
【2025秋冬】スノースポーツでの隠れた必需品、バラクラバ(目出し帽)の用途・こだわり別ベストモデルと後悔しない選び方のポイント
冬のハイキングから雪山・スノースポーツでの隠れた必需品
冬のアウトドアで恐ろしいのは何といっても冷え・寒さからくる低体温症です。このため指先や足先など、身体の末端部分は特に気をつけて保温しておかなければなりません。靴下・手袋と並んで頭の防寒に役立つヘッドウェアの中でも厳冬期の雪山登山やアクティブなスノースポーツで欠かせないのがバラクラバです。
麓よりも段違いに低温で、強い風雪にさらされる冬山の稜線では、ニット帽やビーニー、ネックウォーマーを被っていたとしても、むき出しになっている頬や鼻部分は凍傷の危険があります。このため雪山の風雪にさらされる場面では、眼以外の顔全体をカバーする防寒アイテム「バラクラバ」が必需品です。かつては「目出し帽(個人的には「めでぼう」でしたが)なんて呼ばれ方もしていましたが、今こう呼ぶとおっさん扱いされるようなので注意です。

これまで何十着というバラクラバを試してきましたが、なかなか理想のモデルを探すのが難しいギアだと感じています。まず人の頭の形って実際にはそれぞれ違うはずなのに、ワンサイズか、あっても2サイズ程度しかサイズ幅がないこと。自分のサイズにピッタリくることがなかなかない。

