
【忖度なしの自腹レビュー】DURSTON X-Dome 1+ 計算し尽くされたデザインに感動しっぱなし。居住性と携帯性、耐候性すべて揃った自立式ダブルウォールテント
道具選びに際して「軽さ」を優先すると、快適さや耐久性が犠牲にすることも少なくありません。「快適さ・耐久性」と「軽さ」は相反関係にあることが多く、快適さを求めると装備は重たくなり、軽さを求めると快適が犠牲になりがち。このバランスがとれたギアはまだまだ多いとは言えません。
テントに至ってはより顕著で、快適性を求めれば重くなり、軽さを求めれば快適ではなくなるのがセオリー。快適な居住性で尚且つ軽量なテントを探していたときに出会ったのが、カナダ発、気鋭のアウトドアブランド、DURSTON X-Dome 1+。使ってみたところ非常によかったためレビューしていきたいと思います。
使いやすさにこだわり、細かいところまで作り込まれたDURSTON X-Dome 1+は居住性と耐候性、携帯性のバランスが高いレベルで整った素晴らしいテントでした。
目次
DURSTON X-Dome 1+の主な特徴
X-Dome 1+は強度、居住性、耐候性、携帯性を兼ね備えた自立式の3シーズン用ダブルウォールテントです。一般的なクロスフレームのテントとは違い、左右にY字のジョイントを持ったユニークなフレーム構造をしており、上部に短いクロスバーを追加することにより従来の山岳用ドームテントよりも居住性を高めつつも最小重量は985gと軽量で携帯性に優れ、一人用の自立式のダブルウォールテントとしては世界最軽量クラス。オプションとしてトレッキングポールをフレームとして追加することができ、更なる強度の向上を可能にした画期的なデザインで、嵐の中でも居住性の高さを維持できる構造です。
一人用テントですが、一人が寝るスペースに加え荷物も置くことができる十分なスペースが確保され、広めに設計された前室はシューズやその他荷物を置いていても調理ができる十分な広さが確保できます。テント内の生活をより快適にできるよう細部まで考え抜かれた細かな工夫がされており、使い勝手の良さを追求されたテントです。
お気に入りポイント
- 広いヘッドスペースや前室、用途によって広げられる間口など居住性の高さ
- 自立式ダブルウォールテントにもかかわらず驚きの軽さ
- 素材、ペグダウン、追加ポール設計など含めた耐候性の高さ
- 自立式で場所を選ばず設営可能
- フライから先に設営したり、フライとインナー一体型設計なので設営も楽
気になるポイント
- アタッチメントポイントの強度
- 風を受け流しにくい垂直気味の側面
- 一人用としては広すぎる(場所によっては日本の狭いテントスペースにやや合わない)
- ペグは4本のみ、ガイラインは付属していない
主なスペックと評価
アイテム名 | DURSTON X-Dome 1+ |
---|---|
就寝人数 | 1名 |
最小重量 | 985g(インナー、フライ、ポール) |
総重量 | 1040 g(インナー、フライ、ポール、スタッフサック、ペグ4本) |
フライ素材 | 15デニール シルポリ 耐水圧3500mm(シリコンコーティング) |
フロア素材 | 15デニール シルポリ 耐水圧3500mm(シリコンコーティング) |
ポール素材 | イーストンカーボン3.9 / 6.3ブレンド |
室内サイズ | 長さ2.15 m × 幅0.7 – 1.3 m × 高さ1.08 m |
出入り口の数 | 長辺に1 |
収納サイズ | 45 x 12 cm |
フロア面積 | 2.15㎡ |
前室面積 | 0.85 ㎡ |
Outdoor Gearzine評価 | |
居住快適性 | ★★★★★ |
設営・撤収の容易さ | ★★★★★ |
耐候性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
携帯性 | ★★★★★ |
適したアクティビティ | 厳冬期を除く4シーズンの登山・ハイキング、ロングディスタンスハイキング |
詳細レビュー
自立式で設営場所を選ばず、インナー・フライ一体型で設営も簡単
X-Dome 1+は自立式の吊り下げ式構造のテント。つまり非自立式のようにペグが刺さらない地面では設営できないといった心配がありません。地面さえあればどこでも設営が可能というのは初心者にとって何よりも安心です。
