
透湿度「70,000g/m²/24h」の衝撃。ワークマン2025春夏新作「エックスシェルター超透放湿レインジャケット&サイドフルジップレインパンツ」レビュー:この快適さでこの価格は反則級
ここ数年のレインウェアにおける「透湿性能の進化」は目を見張るものがあります。本格アウトドアブランドからは汗をよりよく逃がしやすい高負荷アクティビティ向けの製品が次々と登場し、ひところならば十分満足であった水準は、今では当たり前か物足りないと感じるくらい、いつの間にか世の中が進んでいます。
そしてその波がついにあのワークマンにもやってきました。それが今回紹介する「エックスシェルター超透放湿レインジャケット & サイドフルジップレインパンツ」。アウトドアブランド顔負けのずば抜けた透湿性を実現した防水透湿生地を採用し、さらに細部の仕様についてはぼくもいっちょ噛みさせてもらい、あったらうれしい機能も抜かりなく搭載してもらいました。
3~4月の晴れや雨天の山歩きで着てみましたので、早速レビューしてみたいと思います。
目次
エックスシェルター超透放湿レインジャケット(トレッキングモデル)&サイドフルジップレインパンツの主な特徴
ワークマン エックスシェルター超透放湿レインジャケット&サイドフルジップレインパンツは、登山に必要な防水性を備えつつ抜群の蒸れにくさを実現した、日本の不快な夏での快適性にフォーカスしたレインウェア。透湿度70,000g/m2/24hの2レイヤー生地と50,000g/m2/24hの3レイヤー生地を組み合わせ、さらに脇下には換気性を高めるベンチレーションジッパーを搭載することで、汗による蒸れを最大限に逃し、暑い季節や激しい行動での不快感を最小限に抑えます。その他、簡単な操作で頭にフィットするダイヤル式のフード、ベルクロやドローコードで密閉性の高い袖・裾、動きやすさを提供する立体裁断と適度なストレッチ性、バタつきを抑えながら風通しを調節できるフロントダブルジッパー&スナップボタン、ヒップベルトと干渉しない高めの左右ジップポケットなど、登山やハイキングでの着用を考慮したディテールを多数搭載。レインパンツはサイドフルジップで靴を履きながら容易に脱ぎ着が可能。手ごろな価格も大きな魅力です。
お気に入りポイント
- 専門ブランドに引けを取らない優れた透湿性(脇下ピットジップによって換気性も抜群)
- 十分及第点の耐水圧の高い生地
- 頭部へのフィット感抜群のダイヤル調節付きフード
- 動きやすさを考えた立体裁断とストレッチ性
- ジッパーや袖口など細かい部分まで本格山ウェアとして考えられた高い機能性
- アクティビティを選ばず無雪期通年使える丈夫な生地
- 性能からは考えられないほど驚きの低価格
気になるポイント
- フロントが止水ジッパーではなく、ダブルフラップでもないため豪雨や長雨状況では正面からの浸水に注意が必要
- 撥水性がやや低い
主なスペックと評価
項目 | エックスシェルター超透放湿レインジャケット | エックスシェルター超透放湿サイドフルジップレインパンツ |
---|---|---|
カラー | トレックブラック/トレックグリーン | トレックブラック/トレックグリーン |
サイズ | S / M / L / LL / 3L / 4L ※トレックブラックのみ4Lあり | S / M / L / LL / 3L |
重量 | 367g(Lサイズ実測) | 320g(Lサイズ実測) |
防水透湿機能 |
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生地 |
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機能 |
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ポケット | ・左右ジップハンドポケット | ・左右ハンドポケット ・背面左右ジップポケット |
参考価格(税込) | 5,900円 | 4,900円 |
Outdoor Gearzine評価 | ||
対候性(防水・防風性) | ★★★☆☆ | |
透湿性・ムレにくさ | ★★★★★ | |
快適性・動きやすさ | ★★★★☆ | |
重量 | ★★★☆☆ | |
機能性 | ★★★★☆ | |
耐久性 | ★★★☆☆ | |
コストパフォーマンス | ★★★★★ |
春の低山トレイルで着用した詳細レビュー
快適性・動きやすさ:適度なゆとりと3Dパターン、ストレッチ性で、高いレベルの着心地の良さと動きやすさ
袖を通してみてまず感じるのは、低価格なレインウェアとは思えない、予想外にしっかりと快適なパターンの良さ。締め付けすぎないスタンダードなフィット感と、肩や肘の屈曲を計算に入れた3Dパターンも丁寧に作られていて、自分の体型にはピッタリとフィットしてくれました。そのおかげもあってLサイズで約367gと決して軽いわけではありませんが、着た時の重量感はさほど感じられません。またジャケットに採用されている生地はどれも適度にストレッチ性を備えており、動きのなかでも腕の曲げ伸ばしや肩の回転によって服が突っ張ることもなく、快適な着心地を提供してくれました。
裏地は肌触りのサラッとした3層ファブリックのフード~肩~腕部分と、透湿性と伸縮性の高い2層ラミネート部分があり、肌に当たりやすい部分はおおむね3層生地いになるため着心地も良好です。
