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【今年イチおすすめのワークマン】メリノテック アクティブインサレーション レビュー:「メリノウール×グラフェン」が開いた、暖かくて蒸れにくい新しい秋冬向け行動着の世界(Outdoor Gearzine開発協力)

ここ数年、ワークマンでの「本気で山に使える」登山ウェア開発に口出しだけさせてもらっていますが、この秋冬シーズンはなんと「アクティブインサレーション」です。

凍える寒さの中で大量の汗をかきながら行動する秋冬登山での行動着は「止まっているときは暖かく、動いているときは涼しく」が理想。従来までの薄手フリースでは止まると寒いし、ダウンジャケットでは動くと暑すぎるわけで、それらを1着で解決するという複雑な要求に応えるために作られた「アクティブインサレーション」は、登山ウェアの中でも特に高度な機能性が求められる製品といえます。それをワークマンが手掛ける日が来るとは。

思えばワークマンと関わり始めてからはや9年。ちょうどワークマンのアウトドア・ライン「FieldCore」がスタートした2016年ですが、その時にレビューしたインサレーションジャケットが何とも素朴で正直微妙な作りだったことを思うと、感慨もひとしおです。

そんなワークマンが手掛けた新作「メリノテック アクティブインサレーション」は、ネーミングにあるようにメリノウールが採用されているだけでなく、さらにここ数年話題を呼んでいる先端素材の「グラフェン」を組み合わせて作られた独自素材による異色作。この春プロトタイプから実際のフィールドで使ってきましたので、さっそくレビューしたいと思います。

なおいつものように、製品開発に関してOutdoor Gearzineは企画段階での口出しという名の協力以外、具体的な仕様については何も関与しておりません。またレビューで着用したアイテムはメーカーより提供していただいていること、レビューの内容についてメーカー要望での修正は行っていないということをはじめに書き添えておきます。

ワークマン メリノテック アクティブインサレーションの主な特徴

ワークマン メリノテック アクティブインサレーションは、寒い季節でストップ&ゴーを繰り返す登山などアクティブなシーンでの行動着としてベースレイヤーの上に着用するのに最適な、保温性と通気性、動きやすさを兼ね備えたミッドレイヤー(中間着)。メインの生地には天然の調温・調湿性を備えた高品質エクストラファインメリノと、優れた耐久性と熱伝導性による保温・クーリング効果を兼ね備えたグラフェンを混ぜ込んだポリエステル繊維、ハイキックバックで動きやすさとスタイルを両立したポリウレタンとをミックスした独自素材によって、保温・吸放湿・通気・ストレッチ・抗菌防臭・UVカット機能をバランスよく実現。裏地は微起毛で着用してすぐにぬくもりを感じられる快適な着心地。衿はやや高めに、背面は腰までカバーする長めの丈、袖口にはサムホールを配置するなど厳しい環境での着用を隅々まで配慮。ジッパーポケットは左右ハンドウォーマーポケットの他、ザックを背負っているときでも出し入れしやすいチェストポケットもあり、行動中の使い勝手を考えた配置に。

頭の形にフィットするバラクラバスタイルのフード付きジャケットから、フード無し、ベスト、プルオーバー、クライミングパンツ、ネックウォーマー、バラクラバ、インナーグローブと、秋冬のアウトドアやウィンターレジャーをはじめ、用途や好みに合わせて幅広いシーンにマッチするラインナップが用意されています。

※以下の内容は、特に明示していない限りラインナップ中の「フーディー」タイプについてのレビューです。

メリノテック アクティブインサレーションはフーディー・スタンドカラージャケットからパンツ・バラクラバ・グローブまで幅広いラインナップをそろえている。

お気に入りポイント

  • メリノウールとグラフェンによる保温性と調温性・吸放湿性の良バランス
  • 裏起毛の心地よい肌触りと立体裁断による着心地の良さ
  • 型崩れが少なく動きやすい優れた伸縮性
  • 十分なポケット、後ろが長めの裾、サムホール付きの袖などの登山向けとして十分なディテール
  • 圧倒的な低価格
  • アクセサリ類含めたバリエーションの幅広さ

