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itoix ランニングソックス 足袋 レビュー:熱がこもらない爽快「和紙糸」ソックスで夏のアウトドアいろいろ試してみたら

足に想像以上の負荷がかかるアウトドア、とりわけトレイルランニングやスピードハイクなどの激しいアクティビティの場合、ちょっとでも合わないソックスを履いていると、あっという間に靴擦れなどの悲劇が起こります。水分でふやかされた皮膚は登山でかかる負荷に対しては悲しいほどに無力で、悲劇が起こってからそれに気づいても後の祭り。

そんななか、「和紙」由来の繊維を使ったランニングやアウトドア用のソックスがじわじわと人気を広げています。

その大きな理由は、和紙糸(あるいはその原料である「マニラ麻」)の特長である「強くて軽く、通気性・吸水速乾性・消臭性に優れる」といった点が、激しく汗をかいたり、泥やぬかるみに浸ったり、不意の降雨などでシューズ内がずぶぬれになりやすい過酷なアウトドアに適しているからだといえます。

そんな和紙糸を使ったソックスのパイオニア・ブランドのひとつ、itoixのランニングソックスのラインナップに、少し見ない間に発売されていた「足袋」モデルを今回使わせてもらう機会をいただいたきました。このソックス、ランニングはもちろん、登山他幅広いアウトドアスポーツにも活かせる特徴を多く備えており、個人的にはどこまで使えるのか、いつか試してみたかったところなので、今回は他のソックスと穿き比べたりしながらこのソックスの特長と可能性についてレビューしてみたいと思います。

itoix ランニングソックス 足袋 ショートの主な特徴

お気に入りポイント

  • 驚くほど軽くて薄い
  • 薄いのに意外と丈夫
  • 抜群の通気性・吸放湿性で熱がこもらない
  • 行動中常に、濡れている時でさえも「サラサラな」肌触り
  • 速乾性が高く乾きやすい
  • 足袋型形状で、踏み込みやすさ・ドライ感・履きやすさのバランス良し
  • 天然の消臭性

気になるポイント

  • アーチサポート、かかとクッションがない
  • ストレッチ性が低い
  • 肌触りのザラつき感
  • 生地はやや滑りやすい

主なスペックと評価

アイテム名itoix ランニングソックス 足袋 ショート
実測重量(g)27
生地・素材素材:指定外繊維(和紙)、キュプラ、ナイロン、ポリウレタン
原産国日本製
評価
重量★★★★★
快適性★★★★☆
保温性★★☆☆☆
サポート力★★☆☆☆
クッション性★★☆☆☆
通気速乾性★★★★★
耐久性★★★☆☆

★★★★★素晴らしい/★★★★よい/★★★悪くない/★★良くはない/★ちょっと厳しい

「itoix ランニングソックス 足袋 ショート」の詳細と購入について

製品の詳細についてはitoix公式サイト、またはサイト内の商品詳細ページ「ランニングソックス 足袋 ショート」をご覧ください。

詳細レビュー

重量

まず手にとって感じるのはどんなソックスにも負けないであろう「軽さ」。和紙糸の主原料であるマニラ麻は天然の多孔質構造になっており、1本1本の繊維は見た目以上に軽い。加えてitoix独自の裁断技術によってより繊細な糸によって裏が容易に透けて見えるほどの極薄生地を作り出すことが可能となり、これが他では味わえないような異次元の軽さを実現してます。

快適性・履き心地

和紙糸がメインのソックス全般に言えることですが、足を通した瞬間はいつもの靴下に比べて多少硬くザラッとした肌触りを感じます。自分のように普段からメリノウールなどの靴下に慣れていて、ソックスに温もりと柔らかく心地よい肌触りを期待していたとしたら、瞬間的にはかなり期待はずれに思ってしまうかもしれません(ポリエステルやナイロンなどの化繊と比較すればそこまで気にならないかも知れませんが)。

