
Trangia マイクロオリジナル&マイクロライトレビュー:重さに敏感なハイカーも思わず使いたくなる!軽量・コンパクト・調理しやすさのバランスが絶妙なアルミクッカーセット
1gでも軽量にしたいUL志向のハイカーにとって、クッカーといえばチタン一択かもしれません。筆者も装備はできるかぎり軽量にまとめたい派ですが、ことクッカーに関しては生粋のアルミ好き(チタンも使うけど)。登山だけでなく、渓流やキャンプなど焚き火にかけて調理をするのであればアルミクッカーは圧倒的に使いやすく、そして安価で耐久性もGood。
そんなアルミクッカー好きな筆者が2025年に1番気になっていたといってもいいクッカーを使用する機会をいただけ、いつもよりも若干前のめり状態でフィールドへと行ってきました。今回紹介するのはTrangia(トランギア)の「マイクロ オリジナル&マイクロ ライト」です。バーナーとクッカーがセットになっているマイクロ オリジナル&マイクロ ライトは無駄なくコンパクトに収納でき、アルコール燃料や固形燃料を使う人にとって湯沸かしの他に簡単な調理をすることもでき、軽量派でもちょっと贅沢をしたい時にぴったりなアイテムでした。見た目からもかわいさが溢れるこのコンパクトなクッカーの機能や使いやすさなどフィールドで確かめてきましたので早速レビューをしていきます。
目次
Trangia マイクロ オリジナル&マイクロ ライトの主な特徴
マイクロ オリジナル&マイクロ ライトは100年以上の歴史を持つTrangia史上もっともコンパクトなクッカーセットです。満水容量500mlのクッカーは熱伝導率の高いアルミ無垢を使い、調理に必要なストーブとゴトクがクッカーの中に収まります。
クッカーには計量しやすい目盛り付きで水を無駄にすることもなく、調理しやすい長めのハンドルは折りたたむとロックできる構造になっており、収納袋に入れなくてもそのまま持ち運ぶことができます。マイクロオリジナルはストーブがアルコールバーナーバージョン、マイクロライトはソリッド /ジェルバーナーバージョンとなります。
おすすめポイント
- 一食に必要な水を用意できる容量
- 計量に便利な目盛り付き
- 長めのハンドルにより熱源に手を近づけずに済む
- クッカーの溝にピッタリとハマる専用のゴトク
- 熱伝導率の高いアルミ製で炊飯がしやすい
- ハンドルが蓋をロックできる構造によりそのまま収納することができる
- 一式セットでの軽量コンパクトさ
- トラブルの少ない火器
気になったポイント
- アルコール・固形燃料を使うことが前提のためガスカートリッジが入らない
- クッカーだけほしい
主なスペックと評価
項目 | トランギア マイクロ オリジナル | マイクロ ライト |
---|---|---|
重量 | 275g(実測値) | 180.5g(実測値) |
容量 | 満水容量500ml / 実容量400ml | |
収納サイズ | Φ11.2cm×H8.3cm | |
素材 |
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参考価格(税込) | 5,940円 | 4950円 |
Outdoor Gearzine評価 | ||
調理しやすさ | ★★★★★ | |
重量 | ★★★★☆ | |
機能性 | ★★★★☆ | |
携帯性・収納性 | ★★★★☆ | |
耐久性 | ★★★★☆ | |
多用途性 | ★★★☆☆ |
詳細レビュー
一食に必要な水を用意できる容量、計量に便利な目盛り付き
これまで数十のクッカーやカップを山で使ってきた筆者。その中で湯戻し調理をメインにした時のクッカーの容量は500ml前後がもっとも使いやすく、且つ軽量化を図る上でギリギリ許容できる容量だと感じています。
マイクロ オリジナル&ライトはクッカーの容量が満水で500ml、実用的に使える容量は400ml。一食分に必要な水の用意ができるクッカーとして最小クラスのサイズです。豪華な山メシではなくアルファ米に温かいスープが付く食事を摂る場合、アルファ米に必要なお湯が約150〜180ml、フリーズドライスープに必要なお湯が150mlほどと考えると一回に必要なお湯は300ml〜330mlとなり、マイクロ オリジナル&ライトはジャストサイズ。また簡単で美味しい山メシの代表とも言える「カップヌードル」に必要なお湯も300〜320mlですから、湯戻し調理をメインにする山行やハイキングならカバーすることができます。