気になるポイント

  • 重量はそこまで軽くはない
  • 裏地の縫い目のゴロつきが気になる

主なスペックと評価

項目ワークマン メリノテック アクティブインサレーション フーディー
重量430g (Lサイズ実測)
カラーカーキ/ブラック/オレンジ
サイズM / L / LL / 3L
生地
  • 本体:ポリエステル75%・ウール23%・ポリウレタン2%(別布部分:ポリエステル100%)
機能
  • フロントファスナー引手にホイッスル付き
  • 袖口サムホール
  • フーディ・スタンドカラーを切り替えられるフック付きフード
  • 再帰反射プリント
ポケット
  • 左右ジップハンドウォーマーポケット
  • 左胸ジップポケット
参考価格(税込)2,900円
Outdoor Gearzine評価
快適性★★★★☆
保温性★★★★☆
動きやすさ★★★★★
ムレにくさ★★★★☆
機能性★★★★☆
重量★★★☆☆
コストパフォーマンス★★★★★★
適したシーン
  • 寒さが本格的になってきた時期の登山・スキーなど、幅広いアウトドアでの行動着
  • やや肌寒い時期のアウトドアでの防寒着

フィールドで実際に使用した詳細レビュー

着心地・動きやすさ:裏起毛でふんわり心地よい肌触りにストレッチ抜群の動きやすいニット

このジャケット、名前こそワークマンらしく長くてイカついのですが、着心地は本当に優しい。

ふかふかに起毛した裏地は肌触りなめらかで、着た瞬間から暖かい。まるで毛布につつまれているような、まろやかで快適な着心地です。

生地自体の柔らかさに加えて自然な動きやすさを妨げない立体的なパターン、さらにはシルエットをキープしつつツッパリ感を抑えるキックバックの強い抜群のストレッチによって、行動中に違和感を感じることはまずありませんでした。

ジャケットの背面裾は腰をカバーするように少し長め。袖・裾はストレッチ素材のパイピング仕様で、優しくフィットしながら冷気の侵入を防いでくれます。ゆったりでもなくスリムでもない、身体のラインが出る程度のスタンダードなフィット感、袖口は特にサムホール仕様で、中間着としてのレイヤリングしやすさも問題ありません。この辺はしっかりと山での着用を踏まえて作られており、価格帯からは考えられないほど丁寧に作られています(下写真)。

ただ一方強いて言えば、さすがに縫製までは最高品質というわけにはいかず、裏地の縫い目には凸凹が目立ち、多少のゴロつきは否めません。ハイエンドな専門ブランドのジャケットであれば動きや不快感を最小限にするため、縫い目の凸凹にまで細心の配慮がなされているものですが、このジャケットにそこまで望むのは欲張りというもの。

また重量も実測値で366g(Lサイズ)と、保温ジャケットとして考えると許容範囲ではありますが、いわゆるハイエンドなアクティブインサレーションと比べるとそこまで軽くはありません。

パフォーマンス:快適天然繊維のメリノウールをハイテクアクティブインサレーションへと進化させた「グラフェン」の威力

メリノテック アクティブインサレーションは、その名前の通り、単なる防寒ジャケットではなく、寒冷でアクティブな状況で活きることをコンセプトにデザインされており、その狙いが最も強く表れているのはもちろん、このシリーズに採用されている生地にあります。このジャケットのために作られた「MERINO TECH(メリノテック)」は、高品質なメリノウール(エクストラファインメリノ)と、新しい高機能素材グラフェンが混ぜられたポリエステルを組み合わせた生地。

