富なポケット、便利なウェスト、裾周り!
スタイル、快適性に続いて機能面でも高い水準を追及し、それぞれのアクティビティの使い勝手への配慮が細かいところまで行き届いています。
各所に実用性の高いポケット
3モデルにはフロント左右のジッパー付きハンドポケット、そして右太腿にもジッパー付きポケットが配置されています。本格アウトドア用としては、行動中に中の物が落ちたりしないようなジッパー付きは基本です。さらに「ピーク」と「トレイル」には背面にもジッパーポケットが左右に2つ、アルパインも右後ろに1つずつ付いており、収納面で不便を感じることはまずありません。
登山靴や登り方にフィットした裾回り
裾回りもきめ細かく作りこまれています。ローカット~ハイカットまでさまざま登山靴で歩くことを想定した「トレイル」ではジッパー開閉によるマチ付き。ハードな動きとハイカットブーツを想定した「ピーク」では裾前部分にシューレースに引っ掛けるフックがあり、サイドのベルクロによってブーツと足首の間を締めて、簡易的なゲイターのように機能します。「アルパイン」ではクライミング中の足元のクリアランスを上げるためのドローコードが配置され、安全性や機動性、シルエットの良さを高めることができます。
快適さと調節しやすさを考えたウエスト周り
ウェスト周りに関しても、「トレイル」はシンプルなゴムでベルトループを使用する作り。一方ハーネスの使用も念頭に置いた他2モデルは標準でベルトがついており、「ピーク」は標準付属のハリのしっかりとしたベルトを使うもよし、取り外して自分のベルトを使うこともできます。最後の「アルパイン」はさらにハーネスを使うことを前提として、パンツと一体型でかさばりを最小限に抑えたベルトになっています。
個人的には一見何も付いていないでベルトが必要かのように見える「トレイル」で、実は両サイドがしっかりと伸縮ゴム仕様になっていてウェストにフィットしやすいという細かな仕様がハマりました(上写真)。
まとめ:快適さ、動きやすさ、丈夫さ、スタイルと隙がなさすぎるバランスの良さ。3つのモデルはそれぞれどんな人・シーンにおすすめ?
ただ穿き心地がいいだけじゃない、ただ動きやすいだけじゃない、もちろんただ見た目がいいだけでもない。過酷なフィールドで求められる高いパフォーマンスと、服としての心地よさ、スタイルが融合したパタゴニア「テラヴィア・パンツ」シリーズは、素材から裁断と縫製、細部の作りに至るすべてに計算と気持ちがこもった完成度の高いトレッキングパンツでした。
アルプス縦走に代表されるような岩稜帯の多い高山でのトレッキングや春・秋登山には「ピーク」を、蒸し暑い季節のハイキングには「トレイル」を、そして日帰りの外岩クライミングやスクランブリング・沢登りなどのテクニカルな登山には「アルパイン」と、得意分野はそれぞれに違うので、欲を言えば全種類をシーンに合わせて使い分けたいものです。そうすれば季節や用途を問わずあらゆる1年を通じてあらゆる山岳アクティビティに対応することができるでしょう。
最後にそれぞれを穿き比べて感じた、各モデルの強みと弱み、そしておすすめシチュエーションについてまとめてみましたので、購入の際の参考にしてもらえればと思います。
アイテム名 | メンズ・テラヴィア・トレイル・パンツ(レギュラー) | メンズ・テラヴィア・ピーク・パンツ(レギュラー) | メンズ・テラヴィア・アルパイン・パンツ(レギュラー) |
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一言でいうと | 爽やかな夏用ハイキングパンツ | 岩稜帯や高山、藪漕ぎ等に強いタフで動きやすいトレッキングパンツ | 軽量・爽やか、動きやすくて擦れにも強いクライミング・ハイキング兼用パンツ |
強み |
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弱み |
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向いている季節 | 夏(前後含む) | 春・夏・秋・冬(雪なし) | 春・夏・秋 |
向いているアクティビティ |
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