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ガチでトレイルから街まで着られて、おまけにエシカルなTシャツと山シャツ。BRINGの夏でも快適な再生ポリエステル × 天然メリノウールの山ウェアたちをレビュー

「毎秒トラック1台分の衣類が処分されている世界」を断ち切るための服作り

普段から何気なく着ている服は、気がつけば今ではすっかり安価で手軽に手に入るようになりました。ただ一方でそうした世界的なファスト・ファッション文化は大きな曲がり角に来ています。衣類の生産量は2000年からほぼ2倍になった※1といわれる一方で、消費者の着用する期間は半分になりました※1。つまり21世紀の人間はより多くの服を着て、より多く捨てているのが現実です。

それによって引き起こされているのは、生産による大量の水消費と膨大な量の二酸化炭素排出、そして消費者による大量の廃棄です。事実、ファッション産業は世界で2番目に水を多く消費する産業であり、人間の活動で排出される二酸化炭素のうち10%はファッション産業によるものだといわれ※1、また世界のファッション産業では年間9200万トンのゴミが発生している※2ともいわれています。

※1:BUSINESS INSIDER
※2:BRING HP

こんな状況をこのまま続けていると、いずれ地球が文字通りの意味で人間の住めない場所になってしまうかもしれない。冗談ではなく、もうすでに地球が坂を転がりはじめているのではないかと思わずにいられない事態が起こっていることは、皆さんもうすうす感じているのではないでしょうか。毎年々々「夏ってこんなに暑かったっけ?」などとしていた他愛ない雑談が、いつの間にか深刻な問題になっている、そんな未来は誰も見たくないものです。

BRINGは、使わなくなった服を回収して自社工場で原料に再生して再び服にするというサイクルを何度も循環させることができる独自の技術を開発し、サステナブルな地球環境を実現するサーキュラーエコノミーを社会に実装することを目指した日本発の新しいブランド。

Outdoor Gearzineでは昨年のベースレイヤー特集で、秋冬向けのメリノウールと再生ポリエステル混紡のニット「WUNDERWEAR」を紹介したころから注目していましたが、今回はそのBRINGから春夏中心の山でも使えるさまざまなアイテムを提供してもらい、アウトドアをはじめとしてその実力をチェックしてみました。

※著者は今回のレビューにあたって当サイトのポリシーに従ってレビューすることを条件に製品提供を受けています。

BRINGとは?

衣類に使用される繊維の中でも、ポリエステルは繊維生産量の約6割を占める主要な素材です。軽くて丈夫で吸水性が低いため速乾性も高く、耐久性にも優れていることからアウトドアでもおなじみのこのポリエステルを、BRINGでは服の状態から最終的にサステイナブルな原料にまでリサイクルし、再び糸・生地・服をつくる技術を独自に開発しました。

これまでもPET(=ポリエステル)ボトルを繊維にリサイクルする方法はありましたが、その再生された繊維をさらにリサイクルする方法はほとんど無く、一度しかリサイクルできていなかったところを、BRINGではなんと「何度でも」続けられる、ケミカルリサイクルによるBRING Technologyを開発したところが他と大きく違います。BRINGではこの独自技術を用いて一つひとつの服が「どんなときに、何をするため、誰が着るのか、どんな体験をするのか」といったフィールドと目的を定めて、毎日の生活と自然の中で生き延びるための服づくりを目指しているといいます。

今回はこのBRINGから、夏山登山に使いたいという想定で、以下の4アイテムを試させてもらいました。

  • WUNDERWEAR AOYAMA T-shirt(写真左)
  • DRYCOTTONY Mountain Aloha Shirt(写真右)

  • WUNDERWEAR “ONE”50/50
  • WUNDERWEAR SOCKS

詳細レビュー

WUNDERWEAR AOYAMA T-shirt:夏の暮らしから旅やトレイルまで、機能もデザインも◎なメリノウールTシャツ

古着などを原料に、独自技術で再生したサステイナブルなポリエステル「BRING Material™」と、高品質な天然メリノウールとの混紡生地を採用した快適・高機能肌着が「WUNDERWEAR(ワンダーウェア)」シリーズ。ぼくがはじめてBRINGと出会ったのも、このシリーズの秋冬向けベースレイヤーでした。「WUNDERWEAR AOYAMA T-shirt」は同シリーズの春夏向け半袖Tシャツで、アクティビティユースとタウンユースどちらでも着用したいというデザイナーの想いが「AOYAMA」というネーミングにも、そして一目見て垢抜けたそのスタイリッシュなデザインに現れています。