また仮に試着段階ではいい感じだったとしても、現場で実際に装着してみると冷たい風が防げないとか、呼気でサングラスが曇るだとか、逆に暑すぎて調節ができないだとか、予想外の不快感や使いにくさに現場で初めて気づかされることが結構あります……厳しい状況で繊細な部分に着用する道具だけに、なかなか自分にピッタリ・しっくりくるものに出会うのは難しいものです。出番のわりに、高級品ともなると1万近くという価格もネックになってどうしても手頃な価格(そこそこの品質)で済ましてしまいがちです。
そこで今回は、現在市場で手に入れられるアウトドア向けバラクラバ約70モデルをOutdoor Gearzine独自の視点で多角的に比較検討し、さまざまな用途やこだわりに合わせてベスト・モデルを選定してみました。さらに後半では自分にピッタリの一点をチョイスするために何をどういう基準で選べばよいかということについてのポイントをご紹介します。
なお、ここでは各部門で1点ないし2点しか紹介していませんが、その他のベスト候補やそれらを含めた全71点の比較一覧表はメンバーシップになっていただくことで閲覧することができます。
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シーン・こだわり別ベスト・バラクラバ
ベスト・オールラウンドバラクラバ:THE NORTH FACE ミッドウェイトバラクラバ
保温性★★☆ 耐風性★★☆ 快適性★★★ 呼気対策★★☆ 汎用性★★★ デザイン★★★
まずは冬山登山やバックカントリースキーなど、ウィンターマウンテン・アクティビティ全般でおすすめできる総合的に高い次元で良バランスを備えたモデルを紹介します。
今シーズンのモデルの中で個人的に最もビビビッときたのはノースフェイスの「ミッドウェイトバラクラバ」でした。これは正直意外。
素材は軽くて高い保温性と通気性を両立した「FUTURE FLEECE」を採用。そして口元は通気性・速乾性があって濡れても肌触りドライな「DOTKNIT」テクノロジーをマッピング。ストレッチ性もしっかりとあって、暖かいけど厚手すぎない適度な薄さ。そしてバラクラバだけでなくヘッドウォーマーにもフェイスマスクにも、ネックゲイターにもなる使い勝手の良さ。残念ながら鼻部分には形形状保持素材は搭載されていないのですが、それは前述のとおり自分で何とかできますので問題なし。つまりほぼ理想に近い一着です。
ベスト・厳冬期登山向けバラクラバ:NORRONA arktis Ousland edition Facemask
保温性★★★ 耐風性★★★ 快適性★★☆ 呼気対策★★☆ 汎用性★☆☆ デザイン★☆☆
厳冬期での高所登山や長期縦走、冬季アルパインクライミングなど、最も厳しい寒さと過酷さを想定した場合は、上記のようにさまざまなシーンでの使い勝手の良さよりも、高い断熱性とプロテクションを備えたモデルの方が安心です。
ここでは特に「耐風性」「保温性」「プロテクション(冷気のシャットアウト)」の高いモデルを選定。本格アルパインブランドのハイエンドモデルたちはどれもそれなりに質が高く、選んでも早々間違いはないとは思いつつ、あえて注目モデルを挙げるとすれば「NORRONA arktis Ousland edition Facemask」を推したい。これは極地探検家のボルゲ・オウスラントと共に開発された北極遠征用コレクション「アークティックコレクション」のひとつ。GORE-TEX®Infinium (Windstopper)による高い耐風性、首元は高いストレッチ性と耐久性を備えたPolatec Powerstretch pro、口元はネオプレンと、極限の環境下に対応する機能性と耐久性はまったく隙が見当たりません。さらにおもしろいのは、必要に応じてつけ外しができる上下に可動するフェイスプロテクションで、多くのエクスペディションモデルにはない汎用性の高さも魅力です。
ベスト・高負荷アクティビティ向けバラクラバ:Houdini ペース フロー バラクラバ
保温性★☆☆ 耐風性★☆☆ 快適性★★★ 呼気対策★★★ 汎用性★★★ デザイン★★★
従来までならバラクラバの主役素材は、フリースあるいはメリノウールでした。しかしここ数年普及しつつあるアクティブインサレーション素材は、このバラクラバ分野でも当然のように注目され、採用モデルが増えてきています。軽さ、保温性、通気性とバラクラバに求められる要素がすべてそろっているのですから当然です。
これら今旬素材を全面的に取り入れたバラクラバは、ウィンタースポーツの中でもどちらかというとより活動量の高いアクティビティに適しています。このジャンルで最注目として挙げたいのは「Houdini ペース フロー バラクラバ」。メイン生地に採用された「Polartec® Power Dry® Mesh」は、同じ生地を採用した「Pace Flow Houdi」というジャケットで知っていましたが、その見た目のまんま、とんでもなく高い通気性と、適度な断熱性を兼ね備えた軽量メッシュ素材です。このおかげでいくら激しく動いても頭に熱がこもることがありません。その分、寒さを防ぎたいときにはヘルメットやフードなどでしっかりとカバーしないといけませんので、良い塩梅でバランスをとるのが難しいというクセの強さもありますので、適したシーンは限られてきますが、ハマると強い。
ベスト・低価格バラクラバ:Mountain Hardwear パワーストレッチバラクラバ
保温性★★☆ 耐風性★★☆ 快適性★★☆ 呼気対策★☆☆ 汎用性★★★ デザイン★★☆
いつもの高コスパモデルは、今回「5,000円以下」という条件で選出してみました。今や万越えも珍しくないバラクラバ。できればリーズナブルであるに越したことはないのですが、ここでまず前提として申し上げておきたいのは「細かいこだわりが無ければ、格安モデルはモンベルを選んでおけば間違いない」ということ。多彩なラインナップを有しながらどれもほぼ軒並み5,000円以下、3,000円台のモデルも余裕であり、それでいてどれも僕が挙げた5つのポイントをほぼ最低限押さえられているのですから。
そうはいっても、この条件の中で「一番」を挙げるとすればそれは「Mountain Hardwear パワーストレッチバラクラバ」です。多彩なスタイルに対応する裁断パターンだけでなく、Polatec Powerstretch素材による心地よいフィット感も素晴らしい。これで5千円でおつりがくるのですから、はっきり言って狙い目です。
ベスト・快適性バラクラバ:Houdini ライカン バラクラバ
保温性★★★ 耐風性★☆☆ 快適性★★★ 呼気対策★★☆ 汎用性★★★ デザイン★★★
最後におまけ(?)の1着は、機能性の高さはもちろんですが、より心地よい肌触りと暖かさから、冬の旅行やレジャーでの使用も視野に入れた、日常からフィールドまでをクロスオーバーする注目モデル。
一押し「Houdini ライカン バラクラバ」が採用した革新的な素材「Airweb Knit™」は、最近アウトドア業界で旋風を巻き起こしている帝人が開発した「Waveron™」と「Deltapeak™」の糸を、これまた数年前から業界を席巻中の島精機製作所の3Dニット技術と融合させて生まれたニット生地。抜群の柔らかさ、通気性、そして滑らかな風合いを備えた断熱素材であり、しかも従来の廃棄物処理も不要。この生地ならもっとアクティブなハイエンドモデルを作ってもいいくらいですが、そこをあえて洗練されたデザインで日常使いでも違和感ないスタイルに仕上げるのがフーディニらしい。
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最高のバラクラバを選ぶためにチェックしたい4つのポイント
ポイント1:プロテクション(保温・防風性)は十分かどうか
バラクラバが必要になるシーンとは、ニット帽(ビーニー)やネックウォーマーだけでは寒さを防ぎきれなくなるほどの寒冷・強風下。この状況でまず何が求められるかと問われれば、間違いなく最も重要なのは保温・防寒性能です。

