当サイトのレビュー記事はアフィリエイトリンクを通して製品を購入いただくことで少額の収益を得ています。

THERM-A-REST「ネオロフト」& MSR「ハバハバLT」レビュー:ベッドの快適さをバックパックで持ち運べる時代がついに。重量を抑えつつ信じられないくらい快適な山岳テント&マット

思えばこれまで長年にわたり、山の中でたくさんの睡眠を経験してきました。そのなかには気持ちよくぐっすり眠れた夜もあれば、二度と経験したくないような眠れない夜もありました。それらの原因は決してひとつではないものの、最も大きな要因のひとつが睡眠システムの良し悪しであったことは、まず間違いありません。

THERM-A-RESTが今シーズンリリースした新エアマットレス「ネオロフト」に初めて横になった時、決してお世辞ではなく腰が抜けるほどの衝撃で起き上がれませんでした。軽量コンパクトさを最低限保ちつつ、異次元の快適性を実現したパッドは、これまでの山岳用スリーピングパッドの常識を覆す可能性を秘めています。

今回はこの画期的な新マットレスと、それに過不足なく対応するようにアップデートされたバックパッキングテント、MSR「ハバハバLT」をレビューします。MSRの不動の代表作であるハバハバシリーズの新作テントが、この革新的マットレスと組み合わさることで、山登りはどう変わるのか?この二つが切り開いた新しい山岳テントの快適性の基準とはどんなものなのか。梅雨明け間近の八ヶ岳でテント泊してきましたので、さっそく掘り下げてみたいと思います。

オーバービュー:THERM-A-REST「ネオロフト(レギュラー)」MSR「ハバハバLT 1」それぞれの主な特徴

THERM-A-REST「ネオロフト」

THERM-A-RESTの最新エアマットレス「ネオロフト」は、登山における睡眠の概念を一変させるきわめて高い快適性を備えたバックパッキング用エアマットレス。幅広で寝返りも打ちやすい56cmのスクエア型デザインは両サイドを若干隆起させることでずり落ちを防ぎ、どんな寝方でも最適な姿勢を可能にします。11.7cmの厚さとストレッチニットの表生地は心地よい肌触りと弾力で、どんなにラフな地面でも自宅のベッドのように快適な寝心地の良さを提供します。最新の断熱構造「ContourCore Matrix™」と「ThermaCapture™」によりR値は 4.7と3シーズンでは十分、厳冬期を除く通年も対応できる断熱性を備えて音も静か。空気の出し入れが簡単なTwinLock™バルブシステムによる使いやすさと十分な耐久性も備えているにもかかわらず、重さは710gと現実的な重量と1リットルボトルほどの大きさにパッキングできるコンパクトさを実現しました。レギュラー、レギュラーワイド、ラージの3サイズから選択可能です。

お気に入りポイント

  • 登山用としては類を見ない、信じられないほど快適な寝心地
  • 幅広で上向き、横向きどちらにも優しいサイズ感とマット落ちを防ぐ工夫も入ったフォルム
  • 寝返りなどでも音が静か
  • 3シーズンで十分(通年も可能)な高い断熱性
  • 耐久性の高い下面生地
  • 独自バルブと大きな専用ポンプサックによる簡単なセッティング

気になるポイント

  • 価格
  • 軽さとスピードを優先したい人にとってはやや重い
  • 贅沢な厚みと大きさによって、テントもそれなりに余裕をもったサイズ感のモデルと組み合わせる必要がある

主なスペックと評価

アイテム名THERM-A-REST ネオロフト
サイズ185×56cm
収納サイズ24×φ14㎝
マット厚み11.7cm
公式本体重量710g
表面素材
  • トップ:50Dストレッチニットポリエステル
  • ボトム:75Dソリューションダイポリエステル
R値4.7
対応季節(参考)3シーズン
付属品
  • ポンプサック
  • 専用スタッフサック
  • リペアキット
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★★★
断熱性★★★★☆
重量★★★☆☆
収納性★★★☆☆
使い勝手★★★★★
耐久性★★★★☆
汎用性★★★★☆