またセッティングでも一度覚えてしまえばあっという間に設営できてしまう簡単設計。一般的な山岳テントの多くは、インナーテント、フライシート別々に順番に設営していきますが、X-Dome 1+はインナーとフライシートを接続しておくことができる一体型構造のため、設営はフライシートのフックをポールにかけていくだけで終わります。実際にフィールドでのテストでは、強風にも関わらず、5分かからないで設営することができました。
以下は自分が初めて設営したときの様子を撮影した動画です。実は自分はこの時には一体構造に気づいておらず、普通にインナーから設営して失敗してしまってますが、それさえ間違わなければ驚くほどスムーズに設営ができることが分かるかと思います(下のショート動画リンク)。
設営手順を覚えた後のスムーズな設営動画
なおインナーとフライシートを別々に設営する場合は、フライをポールに接続し自立させた後に、テント内でインナーテントを取り付けていけば完成します。
フライから設営できるため、悪天候時に使いやすい
フライシートから設営できることは多くのメリットがあります。例えば悪天候の時にはフライシートを先に設営することで、インナーテントを濡らさずにテントを設営できること。
これは登山など山岳地帯で悪天候時の野営では重宝する構造で、インナーテントから設営するタイプのテントではどうしてもフライシートを被せるまでにテントが濡れてしまったり、設営後もとりあえずレインウエアのままインナーテントに入らないとレインウェアを脱ぐことができません。
すると設営後に自身のレインウェアによりテント内部が濡れてしまいますが、X-Dome 1+ならまずフライシートを設営し、その中に入ってさえしまえば雨風の心配はありませんから、レインウェアを脱ぎ、落ち着いてインナーテントを設営することができ、自身のレインウェアでインナーテントのフロアを濡らしてしまうこともありません。
撤収の時は逆の手順で撤収することで濡らしたくない装備は一切外に出すことなく撤収を完了させることができます。
フライシートのみ、インナーのみで設営することも可能
X-Dome 1+はフライシート、インナーテントそれぞれだけで使用することもでき、状況に応じて泊まり方を変えることができます。ただでさえ軽量なX-Dome 1+ですが、より軽量化を図るのであればインナーテントを使わずに自立式シェルターとして使うことでインナーテント分の約293gを軽量化させることができます。
フライシート、ポールを合わせた重量は686.5gでワンポールシェルターに比べればやや重たくなりますが、シェルター内の空間の広さは快適で、軽量化と居住性(快適さ)のバランスのよさからかなりおすすめの使い方です。
インナーテントだけでの設営も可能なため、雨の心配のない晴れた日なら星空を眺めながら寝ることだって可能。湿度の高い日本ではインナーテントだけの使用は難しいところもありますが、タープと組み合わせることで気温の高い季節も快適に過ごせるでしょう。
耐候性の高さ
テントポールに使用されているのは40年以上の歴史を持つアメリカのイーストン社が作るカーボンポールで、重量に対して大幅に高い強度を誇ります。高品質な素材を使いつつも極限まで軽量化を図るため、3.9mmと6.3mmのポールを場所によって使い分け、より負荷のかかる場所には6.3mmのポールを使うことで強度を高めています。
さらにX-Dome 1+は全部で14箇所ものペグダウンをすることができ、(ベンチレーションも合わせると16箇所)耐候性を高めることができ、風が強い環境でもテント内部の空間を保つことができます。
ただし、ガイライン(張り綱)は付属しておらず、付属のペグは4本のみのため、使用前に用意する必要があります。
気になる点としては、X-Dome 1+はカーボンポールを採用しているのに対して、市場に出回る多くの山岳テントのポールにはアルミポールが採用されていること。アルミに比べ高価と言われるカーボンですが、価格を抑えるためにアルミが採用されやすいのはわかるものの、本当にそれだけでしょうか?多くの負荷がかかるトレッキングポールを見ても耐久面を重視して作られたポールに使われているのはアルミが多いのも事実。ポールの軽を太くすることで強度が高められていますが、カーボンポールへ不安は拭いきれません。