その保温性を大きく左右するもののひとつが、バラクラバに使われている生地・素材。かつては冬季ウェアの保温素材といえば、昔ながらのウールや、アクリルなどの化繊素材が主流でしたが、それらはチクチクした肌触りがネックとなり、顔に装着するにはまだまだ改良の余地がありました。それが最近ではさまざまに進化した素材が取って代わるようになり、目的と用途に合わせて選べるようになっています。以下、最近の主流となりつつある素材を順に見ていきます。
バラクラバで使われる代表的な生地1:フリースやアクティブインサレーション
現在バラクラバの素材として一般的に採用されているフリースは、保温性と通気速乾性を兼ね備えたバランスの良さが魅力。元々、ウールにとって代わる「軽くて暖かくてすぐ乾く」理想のセーターとして進化していったフリースはバラクラバとの相性もバッチリでした。ただ最近ではフリース素材に似た化繊中綿として、保温性と通気性を高いレベルで兼ね備えた、「Polartec Alpha」や「Octa」といったアクティブインサレーション素材も登場しはじめ、それぞれの強みを活かした新しいアプローチの製品にも眼が離せません。
また厳冬期のアルパインクライミングや極地探検などより過酷な寒さに対応するモデルでは、防風性能を有したメンブレンを組み合わせるなどしてさらにプロテクションを高めるモデルもあります。

バラクラバで使われる代表的な生地2:メリノウール
古くからのウールに比べて抜群の肌触りのよさと吸湿保温性を備えたメリノウールは、今や快適な保温素材としてさまざまなアイテムに用いられるようになってきました。メリノウール製バラクラバの魅力は何といってもその適度な伸縮性とフィット感・肌触りからくる着け心地の良さ。もちろん保温性もしっかりとあります。基本的に防風性はそこそこで通気性があります。天然の防臭機能を備えていることは顔回りのウェアとしては地味にうれしい。
補足:保温性を決めるのは素材だけではない
より暖かいバラクラバを選ぶ際に注意しなければならないのは、首周りのつくり。首の下部までしっかり覆っていないバラクラバは風が吹き込んできてしまう可能性があります。首周りが短めのモデルの場合はネックウォーマーやジャケットをしっかり閉めるなどして対応するようにしましょう。
ポイント2:快適性(フィット感と通気性)は十分か?呼気で曇らならないか
いくら保温性バッチリの素材でも、サイズが小さすぎでは顔が窮屈で息苦しく、逆に大きすぎであればヘルメットや風などの影響ですぐにズレてしまい非常に危険です。その意味でバラクラバのサイズ選びとフィット感の良し悪しは重要で、特にサイズがワンサイズしか無いモデルや、伸縮性の無い素材のモデルには注意が必要です。やはりベストは実際に試着してみることでしょう。

また快適さの面でもうひとつ重要なのは、呼気の処理です。冬山登山に限らず、スキーやスノボなどあらゆるウィンタースポーツではサングラス・ゴーグルは必携。口元の通気性が低く、呼気が鼻の脇から出てしまうタイプのバラクラバでサングラスをしていると、曇り止めをいくら塗っても呼気によるレンズの曇りは防げません。その点をしっかりと意識しているバラクラバでは、口部分をメッシュや通気孔にすることで、呼気が前面へ排出されサングラスの内側に上がらないようにし、曇りや蒸れを防ごうとしているものが増えてきました。さらに鼻の上部分にパッドや芯材まで設けられていると、呼気の上昇を防ぐ対策としては万全です。
ただしこれも若干注意が必要で、自分の顔と製品とのサイズの相性次第では、いくら口に通気の仕組みが設けられていたとしても実際のところ上手く呼気が前面に排出されず、結局サングラス内側に呼気が上がってきてしまうことがあるのです。こうした目に遭わないためにも、やはりバラクラバはフィッティングが大事!

