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Review:THERMOHAIR SOCKSこの冬最も愛用した至福の靴下

ソックスに最高の素材は、メリノウールだけじゃなかったという話

ソックスに使われる素材として、ここ数年で最もポピュラーな存在として定着しつつあるのがメリノウール。このサイトで行った比較テストでもそのクオリティの高さは実証済み。夏は涼しく、冬は温かいという優れた温度調節性能に加え、丈夫でしなやか、そして天然の抗菌性など、それら多くの魅力がまさにソックスにうってつけです。かくしてぼくは「1年を通してソックスはメリノウール一択」と、そう結論づけていました。昨年までは。

しかし、相変わらずアウトドアの世界はまだまだ広い。編集部に届いた1本のソックスが、この冬一番のヘビロテになるとは思いもよりませんでした。

そのソックスの名は THERMOHAIR(サーモヘア)。アンゴラヤギの毛(モヘア)のなかでも最も稀少部類である「キッドモヘア」で編まれたこのソックスの何が新しく、何がスゴかったのか。早速レビューしていきたいと思います。

詳細レビュー

アイテム名(参考価格)

THERMOHAIR SOCKS(サーモヘアソックス) ※写真はレギュラーソックス(参考価格:4,320円)

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主なスペックと評価

項目スペック・評価
生地モヘヤ-68%、ナイロン-32%
抗菌防臭効果今のところ◯
快適性★★★★★
サポート力★★☆☆☆
クッション性★★★★☆
保温性★★★★★
透湿性★★★☆☆
速乾性★★☆☆☆
総合点★★★★☆

ここがスゴイ!

桁違いに快適な履き心地とクッション性

このソックスの素晴らしさを誰かに説明するとしたら、何も迷うことはありません。何も言わずにまずこの裏地に触れてみてもらうのです。触った瞬間に感じるのは、これまで出会ったことのない、滑らかでどこまでも優しい肌触り

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ヒミツは当然、この素材にあります。このソックスで使われている「キッドモヘア」とは、アンゴラ山羊(アンゴラヤギ)から採れる毛(モヘア)のなかでも生後1年未満の子ヤギからしか採れない非常に稀少な繊維のことを指します。

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モヘアはウールと違い縮れが少なく、スケールと呼ばれる毛の表面のウロコが小さい(写真)。だから手触りはつるっと滑らか。さらにキッドモヘアの場合は通常のモヘアよりも細く、柔らかいため、一般的にモヘアより繊維が細くて柔らかいといわれているメリノウールと比較してもその違いは明らか。まさに病みつきになる心地よさです。

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左はメリノウール、右がモヘアの繊維を拡大した顕微鏡写真

さらに、元の長さから30%引き伸ばしてもビクともしないという優れた弾力性と、5mmという非常に毛足の長いパイル地によって、高いクッション性と心地良い肌触りを可能にしています。クッション性については参考までに、これまでの冬の定番であるメリノウールの最厚タイプ、スマートウール マウンテニアリング(写真左)と、春~秋の定番、スマートウール PhDアウトドアヘビークルー(写真右)とを比較した写真を載せておきます。パイルの長さはサーモヘアが最も長いですが、全体的にはマウンテニアリングの方が目も詰まっていて若干厚め、クッション性も最も高く、サーモヘアはちょうど右のPhDヘビーと同じくらいのクッション性です。

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スマートウールのマウンテニアリング(左)よりも目が詰まっていない分、クッション性は少ないが、PhDヘビー(右)と比べるとその圧倒的に大きなパイル地でほとんど変わらないクッション性を実現。

 

優れた保温性と吸湿性

アンゴラ山羊はそもそもチベットやヒマラヤなどの寒冷地に生息していただけあって、その繊維は断熱性に富み、外気温を伝えず、体温を逃しません。調べた限りでは、確かに一般的にはウールに比べて保温性が高いわけではないようですが、このソックスに関していえばキッドモヘア自体の品質もさることながら、5mmのパイル編みなどによって効率的に空気の断熱層が生成され、保温性が劣っているということはまったくありません。その保温力の高さは2月のテント内で、先ほど最厚ソックス、スマートウール マウンテニアリングとサーモヘアを一晩左右履き比べしたときに実感しました。驚いたことに、厚みで劣るサーモヘアが、これまで”最温”と考えていたマウンテニアリングにまったく引けをとらない保温力を発揮したのです!

