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【忖度なしの自腹レビュー】Hyperlite Mountain Gear UNBOUND 40 収納性とカスタマイズ性が大幅に向上した超軽量・高耐久バックパックのトップランナー

ハイキングからファストパッキング、沢登りと、振れ幅が忙しい山系アウトドアをゆるっと愉しむ雑食系ハイカーの自分がもし「バックパックを1つしか選べない」とすれば、真っ先に思い浮かぶのは北米の超軽量アウトドアブランド Hyperlite Mountain Gear(以下HMG)でしょう。

大好きなバックパックブランドは多々あれど、彼らの作る無駄を削ぎ落としたシンプルで超軽量、それでいて頑丈で安定感抜群のボディは唯一無二。軽快な山歩きから滝のシャワークライムに急斜面の藪漕ぎにといった険しくバラエティに富んだ日本の山遊びのどれにも程よくフィットし、おまけにシンプルで洗練されたデザインと、かゆいところに広く深く手が届いてくれるのは何よりの魅力です。

そんなHMGから今シーズン、満を持して新たにハイキング用バックパックがリリースされたとのこと。なにやら最新のULハイキングのトレンド機能を取り入れ、かゆいところのその先にまで手が届いてしまうような画期的な進化を遂げているらしい…!こんなのもう背負ってみるしかないでしょ。

という分けでHMGの新作バックパック UNBOUND 40(アンバウンド 40)を2カ月ほど背負って歩いてみましたので、早速レビューしていきます。

Hyperlite Mountain Gear UNBOUND 40の主な特徴

軽量かつ高耐久で防水性にも優れたDCH(ダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド)素材のハイキング向けバックパック。背面には1本の垂直アルミステーとフォームパッドを内蔵し、軽量ながら耐荷重性能にも優れた構造。大きなサイドポケットやフロントと底面のストレッチメッシュポケット、要所にちりばめられたデイジーチェーンなど実用性抜群の外部収納を備え、長距離を休みなく歩き続けるFKTスタイルのスルーハイキングからファストパッキングや普通のハイキング、そして沢登りなどのオフトレイル・アクティビティまで幅広く対応します。

お気に入りポイント

  • ダイニーマストレッチメッシュのフロント・ボトムポケット
  • 大容量のサイド・ヒップポケット
  • カスタマイズ性の高い豊富なデイジーチェーン
  • 軽量・高耐久・防水と三拍子そろったダイニーマ素材のボディ
  • フィット感の高い背面パネルと二重ストラップの逆引き式ヒップベルト

気になるポイント

  • 着脱可能なヒップベルトは重荷になればなるほどブレやすく安定感に欠ける
  • 背面の通気性は高くない
  • メイン収納内部に(ハイドレーションスリーブなどの)収納類がない

主なスペックと評価

アイテム名Hyperlite Mountain Gear UNBOUND 40
容量40リットル + 外部収納9リットル(他に55 + 9リットルモデルあり)
重量実測:約870g (Lサイズ)
素材
  • 本体:DCH(ダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド)50, DCH150
  • サイドポケット:Hardline with Dyneema
  • フロント・ボトムポケット:Dyneema Stretch Mesh
女性向けモデルなし
サイズ/背面長
  • Small (15.0” – 17.0”)
  • Medium (17.0” – 19.0”)
  • Large (19.0” – 21.0”)
  • Tall (21.0”+)
背面パネル垂直アルミステー + 背面パッド
推奨最大耐荷重約18キログラム
ハイドレーションスリーブ×
メインアクセスロールトップ
レインカバー×
ポケット・アタッチメント
  • ロールトップ型メイン収納
  • 両サイドにコンプレッションショックコード
  • 両サイドにロールトップバックル
  • フロントにオープン型のフロントストレッチメッシュポケット(上下デュアルエントリー)
  • 両サイドに背負ったままボトルの出し入れが可能なドローコード付き大型サイドポケット×2
  • ボトムにオープン型のストレッチメッシュポケット(片側にトラッシュポケットあり)
  • ヒップベルト左右に止水ジップ式ポケット
  • ホイッスル付きスターナムストラップ
  • サイド、ボトム、ショルダーハーネス、左右ヒップベルト周辺にデイジーチェーン
評価
快適性★★★★☆
安定性★★★☆☆
収納性★★★★☆
機能性(使いやすさ)★★★★☆
耐久性★★★★★
重量★★★★★
拡張性(カスタマイズ性)★★★★★