クッカーの内側には100ml単位で目盛りが付いているため、必要な水を計りやすく、水を無駄にすることがないのもGood。実用的に使える容量は400mlと言いましたが、実際に400mlの水を完全沸騰させた時には吹きこぼれますのでご注意ください。
長めのハンドルにより熱源に手を近づけずに済む。フタのつまみも熱くならない
経験者でも火器取り扱い時には気を使うもの。マイクロ オリジナル&ライトのハンドルの長さは約11.2cm。500mlのクッカーとしてはハンドルはかなり長めに設計されていて、クッカーを持ち上げる際、熱源に手を近づけなくて済み、フタのつまみも熱くならずに持ちやすい形状で、加熱時の中の確認も容易。ハンドルは長くなるほど重たくなってしまうし、1gでもカットしたいカリカリのULハイカーにとっては必要のない長さかもしれませんが、ただでさえ火の取り扱いに注意が必要ですからハンドルが長いマイクロ オリジナル&ライトは使いやすかったです。
クッカーの溝にピッタリとハマる専用のゴトク
マイクロ オリジナル&ライトは熱源にアルコールバーナー、または固形燃料を使用しますが、付属のゴトクがまたいい仕事をしてくれます。このゴトクは新製品というわけでななく、昔からあったアイテムでもう知っている方も多いかもしれません。カップ状になっている中にアルコールバーナーやジェルフューエルバーナーが入り、クッカーを載せることができる構造です。
マイクロ オリジナル&ライトのクッカーは底面に段差があり、この溝がゴトクにピッタリとハマることで使用中にズレることがありません。風防の役割も担い多少の風ならそのまま使用できましたし、クッカーの載せたままでもマッチなど使えば点火でき、緊急時には落ちている木の枝などを燃料にすることもできるシンプルながら多機能で安全性の高いゴトクです。
クッカーの底面の段差については賛否が分かれるところでしょう。専用のゴトクではなく、他のアイテムの組み合わせを検討する際、底面がフラットになっている方が安定性が上がり使いやすい側面もあります。底面の段差は筆者も気になったため他ブのゴトクもいくつか試してみましたが、マイクロ オリジナル&ライトは底面の直径が約10.5cmあり、フラットな部分も約9.3cmあるためしっかりとゴトクに載せることができました。
熱伝導率の高いアルミ製で炊飯や煮込みもOK
湯戻しの食事をするのにちょうどいい容量のマイクロ オリジナル&ライトのクッカーですが、素材にアルミを採用していることで「軽さ」に分のあるチタンクッカーとは違った使い方ができます。
一般的にアウトドア用の調理器具に使われるのはチタンやアルミ、ステンレスが主流です。中でもアルミはチタンやステンレスよりも熱伝導率が高いことで調理に優れており、それを顕著に感じられるのが「炊飯」です。これまで数え切れないほどの炊飯をしてきましたが、チタンクッカーでの炊飯は均等に炊くことができなかったり、底面を激しく焦がしてしまったりで成功率は0%(筆者が下手なだけかもしれませんが)。それに対しアルミクッカーだと炊飯の成功率は高く、ふっくらとしたおいしい白米にありつけます。
試しにマイクロ オリジナル&ライトで炊飯をしてみましたが結果は大成功。ふっくらとしたご飯を炊くことができました。小ぶりなため、一回に炊けるのは0.5合がいいところですが一食分としては十分でしょう。UL装備での登山やハイキングであれば炊飯などしないかもしれませんが、軽量化は意識しつつもおいしいお米を炊飯し食べたい人にとってマイクロ オリジナル&ライトはぴったり。焚き火を囲むような渓流キャンプではアルファ米ではなく炊き立てのお米の方が満足度も段違いです。
アルミは本当に熱伝導が高いのか?チタンとアルミで湯沸かし比較してみた
チタンに比べ熱伝導の高いと言われるアルミクッカーですが、実際にその熱伝導の高さはどう影響するのか?それを確かめてみたくなり、大体同じサイズのチタン製クッカーを用意し300mlのお湯が沸くまでの時間を計測してみました。マイクロ オリジナル&ライトに付属しているゴトクはチタンクッカーを載せることができなかったため、別のゴトクを使用し、同じ条件にした上で計測してみます。
気温約25℃、無風状態の環境でテストをした結果、アルミ素材であるマイクロ オリジナル&ライトは4分33秒で完全沸騰。対するチタンクッカーは5分27秒で完全沸騰しました。クッカーの径が全く同じサイズではないため、この比較はあくまでも参考数値となりますが、アルミとチタンで約1分も差が生まれ、予想を上回る結果に筆者も驚きました。