それでいてウールと同様、吸湿性に優れたモヘアは天然の調温・調湿機能が備わっているため夏は涼しく、冬は温か。汗をかいても常に靴下の中はサラサラです。

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丈夫で長持ち、手入れも簡単

別名「ダイヤモンドファイバー」とまで呼ばれるモヘア繊維は、世界中の獣毛のなかでも最も頑丈な繊維といわれています。メーカーによると、このソックスが完成したとき、小売店からいわれた一言が、「こんなに丈夫な靴下は売れないよ!すぐに破れるような靴下を作りなさい」であったとか。確かに1ヵ月強使用した現在でも、若干毛玉が出る程度で、耐久性そのものは特に気にならず。ちなみにしばらく履いていると、踵やつま先など強い荷重がかかる部分のパイルはつぶれてきますが、本質的な劣化とは違い、保温性や通気性には特に影響ありません(問い合わせて確認もしました)。

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踵部分に見られたパイルのつぶれは、保温性・クッション性ともに問題なし。

そして何よりダウンや高級天然繊維のようなデリケートな扱いが不要なのが非常に助かります。基本的には最新のメリノウールと同様、裏返してネットに入れ、洗濯機に放り込むだけでまったく問題なし(詳しい手入れ方法はメーカーサイトに掲載されています)。Amazonのレビューの中にはこのソックスが洗濯で糸が抜けるという話がありましたが、それは製造過程で残してある「遊び毛」というもので品質とは別の話。はじめのうちは必ず出てくるもので、メーカーの指示通り処理していればそのうちなくなっていきました。

ここがイマイチ

サポート力

他のアウトドアソックスと比較した場合、安定した歩行をサポートするというテクニカルな仕様が弱いところが気になりました。現在では多くのアウトドア・ソックスメーカーが取り組んでいる、足のつま先から甲、土踏まず、踵、足首にかけての圧力やクッションをコントロールすることでよりフィット感・ホールド感を高めたりするような仕様が弱いため、よりアクティブな動きに対応してズレを少なく安定させたり、疲労を抑える等の工夫が少し足りないところは否めません。

ラインナップのなかで比較すると「ウォーカーズフィット」が最も動きに強いフィット重視の作りをしているのですが、若干細い糸でパイルも小さめに編まれているため、レギュラーのもつ肌触りと保温性が少なくなってしまうのが残念なところ。レギュラーの厚み・長さでウォーカーズフィットのフィット性を備えていれば最高です。

価格

稀少な素材ゆえの少量生産だからか、残念ながら価格はこなれているとはいえません。

まとめ:どんな活動におすすめ?

冬に最適かどうかという視点で見ると、このソックスの素材であるキッドモヘアのもつ特性はメリノウールに匹敵するどころか、むしろ超えている部分もあるくらいの素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。

まとめると、キッドモヘアの優れた点は以下の3点。

  • 優れた断熱(保温)性
  • なめらかな肌触りと快適な履き心地
  • 丈夫で簡単な手入れ

その特性が存分に活かされたのが今回のサーモヘアソックス。日常使いはもちろん、保温と通気が同時に求められる冬のアウトドアに最適で、例えばスキーやスノーボード、スノーシュー、冬山登山、冬キャンプなどのさまざまなウィンターアクティビティに上質な快適性を求める人には自信をもっておすすめできます。一方、ランニングやスピードハイクなどの極端にアクティブな活動に関してはまだ他製品に分があります。

なお、今回3つのラインナップを履き比べてみましたが、より普段使いにマッチするのがアンクルソックス、冬のアクティビティ全般にはレギュラーがよいでしょう。よりアクティブなシーンにはウォーカーズフィットがありますが、こちらはキッドモヘアの特徴がやや抑えめでなので、はじめてサーモヘアを体験するのであれば、まずはレギュラーかアンクルをおすすめします。

サーモヘアソックスの詳細情報については公式ページへ