Review: Mountain Hardwear サミットロケット30 優秀なアタックザックはファストパッキングにも応えてくれるのか?
最低限の装備を背負い山頂を目指すため道具、アタックザック。特に最終キャンプから頂上に登るときに使用されるため、求められるのは軽量性・最低限の機能と快適性などストイックめいたものになります。ウルトラライト(UL)ハイクでも、切り詰めた中での機能性と快適性を備えた道具が多く、目的は違うものの求める要件は非常に似通ったものです。
アタックザックとしてリリースされている道具は、ULハイキングやファストパッキングにも適しているのか。今回は数あるアタックザックの中でも、Mountain Hardwearのサミットロケット30を選んでみました。このサミットロケット30は、アルパインのスピードクライムを得意としていたウーリー・ステックのために開発されたアタックザック。このアタックザックは、果たして軽量である程度の長距離も視野に入れたULハイキングにも適しているのか、実際に使用してレビューしてみました。
目次
サミットロケット30 の大まかな特徴
サミットロケット30は、アルパインのスピードクライムを得意としていたウーリー・ステックのために開発された、名前の通り頂上までロケットのように素早く登るための軽量アタックパックです。軽量化のため、とにかく無駄を取り除いたフォルムもロケットを思わせます。徹底した軽量化にも関わらず、最低限の快適性や必要な機能は維持し、非常に工夫が見られる完成度の高いモデルです。その軽量性と耐久性、最低限の機能性を持ち合わせていることから、アタックザックやアルパインクライムのみだけでなく、軽量にこだわり長期間歩くULハイカーのためのザックとしてのポテンシャルも持ち合わせています。
おすすめポイント
- 軽量性・耐久性の両立
- バック・ショルダーの適度なフィット性
- 必要最低限だが必要十分な機能性
気になったポイント
- 安定感高く走れる(歩ける)ためにはかなり荷物を切り詰めなければならない
アイテム外観
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
公式容量(本体) | 30L |
公式重量 | 511g |
実測重量 | 524g(うち背面パネル70g コード24g)最小重量430g |
生地 |
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ポケット | トップリッドポケット |
快適性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★★ |
機動性 | ★★★★☆ |
機能性 | ★★★☆☆ |
収納性 | ★★★☆☆ |
総合評価 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
軽量性・耐久性の両立
まず手にしてみると非常に軽いことに驚きます。30Lのボリューム感と、しっかりした作りのおかげで見た目以上に軽く感じます。
メイン素材には、100デニールのリップストップナイロン。内側にはシリコンコーティングがされているので、防水性はありませんが、小雨くらいであれば問題ありません。
耐久性の必要なボトムやフロント部分には岩との擦れなど対策で、HardWear X-Plyを使用したリップストップ素材を使用し、耐久性を向上させています。
各素材は軽量な素材を採用して軽量化しているわけではなく、メインには100Dの太めの糸を採用するなど、耐久性にも重きを置いているのがわかります。
バック・ショルダーの適度なフィット性
軽量性・耐久性を両立させながらも、背負った時の快適性も抜群とは言えませんが確保されています。バックパネルは薄手ですがある程度の通気性が確保されたクッションが圧着されています。
それに加え内側には、ハードウェーブフレームシートという硬めの波状プラ板が取り付けられ、背面の安定感を向上させています。
ショルダー部分にも、バックパネルと同じ薄手のクッションが使用されているので、リュックの容量に見合った重量であれば一日背負っていても問題ありません。
ウエストストラップにパッドはなく薄めのストラップのみ。腰部分を固定しブレを低減し、安定感を向上させています。
荷物が少ない時は、サイドにあるストラップを絞ればコンプレッションを効かせられるので、ブレの低減が期待できます。
他にも下に行くほどボディーを小さくすることにより、重心を高めに保てるようにするなどと、安定性向上のための工夫が見られます。
必要最低限だが必要十分な機能性
ポケットはトップリッドの一つのみです。しかし容量は大きめで、食べ物・悪天候時の衣服など行動中に必要なものは全て仕舞うことができます。
ハイドレーションにも対応しており、専用のホールが背面にあります。しかし内側にはハイドレーションバックを入れる場所も、吊り下げるフックもないので、使用時には少し工夫が必要です。背面のプラ板を外して入れるのが無難かもしれません。
フロントにはデイジーチェーン(左右1づつ)・ゴム製ストラップ(4つ)、側面下部にもデイジーチェーン(左右1づつ)が備え付けてあるため、ポールなどの固定など工夫すれば様々な用途が考えられそうです。
ザック内部にはフックがあり、ザックを吊るせばバランスよくザック全体が開くので、濡れてしまった時など乾かすのに非常に便利そう。
重量はメーカー値511g、実測値524gと超軽量。しかも背中のプラ板(70g)、コンプレッション用ストラップ(12g×2=24g)を取り外せば、400g前半とより一層の軽量化も可能です。
背面のプラ板を外せば、ロールアップできコンパクトになります。
実際に使ってみたインプレッション
やはり背負った感じは非常に軽量。やはりザック自体の重量が軽いのは心強いです。しかし実際の重量が軽いのはもちろんのこと、背中・肩のフィット感も高く、重量以上にとても軽快です。
肩部分はある程度クッションはあるものの、薄いおかげでしっかりフィット感は高め。背中はプラ板を外した方が背中へのフィット感は高いですが、プラ板が入っていた方が安定感がより増します。これはプラ板が波状になっているので、前後への動きは変わらず柔軟ですが、横方向への剛性が高くなり曲がらず、動きに追随してくれるおかげでしょう。
重心は腰より高くなるので、ほとんど肩で背負うことになります。しかし重心が高いおかげで、早く移動した時の安定感は高く、腰のストラップで固定しているので横のブレはほとんどありません。荷物は少ないよりも多い方が安定感は高くなりますが、コンプレッション機能があるので、少なくても絞ればある程度安定します。
気になる点としては、荷重がかかると使い方には向きません。内容物が重くなると、肩ストラップの薄さが時間が経つごとにジワジワダメージを与えてくるのと、ストラップなど軽量の素材を使用しているので耐久性が心配になります。おおよその目安として、10kgくらいが目安になりそうです。ULハイクのためのザックという位置付けで使用すべきです。
まとめ:こんな人におすすめ
思った通りとてもシンプルで、必要最低限の機能を備えていることから、使い勝手に驚きはないかもしれません。しかし一方でこの軽量性と耐久性にして期待以上の高いフィット感があるため、スピードハイキングやファストパッキングに慣れた人が荷物を切り詰めたなかで使用するには十分通用すると感じました。逆にファストパッキング初心者や、一泊二日でも重量が大きめにならざるを得ない場面では、ある程度の経験と覚悟が必要かもしれません。
ただ同サイズ・重量・耐久性のULハイク用のザックは比較的価格が高くなりがちですが、このサミットロケット30のコストパフォーマンスはとても高いです。数あるアタックザックでも非常にULハイク向けのザックです。軽量で長い時間歩けるザックを探しているけど、値段が…というハイカーにはバッチリのモデルといえるでしょう。