トレッキングポールを追加することで強度を高めることができる

長辺側にトレッキングポールを追加することができる
X-Dome 1+はまだまだ強度を高めるためのギミックがあります。長編側の前後にトレッキングポールを追加できる構造になっており、これにより強度をさらに高めることができます。先述したとおり、全16箇所のペグダウンを行うことで耐候性はバッチリですが、そこにトレッキングポールを追加することでもはや無敵と言えそうな堅牢なテントに変身します。
テストでは正面からモロに風を受けるような状態で設営をしましたが、トレッキングポールを追加することで風を受けてテントが潰れてしまうようなこともなく自立してくれました。
これだけ強度が高められているX-Dome 1+ですが、気になったのは吊り下げるためのアタッチメントの縫製。山岳地帯など厳しい環境下の使用が想定されたテントの多くはスリーブ式や、メッシュの補強を入れることで風を受けた時の負荷を分散させる構造になっており、これによりテントの生地が破れてしまったりすることを防いでいますが、X-Dome 1+はアタッチメント部の補強がされていないため、やや心配です。縫製の強度面では標高の高い山岳地帯の使用を想定し作られている国産のテントに軍配が上がるでしょう。構造的にかなり強度の高い仕様になっているため、アタッチメント部の頼りなさは少し残念に感じたポイント。もしここに補強が入っていたら右に出るものなしの最強テントとして豪語できるかもしれません。

負荷を1箇所に受けやすい構造のアタッチメントポイントの縫製はやや心配
やや垂直気味の側面は強風の影響を受けやすい?
X-Dome 1+は長方形の形をしているテントです。山岳テントの多くは長方形の形をベースに、前室などを飛び出すような形にすることで尖らせている形状のモデルが多く、これはデザイン的なものではなく、耐候性を考慮した上での設計になっています。
風を受ける面が大きくなればなるほど生地にかかる負担は大きくなりますから、その風を受け流すために三角形の形状にすることで生地への負荷を受け流せる設計にすることで耐風性が高められています。X-Dome 1+は風を受けてしまう面積が大きく、16箇所のペグダウンポイントにトレッキングポールの追加も可能で高い耐候性を実現しているものの、先述した縫製面も含め、あくまでも高山での使用を目的としたテントではなく、長期のハイキングや、旅などでの使用するためのテントとして設計されていることに留意しましょう。テントの基本形状から標高の高い稜線上の野営における耐風性は専門の山岳テントの方が優れているでしょう。
フライシート、フロアの耐水圧は他のテントより頭一つ抜けている
市場で入手することのできるテント(フライシート)の耐水圧を調べてみたところ、ざっくり1200mm〜1500mmが一般的です。高いモデルでも2000mmくらいですが、X-Dome 1+のフライシート、フロアの耐水圧は3500mmになっており、他のモデルと比べても雨に強いと言えます。

パリッとした質感のシルポリ素材
さらに、素材にナイロンではなく、シルポリを使用することで水分を吸収することもなく、テンションをかけても膨張することもないため、しっかりとペグダウンをし、シワのないよう設営することで最大限の耐水性を維持させることができます。ポリエステルは丈夫で耐久面において優れているのも特徴ですが、さらにリップストップ構造を採用することにより、15デニールという薄さながら、生地そのものの耐久性も確保されています。
内部の居住性の高さ
筆者がこれまでテントを使った経験の中でもX-Dome 1+はトップクラスに快適なテントでした。特に高さが108cmあり、クロスフレーム構造により最大高が広く確保されているので圧迫感がありません。最近では寝心地のいいエアマットが主流になってきていますが、厚さが8〜10cmあるエアマットをテントに敷くと、天井が近くなり圧迫感を感じてしまうこともありますが、高さが108cmあることでエアマットの上に座った状態でも十分な高さが確保され、圧迫感はなく快適です。