MSR「ハバハバLT 1」

MSRのハバハバLTは同社のバックパッキングテントで20年以上続く代表的シリーズの最新モデルで、軽量ながら広々とした居住スペースと十分な耐候性を備えた1人用ダブルウォール自立式テント。より広くなったフロアスペースはサーマレストのスリーピングマット「ネオロフト」のラージサイズを基準に設計され、さらにポールのハブ構造を見直すことでヘッドスペース含めて居住空間全体にさらなるゆとりが生まれました。テント本体のマイクロメッシュエリアが拡張され、フライの両端に配置された大きなベンチレーションと合わせて通気性も抜群。場所を選ばず設営しやすい自立式構造や荷物の整理に便利なギア収納、標準装備された物干しロープなど、ビギナーでも使いやすい実用的な機能を多く備え、キャンプやバックパッキング、登山と多様なアウトドアを妥協せず楽しみたいハイカーや登山家に最適なテントです。

お気に入りポイント

  • 空間的に広々とした居住快適性の高さ
  • インナーメッシュと大きなベンチレーションによる高い通気性
  • 快適性の高さを考慮すれば十分アリな軽量コンパクトさ
  • 初心者でも場所を選ばず簡単なセットアップで悪天候に耐えやすい構造
  • 豊富で便利なテント内収納
  • 撤収時にパッキングしやすい優れたロールトップ収納バッグ
  • 雨を出入口に溜めないドアジッパー上のガター(追加のフラップ素材による「雨どい」)システム
  • 片手で簡単に操作できる直線的なジッパー出入口

気になるポイント

  • フットプリントは併用が望ましいが別売りであること
  • 垂直に近い側壁は極端な強風の場合に多少の注意が必要(ガイラインは常に設置するのが望ましい)
  • 価格

    主なスペックと評価

    アイテム名MSR ハバハバLT 1
    就寝人数1名
    最小重量約1070g(インナーテント・フライシート・ポールのみの重量)
    総重量約1230g(ガイライン・ペグ・収納袋含めての重量)
    フライ素材ソリューションダイ20Dリップストップナイロン1200mm ポリエーテルウレタン&PFASフリーシリコン
    インナー(キャノピー)素材ソリューションダイ20Dポリエステルマイクロメッシュ/20Dリップストップナイロン&PFASフリーDWR
    インナー(フロア)素材ソリューションダイ20Dリップストップナイロン1800mmポリエーテルウレタン&PFASフリーDWR
    ポール素材DAC NFL 8.7mm
    サイズ間口224×奥行81×高さ99 cm
    ドアの数1
    収納サイズ46 x 13 cm
    フロア面積約1.8㎡
    前室面積約0.7㎡
    付属品フライシート、インナーテント、ポール、ステイク(ミニグランドホグステイク×8)
    居住快適性★★★★★
    設営・撤収の容易さ★★★★★
    耐候性★★★★☆
    耐久性★★★☆☆
    重量★★★☆☆
    携帯性★★★★☆
    汎用性★★★★★

    THERM-A-REST ネオロフト:詳細レビュー

    一度寝たらもう二度と起き上がりたくないほど柔らかくてフラット、静かで快適な寝心地

    このマットを7月の八ヶ岳テント泊で使用してみましたが、まず何を置いてもその時の率直な感動から話さずにいられません。とにかくこれまで寝てきた(山岳に対応する)どんなマットレスよりもうっとりするような寝心地の良さで、その夜は登山でのテント場とは思えないほど快適な寝床を経験してしまいました。もはやパッドやマットレスというよりもベッドに近い寝心地です。この快適さの要因を突き詰めるべく細部を調べていくと、素材から寸法、厚さ、フォルムに至るまで、どこを取ってみてもこのパッドは最高の快適さを追求して設計されていることが分かります。

    例えば身体に触れる表生地。柔らかいストレッチニット素材は極めて心地よい肌触りとフィット感で、多くのパッドにありがちなビニール感やパリパリ感がなく、まるでマットの上にシーツが敷かれているかのように身体に優しく寄り添います。

    マットのサイズ感やデザインについても、縦185×横56cmの長方形デザインは、従来の常識では山岳用としては若干オーバースペックと思われるほど贅沢。水平方向のバッフルは均一なサポート感を提供し、左右には僅かに高めのサイドレールが身体を優しく包み込むような感覚を生み出し、基本サイドスリーパーの自分(身長176cm)でも身体の端が落ちる心配をせず安心して寝返りを打つことができました。もちろん仰向けの人はなおさら広々とした寝床を堪能できます。ちなみに寝返り時の音もすこぶる静か。サイズバリエーションとして幅広のRW、全体的に大きくしたのLサイズがあるのも嬉しい。

