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比較レビュー:いろんなタイプのトレッキングポールを突き比べてみた【ハイキングに、雪山に、トレランに】

各項目詳細レビュー

快適性・重量

トレッキングポールにとって「より快適に歩けること」が最も重視すべきポイントであることに異論がある人はまずいないでしょう。ただポールの何をもって快適とするかについては、すべての人の意見が一致するということは難しいかもしれません。

編集部ではトレッキングポールの快適性を構成する要素をまずグリップの素材・形状(握りやすさ)、ストラップ、ポールの地面への付き具合という3つの視点に分解し、それぞれについての評価を総合して快適性の項目としてくくりました。そしてもう一つ快適さを構成する特に重要な要素である「重量」については、独立した評価項目として立てています。

Black Diamond アルパインカーボンコルクは滑りにくく手の収まりもよいコルクグリップに、あたりのソフトなストラップ、しっかり安定した突き心地から、使っていて最も気持ちの良いと感じるポールでした。その他Black Diamond ディスタンスカーボンFLZはグリップ周りの芸の細かさもさることながら、何よりも約350gという軽さが歩行のストレスを極限まで抑えてくれます。LEKI マイクロバリオ カーボンASはエルゴノミクスを駆使して最高に握りやすい快適なグリップと全体的な軽さ、そのどちらもがバランスのとれたモデル。これら3モデルは便宜上優劣がついていますが、全体的な快適さという意味ではいずれも甲乙つけがたく、実際には使い方や趣向によって人それぞれ好き嫌いが出てくるでしょう。

グリップの素材

グリップの素材についての評価はモデルによって多少の違いはあるものの、「コルク」「EVAフォーム」は概ねすべてのテスターが好意的に評価していました。繰り返しになりますがコルクの高いグリップ力と快適性は自然の素材にしか出せない唯一無二の魅力があります。また一般的にコルクの方がEVAよりも耐久性が高く長持ちするといわれいますが、1年ちょっとEVAのグリップを使い続けても綻びはそれほど見られていません。この点については使い方次第という気がします。一方ラバー(ゴム)については、その擦れやすさや濡れた時の不快感などからあまり評価しない人が多かった模様。ただ寒冷地では水を吸わない分、凍結の心配がないため他の素材に比べて有利という面はあります。最後にポリエチレン(プラスチック)は安価で衛生的(こちらも凍結の心配なし)ではあるものの、グローブをしない限りは基本的にかなり滑る、経年劣化するなど、激しい活動や長く使うには不向きです。

グリップの太さ

実際に比べてみるまで気になりませんでしたが、ポールはメーカーによって、あるいはモデルによってグリップの太さが微妙に違います。Black Diamond ディスタンスカーボンFLZSINANO フォールダーFREE 125Helinox FL120の3モデルはどれもグリップが細め(23~24mm)で、逆にKOMPERDELLの2モデルは、手の小さい人にとってはややゴツいなと感じる太さ(29mm程度)でした。極端に評価に影響があったわけではありませんが、自分がちょっとしっくりこないと感じていたHelinox FL120を女性のテスターがとても評価していたことなどから、多少の影響はあると思われます。選ぶ際に注意してみるとよいでしょう。

重量

ほぼ300gというHelinox FL120が文句なしに軽量評価ではトップです。しかもこれまで軽量性ではカーボンの方が有利とされてきたのに、何とアルミでここまで軽いというのですから驚きです。軽量・コンパクト・高耐久・低価格の四拍子揃ったこのモデルは今回の比較ではトレイルラン的なアクティビティに最もマッチする1本でしょう。反面とても細くてシンプルなグリップ、極細シャフトによる突いたときの振動の大きさなど、全体的な快適性についてはやや難があるように感じられました。アクティビティを割り切った使い方をするのがこのポールの有効な使い方です。

全体的な印象ですが、400グラムを切るかどうかで「軽い!」と感じる境界線があるようです。その意味ではSINANO フォールダーFREE 125までが特に軽いポールとしての印象が強く、それ以上になってくると重量差は50グラム単位程度でしか差を感じなくなってきました。

グリップを並べてみると材質・形状だけでなく太さ、縦の長さ、ストラップの質感などに至るまで千差万別であることが分かる。

固定・調節機能

用途や価格帯によってポールの固定・調節方法がさまざまあることは選び方で説明したとおりですが、今回のテストを通じて新ためて分かったのは「レバーロック方式」の使いやすさです。キツく締めるために毎回ある程度握力が必要なスクリューロック方式と違い、非力な人でも簡単にしっかりと固定できる。おまけに長さの調節も可能、故障しにくいと、最近の進化したレバーロックはどのメーカーのモデルも概ね優秀です。

さまざまなメーカーのレバーロック方式のなかでも、LEKI マイクロバリオ カーボンASに搭載されている「スピードロック2システム」は固定力・簡単さ・コンパクトさで抜きん出ていました。しかも折りたたみ式のため下部はワンタッチでピン留めでき、素早いセッティングが可能。ちなみに固定力の調節もドライバーなどを必要とせず、非常に使いやすいです。

スクリューロック方式は締める面倒さだけでなく、時々締まりすぎて動かなくなったり、ロックシステムが故障して固定できなくなったりと、何だかんだで不安定なところが評価としてはマイナス。唯一メリットと言えそうなのはポール全体的に凸凹がないため収納がしやすいという点ですが、これも最近のロックシステムのコンパクト化により気分の問題になってきているのが現実です。

