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【俺たちのワークマンが帰ってきた】PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツ レビュー:高パフォーマンスと低価格で久々に度肝を抜かれた本格派ソフトシェル(の開発協力をした話)

「ワークマンは登山でも”使える”んじゃないか?」――そんな記事をこのサイトで初めて掲載したのが2016年。その頃のワークマンなんて知る人ぞ知るブランドであったにもかかわらず、当時あまりの反響の大きさには本当にびっくりさせられました。そこからはあれよあれよという間に人気が爆発。今やワークマンは登山やキャンプをはじめとしたアウトドアはもちろん、バイク、ゴルフ、エクササイズ、普段着など幅広いフィールドに広がっています。

さてそんなワークマンからある日、登山向けのソフトシェルの開発に協力して欲しいといった趣旨の話がありました。

詳しく聞いてみると、これから「本気で山に使える」ワークマンの登山ウェアを作るのだという意気込みをヒシヒシと感じ、喜んで協力することに。

そこでまず僕はソフトシェルで重視している機能や要素について、これまでの知識や経験から感じてきたことをありったけ詰め込んで書き伝えました。動きやすさから防風性、通気性、速乾性、撥水性、耐摩耗性、重量、 etc…今思ってもかなり欲張りな要望を出したと思っていたのですが、すぐに「分かった」との返答が。すべて盛り込むという意味かどうかは分かりませんでしたが、とにかくあの意気込みは決してポーズではなかったことだけは感じられました。

そこからいくつかの機能についてあれこれと議論を交わしてしばらくすると、ワークマンからついにプロトタイプが届きます。袖を通してみた瞬間、久々にガツンとやられました。それはかつて僕が初めてワークマンの「AEROSTRETCH クライミングパンツ(春夏版)」を穿いた時に感じた、あの新鮮な驚きに似ています。自分のなかで正直やや遠ざかっていたワークマンが、また始まった気がしました——。

今回はそんな衝撃を新たにしたワークマンの最新ソフトシェル「PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツ」について、製品を実際にフィールドで使ってみてのレビューを書いてみます。

なお、製品開発に関してOutdoor Gearzineは企画段階での協力以降、具体的な仕様については何も関与しておりません。またレビューで着用したアイテムはメーカーより提供していただいていること、レビューの内容についてメーカー要望での修正は行っていないということをはじめに書き添えておきます。

この秋新登場のPREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツを本格登山で実際にテスト。十分すぎるほど活躍してくれた。

ワークマン PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツの主な特徴

ワークマン PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツは、本格的なアウトドアにも耐え得る高い機能性を備えながら驚きの価格を実現した、アウトドア向けソフトシェル。動きやすさと防風性・耐摩耗性・UV耐性を備えた二重織りのストレッチナイロン生地は、撥水剤メーカーと共同で開発した独自の撥水技術によって、ちょっとした雨も安心の超撥水性と高い洗濯耐久性を実現。高めの衿と袖口のストレッチインナーカフは外からの冷気をシャットアウト。左右の上下にそれぞれ2つずつ、計4つのベンチレーションジッパーポケットは行動中の使い勝手を考えた配置で、裏地メッシュによって高い換気性も備えます。暑いときにフロントジッパーを全開しても、胸のスナップボタンによってバタつきを防きます。

一方パンツではフロントダブルボタンとベルクロで幅広い体型にしっかりフィットするウエスト、クリーンな外観ながら大容量のポケットが計6つ、調節できる裾幅、靴紐に掛けてずり上がり防止できるフックなど、細かい点までフィールドでの使い勝手が考慮されています。秋冬の行動時アウターとして、あるいは寒い季節や悪天時のミッドレイヤーとして、年間を通して幅広い山岳シーンに対応する1着です。

おすすめポイント

  • 立体裁断とストレッチ性による抜群の動きやすさ
  • 撥水性・防風性・耐摩耗性などの全体的なプロテクションの高さ
  • バックパックと干渉しないジッパーチェストポケットなど便利で豊富なポケット
  • 裏地メッシュのポケットや胸のフロントスナップボタンなど、熱気や蒸れを逃しやすい作り
  • 細身でもしっかりフィットする調節幅の広いウエスト(パンツ)
  • ローカット・ミッドカットシューズに対応する幅調節可能な裾(パンツ)
  • 圧倒的な低価格