    これまでのどんなバックパッキング向けマットレスよりも断然分厚い11.7cmという厚みも、この驚きの快適さを形成する要素の一つです。もちろんただ分厚いだけのAmazonで売っているような激安エアマットとは訳が違う感触で、体重が均等に分散され、圧迫感やぐらつきもなく、まるで一般的に家庭で使う製品のような安定感がありました(この快適さは後述するマットの内部構造に起因しています)。

    厳冬期を除く1年を任せられる断熱性の高さ

    ContourCore Matrix™ イメージ(引用:MSR公式サイト)

    スリーピングパッドの暖かさを示す世界基準であるR値(ASTM F3340)は、このマットで4.7。これは同ブランドのオールシーズン対応の軽量エアマットである「ネオエアーXライトNXT」の4.5を少し上回っており、(実際に冬の寒さの中で寝てはいませんが)雪上や凍った地面の上でも穏やかな冬の使用であればオールシーズ対応と考えてもいいレベルの高い断熱性を備えています。実際に寝てみた感覚でも(少ない日数ですが)冷えを感じる気配はまったくと言っていいほど感じませんでした。

    ネオロフトの断熱力の高さの要因は、主にその厚みと独自のチャンバー構造「ContourCore Matrix™(コンツアーコア・マトリックス)」によってもたらされています。これは2列に積み重ねられた三角形のチャンバーによって構成され、これが対流による熱損失を最小限に抑えることで効率的に断熱することができる仕組み。さらに内面に配置された(ネオエアーシリーズでも使われている)熱反射素材「ThermaCapture™(サーマキャプチャー)」も、体の熱を効率的に反射することで限られた重量でも高い断熱性が実現できているのです。

    ちなみにこの2列のチャンバー構造は、体重による身体の沈み込みを上段部分が受け止め下段部分は嵩高性を保つことで、横になった際の跳ね返りや動きによる反発を最小限に抑えて安定した寝心地を提供してくれています。

    飛び抜けて軽くはないものの、快適性を考えれば十分合格点の重量と収納性

    当然ですが、これだけ快適で保温性のあるパッドでも、もしキャンプ用マットのようなヘビー級の重量があったらまったく意味がありません。このマットの革新性は、これだけの快適性を「納得できる」重量とコンパクトさに詰め込んだことです。

    優れた厚みと断熱性にもかかわらず、このマットレスは1リットルのナルゲンボトルを一回り大きくした程度のコンパクトなスタッフサックに収納できます。

    また重量は約710gで、山岳用スリーピングパッドとしてはやや重めであることは確か。万が一あなたがウルトラライトにこだわる人ならば、この時点でレビューを読むのをやめるかもしれません。ただ、現時点でそこまで重量が問題に感じていない人、過度な重さにならない範囲でできる限り快適性を重視したいという人にとっては、(この比べ物にならない快適さを考えれば)この重さと収納サイズは十分検討に値するレベルだといえるでしょう。

    むやみに薄く弱くしたりせず、必要な部分に補強が施された安心の耐久性

    超軽量パッドのなかには、取り扱いを注意しながら使わなければならないほど薄く弱い生地が使われているものもありますが、ネオロフトは幸いにも、そんな特に慎重に扱わなければならないようなマットレスではありませんでした。

    表側は50デニールのストレッチニットポリエステルですが、裏側パネルには75デニールの厚手ポリエステルが配置されています。これは同社でも標準以上の耐久性を備えたモデルに採用されているのと同じレベルの厚みをもった生地であり、テント内で使用する限りパンクの心配はほとんど不要といっていいでしょう。自分はテストと撮影のためにむき出しの土の地面に敷いて寝たりもしましたが、特に問題ありませんでした(かといって地面の鋭利な砂利や金属などには注意)。もちろん万が一に備えた修理キットも付属しています。

    初心者も迷わずスムーズな準備・片付けが可能な使いやすさ

    一見すると、これだけのボリュームがあるパッドを膨らませたり片付けたりするのは面倒に見えますが、実際にはこれも杞憂でした。セッティングも後片付けもまったくストレスなくこなすことができます。

    まずこのマットに備わっている「TwinLockバルブシステム」は、吸気・排気それぞれに分かれた膨張バルブと収縮バルブを備えており、それぞれ「IN」「OUT」のラベルが表示され、使い方に迷うことはありません。バルブは微調整も可能で、膨らませた後も最適な硬さレベルに調整できます。

