冬でも気持ちよく山を走りたい!タフなトレイルに真価を発揮する SALOMON ADV SKIN CROSS SEASON 15 & CROSS RUNレビュー
外に出ることすら億劫になりがちな寒い冬は、ついついランニングも控え目になってしまう人も少なくないはず。
でもいざ走ってみると、人は少ないし汗もかきにくいし、空気は気持ちいいしで、冬こそベストシーズンと思えるくらい気持ちがいいものだったりします。
ただその恩恵を堪能するためには、普段以上にちょっとした準備が必要です。それが冬ランでのウェアリング。
寒いからといって走りはじめでも寒くないような暖かめの服装だと、走り始めて10分もすれば暑くてすぐに脱ぎたくなったりしてしまいます。もちろん走り途中の暑さよりも走り始めの寒さがどうしても嫌いという好みの問題もありますが。
いずれにせよ冬のトレイルランを快適に乗りこなすためには、出だしの寒さを少しでも和らげてくれながら、走っている最中も快適でいられる高い機能性をもった服装とギアたちが重要になってきます。
そこで今回は冬でも快適に走るためにこの秋冬登場したサロモンの最新ランニングパンツ「CROSS RUN」とバックパック「ADV SKIN CROSS SEASON 15」を実際に低山コースを走ってみたインプレッションをレポートしてみます。
目次
大まかな特徴
ADV SKIN CROSS SEASON 15
冬場や悪天候といった厳しい環境下でも安心の高い対候性を備えたトレイルランニング用バックパック。同社のベストセラートレランパックであるADV SKINベストの優れたフィットと機動性をベースに、荷物の増える冬季にちょうど良い15リットルというサイズ感や、雪や雨の侵入を防ぐための耐水性のあるドライバッグスタイルのメイン収納スペースやポケット、止水ジッパーなど、季節を選ばずどんなコンディションでも安全・便利にアイテムを収納し、快適な行動をアシストしてくれます。
おすすめポイント
- 高いフィット感と安定感
- 多様な前面のポケット類
- ドライバッグスタイルのコンパートメント(3000mm HH 防水性ファブリック)、寒い日や雨の日でも簡単に中身を取り出せるよう、トリムが大きくなっているなど寒さと防水性がしっかりと考慮された構造
- 荷室の開け締めやのコンプレッション操作の簡単さ
気になったポイント
- 通気・速乾性
- 重量
CROSS RUN
寒い季節をはじめ、1年を通して快適なランニングを可能にするテクニカルパンツ。アッパーに伸縮性のある織布、膝下から裾に向かってテーパードの効いたニットをハイブリッド構造によって、ジェンダーニュートラルでスリムなシルエットと窮屈さと無縁の快適なフィット感や抜群の動きやすさを両立しました。高い通気・速乾性によって行動中もドライ感を持続し、ゴム付きで調節可能なウェスト、左右ハンドポケットと背面ジップポケットなど十分な収納も魅力。さらにリサイクルファブリックを使用。
おすすめポイント
- 軽くてストレッチのきいた生地による抜群の動きやすさ
- バタつきを抑えつつ洗練されたシルエット
- 適度な通気速乾性
- 伸縮性とドローコードで絞り調節も可能なウェスト
- 十分なポケット
気になったポイント
- 厳しい冬に履くとこれ1枚ではやや防風性・保温性が物足りない
主なスペックと評価
ADV SKIN CROSS SEASON 15
項目 | スペック・評価 |
---|---|
容量(L) | 15(11~20) |
重量(g) | 320 |
生地 | 背面: 100% ポリエステル; 背面の切り替え部分: 89% ナイロン, 11% ポリウレタン; 本体: 100% ナイロン; 本体の切り替え部分: 88% ナイロン, 12% ポリウレタン; 裏地: 100% ナイロン |
背面システム | SensiFit™ |
収納類 |
|
快適性 | ★★★★☆ |
収納性 | ★★★★☆ |
安定性 | ★★★★★ |
機能性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
CROSS RUN
項目 | スペック・評価 |
---|---|
重量(g) | 180 |
素材 | 本体: 90% ポリエステル, 10% ポリウレタン; 本体の切り替え部分: 79% ポリエステル, 21% ポリウレタン; ポケット部分: 100% ポリエステル |
ポケット |
|
ウェスト | 平ゴム仕様、ドローコードで調整可能 |
快適性 | ★★★★☆ |
機動性 | ★★★★★ |
通気性 | ★★★★★ |
保温性 | ★★☆☆☆ |
対候性 | ★★☆☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
詳細レビュー:ADV SKIN CROSS SEASON 15
寒さや雨雪に強いタフな構造
春~秋にかけてを想定したトレイルランニング用のバックパックは軽さとフィット感、通気・速乾性にフォーカスしているため、雨風に対する強さや耐久性は二の次であることが多いのが一般的。これに対してこのバックパックは、一般的なランニング用ハイドレーションベストの作りをベースとしながら、春~秋の好天時だけでなく、雨天や積雪期を含めた1年中あらゆるコンディションで使用しても快適になるように作られているのが第一の特徴です。