アルミの方が短時間で沸かせることで一回に使う燃料も少なく済みますから、携帯する燃料の量にも影響することを考えると熱伝導率の高いアルミクッカーにもメリットがあることが分かります。熱伝導率の高いアルミのクッカーは加熱時にクッカー全体が熱くなり、クッカーの縁も熱くなることからクッカーから直接食べる際など注意が必要なほど。熱伝導率が高いが故のデメリットも持ち合わせています。
ハンドルが蓋をロックできる構造によりそのまま収納することができる
ハンドルは折りたたむとフタのつまみにカチッとハマる構造になっているため、収納袋を必要とせずそのままバックパックに入れて持ち運ぶことができます。密閉性はなく食材などを入れることはできませんが、収納袋を必要としないことでバックパックから取り出せばすぐに調理に取り掛かることができます。

フタがロックできることでそのままバックパックに入れてもOK
一式がセットになっている状態での軽量コンパクトさ

クッカー単体の重量
マイクロ オリジナル&ライトのクッカー本体の重量は実測値で111.3g。火器にアルコールバーナーや固形燃料を組み合わせる仕様になっているため、アルコールバーナーがセットになったマイクロ オリジナルが275 g、ソリッド/ジェルバーナーがセットになったマイクロ ライトが180.5g(どちらも実測値)。クッカー&ストーブで考えた時にマイクロ オリジナル&ライトは軽量でコンパクトと言えるでしょう。

左がマイクロ オリジナル、右がマイクロ ライト
ガスストーブで使用してももちろんOK。ただしガスカートリッジ(OD缶)は頭が出てしまうので注意。
マイクロ オリジナル&ライトはアルコールバーナーやソリッド/ジェルバーナーを使用することが前提の設計になっており、クッカーのみの販売はなく、バーナーとゴトクがセットになっています。状況に応じてアルコールストーブや固形燃料、ガスストーブを使い分ける筆者。ガスストーブ用のカートリッジをクッカー内に入れることはできますがフタがカチッと閉まらないため、ガスストーブと組み合わせて使うことを想定する人にとっては収納方法を考える必要があります。クッカー内にオールインできないことは少し残念に感じたところですが、これはむしろマイクロ オリジナル&ライトがアルコールバーナーやソリッド/ジェルバーナーをメインの火器として使いやすいよう設計していることが明確である証拠。トランギアというブランドのこだわりを感じます。
扱いには慣れが必要だが故障の心配が少ない「アルコール or 固形燃料」の強み
アルコールバーナーまたはソリッド /ジェルバーナーはガスストーブと比較すれば火力は弱く、火力調節も難しく、取り扱いにも慣れが必要です。ただストーブの構造としてはいたってシンプルで軽量、故障などのトラブルも少ないという点はやはりガスストーブにはない大きなメリット。
筆者が数十年前に購入したトランギアのアルコールバーナーは、経年劣化による青サビなどで汚れてしまってはいますが、これまで一度のトラブルもなく今も現役で使い続けています。ソリッド /ジェルバーナーに至ってはただの「器」であるためトラブルが起こりようがありません。山行の期間や季節、燃料の入手しやすさなど考慮すべきことは多くあるため一概に結論づけることはできませんが、タフな環境下で重量を少しでも切り詰めつつ信頼性も担保したいという人にとっては代えがたい魅力があることは間違いありません。
まとめ:調理を楽しむならアルコールバーナー「マイクロ オリジナル」、カリカリのUL志向のハイカーは「マイクロライト」
トランギアのマイクロ オリジナル&ライトを紹介しました。
軽さ・コンパクトさと引き換えに小ぶりなサイズなためできることは限られ、かわいいフォルムのわりに万人に使いやすいというわけではない尖ったアイテム。クッカーとして重量だけを比較したり、湯戻し調理しかしない人にとってはチタンクッカーに分があるかもしれませんが、煮込みや炊飯などたまにはちょっと贅沢な食事を食べたいと思っている人にとっておすすめの調理セットといえます。クッカーはガシガシ使ってなんぼ。アルミクッカーの焦げ付きに趣を感じる筆者。これから焚き火にかけて自分だけのオリジナルに育てていきたいと思います。
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Yosuke.C(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。