ロック方式の違い。固定力やレバーの操作性が各ブランド微妙に違う。また、硬さ調節にドライバーを必要とするなど細かい違いも。

収納性

ポールの収納性とは、ポールの連結方式とほぼイコールといっていいでしょう。その観点からすると、圧倒的に有利なのがSINANO フォールダーFREE 125LEKI マイクロバリオ カーボンASBlack Diamond ディスタンスカーボンFLZの3モデル。これらはどれも収納サイズが40cm以下で、安心してバックパックのなかに収納できます。特にSINANO フォールダーFREE 125は36cmと、ここまでコンパクトに収納できるポールは世界中見回してもなかなか見当たりません。

ただこの収納性に関しては1点だけ注意することがありました。折りたたみ式のポールはバックパックのメインコンパートメントや側面に収納するにはありがたいものの、バックパック前面に付いているようなポールアタッチメントや、オスプレーなどのパックに付属している行動中のポールアタッチメントなどには、そのコンパクトさが仇となって取り付けられない(あるいは取り付けにくい)という事態が発生します。この辺、そろそろバックパックメーカーには対応してほしいものですが、現状では注意が必要です。

収納サイズの違い。一般的には折りたたみ式がコンパクトだが、折りたたみ同士、テレスコープ同士でも長さは微妙に違う。

耐久性

ポールの耐久性というとどうしてもシャフトの素材に目が行きがちです。ただ一般的にアルミは曲がりやすいが折れにいというクセがあったり、カーボンは折れやすいが曲がりにくいといった特徴があるものの、素材としてどちらの方が強いという単純な比較はできないのが実際です。このためここでは素材による強度の違いは細かく評価せず、主にシャフトの太さ(重量)・連結の構造、各パーツの壊れやすさ等といったアイテム全体の耐久性を比較しています。

比較の結果、KOMPERDELL エクスプローラー コンパクト パワーロックは他のポールに比べてシャフト径も太く、各パーツの作りも丈夫です。その分、あまり気の利いたパーツがなく至ってベーシックな作りではあります。その他Black Diamond アルパインカーボンコルクは同じく太いシャフト径とグリップにはコルクを使うなど、全体的にトップクラスの高い耐久性を持っていることが分かりました。ただその分、相対的に軽量なカーボンにもかかわらず約500gというカーボンの良さが消えてしまうほどの重量ではあるのですが。

強度・重量は材質だけでなくシャフトの太さ(厚さ)によっても変わってくる。一般的にはより太い方が強度が高い。

汎用性

トレッキングポールはその重量や構造だけでなく、オプションパーツを装着(付け替え)することによって幅広いアクティビティ・季節・地形に対応することができ、その選択肢の多さを評価するのがこの項目です。具体的にはサイズ調節の有無、雪面用バスケットオプションの有無、舗装路・木道用の滑り止め付キャップの有無、急斜面用の延長グリップの有無など。

これらの豊富なオプションを備え、オールシーズン、幅広い体型、幅広い地形で使えるモデルはLEKI マイクロバリオ カーボンASBlack Diamond アルパインカーボンコルクSINANO フォールダーFREE 125の3モデルでした。これらはいずれも価格的に上位のモデルです。一方最も低価格のKOMPERDELL ワイルドランブラーにはサイズ調節と雪用バスケットのオプション以外はないため、一般的なコース以外では多少の使いにくさを感じるかもしれません。このことからも高級なモデルほどさまざまなオプションを備え、オールラウンドに使いやすいということが分かります。

急斜面でポールを一時的に短く持つための延長グリップ。KOMPERDELLのような滑り難い設計は実用性が高い。

さまざまなバスケット、石突きキャップ。バスケットは無雪期ならば無くてもいいくらいだが、雪面用には広いもの(左から2番目)が必要。キャップも滑り難い構造の方がよりいい。

 

まとめ

総合評価だけで判断すると、どうやらトレッキングポールに関してはかなりの程度で安かろう悪かろう、つまり価格と順位が概ね比例するということがテストを通してあらためて分かりました。アイテムの性質上、デザイン性などでの差異が出ないためどうしても機能(性能)と価格がダイレクトに結びつきやすいようです。

とはいえやはり自分の重視したい目的が決まっているのであれば、それに合わせて細かく使い分けるのがベスト。3シーズンのハイキングにはディスタンスカーボンFLZ、ランにはHelinox FL120、本格登山にはマイクロバリオ カーボンAS、雪山にはアルパインカーボンコルクなど、高価格モデルであっても特徴に合わせて最適な一本を選んでみてください。一方中価格帯のモデル同士であっても、グリップの種類や耐久性、使いやすさ等で、メーカーによる得意不得意があることも分かりました。快適さならLEKIKOMPERDELL、重量ならHelinox、ロック機構ならLEKI、耐久性ならKOMPERDELL、コスパならモンベルなど、これらの傾向は自分の好みに合うモデルを選ぶ際の参考になるはずです。

なお今回テストは良くも悪くもトレッキングポールの王道モデルが中心。今回テストに含められなかったモデルのなかにもより優れた(尖った)モデルがたくさんあることは事実です。それらについても今後レビューなどで取り上げていきたいと思いますが、みなさんでもぜひ同じような視点で眺めてみると、自分に適したモデルかどうか判断する助けになると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

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