例えば生地は撥水性のあるリップストップナイロンに加えて背面には防水性ファブリックのドライバッグスタイルのコンパートメントを配置、さらに縫い目にはシームシーリングを施して浸水を極力防ぐ作りになっています。
さらにところどころに採用されているジッパーは止水仕様と、非常に優れた対候性を備えています。多少の雨であれば中身が濡れることはないし、雪の上にパックを置いても染み込む心配もありません。
メインコンパートメントの入り口は、シンプル&軽量ロールトップ式。入り口が大きく開き、スピーディーに出し入れできるだけでなく、密閉性も高いため浸水の心配が少ないのが特徴。
ベストセラーADV SKINベースの、フィット感・機動性・安定感抜群の背負い心地
上半身を面で支えるベスト型のバックパックは、いかにその”面”が身体のラインにまんべんなくフィットし、かつ動きのなかでもズレなくブレなくフレキシブルに対応してくれるかという部分が快適さの肝だと日ごろから思っています。その意味で、独自の「SensiFit™」テクノロジーが生み出す極上のフィット感・安定感・動きやすさで定評のあるADV SKINシリーズをベースに作られたこのモデルは、期待通り快適な背負い心地を与えてくれます。
肩から正面にむかってしっかりフィットするよう立体的な形状になっているショルダーストラップは幅広でボリュームがあり、その広い面積で優しく包み込むようににフィットします。またショルダーストラップは伸縮性のあるエラスティックコードが使用され、SALOMONシューズにも使用されているあのクイックレースと同じコードロックによって1カ所で締め具合を調節できます(下写真)。ベルトタイプのストラップと違って激しい運動中に胸が窮屈になりにくく、ちょうど楽に呼吸ができる絶妙なテンションが気に入っています。
肌に当たる生地は立体的なハニカム構造のメッシュ生地が全面に配置されています。適度な伸縮とメッシュによる通気性は常に良好です。
そして体側部には伸縮性の高い生地を配置しているため、体を捻じっても、腕を回してもしっかりと体の動きに追随してくれて、安定感は抜群です。
見た目以上に大容量、出し入れも簡単な収納性の高さ
冬は防寒着や保温ボトル、さらにはチェーンスパイクなど、何かと荷物が多くなりがち。普段の日帰りランに使っている10リットル以下では容量が足りないという人も多いでしょう。その点このモデルはロールトップ構造によって11~20リットルまで拡張可能な、通年で対応する柔軟性の高い容量です。
メインコンパートメントは上にいくほど底面積が広くなる形状をしており、重心が肩付近の高い位置になるようにデザインされています。
メイン収納はロールトップ式の入り口。一般に開け閉めが面倒という弱みがありますが、すぐ隣に止水ジッパーによって簡単にアクセスできるドライバッグスタイルのコンパートメントがあるため、ハイドレーションブラッダーの他、雨具など直ぐに取り出したいものはこちらに収納できます(下写真)。このためロールトップ式のデメリットは微塵も気になりません。断熱性を兼ねて密閉性の高い収納になっているため寒さで凍りやすいということもありません。ただその分背面の通気性は少し妨げられてしまっているのは少し気になりました。
ちなみにこのハイドレーションのセッティング方法はADV SKINシリーズと同じ仕様なのですが、これが他のバックパックと違ってスマート。ハイドレーションのチューブを上から出すのではなく、ショルダーハーネスの中の脇下を通すようになっているため、チューブのラインが自然に口元にセットされ、飲みやすくチューブもブラついたりしません(下写真)。
動きの中で使いやすい、豊富な外部ポケット
ランニングパックの使い勝手で最も影響が大きいのがこの収納部分。ただ収納が多ければよいというわけでもなく、かといって少なすぎても不便。適材適所に丁度よい大きさの、さらに「行動中でも立ったまますぐにアクセスできる」収納がスマートに配置されていることが重要です。
ADV SKIN CROSS SEASON 15のショルダーストラップには左右対称にポケットが4つずつ付いています。上から①メッシュポケット、②ソフトフラスク用ポケット・③大型ジップポケット・④大型メッシュポケット(下写真)。
最上部にある小さなメッシュポケットは小さなジェルやタブレットなどが入ります。また左のメッシュポケット内には緊急用のホイッスルが格納されています(下写真)。
ソフトフラスク用ポケットは細めで深さがあるため、サロモン純正の500mlフラスクがぴったり入るようになっています(下写真)。抜け落ち防止の伸縮コードもしっかり。ちなみにポケットの入口は冬にグローブをしている場合も意識して、大きめのトリムで出し入れがしやすくなっています。
大型ジップポケットはある程度浸水を防いでくれるため、手袋や汗拭き、スマホなど濡れてほしくないものの収納に便利。その外側にあるメッシュストレッチポケットにはジェルやスナックなどを入れておくのに便利です(下写真)。