ただ縫い目は非常にスムーズで、ゴロつきのような違和感はまったくなく、伸縮性はあまりないもののフィット感は良好です。夏の暑さで汗をかいてくると、当初感じていた肌触りのザラつきは逆にサラサラ触感として心地よくなってきます。

五本指よりも、ラウンドよりも、「足袋型」はやっぱりお気に入り

今回チョイスしたのはラインナップの中でも最も新しい「足袋型」です。

元々和紙糸ソックスの心地よさをMAXで感じられるのは五本指型といわれていました。それは指が自由になることで足本来の可動域と踏み込み力を発揮しやすくし、また指間までを生地でカバーすることで蒸れを最小限にするとともに、最高のドライ感を感じることができるようになるからです。

その意味でこの足袋型は確かに五本指型に比べれば蒸れを感じる可能性は高い、またラウンド型に比べても親指のあたりなどが履きにくくはなるのですが、それよりも「五本指同様踏み込みの力が入りやすく、ラウンド型とほとんど同じように簡単に履ける」という、双方のいいところどりできるという、弱点を補って余りあるメリットがあるのも事実。好みもありますが、個人的な好みでは足袋型がアウトドア用ソックスとして最もバランスがよいので、この形が選べるソックスは必ずといっていいほどそれを選ぶくらい気に入っています。

天然の消臭機能

他に気に入った点として特筆したかったのは、汗をかきやすい活動や蒸れやすく濡れやすい状況でたくさん使ったにもかかわらず、臭いが出にくいということです。これはマニラ麻の優れた吸放湿・速乾性によってムレの留まりを抑制するという「天然の消臭機能」によるところが大きく、実際に第三者機関での試験でも、足の臭いの原因物質である「イソ吉草酸ガス」の臭いが大きく減少することが証明されています。

通気速乾性・サラサラ感・グリップ・サポート・クッション ~実際に走ってみたら~

抜群の通気性と水抜けの良さ。どんなに濡れてもサラサラドライ感をキープ

今回テストでは通常の街ラン、雨の日のトレイルラン、日帰りのファストハイキング、そして極めつけは沢登りというかなり多彩なシチュエーションで履いてみました。そこであらためて実感されたのは、和紙糸のソックスの最大の魅力である「飛び抜けたドライ(蒸れにくく乾きやすく、肌面に水分を留まらせない)性能」にあります。

まず夏の晴れた日の乾いた路面で走って(歩いて)みます。

この時点でもう、おそらく誰もが他のソックスと比べて何となく「熱がこもらない・涼しい」と感じることができるはずです。とにかくこのソックスは熱の居場所がない。薄くて目の粗い生地は通気性抜群であるだけでなく、かいた汗による蒸れをため込むこともないため、靴下はすぐに乾いてくれます。この爽やかさは夏にぴったりです。

次に試したのは、できる限り蒸れやすい状況です。雨の中ぬかるんだ道を靴中が濡れながら走る、沢登りなど基本的に濡れているシーンで履いてみました。

前提として、靴下の中が蒸れると不潔であるだけでなく、肌がふやけて弱くなり、靴擦れやマメなどの危険性が高まります。最悪の場合、ふやけた皮膚がベロッとはがれ、真皮が丸出しになるというおぞましい事態にもなりかねません。それを防ぐためにはひたすら靴下に水分を溜めない、もっというと肌面に水分を溜めないようにすることが重要です。

itoixの靴下の主原料である「マニラ麻」が天然の多孔質構造であることは先ほど話しましたが、この構造の利点は決して軽さだけではありません。繊維の1本1本に空いている無数の穴は汗などの水分を素早く吸収する一方、その水分は繊維内に溜めず圧力を加えれば容易に外へと押し出される仕組み。このため行動していれば水分は自然と外に排出され、結果として生地は抜群に蒸れにくく乾きやすいという理屈です。