まずメリノウールといえば、今や誰もが知っているであろう天然の高機能繊維。高品質なメリノウールはしなやかで心地よい肌触りに加え、適度な保温性と天然の調温・調湿・抗菌防臭機能をバランスよく備えています。ただその一方で、激しい発汗時に対応する素早い熱の放出や速乾性は得意とは言えず。このためメリノウールで作った中間着があったとしても、それだけでは必ずしも「アクティブ」な「インサレーション」と言うには不十分。

そこで、このジャケットではメリノウールにグラフェンの入ったポリエステルを混紡します。「奇跡の新素材」なんて言われることもあるグラフェンは、繊維のなかで最も強く、最も薄く、柔軟な素材のひとつといわれており、その強度は鋼鉄の 200 倍。それでいて軽くて薄くて柔らかい。防菌防臭機能も、UV耐性もある。電気伝導性が高いので静電気も起こりにくい。

しかし何より最も注目すべき特徴は「非常に熱伝導性に優れている」ということです。平たくいうと熱を伝えやすいってことで、これは体の熱を早く全体に行き渡らせるのにも、逆に効率的に拡散するにも都合がいい。というわけでこれによって低温時には保温、高温時にはクーリング効果が得られるという理屈です。

つまりメリノウールの適度な保温・調温・調湿機能とグラフェンの熱伝導効果が組み合わさることで、止まっているときは衣服内を暖め、そして激しく動いているときには熱を放出するように働いてくれるわけです。

グラフェンについては、アウトドアブランドではティートンブロスがいち早くこのグラフェンを取り入れた製品を開発しており、もちろん自分も発売と同時に飛びついて使っていたので、実はその可能性については以前からひそかに感じていたところでした。

本格的な冬でも対応できる保温性の高さ。なのに汗をかくほど暑くなったら自然にクールダウン

では実際のパフォーマンスはどうなのか。他の競合アクティブインサレーションジャケットと比較してどんな感じなのか。そこで15℃から5℃くらいまでの日中に登山で主にベースレイヤーの上に着るアウターとして着用してみました。

まず袖を通した瞬間から、思った以上にしっかりと暖かいことに気づきます。メリノウールとグラフェンによる高い保温性の生地が、さらに裏起毛で肌と服の間に暖められた空気がしっかりと膜を作り、また生地厚も決して薄手とは言えない程度の肉厚さがあり、これは厳冬期でも行動着としてちょうどいいくらいの保温力です。逆に言うとこのジャケットの最適な季節はやや秋が深まったころから真冬、そして残雪期といった寒さが本格的な時期になるように感じました。ちょっと肌寒いくらいの15℃あたりだと人によっては暑すぎるかもしれません。

また、いわゆる「Polartec Alpha」や「OCTA」「Primaloft Evolve」といったアクティブインサレーションの代表生地と比べると、「通気性」もあそこまでビュンビュンに空気を通すわけでもありません。このため高負荷のハイテンポなアクティビティにとってはもっと通気性高くして欲しいという人もいるかもしれません。ただゆっくり歩く登山にとってはちょうど良い通気感で、これらのアクティビティでは逆にそこまで通気性高くない方がありがたかったりもするので、これは良し悪しかと。感覚的には使用感はフリースに近く、その意味ではあえて例えるならば「進化版フリースジャケット」でしょうか。生地感だけのイメージとしてはパタゴニアのR1サーマルのような、そんな感じです。

ただ、これでは暑すぎて行動着としては着られないかというと、そこからがメリノテックの本領発揮です。この時はテストでもっとも寒い日だった5~10℃での稜線歩きでしたが、確かに単なる厚手のメリノウールや中綿ジャケットでは暑すぎて脱ぎたくなるレベルの運動をしてもそこまでオーバーヒートせず、また逆にアウターとして着ていても汗冷えするという感覚もない。もちろん限度はありますが、衣服内をちょうどいい一定の温度・湿度に保つように作用してくれ、アクティブインサレーションに必要な「行動中ずっと着ていられる」という狙いは確実に機能していました。少し暑くなったときにはフロントのジッパーを開け閉めして調節できますし、寒くなったときにはフードをかぶって上までジッパーを締めれば、高めの衿が冷気を防いでくれます。もちろんこれはテストで一番寒かったシーンでの話ですので、やや寒いくらいの状況であったら感想は違っていたかもしれません。いずれにせよちょうどこれからの季節、冬の寒さが際立ってくるときの行動着としては普通に合格点の快適さであることは実感できたことは確かです。