176cm、63kgでM/Lサイズを着用。

ウールとポリエステルがほぼ半々で構成された生地は、天然エクストラファインメリノウールのしなやかで自然なしっとり感と、ポリエステルの軽やかでサラサラとした爽やかさが同居した何とも言えない心地よさ。ぼくが夏でもメリノウールをあきらめない理由はこの唯一無二の気持ちのいい肌当たりの良さにあります。

M/Lサイズを着用しましたが、サイズ感はちょうどよく身幅は山用ウェアとして考えるとやや広め。「オールジェンダー対応」というだけあって、確かに男女どちらが着ても違和感のない作りです。このゆったりとした着心地に加えて適度な伸縮性としっかりとしたキックバックのおかげで、アクティビティでの大きな動きでもストレスは皆無で、着心地に関しては言うことなしといったところです。

上品さを醸し出す、ステッチ幅が短くあしらわれた袖裾&身頃裾

また、ウールと聞くとどうしても夏は暑いのではないかと思う人もいるかもしれませんが、ウールには天然の湿度調整機能が備わっているため、衣服内の温度や湿度が上がってくると、繊維が温湿度を一定に保とうと機能してくれます。加えて混紡されたポリエステルの速乾性、そして優れた通気性によって、気温の高い環境でも快適でいられました。

また、山でも炎天下での行動でたくさんの汗をかきましたが、その汗はずっと留まることなく、素早く乾いてくれました。ハイキングに着ていったときにはバックパックに接する背中はじっとりと汗まみれになっているのですが、シャツがピッタリとくっつくような不快感もなく、しばらくすれば気にならない程度にまた元のサラッとした肌触りに戻っています。

もちろん厳しい山用のウェアという視点で見れば、デザインはもう少し肌にピッタリと密着しているべきかもしれませんが、それを補って余りあるのは、洗練された汎用性の高いデザインによって街中からトレイル、そして下山後まで着続けていられるという点でしょう。ウールのもつ天然の防臭性も手伝って、家族でこの夏旭川に旅行に行った際も富良野観光から旭岳のハイキングまで、これ一着でまったく不快感なく、気持ちよく着続けていることができました。

気温の高いアウトドアでは一枚着としても、ウィンドシェルの下のインナーとしても、春秋でもアンダーウェアとの重ね着で使うのがいい感じ。また、まれにウールは洗濯すると縮んでしまう製品もありますが、こちらは何度も洗濯してまったく縮んだりしないことも確認できました。

結論としては、過酷なアクティビティを除けば登山やハイキング、夏のアウトドアには全然アリでした。

DRYCOTTONY Mountain Aloha Shirt:新ジャンル “アロハ山シャツ” スタイルだけでなく機能も十分

山道具の世界にも「ジャケ買い」があるとしたら、これはまさにそんな感じでした。一目見ただけで「着たい」と思わせるデザインと、着る人を選ばないこなれたシルエット、そして袖を通したときの安心感。遊び心が詰まった山で着るアロハシャツ、まさに“アロハ山シャツ”です。

もちろん、本当に山で着られるかどうかといった機能面も重要です。

アロハシャツは元々暑いところで着るものですし、形状的にも羽織りとしても首回りがすっきりしていて空気がこもりにくいなどから、夏の低山をはじめとした暑い季節のアウトドアに適していないということはありません。また生地はいわゆる「アロハシャツ」な薄手のサラサラ素材とは違い、再生ポリエステル100%ながらコットンのような肌触りと吸水速乾性に優れた「DRYCOTTONY」糸で編み込んだボリューム感のある生地を採用することで、自然で快適な着心地と、汗や蒸れを外に逃す速乾性、さらにはUVカット機能も備えています。

半袖アロハシャツ一枚なんて、レイヤリングとして何の足しにもならないかと思いきや、先ほどのTシャツの上に羽織ってみると肉厚な生地とボリューム感のある襟首が風を遮りつつ冷えを適度に和らげてくれ、羽織り物としてきちんと仕事してくれます。もちろん半袖であり、襟元も開いていて、生地は自然な空気の流れを妨げず、またフロントのボタンはドットボタン式を採用しているためその都度ボタンを開け閉めすれば換気もしやすく、思った以上に上手く体温をコントロールできます。

難点があるとするならば、あえて厚手の生地を採用していることで、少し重量感がある点です。穏やかなアクティビティならばほとんど気になりませんが、やはりアクティブでシビアなアクティビティにとっては気になる重さと言えなくもありません。

ただそうしたデメリットはありながら、この厚手ゆったりフィットならではの心地よさとスタイルの良さは捨てがたいのも事実。こんなデザインなので、当然山だけでなく、街中でもまったく違和感なく着こなすことができますので、汎用性はいうことなし。もちろん汚れたら気兼ねなく洗濯機で洗えるので、山着に、普段着にと使い勝手抜群です。