気になったポイント

  • 左右ポケットのジッパーの引手が小さすぎて扱いにくい(自前でジッパープルを追加すれば解決)
  • フードの調節は若干ルーズ(特に後頭部の弛み調節ベルクロがあればよい)
  • 裏地の縫い目の肌触り、ゴロつきがやや気になる(特にパンツ)

主なスペックと評価

項目PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディPREMIUM超撥水ソフトシェルトレックパンツ
重量430g (Lサイズ実測)396g (Lサイズ実測)
カラーオーロラブルー/コールブラック/ハニーゴールドオークブラウン/コールブラック
サイズM / L / LL / 3L ※コールブラックのみSありS / M / L / LL / 3L ※コールブラックのみ4Lあり
生地
  • 二重織りストレッチナイロン(本体:ナイロン90%・ポリウレタン10%)(ジャケットリブ部分:ポリエステル・ポリウレタン10%)
  • 生地耐水圧1,000~2,000mm
  • 透湿度25000g/m2/24h
  • 摩擦耐久性(マーチンデール法最高基準100万回クリア)
  • 防風性(フラジール法通気度3.0以下)
  • UPF50+
  • 耐久撥水(洗濯耐久性100回洗濯後撥水度3級)
  • 防汚・撥油性
  • 抗菌仕様
機能
  • 防風二重袖
  • ロールアップフード
  • フードアジャスター
  • フロントジップホイッスル
  • フロントスナップボタン
  • ポケッタブル
  • 再帰反射プリント
  • フロントダブルボタン
  • ベルクロサイドアジャスター付きのウエスト
  • 裾調節アジャスター
  • シューズフック
  • 裾ドローコード
  • 再帰反射プリント
ポケット・左右ジップハンドポケット(内側メッシュ)
・左右胸ジップポケット(内側メッシュ)
・左右ハンドポケット(内側メッシュ)
・左右太腿ジップポケット(内側メッシュ)
参考価格(税込)2,900円2,900円
Outdoor Gearzine評価
快適性★★★☆☆★★★☆☆
動きやすさ★★★★☆★★★★★
対候性(風・雨への強さ)★★★★★★★★★★
機能性★★★★☆★★★☆☆
重量★★★☆☆★★★☆☆
コストパフォーマンス★★★★★★★★★★★★

詳細レビュー

立体裁断とストレッチ性による抜群の動きやすさ

適切な立体裁断とストレッチ性によって、十分な動きやすさを感じられた。

このジャケット・パンツでまず印象に残ったは、生地自体の柔らかさに加えて身体の動きを妨げないようにしっかりと計算された立体裁断と適度なストレッチ性による無駄のない動きやすさと着心地の良さでした。

生地自体はとてもしなやかで、擦れによるシャカシャカ音もなし。ゆったりでもなくスリムでもない、身体のラインに沿ったちょうどよいフィット感で、実際の動きの中での着心地の良さ、そして重ね着も問題ないほどのゆとりが配慮されているようです。ジャケットのお尻が隠れるように背面の裾が少し長めに作られているのは、よくアウトドア仕様を考えられており、かがんだり動いたりしても裾が捲れにくくなっています(下写真)。

パンツの方も同様で、太すぎず、やや細めのすっきりとしたストレートシルエットながら、膝や股の部分は立体的なパターンにデザインされているため大きな動きの中でもツッパリ感をほとんど感じません。

生地の立体裁断と適度な伸縮性によって、膝を大きく曲げても違和感なし。

険しい鎖場でも足場に集中して行動できた。

重量は実測値で378g(Mサイズ)と、ソフトシェルとしてはそこまで軽くはないですが、気になるほどの重さではまったくなく、許容範囲です。

撥水性・防風性・耐摩耗性などの全体的なプロテクションの高さ

次に生地自体の耐候性(風・雨への強さ)や堅牢性、その他機能性ですが、これがまた驚きです。

ソフトシェルである以上風を防いでくれるのは当然なのですが、同時に空気の通りは妨げないので、衣服内の蒸れをしっかりと外に逃してくれます(ちなみに透湿度は25000g/m2/24h)。