ポケットや袖裾など登山を想定した隙のない作り

ポケットの配置も、登山愛好家からみて不自然なところはまったくなく、左右ハンドウォーマーポケットとチェストジップポケットという必要十分な3つのポケットで不満はまったくありません。

またおもしろいのはこのシリーズのロンTモデルにも、腹横にシークレットジップポケットが付いていることです。「ポケット無しなんてありえない」というワーク系メーカーの意地を感じます(下写真)。

適度に高めの衿と、頭の形に合わせたフードは伸縮性がありヘルメットの下に被れるようなサイズ感ですが、もう少しフィッティング性が高ければ、またジッパーの先端にチンガード的なフラップがあればとか細かい部分では突っ込みどころがあるものの、おおむね寒さ対策として不満のない作りにになっています。

ちなみにこのフードは丸めて留めると衿のように畳むことができるので、好みのスタイルが選べるようになっています。

全部揃えても無駄にならない豊富なラインナップ、全部揃えても財布が痛まない嬉しい価格

最後にありがたいのは、このシリーズの豊富なラインナップの幅広さです。レビューでは主にフーディータイプについて言及してきましたが、たとえばもう少し気温の高い季節に合わせるなら、身体のカバーする範囲がより少ないスタンドカラーのタイプやベストタイプもおすすめです(下写真)。生地の厚みはどれも同じです。

クライミングパンツのパターンで、この生地を使ったパンツも用意されています。こちらはトレッキングパンツとしても使えるし、スキーなど雪山でのインナーパンツとしても、また就寝時の保温パンツとしても優秀です(下写真)。

また今回は試せていませんが、暖めやすく蒸れにくいこの生地で作ったネックウォーマーやバラクラバ、グローブなんて確実に使えるに決まっているので、このレビューの後実店舗に行ってゲットしてくる予定です。

まとめ:どう考えてもようやりすぎているコストパフォーマンスの高さ。これからの冬に向けて1着は持っておきたいアクティブミッドレイヤー

冬の寒さを防ぎつつも動き始めたら温めすぎず、冷やしすぎず適度に衣服内の体温を調節してくれる複雑な機能を備えながら、3,000円を切る価格を実現した「ワークマン メリノテック アクティブインサレーション フーディー」は、秋の高山から、冬の低山、厳冬期の登山やスキーなど、低温下でのアクティブな幅広いアウトドア・レジャーで、ベースレイヤーとシェルの間に着用すれば、一日中脱ぎ着せずに快適さをキープしてくれるに違いありません。昨年に開発協力した「プレミアム超撥水ソフトシェルトレックフーディ」に引き続き、この一着も間違いなくガチの山屋さんたちにも気に入ってもらえる、高いパフォーマンスと納得のコストを両立した良いものになっていると自信をもって言えます。

もちろん、縫製の質や各パーツの細かなあしらいなど、粗を探そうと思えばゼロではありませんが、この価格帯で考えればまったく気になるレベルではありません。ここ最近のワークマンを見ていると、それほどまでに完成度がますます高まっていることがはっきりと感じられます。

ラインナップはさまざま。厳冬期の登山用に、キャンプなどでのちょっとした防寒着に、そして日常での作業着にと、さまざまなシーンに合うモデルが必ず一着はあると思います。興味が出てきた方は、ぜひお店でチェックしてみてはいかがでしょう。

「メリノテック アクティブインサレーション」の詳細と購入について

9月以降、店頭等では順次発売されているようですが、製品の詳細については公式通販サイト等をご確認ください。