ハイキングではいくら暑くても稜線での風よけにベースレイヤーの上に何か一枚羽織っておくのが快適に過ごせたりするものです。そんな時、気持ちよく快適に、そして山でも安心して羽織れるこのユニークな「山アロハ」は、皆さんの夏山スタイルに新しい風を吹き込んで切れるのではないでしょうか。

ハイカーやトレイルランナー、山のモチーフを用いたプリントデザイン。イラストレーター「SASAKI HISAE」が担当

WUNDERWEAR “ONE”50/50:気持ちよすぎて毎日履きたくなる、優しいフィット感と肌触りが魅力のアンダーウェア

実は今回初めて知ったのですが、おそらくBRINGのアイテムの中で最もアウトドア愛好家たちに支持されているのが、このWUNDERWEARのアンダーウェア。遅ればせながらこちらも試してみました。

生地はメリノウールとポリエステルが半々ずつ配合されているため、(Tシャツのところでも書きましたが)ウールの着心地の良さと化繊の耐久性や速乾性が融合した、アウトドアに相応しい快適性と機能性を兼ね備えているといえます。

何よりも肌に張り付きにくくフワッと軽やかな肌触りを可能にする立体的な編みと、ウェスト部分まで含めて縫製をまったく無くし、肌へのゴロつきを抑えた「ホールガーメント®︎ニット」を採用した履き心地は快適の一言。微細な起伏のある生地が空気の層を作るため、それが断熱層となり寒い時も暑い時も肌面の温度を一定に保とうとしてくれます。もちろんウールによる防臭機能もしっかり仕事してくれているので、何日も履きっぱなしのロングトレイルでも不快感を抑えてくれます。洗濯も細かいことを気にせず洗濯機に入れるだけでいいのも嬉しい。

今回試したのは「ウエストまで無縫製」「ウール50:化繊50」の「”ONE”50/50」というタイプでしたが、ウエストのしっかりしたフィットが好みの場合は平ゴムタイプを、また汗処理能力の高さよりも着心地や保温性を重視したい人のために「ウール70:化繊30」という混紡割合のモデルを選ぶこともできます。自分の場合今回は夏用で山街兼用ということでホールガーメントの50/50を選択しました。

WUNDERWEAR SOCKS:普段履きがメインだけど山「でも」使えるノーストレスなメリノ混紡ソックス

良い機会なのでWUNDERWEARシリーズを一通り試してみたいというわがままな要望に応えていただき、勢いでこのメリノウール×再生ポリエステル混紡ソックスも試させていただきました。

ポップなカラーリングながらシンプルな無地1色のデザインは山ソックスには貴重です。ポリエステルだけでなくナイロンやポリウレタンが混紡され、さらには足の甲から土踏まずと脛周りはリブ編みによって縦横の伸縮性に富んでいて、履いた時にはしっかりとフィットしつつ、でも締めつけ過ぎない優しさを感じます。日常用の靴下としてはこの上なく心地よい印象でした。

ただ、ハイキングやランニングでは、強い踏み込みでもズレない普段よりも強めのサポートや衝撃に耐えられるクッション、擦れにも耐えられるようなつま先・かかとの補強などの作り込みが必要になってきます。その点このソックスは生地の構成と履き心地こそアウトドア用といえるものですが、その辺の仕様は元々そこまで想定されていないと思われます。このため積極的に山で使えるとは言いませんが、アウトドアの仕事履きとして、またはキャンプや散策といった、日常の旅の延長としてのアクティビティなどには活用していくつもりです。

まとめ:快適・高機能・スタイリッシュ・サステナブル。BRINGはこれからのアウトドアウェアが目指すべきひとつのカタチ

確かにBRINGは純然たる山の専門メーカーではありませんが、アウトドア製品の機能性の高さがアパレル業界や一般の消費者にここまで浸透してきた今、アウトドアの機能性を踏まえて街でも山でも活用できるアイテムが生まれてくるのはある種の必然でもあります。またBRINGのように自然に対する敬意と社会に対する高い問題意識を持ったブランドはこれからも世界中で増えていくと思いますし、ユーザーとしてのぼくらもこうしたブランドに良いものをどんどん作ってもらい、しっかりと育てていかなければなりません。

今回4アイテムを試してみましたが、それぞれ程度の差こそあれ、山に着ていくことができる優れた機能性を備えていることが分かってもらえたかと思います。ぜひ今回のレビューを参考に、アイテムの長所と短所を見極めながらアウトドアに活用していただき、より自分らしい山登りができるようになってもらえれば幸いです。

BRING 製品の詳細と購入について

製品の詳細についてはBRING 公式サイトをご確認ください。