詳細レビュー

外観と使い勝手:縫製デザインの見直しで収納性&使い勝手が大幅に向上

これまでのHMGのバックパックといえば、縫製が極力少なく背面までぐるりと1枚生地で構成された、ややかまぼこ状の「筒形構造」の縫製というイメージが強かったのですが、新しいアンバウンドではそれが一新。全体として前後左右4枚の生地が縫い合わされ、よりスクウェアに近いフォルムになり、よりシャープで洗練された印象になりました。

しかもよく見るとそのメインボディの縫い目が外向きについているというのが同社の従来モデルと大きく違うポイントで、その縫い目に沿ってデイジーチェーン取り付けられているという構造になっています。

このデザインの変化に一目「イイ感じ」と思ったのは自分だけではないと思いますが、もちろんそれは単にデザイン上の新しさのためだけではありませんでした。

円筒形のメリットといえば縫い目と生地量が少ないことによる「軽さ」と「耐久・耐水性」の確保。ただその一方でHMGのバックパックは(現在では多少バリエーションは増えたとはいえ)長らく外部ポケットやアタッチメントがどうしても最低限になりがちで、メッシュの目の粗さだったりマチ部分の弛みといった作りも、よく言えば素朴でシンプル、悪く言えば大雑把といえなくもないものでした(下写真は過去に背負っていたWINDRIDER 2400)。

そこにきて今回のアンバウンドです。前後左右4枚の生地を張り合わせる縫製にして、さらに通常なら内側に織り込むはずの縫い目をあえて逆向き(外側)に。その縫い目に沿ってポケットやらデイジーチェーンやらの収納パーツを縫い付けることで、これまで少なかった外部収納を増やすことに成功しています(下写真)。

一方でパックの内側は逆に縫い目がフラットになるため、防水ためのシームテープも難なく貼ることができます。この結果従来の円筒デザインと同じように耐水性もしっかりと確保されています(下写真)。

生地量や縫い目を増やしたとしても、(旧来モデルの同容量であるWindrider2400と比較して)結果的にそこまで重量の増加はみられません。バックルの小型化など目立たない部分で多少軽量化のしわ寄せはありますが、収納が増えたなどの利便性向上に比べれば重量への悪影響はほとんどないと考えていいでしょう。

耐久性と伸縮性に優れたダイニーマストレッチメッシュ製の外部ポケット

新設計によって爆発的に広がった外部収納システムによって、従来の軽量バックパックがもっていた「細かい収納が少なくて使いにくい」とか「中身を出し入れするのにいちいちメイン収納を開け閉めしなきゃいけないなんて面倒」といった不満点がかなり解消されたことは間違いありません。その意味で新しい収納類は(従来から改善された部分も含めて)基本的にもろ手を挙げて歓迎したいものばかり。

なかでも特にお気に入りが、ダイニーマストレッチメッシュを採用したフロント&ボトムポケット。これが本当によくできている。

まず素材ですが、ダイニーマストレッチメッシュは強度の高いナイロンとポリウレタンの織布をベースにダイニーマ繊維をグリッド状に補強し、非常に高い耐摩耗・耐引き裂き性能と4 方向のストレッチを実現した最先端の生地。とにかく丈夫でよく伸びる。キックバックが強く、物を入れていない状態ではピッタリとパックに張り付いているのに、いざアイテムを出し入れする時にはしっかりと生地が伸びてくれます。

アンバウンドにはこの最新鋭のストレッチ素材を使ったポケットがフロントに2つ、ボトムに1つ、計3つ付いています。

フロント2つの入り口は下部でつながっており、上部のポケットは深く大容量になっています(下写真)。上のポケットには雨具やジャケット、その他パッキングで最後に収納しがちなフットプリント(グランドシート)などを、下のポケットには行動食やジェルなどを入れることが多いです。