ショルダーストラップには、ドローコードが上下に2本ついており、トレッキングポールを左右1本づつ固定できます。パックを降ろさなくても作業できるため、行動中のタイムロスやストレスは極力軽減されます。
フロント(サイド)にも大き目のメッシュポケットが備え付けられています。グローブやビーニーなどを入れるのに便利。
面白いことに、入口は左右にありますが実は底でつながっているため、レインジャケットを押し込んでおいていざというときに背中に手をまわしてさっと取り出すというスマートな使い方ができます(下写真)。
最後にフロント外側のドローコードは荷物が少ないときのコンプレッションに使うほかにも、アプローチなどで長く使わないときのポール固定にも便利です。
詳細レビュー:CROSS RUN
走るのに理想的なシルエットと穿き心地
春から秋までならばショーツのみ、あるいはランニングタイツとショーツを合わせれば寒さを感じずに活動できますが、冬に差し掛かってくると低山でも下半身に当たる風が冷たく感じられるようになってきます。そこで重宝するのはやはりロングパンツです。
冬の剥き出しのスパッツが個人的にイマイチ好きになれないのは、走りやすさはあれど、どうしても冷たい風に当たって肌から直接熱を奪われるようなヒンヤリした感覚が続くから。それもあって冬は(スパッツの上からでも)できればパンツを穿きたいと思ってしまいます。
とはいえバタつかず快適なフィット感というスパッツの良さも捨てがたい。このCROSS RUNはそういう意味で、スパッツの走りやすさとパンツの穿き心地の良さを兼ね備えたスマートなデザインであることがまず気に入りました。足首に沿ってテーパードされた美脚シルエットながら、ヒップ・太もも周りの適度なゆとりがリラックスした自然な着心地を演出しています。サイズ感については、自分がウェスト細めかつ足長めの体型(身長176cm・体重64kg)だからというのもありますが、ウェストジャストで選ぶとやや9分丈くらいになりました。ちょい短いくらいならば許容範囲かな。
アッパーはコシがありながらストレッチ性のある織布、そしてひざ下から足首にかけてはフィット感とストレッチ性に優れたニットを合わせたハイブリッド構造の生地を採用しています。どちらも表面は滑らかで、脚通りもスムーズ(下写真)。
伸縮性と立体裁断による抜群の動きやすさ
素早く、大きく下半身が動くトレイルランでは、パンツのちょっとした抵抗感も気になるものです。その意味では、このパンツはそうした激しい動きに対してパンツに求められる機動性については、ほぼ何の不満もありませんでした。すべてが高いレベルで応えているといっていいかもしれません。
Sサイズで178gと超軽量、股上のゆとりと4WAYストレッチの高い伸縮性によって、穿いたときの締め付け感は皆無、足の曲げ伸ばしでもストレスはまったくといっていいほどありません。
さらに股下に配置されたガゼットクロッチなど、巧みな立体裁断によって大きな動きに対しても突っ張ったりゴロついたりもありません。岩場などでの大きな足上げも躊躇なく行なえます。
ウェストは平ゴムでフィット感を高めつつ、伸縮紐で調節も可能になっており、幅広い体型に合わせて適切なフィットが可能です。
実際に走ってみると、ひざ下から裾に向かってはテーパードが効いてバタつきもなく、安全に素早く軽快な足運びを可能としています。通気性も抜群で熱や湿気がこもるということは一切なし。日中の暖かい時間になってもずっと蒸れずに快適でした。
ただその反面、このパンツは特に寒さや雨風に強いというわけでもないことには注意が必要です(勝手に秋冬に発売されたから冬用だと思ってた)。抜けが良く速乾性が高い分、防風性・撥水性に関しては期待できないので、保温にはインナータイツを、雨風対策にはウィンドシェルパンツやレインパンツなどを備えておくことをおすすめします。
スマートなデザインを損なわず、使い勝手十分なポケット類
フロントには左右ハンドポケットが配置され、さらに背面にはジッパーポケットが備え付けられており、リラックス時にもランニング時にも便利な収納がしっかり。
まとめ:こんな人におすすめ
今回紹介したバックパックとパンツは、いずれも秋冬の新アイテムですが、だからといって決して「冬用」として考えるのではなく、1年を通して幅広く快適に使いたいという人に適したアイテムだと感じました。
軽快さと耐水・耐久性を兼ね備えたADV SKIN CROSS SEASON 15は普通に丈夫なトレイルラン用バックパックとしてもよくまとまっていて、もう少しタフなシチュエーションを想定したスピードハイキングやスクランブリング等にも十分活用できる特徴を兼ね備えています。
一方CROSS RUNは、冬向けとして考えるとかなり薄手軽量かつ通気速乾性の高いパンツなので、単体で穿くならば春秋など寒さが厳しくならない季節がベストシーズンです。寒さが厳しい季節にはインナーにタイツを合わせればちょうどいい保温性と通気速乾性を備えることができるため、結果としては1年を通じて快適に活用することができるでしょう。
製品の詳細について、問い合わせ等はSALOMON公式サイトもあわせてご確認ください。