生地は極端に薄手軽量ではないので、適度な保温性を備えているといえます。イメージとしては秋冬の寒い時期の行動中にベースレイヤーの上に羽織るのが丁度良いくらいの暖かさ。気温の高い時期に低山で着るのはさすがに少し暑すぎるかもしれませんが、8月の3,000mクラスの山岳で試してみた限りでは、夏でもアルプス等の縦走なら肌寒い朝夕や稜線上の冷たい風にはちょうどよいです。

アルプスなどの高山は7月でも朝夕は肌寒い。そんな時このようなソフトシェルは非常に役に立つ。

また製品の名前にも冠しているくらいの「撥水性」にいたっては、セメントのようなドロドロした液体ですらはじくほど強力。おまけに「洗濯耐久性100回洗濯後撥水度3級」というほど長持ちする独自開発の超撥水加工です。生地自体の耐水圧も1,000~2,000mmあるため、不意の少々の雨や雪ならびくともしません。

生地表面に施されたDWR(耐久撥水加工)は、強力に水を弾くだけでなく、防汚・撥油性もあり、しかも洗濯にも強い。

水濡れが前提となる沢登りでもジャケットとして役立ってくれた。

さらに抗菌仕様でUPF50+とUV対策もばっちり。高山や雪山での使用でも安心です。

バックパックと干渉しないジッパーチェストポケットなどの便利で豊富なポケット

左右の脇腹・胸の位置に2つずつジッパーポケットで収納性は抜群。

ポケットの配置も少し工夫されていて、いつもの左右ジッパーハンドポケットの上にも1つずつジッパーポケットが配置されて計4つのポケットが前面に付いています。

アウトドア用のソフトシェルジャケットでは、左胸にジッパーポケットが付いていたり、アルパイン用のハードシェルなどでもっと中央位置に2つ付いていたりするのはよく見ますが、胸のこの位置に(しかもそこそこの大きさで)備わっているのもなかなか便利です。おまけにこのポケットの位置と角度は、バックパックを背負っていてもショルダーハーネスが入口と干渉しないため、背負った状態でもアイテムの出し入れが可能と、しっかり山での利便性を考えて作られています(下写真)。

バックパックのショルダーハーネスとちょうど干渉しない位置(点線囲み部分)にジッパーの出入り口。

ただ、ポケットのジッパーの引手が通常のタブのみでなので、例えばグローブをしながらでは小さすぎて扱いにくいのが気になりました。自分の場合はより使いやすくするために自前でジッパータブなどを取り付けています(下写真)。

購入時点ではジッパーのタブは何も付いていない(写真左)ので掴みにくい。自前でジッパープルなどを取り付けるとグローブをしていても掴みやすくなる。

ポケットは裏地がメッシュ仕様となっているので、ファスナーを開けておけば衣服内の空気を効果的に排出するベンチレーションの役割も果たしてくれます。また換気性の高さでいうと、フロントの胸部分にはスナップボタンが付いており、ジッパーを全開にしてもここを締めれば衣服がバタつかず換気性を最大限に高めることができます(下写真)。

胸位置に取り付けられたスナップボタンはフロントジッパーを全開しても風でバタつきにくくなるので便利。

さらに左の内側についたポケットは、うらがえしながら全体を収納できるパッカブル仕様となっているためコンパクトに畳むことができ、携帯性も高まります(下写真)。

内側に取り付けられた内ポケット(左)に全体を裏返して丸めて収納可能なパッカブル仕様。

フロントジッパーに取り付けられたタブは、万が一の時に存在を知らせたりできるホイッスルにもなります(下写真)。

エマージェンシーホイッスルにもなるフロントジッパー。

袖先の甲部分が長めで冷え対策になっているだけでなく、内側にはストレッチ生地のインナーカフが付いていることで秋冬の厳しい冷気もシャットアウトしてくれています(下写真)。やはり気温の高い時期には少し暑すぎるかも。

甲まで覆うデザイン(左)と、インナーストレッチカフ(右)がついてより冷気を防ぎやすい仕様になっている袖口。

風を防ぐ高めの衿と、両サイドに絞りの付いたフードも、フィッティングと寒さ対策をしっかりと考えられた作りになっています。ただフィット感という意味ではややルーズで、頭が小さい人はツバがやや前に垂れてきます。キャップをかぶれば問題ないですが、後頭部に頭の大きさを調節するベルクロかドローコードがついていればよりフィットしたでしょう。