そして残りのひとつはパック底面という見慣れない位置に取り付けられています。

入口は右側に、しかもジッパーなどの開閉口がありません。ホントに使えるのか一見心配になりますが、実際に使ってみると、ひとクセはあるものの、「歩きながら手を伸ばせばすぐにアクセスできる」という利点を活かしていろいろな使い方ができる可能性を秘めているポケットです。

まずそもそも想定されている基本的な使い方としては、行動食を入れておく(下写真)。入口の反対側(左隅)には食べた後の袋等を押し込められるような小さな出入口もあったりと、ちょっとしたこだわりが何とも粋です。

もちろんこれまででもサコッシュなどで代用できていたとは思いますが、素早く行動する際には身体の周りをなるべくブラブラさせない方がいいので、これはこれでメリットがあるのも確かです。

もしこのポケットを同じ薄さの一般的な生地でやろうものならば、またたく間に摩耗して破けてしまうでしょう。耐久性とキックバックの高さを兼ね備えたこの新しい生地だからこそ可能になっているというのがミソです。とはいえ個人的には中身の落下防止のために入口にベルクロ留めくらいはあって欲しいとは思います。

食料以外にも、ジャケットや雨具、敷物、汚れ物など今後アイデア次第でさまざまな使い方ができそうです。ちなみに自分の場合は沢登りなどでよく使う10~20m程度の「お助けロープ」を収納するのがよさげです。

大容量かつアクセス容易なサイド・ヒップベルトポケット

サイドに配置されたポケットは実にボトルが2本以上入っても余裕のあるほど大容量。後ろに手を伸ばせば背負ったまま取り出してしまうことができ、ドローコードで伸縮する入口によって中でのブラつきも防ぐこともできます。

標準で配置されたサイドコンプレッションストラップと合わせれば、ボトルだけでなく、三脚やトレッキングポール、さらにはクローズドセルマット(長さ調節済)までも括り付けられます。

ちなみにマットレスの固定には、トップのY字コンプレッションストラップを使用するのが効率的。本国ではここにベアコンテナなどを固定できるように想定されているためか非常に長いストラップになっています。クライミング確保用の長いロープなども固定できますね。

ヒップベルトポケットは6.7インチの大きめスマホも十分に入る大きさで左右に1つずつ(下写真)。スマホの大型化に対応するように年々大きくなっていきます。防水性もそれなりにあるので電子機器も安心です。

拡張性抜群!随所にちりばめられたデイジーチェーン

新しいデザインは、使いきれないほど豊富なデイジーチェーンの搭載を可能にしました。ここにはカラビナやドローコードといった外部アタッチメントを取り付けることで、自分好みに収納をカスタマイズすることができます。

例えば側面に自前のコードロックをつけてポールアタッチメントとしてもよし(下写真左上)、ショルダーストラップにスマホポーチやボトルホルダーをつけるもよし(下写真右上)、ボトムにカラビナをつけてもよし(下写真左下)、ヒップベルトには純正のカメラポーチをつけたりしてもよし(下写真右下)と、自前でパーツを追加したり工夫したりする必要はあるものの、アイデア次第で使い勝手は無限に広がっていきます。

ちなみにサイドのデイジーチェーンは単なるループではなく、標準で付属しているドローコードによってコンプレッションとしても機能しますので、荷物が少ないときにはザックを薄くしてブレを抑えることができて非常に便利(下写真)。

素材と耐久性:このブランドでしかできない独自配合の超軽量・高耐久ダイニーマ生地

HMGと聞いて誰もが思い浮かべるのは、何といっても創設時から一貫して採用されてきたダイニーマ素材であることは間違いありません。その哲学の源であるダイニーマ素材はこのバックパックでももちろん健在。

HMGのバックパック全般に使用されているダイニーマ生地「DCH(ダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド)」は、テントなどに使われている一般的なダイニーマ複合生地(DCF)に、軽量のポリエステル 生地をさらにラミネートすることで耐久性が大幅に強化された生地。500デニールのコーデュラナイロンと同等の引張強度を、その半分の重量で実現できるとか。このより軽量で高耐久な独自ブレンドのダイニーマ生地を使用できるのは、世界最大のサプライヤーであるDSM社との長年にわたるパートナーシップを築いてきたHMGだけです※。