    空気を充てんさせるには、付属の大きなポンプサックを使いますが、これも1回でかなり大量の空気を送り込むことができるほど申し分ない大きさで、素早く空気を充填させることができます。ポンプサックは吸気バルブにはめるとしっかりと固定され、大きな開口部に少し離れたところか息を吹き込めば容易に膨らみ、開口部を丸めて密閉すれば空気が無駄に漏れることもありません。テストで何度か試してみたところ、平均して4回程度(2分弱)で完全に膨らませることができました。

    使い終わって畳むときには、INと逆側についているOUTバルブを開放すれば、簡単に空気を抜くことができます(下写真)。

    THERM-A-REST ネオロフトまとめ:「無駄に重くないならば、とことん快適な寝床が欲しい」という人にとって迷う余地なし

    ネオロフトはこれまでレビューで試してきた中でも、最高の寝心地を実現したバックパッキング向けスリーピングマットだと断言できます。そしてネオロフトの真価は、その驚くほどの快適さに対して(登山用として考えられ得る)現実的なサイズと重量を実現している点です。

    確かに決して軽量ではない、そして高価ではありますが、どんな地面でも約束された最高の休息ということには代えがたい価値があります。長距離の旅では、重量を考慮することは確かに重要です。しかし、どんなに過酷な寝床でもぐっすり眠れていた過去が終わりを迎えてきている自分のような人間も少なくはないはず。効果的な睡眠が不可欠な厳しいバックパッキングに、ネオロフトはこれまでになかった新しい選択肢を提供していることは間違いありません。

    ただ、ひとつ注意すべき点は、これまでの常識とは異なる幅と高さを備えていることから、テントによってはかなりのスペースを占領してしまうことです。身長によっては、最低限度の広さを備えた軽量テントでは天井と干渉してしまうかもしれませんので、組み合わせるテントについては注意が必要です。

    そこで登場するのが、このネオロフトのサイズ感にピッタリとフィットする快適な広さを備え、そのうえで高いパフォーマンスを実現しているテント、これからレビューするMSRの新作、ハバハバLTです。

    MSR ハバハバLT:詳細レビュー

    前モデルよりさらに広々・快適になった居住空間

    MSRの顔ともいえるベストセラーテント「ハバハバシリーズ」の魅力は、安定したプロテクションと快適な居住性を高い次元で両立したバランスの良さでした。今回のアップデートを一言でいうならば「超快適マットレスであるネオロフトに対応するという形で快適さの面でさらに磨きをかけた」というのがぴったりきます。さっそくここ最近のモデルを試してきた視点で、どこがどう変わったのかを書いていきたいと思います。

    床面積、高さ、上部空間すべてにおいて広くなった

    まず何よりも拡張されたサイズから。ネオロフトの大きなマットを入れても窮屈にならないように、床面積含めて全体的にテントの内部空間が数字的にも体感的にも広がりました。まず床面積は、前モデルの「216×76cm」から「224×81cm」へと拡張。これでネオロフトの両脇やヘッドスペースにゆとりが確保されています(今回試したのは最もコンパクトなRサイズだったのでゆとりにも余裕があるように感じられました)。

    さらにテント内の高さも「94cm」から「99cm」へと大幅にアップ。市場に存在するあらゆるテントと比べてみても明らかに背が高いことは、テント場で他の人の立てているテントを見ればすぐに分かります。

    この広さを実現しているのは、今回見直されたポールの構造にあります。頂点を横切るリッジポールの位置が高く、ポール自体も長くなり、末端のY字部分も長く(=広く)なったことで、頭・足方向の側壁がより垂直に立つようになり、前モデルと比べても内部空間は大幅に広がりました。

    テストではバックパックや靴、ストーブなどを前室に置き、生活に必要な荷物はマットレスの脇や拡大されたヘッドルームに置けば、ネオロフトのような大きなマットでもギアのためのスペースが十分に確保できることが分かりました。ただネオロフトほどの厚みがあるマットの場合段差が無視できないほど高くなるため、荷物の置くスペースのメリハリは良くも悪くもきっちついてしまいます。かつて布団で寝ていた和室からベッドのある洋室になったような感覚です。