細かい条件にもよるのかもしれないが、メッシュになっていれば何でもよいかというと、テストしてみた限りでは残念ながらそうでもない。曇らないかどうかはここでのレビューを参考にするか、試着でできる限り確かめてみるしかない。
DIYで鼻部分に芯材を挿入する方法
これまでは製品の鼻部分に樹脂や金属製の芯材を入れているモデルを選ぶ必要がありました。
しかし最近になって、どんなモデルであっても自分で後から挿入できる方法を発見したので、鼻部分に芯材が入っているかどうかに関してはあまり気にならなくなりました。
その方法をここにメモしておきます。
使うのはAmazonでも買える手芸用の形状保持素材。幅は2mm。もう少し太くてもいいかもしれない。
ハマナカ テクノロートL 形状保持材 5m H430-058
これを適当な長さで切って、片方の先端をカッターなどで尖らせます。あとは鼻部分の縁のバイアステープの内部に差し込んでいくだけ。固定はしていませんが、今のところ中ですぐにズレるということはありません。
ゴーグルやサングラスが曇るのが気になっていたのですが、これによって鼻当てのないほとんどのバラクラバで自分で鼻当てを付けることができるようになりました。同じように気になる方がいれば、参考にしてみてください。
ポイント3:被り方のバリエーションが多いかどうか
比較的薄手で伸縮性のあるバラクラバの場合、暑い・寒いや風の強弱、ヘルメットとの相性など状況に合わせて被り方を変えることで、下の図のように1枚で複数の使い方ができます。
逆に、ゴツくて伸縮性の少ないモデルでは、風雪や寒さに対するプロテクションは高い一方、そうした柔軟性は乏しいのが一般的です。

バラクラバの縫製パターンに着目
「複数の被り方ができるような構造」かどうかは、バラクラバの縫製パターンに着目することでおおむねチェックすることができます。
下図のようにバラクラバの構造には3パターンほどあります。
それぞれ、目の周りをすべて縫い付けてあるモデルは防寒性こそ高いが口元を広げたり頭だけ脱いだりがしにくい(左)、一方下半分が外側になっている縫製パターンでは暑苦しいとき下半分(口元部分)を下げてヘッドウォーマーに切り替えやすい(中)、最後に上半分を外側にした縫製パターンでは口元を下げるだけでなく、上半分(頭部分)を外して口元と耳だけ覆う「フェイスマスクスタイル」にも切り替えやすく、より多彩なスタイルにカスタマイズしやすいという意味では個人的に右の構造のバラクラバが最もお気に入りです。
ポイント4:その他の機能
その他、他モデルと差別化のために各ブランド工夫を凝らしているケースがあります。例えば防臭・消臭機能。直接鼻を覆うものであり、呼気などでどうしても口周りに唾液が付いてしまうバラクラバは長時間装着するような使い方になればなるほど、防臭機能非常に有り難い。その点、メリノウールは天然の防臭性を備えているので安心です。また、取り外し可能なマスクパーツなどで、さらに一段と快適な汎用性を実現しているモデルなど、それぞれの工夫が自分のスタイルにより合ったものであれば、それを選択しない手はありません。

まとめ:素材だけじゃない、フィットだけじゃない。沼にハマりたくなければバラクラバ選び方は慎重に。
ここまで自分なりにたどり着いた現時点までの選び方のポイントと、自分が使ってきた中でのおすすめモデルを紹介してきましたが、結局のところ、それでもまだ「これぞ至高」といった決定版にはなかなか巡り会えていないのが正直なところ。ただもちろんバラクラバも他の山道具と同じで、どんなシチュエーションにもフィットす1着というものはあり得ず、得意・不得意を理解したうえで、目的やシーンに合わせて使い分けることが最も賢い使い方であることは忘れてはいけません。
最後に参考までに現在の個人的な着まわし方を振り返ってみると、軽量コンパクトで暖かく快適、そして多様な被り方ができるTHE NORTH FACE ミッドウェイトバラクラバと、finetrack メリノスピンバラクラバがスタメンの二本柱でほぼこの2点で回しています。そして状況に合わせて厳冬期の登山ではプロテクションの高いもの、ランニングでは通気性の高いもの、街で使いたい場合はデザイン性の高いモデルなどを使い分けているというのが実際です。
バラクラバは地味なアイテムですが、雪山は道具選びの失敗ですぐにえらい目に遭ったりしますのでぜひともこの記事を参考にして、今年も雪山遊びを安心して愉しみましょう。













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