うんちくはともかく、一度このモデルを持ち上げてみて、さらに荷物を入れて外に持ち出してみれば、その「どれだけ引きずり回しても破けない紙袋」のような軽さと強靭さが実感できるでしょう。

※参考:SectionHiker.com

背負い心地①(快適性):軽量化が図られながらも快適性は向上

アンバウンドの背面システムは、一般的な登山用バックパックよりは軽い荷物を想定しているため、背面フレームが背中全体をカバーするタイプではなく、背骨に当たる部分に着脱可能なアルミステーが1本通った構造になっています。

この垂直アルミステーは従来のHMGバックパックまでの2本から1本へと数が少なくなっていることから、背負い心地はマイナスになるのかと思いきや、これが不思議とそこまでのマイナスに感じられません。背骨に沿った絶妙なカーブと背面に補強されたフォームパッドによって背負い心地は相変わらず快適です。

ただ1点注意したいのは、背面の通気性に関しては相変わらず多くを期待できないということ。背中はパッドと密着しており、生地自体の速乾性は多少あるものの、かいた汗はべったりと残りがちで決して快適さは高いとはいえません。

背負い心地②(安定性):重荷になればなるほど安定性にはやや不安が残る

5㎏あまりの重量までなら背負い心地は何にも問題なし。ただ荷物をたっぷり目に詰め込んでみると、若干事情は変わってきました。

前提として、アンバウンド 40ではこれまで以上に高速スルーハイキングを意識したつくりになっていることから、ヒップベルトも取り外し可能な作りになっています(上写真)。これは極限まで荷物を軽くしていった場合、ヒップベルトすら邪魔になり、省略することができるようにするため。そのこと自体は確かに理解できます。

ただ、それによってヒップベルトとパックの連結箇所が少なく(弱く)なったこともまた事実。それは荷重安定性にとっては明らかにマイナスです。

事実ヒップベルトが腰部に縫い付けられていた従来モデル(少なくとも自分が背負っていたWINDRIDERなど)と比べると、10kgほどの重い荷物を背負ったときくらいから、歩いていて身体が振られる感覚が強くなってくるように感じます(下写真)。

もちろんそれが気になるほどの重さを背負わなければそこまで深刻になることはありません。ただ自分の想定している使い方は結構な重荷を想定しているので、可能であれば何とかしたいところ。

最も単純な解決方法としてはいっそのこと縫い付けてしまうことですが、いろいろ工夫してみたところ、ストラップ2本でブレをかなり解消する方法を見つけました。パックに張り巡らされたデイジーチェーンを使う方法です。せっかく本体とヒップベルトの双方にデイジーチェーンが付いているので、これを使わない手はありません。

バックパック底部とヒップベルトにあるデイジーチェーンに、何でもいいので適当な長さのストラップを通して締めます。こうすれば重荷でも身体とバックパックはぐっと引き寄せられ、固定することができました(下写真)。気になる方は試してみるといいでしょう。

まとめ:安定の軽量・堅牢性に抜群の収納性が加わって、ますます「使って楽しい」バックパックに

Hyperlite Mountain Gearの新しいハイキングバックパックであるアンバウンド40は、より軽く、より速く、より遠くに進みたいと考えるハイカーに、現時点での最適な答えを用意したバックパックのひとつといっても言い過ぎではありません。すでにHMGの良さを知る人間にとっては、納得の軽さと耐久性という魅力を保ちながら、大幅な収納性と拡張性という魅力が加味されたという明確なアップグレードを実感することができるでしょう。また、これからはじめてHMGのバックパックを試す人にとっても、多くの快適さと利便性の高い洗練された機能によってブランド本来の魅力である機能美の高さがあらためて感じられるはずです。

ただ基本的にはほとんど不満を感じずに利用できると思いますが、レビューにあるように限界近くまで荷物を詰め込むような場合には若干の注意が必要です。それらに適切に対応することができれば、このパックに現状のところ目立った不満はほぼなく、カスタマイズ次第で(ガチのトレイルランを除けば)どんなマウンテンアクティビティにもトップレベルに対応できる無敵のバックパックになり得る可能性を秘めており、期待はまだまだ膨らむばかりです。