    顔の高さの空間は広々としていて全体的な圧迫感が段違いに少なく、ネオロフトほどの厚みのあるマットを入れても頭がつっかえるといったことは当然ですがありませんでした。床から垂直に立ち上がったポールのおかげでデッドスペースが生まれず、テント内を隅々まで有効に活用することができるので、一人用サイズにしてはストレスなくテント生活を過ごすことができます。前室はもう少し広くても良いかもしれんませんが、それでも荷物を置くのに十分な広さはあります。

    通気性も向上で結露の心配も少なく

    新しくなったハバハバLTはインナーテントのメッシュ部分が多くなり、上半分がほぼメッシュになったことでテント内にこもりがちな湿気や暖かい空気は抜けやすくなりテント内の風通しの良さが大幅に向上しました。とはいえ全面がメッシュということでもなく、結露が発生しやすい上半分がメッシュで通気性を最大限に高め、同時に下部は無地パネルでプライバシーも確​​保され、空気の対流による熱損失を抑えることで冷気の通りが良すぎないようにといったバランスが考慮されています。

    またレインフライには前モデルと変わらず大きなベンチレーションが配置されています。レインフライとインナーテント​の間隔も広いため、風をしっかりと防ぎつつも外からの空気は自然に循環されます。ダブルウォールにこの通気性の良さも加わって、朝起きたときにも結露はほとんど見られませんでした。

    フライシートには換気のためのベンチレーションが頭・足元側に1つずつ。ベルクロ留めのつっぱり棒によって開閉が可能。

    ちなみに日本で発売されていた前モデル(ハバハバシールド)は、アジア圏では限定モデルとして日本の山岳や登山スタイルに対応するべく「メッシュの面積が少なく、ベンチレーションを搭載」した特別バージョンが販売されていました(一方北米モデルは「メッシュあり・ベンチレーション無し」)。これはこれでメッシュ面積の少ないテントを好む日本の登山愛好家にとってはかなり魅力的であったことは確かですので、今回の仕様変更はともするとがっかりした人もいるかもしれません。ただそれによって通気性・排熱性が失われていたこともまた確かで、その意味では今作のコンセプトを鑑みればメッシュ面積が多くなった(より温暖な環境での快適性を優先した)ことはある意味で理にかなっており、どちらが正しいといった話でもありません。むしろ猛暑続きでどんどん夏が長くなっている現在の環境を考えると、暑さに対する通気性を重視したデザインコンセプトは判断として十分にありでしょう。個人的にも寒さは着れば防げるが、暑さや蒸れはどうしようもないと考えるタイプなので、自分にとっては歓迎すべき仕様変更でした。

    豊富なテント内の収納がさらに便利に

    ハバハバではおなじみの豊富な収納スペースは健在で、テント側面の大型メッシュポケット(隅にケーブルを通すための穴アリ)と天井部のメッシュポケットが2つずつあって、相変わらず便利です。

    自分は側面のポケットにはモバイルバッテリーやスマホ、携帯ラジオ、メガネケース、ライター、虫よけ、キャップ、グローブなどを置き、天井にはヘッドランプやタオル、歯ブラシ、腕時計、サングラスや眼鏡を置いていました。

    さらに新作では濡れたギアやタオルを干したりランタンを吊り下げたり、サングラスを掛けておける物干しロープが標準で張られているのも嬉しいポイント。一般的にはどのテントにもロープを吊るためのループまでは搭載されているものですが(以前までのハバハバもそうでした)、最初から標準でついているのはなかなか見られないだけにちょっぴり得した気分です。

    簡単にセットアップ&パッキングできる使いやすさと安心感を考えた設計・構造

    設営に関しては細かい部分で改良がみられる他は前モデルから大きく変わったところは無いものの、相変わらずシンプルでスムーズな立てやすさ。どこでも立てやすい自立式のドーム型山岳テントであり、さらにハブ構造で一体化したポール、ガイラインはあらかじめセットされているし、ミニグラウンドホッグテントステークも8本付属しているので、厳しい状況下でも素早く簡単に設営でき、ビギナーが初めて袋から取り出しても安心して立てられるでしょう。

    フットプリントとインナーテントの四隅を付属のペグで固定(写真①)。四隅のグロメットにポールをかけ(写真②)、インナーテントのフックをかけていき(写真③)、リッジポールをセット(写真④)してインナーテントの完成。フライシートを被せて四隅を専用フックに固定し(写真⑤)、最後に各所のガイラインをペグで固定すれば完了です(写真⑥)。