その威力を実感したのは、特に深い考えもなく履いてみた沢登りでのテストでした。

自分は沢登りではいつもネオプレン(いわゆるウェットスーツの素材)製のソックスを肌に直に履いているのですが、このソックスはいわゆるゴムですから、防水・保温性に優れている一方、空気も外に逃げないため基本ソックスの中は蒸れ蒸れ(実際には行動中の足はほぼ常に水の中に浸かっているので蒸れを感じるというよりも「濡れている」という状態)。おかげで活動後の肌はかなりグジュグジュにふやけてしまうのが常でした。当然沢を詰め上げた後なんてもう靴下の中は蒸れMAXでかなり危険な状態です。

ところが今回このitoixをインナーとして履いてみたところ、いつも感じる肌面の濡れによる不快感が、和紙糸ソックスが挟まることでとてもサラサラ肌触りで心地よく感じられました。また驚いたことに、履いている時のソックス内は常にズブ濡れ状態だったにもかかわらず、ゴールについてソックスを脱いだ際、いつもよりも足がふやけていない気がしました。ソックスよりも上のすね周り部分は沢の水やら汗やらでベトベト、一方ソックスを履いている足首より下は、水分が肌面にとどまらずサラサラとした肌触りが続いていて、和紙糸効果がはっきりと感じられます。

「サポート機能は一切なし」は個人的にちょっと物足りない

一方で行動してみて気になる点がなかったわけでもありません。このソックスは靴と肌との間での湿度管理としては十分すぎるほど機能してくれますが、歩行時の安定性向上、疲労軽減という側面に関してはまったくといっていいほどサポートがありません。そこに関しては(激しめのアクティビティで使用するという想定からしても)ちょっと物足りなさを感じてしまいます。

itoixのソックスはポリシーとしてアーチサポートやかかと・つま先周りの厚めのクッションといったサポート機能を付けていません。その理由はとあるインタビューによると「サポート機能をつけるよりも軽さと吸水速乾性という和紙の機能を最大限に発揮させることにフォーカスしている」ということらしい。そうしたポリシーの尖ったソックスがあってもよいとは思いますが、個人的にはぜひ「サポートあり」のモデルも作って欲しいところです。

特に土踏まず部分を引き上げる効果のある「アーチサポート機能」は快適な履き心地と歩行時の足の働きをサポートしてくれる、ビギナーはもちろん自分のようそこそこたくさん遊ぶアマチュアの人々にとってもメリットがある機能です。「サポート機能に頼らなくても済むように足を鍛えればいい」といいたい気持ちも分からなくはないですが、地面からの衝撃を和らげ、長時間運動による負担を軽減させるという「効果」自体は決して鍛え上げられたアスリートにとっても不要なわけではないはず。

まとめ:こんな人におすすめ

和紙糸を取り入れたソックスはここ数年で増えてきましたが、その先駆けでもあるitoixのランニングソックスは、それら後発モデルと比べて和紙の特長・機能性を最大限に引き出すことにフォーカスしているソックスであることが試してみてよく感じられました。可能な限りどこまでも薄手軽量にすることに注力されたこのモデルは、通気速乾性と肌面のドライ性能に関しては他のどのメーカーのモデルよりもはっきりと強く感じられた気がします。

ここから考えられる最適な使用シーンとしては、まずかなり過酷で長時間にわたるウェット状況を相手にする必要に迫られた長距離レースなど。あるいは足慣れた人が限界近くまで行動する本気のシーン、心地よさよりも安全性(=ドライ)を優先したい場合などでしょうか。なるべくサポートがあった方がありがたい(歩きやすい)という山歩き・走りを始めたばかりの人は、ここまでドライにこだわらなくとも、もう少し快適性・サポート性とのバランスのとれたモデルが良いかもしれません。

ちなみに個人的には薄くて軽くて、濡れに強いというのは沢登りのインナーソックスとしてかなりアリだなと思いました。その際はネオプレン製ソックスの保温性・防水性・耐久性、そしてitoixソックスのドライ感によって、水温から足を守りつつ、素足はサラサラ触感を保つという、これまでより一段快適な使い方ができるようになる気がしています。

まだまだ暑い夏は終わりません。暑さに対応したスマートな装備で、安全で楽しい夏山を。