首元のドローコードでサイズ調節可能なフード。概ねフィット感は良好ながら、ツバ部分が柔らかくて前に被さってきやすいのが玉に瑕。

ちなみにこのフードは丸めて留めると衿のように畳むことができるので、好みのスタイルが選べるようになっています。

細身でもしっかりフィットする調節幅の広いウエスト(パンツ)

ここまでジャケットについてのディテールを見てきましたが、パンツについても価格の割には非常に細部までよく突き詰められた仕様に感心しきりです。

例えばウエスト。ベルトループはありませんが、代わりに左右についたベルクロで幅を調節できます。この調節幅がかなり広く、自分のような痩せ型でウエストが細いひとから、太めの人まで幅広い体型でバランスよくフィットさせることができました(下写真)。

調節幅が広く、粘着力も強めなベルクロで非常に使い勝手が良かったウエスト調節機能。

深めのライズにフロントはダブルボタンでしっかりと留めることができます(下写真)。

ローカット・ミッドカットシューズに対応する幅調節可能な裾

裾にはジッパーが備え付けられ、絞ったり広げたりできるため、ローカットシューズからミッドカットのハイキングブーツまでさまざまな登山靴に対応。しかもドローコードで裾を絞れますので、足首のフィットやシルエットを変えたりすることも可能です(下写真)。

スッキリとした裾に絞ることも(左)広げてブーツ全体をカバーするように調節できる(右)裾。ドローコードで口を絞ることも可能。

しかも前方にはフックが付いており、シューズの紐に引っ掛ければずり上がりも防ぎ、ゲイター的に外からの小石や砂利などの侵入を防ぎやすくなります(下写真)。

甲部分に固定するフックがあることで、裾のずり上がりを防いでゲイター的に小石や砂の侵入を防ぎやすくなる。

ワークマンらしくポケットはやはり潤沢に備わっています。前方には上からアクセスできるポケットとサイドからアクセスできるジッパーポケットが配置され、深さもあってかなり多くのものが入ります(下写真)。また後部にも2つのポケットがあり、数的には申し分ありません。

見た目はスッキリだが、左右共に上から出し入れするハンドポケット(左)と、横から出し入れするジッパーカーゴポケット(右)が付いて収納は豊富。

まとめ:価格からは考えられないほど高パフォーマンスを実感できる、登山にもってこいの秋冬行動用ジャケット&パンツ

ソフトシェルに求められるベーシックな機能はすべて及第点以上の性能をもち、さらに驚きの撥水性と3,000円を切る仰天価格までも実現した「PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツ」は、春秋の登山、冬の低山、夏の高山など、気温の高すぎない環境でのアウトドアでなら年間通して幅広い用途で問題なく活躍してくれるに違いありません。

これまでの数年、個人的にはアウトドアといってもどちらかというとキャンプよりのライトなモノづくりが多かった(気がしている)ワークマンですが、この一着は間違いなくガチの山屋さんたちにも気に入ってもらえる程度に素晴らしくコストパフォーマンスの良いものになっていると、自信をもって言えます。もちろん、縫製の質や各パーツの細かなあしらい、そしてデザイン性など、山専門ブランドのハイエンドなソフトシェルには敵わないという部分もあります。ただこの価格にそれを求めるのはさすがに無理があり、この価格帯での比較という意味ではこのモデルに比肩するものはどこにも見当たらないでしょう。

山のいろんな場面でさっと羽織れる行動ジャケットをできる限りリーズナブルに手に入れたいという人にとってはうってつけの一着であることはもちろんですが、さしあたって今は間に合っているという人でも、ワードローブに一着加えておけば、きっと思わぬところで役立ってくれるかもしれません。そんな付き合い方ができる手軽さもありがたいのがワークマンです。

「PREMIUM超撥水ソフトシェルトレックフーディ&パンツ」の詳細と購入について

9月以降、店頭等では順次発売されているようですが、製品の詳細については公式通販サイト等をご確認ください。