    細かいですが、テントにフライを連結する金属製のアタッチメントポイントが今回アップグレードされました。軽量で耐久性があり、しかも簡単に操作できるスグレモノです(下写真)。

    一方で設営時に気になった点としては、テント・フライにポールをセットするとフライの張力によってテントが内側にやや丸まってしまう(室内が狭まる)傾向があり、きちんと張るには四隅をペグでしっかり広げて打つ必要があったということが挙げられます。特に致命的な不便さではないのですが、通常の自立式テントにはあまり見られないこのテント特有の事象で、設営には気を遣う必要があります。同じような状況で疑問を感じた人がいた場合には四隅のペグをしっかりと打つといいでしょう。

    十分な耐候性を備えた構造と雨への対応も細やかだったレインフライ

    快適性を重視して壁の角度を垂直に近くすると、どうしても耐風性が犠牲にならざるを得ないもので、このテントもその傾向がまったく無いとは言えません。ただレインフライ自体の角度はそこまで急勾配にはならず、また強風に耐えるためのガイラインポイントが標準で4つ搭載されているので、これらをしっかりとペグダウンすることで強風下でも一定の耐候性を確保することができます。

    今回そこまでの強風に見舞われることは無かったのですが、実際テントとフライをしっかりとペグダウンして張りを強くすることで安定感は十二分に感じられ、長時間の雨にさらされたときでも張りを保つことができました。

    雨に対するプロテクションですが、フライの素材は20Dのリップストップナイロンで耐水圧1200mmとまずまず。一晩雨に打たれていましたがしっかりと雨をはじいていました。

    またこのテントで雨に見舞われた際に気がついたのですが、知った瞬間からすぐにお気に入りとなった機能が、フライのドアジッパーの上に沿って配置されたガターシステム(追加のフラップ素材による「雨どい」)です。

    出入りする際、フライに溜まった雨がジッパーの縁を流れて体に付着したり、テント内に水が入り込むのを防いでくれたので、テントの入口付近の浸水を遠ざけ、水たまりができるようなこともありませんでした。下の動画では流れる雨がガターに沿って流れていく様子が分かると思います。

    パッキングしやすいコンプレッションストラップ付、新しいロールトップスタッフサック

    あらかじめ小さな収納袋はそれ自体がコンパクトなことは良いのですが、それが余りにもギリギリのサイズだと朝露で濡れて膨らんだテントを収納するのには非常に厄介だったりします。その意味でこのテントに付属している新しいスタッフサックは、パッキングのしやすさを考えた遊びを備え、必要に応じてしっかりと圧縮できるコンプレッションストラップ付きサイドローディング式ロールトップは最高に使いやすい作りでした。

    朝のあわただしい中でもストレスなくパッキングすることができ、あっという間に朝の行動をスタートさせることができました。横長フォルムはバックパックのボトムに括りつけたりするのにもちょうどいいです。

    MSR ハバハバLTまとめ:ネオロフトの快適性を最大限に活かせるテントであり、単体でも全体的に高い次元でバランスの取れた快適性重視のテントとしても優秀

    MSR ハバハバLT 1は、決して最軽量を目指すのではなく、適度な軽さを備えつつ非常に高い快適性と使いやすさ、信頼性を備えたダブルウォール自立式1人用テントでした。ネオロフトのサイズ感に最適化されているというだけでなく、個々のアイテムの特徴やコンセプトがぴったりとマッチしているので、ちぐはぐな装備になることもありません。

    そもそも今回のテストで最も確認したかったのは、クラス最高峰の快適性を実現した製品を携行して、テント泊縦走やバックパッキングのような過酷な旅が可能なのかどうかということ。本文でも書いてきましたが、これらは決して非現実的なほど「重い・かさばる」ものではなく、慣れてしまえば問題なく携行できるレベルだということが確認できました。もちろん超軽量スタイルを目指している場合には選択肢に入ることは難しいでしょうが、ここまでの快適さは、それを知ってしまうと「果たしてそこまで軽さにこだわる意味があるだろうか?」と自問自答してしまうほどに衝撃的であることも確か。このペアを山岳トレッキングの相棒にすることで、軽さと快適さが一段高い次元で両立した、これまで見えてこなかった新しいスタイルの登山が体験できるといっても言い過ぎではないかもしれません。

    THERM-A-REST「ネオロフト」& MSR「ハバハバLT」の詳細と購入について

    製品の詳細についてはモチヅキの公式サイトも合わせてご確認ください。