インナーテントは一人が寝るスペースに加えバックパックなど装備を置くスペースがあります。一般的な一人用テント(90×210cmほど)は寝るスペースの周りに所狭しと装備を並べ、バックパックなどかさばるものは前室に置くなどしてスペースを確保しますが、X-Dome 1+の場合その必要はなく、寝るスペースに「+α」のスペースがあることでテント内で快適に過ごせまました。
広い前室、用途によって広げられる間口
全室が広く、間口も広げることができるため、テント面積をフルに使うことができます。多くの山岳テントの前室は飛び出るように三角形の形状になっており、面積に対して有効に使える範囲が限られてしまいますが、X-Dome 1+は大きめに設計された長方形のフライシート中に対してインナーテントを台形型にし、間口を広げることで全室の面積を最大限に活用することができます。

前室のスペースは一人用としては十分すぎるほど
長辺側に設けられた間口は垂直に近い角度があるため、開放時にも雨が吹き込みにくく、出入りの際にテントな内が濡れてしまうことも防ぐことができます。
他にも天井に2箇所設けられたベンチレーションが効率的にテント内を換気してくれ、小物を収納しておくのに便利な大小のポケットが2つあったり、天井からランタンを吊り下げるためのループや、マグネット製のドアトグルなど快適に過ごすためにかゆい所に手が届くような便利な機能がたくさんあります。
ダブルウォールテントで便利な機能が満載なのに軽くて携帯性が高い
UL志向のハイカーであれば軽量化を図るためにテント(シェルター)はダブルウォール構造を避ける人が多いと思いますが、X-Dome 1+はダブルウォールテントにも関わらず総重量が1040gです。

実測値では公式の重量よりも少しだけ軽かった
軽量化の観点において100点を目指すのであれば、500gを切るような非自立式のシェルターをチョイスするのがベターですが、フロアレスのシェルターでは機密性が低く、虫や動物の侵入だけでなく天候による影響も受けやすく、非自立式のため設営にテクニックを要します。(非自立式のフロアレスシェルターを愛する筆者、否定しているわけではありません)
自立式、ダブルウォールテントであることを踏まえた上で考えれば1040gという重量は決して重たいとは思えず、むしろこれだけの快適性と機能が揃っていて1040gであるならば軽いと思ってしまうほどのテントでした。軽量化は80点でもいいから快適さも犠牲にしたくないハイカーにとってはまさに最適なテントだと言えるでしょう。

ポールとフライ、インナーが別で収納できる仕様。収納袋は大きめの作りで収納しやすい
収納サイズは45 x 12 cmでやや大きめに感じるかもしれませんが、筆者にとってはここもお気に入りポイントで、収納袋に余裕があり、雑に入れても収納することができます。よく収納サイズをコンパクトにするためにギリギリのサイズまで収納袋が小さく設計されているテントがありますが、きちんと折り畳まないと入れることができす、ましてや風が吹くようなフィールドでそれをやるのはストレスでしかありません。大きめに作られた収納袋の方が扱いやすく、収納後に圧縮することでコンパクトにもできるため実用性が高いです。
まとめ:強度、居住性、耐候性、携帯性を兼ね備えた文句なしの快適すぎるテント!
軽量化を図るために無駄を省き、時には必要とされる機能まで削り、究極にシンプルにまとめることで軽さを実現させていましたが、これからは快適さや機能を損なうことなく軽量化を実現させることができるアイテムが主流になってくるかもしれません。X-Dome 1+はその先駆けのテントと言えるでしょう。
全16箇所のペグダウンポイントに加え、強風でも耐えることができるポールにトレッキングポールの追加で高めることができる強度に大雨にも耐えることのできる耐水圧。圧迫感の感じないテント内構造と広い前室で高い居住性、自立式のダブルウォールテントながら最軽量クラスの重量にコンパクトさ。これがあったらいいなという機能、性能を全て持っているのはないかと思うほど文句のつけようのない完成度の高いテントでした。
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