また首の裏にはハンギングループや汚れや擦れを考慮した起毛生地が圧着されていたり、ジッパーが唇に当たる部分にはフラップが延長されたチンガードが配置されていたりと、細かい部分まで配慮がなされていました。
防水性と透湿性:「驚きのスペックは伊達じゃない」抜群の蒸れにくさ。反面、豪雨・長雨にはやや不安な防水性
エックスシェルター超透放湿レインジャケットには、その名の通り非常に高い透湿性を備えた、ワークマン独自の防水透湿生地「X Shelter」が採用されています。その驚きの透湿度は、3レイヤー部分で最大「70,000g/m2/24h」、2レイヤー部分でも「50,000g/m2/24h」(いずれもB-1法)と、従来ならば本格アウトドアブランドのレインウェアでもなかなか見ることのできなかった高いパフォーマンスです。製品紹介文と顕微鏡写真から分かるのは、これがまた多孔質構造のメンブレンだということ。ということは水蒸気を直接透過させる分、透湿スピードも速いはず。
しかしどんなレインウェアでもいえることですが、透湿度の測定方法はさまざまあり各メーカーそれぞれが任意で測定方法を採用しているため、単純な比較はできず、数字の高低が実際の蒸れにくさに直結するとは限りません。もちろん高いに越したことはないのですけどね。
そこでこの数字は実際のフィールドでも本当なのか?ってことを確かめるべく、実際に普通の晴れの日と、けっこうな本降りの日の両方で、丹沢方面のトレイルで数時間の山歩きを敢行してみました。
まずは雨の降っていない日のハイキング。たとえ3月の朝の涼しい時間帯であっても、山では少し登れば衣服内がどうしたって汗ばんできます。しかしこのジャケットの高い透湿度の影響か、蒸れを感じ始めるスピードは他の一般的な雨具に比べて明らかにゆっくりとしており、衣服内はかなりサラッとドライな状態をキープしてくれました。とはいえいわゆる”通気性”のあるタイプのメンブレンと違ってスーと風を通す感じはないため、個人的には(生地厚もそこまで薄くはないので)そうした「薄手・通気」レインウェアに比べればそこまで蒸れが抜けていくという感じではないかも。そこは個人の感じ方によるかもしれませんが、いずれにせよ価格からすればありえないくらいに快適な行動が可能です。
さらに生地の透湿度の高さもさることながら、このジャケットには極めつけの脇下ベンチレーションジップが配置されているところがポイント。ジッパーを全開にすれば、ここから蒸れを一気に排出することもできてしまうため、蒸れすぎて辛いという状況がほとんど生まれる余地がありません。おまけにこのベンチレーションの位置は、脇を曲げたときにジッパーの折れ目がちょうどゴワつかないよう微妙にオフセットされていたりするところもニクい。
次は本降りの雨の中での着用。
ここでも晴天時と同様、透湿性の高さは感じられました。ただジャケット自体のDWR(耐久撥水)加工がそこまで高くないのか、すぐに撥水性が落ちて表地自体に水がしみ込んできているのを感じ、その分、晴天時の状況に比べれば透湿性能をフルに発揮できないように感じられ、そこは若干残念なところ。ただし撥水が落ちないレインジャケットは存在しないので、遅かれ早かれどんな雨具もそうした状況は生まれてくるため、それを踏まえても依然として高い透湿性能であったことは間違いありません。
防水性について
ジャケットの防水性についてですが、テスト中ずっと強い雨がフードや肩を打ち付けていましたが、相当程度の強さであってもこのジャケットの生地自体の耐水圧(2レイヤー生地で10,000mm、3レイヤー生地で20,000mm)ならばほとんど浸水の問題はありません。縫い目にもシームテープがしっかりとしてあるので縫い目からの浸水もほぼ心配ありません。
ただこのジャケット惜しいことにフロントジッパーが止水仕様ではなく、しかもダブルフラップ仕様でもないため(ジッパー裏には止水のためのフラップが付いています)ここのポイントに強く水を当て続けるようなシチュエーションはそうそうしょっちゅうあるわけではありませんが、万が一の嵐や長雨でも万全という分けではないことは留意しておいた方がいいでしょう。
機能性:快適なフード、実用性の高いディテール
ダイヤル式で簡単にジャストフィットする調節可能なフード
エックスシェルターの飛び抜けた機能性の高さは、生地のパフォーマンスだけではありません。ダイヤルひとつで頭の形にぴったりとフィットする、調節可能なフードがなかなかに便利です。
後頭部に搭載されたダイヤルを押し込んで右に回せば簡単にジャストなフィット感が得られ、首を動かしたときもしっかりと追従します。前方からの雨を防ぐのに十分な長さをもったつばもよくできています。またこのフードの中に全体を丸め、最後にダイヤルを締めればスタッフサック要らずでパッキングができてしまいます。
フロントダブルジッパーとバタつき防止のスナップボタン
フロントジッパーは上下から開け閉め可能なダブルジッパー。換気の調整やハーネスとの干渉を防いだりとアウトドアで使用するには何かと便利です。ちなみにこのフロントジッパープル、万が一の時にはホイッスルにもなります。
さらにジャケットを全開する際にも、胸のスナップボタンを使用することでバタつきを抑えて行動することができます。
十分なスペースのハンドポケットが左右に。止水ジッパー仕様で中に水が入りにくくなっています。
ベルクロ留めの袖口、裾ドローコード
袖口は手袋の上からでも容易に脱ぎ着が可能な広めのデザインに、ベルクロによる調節できる仕様。春先から初冬まで幅広く対応します。
裾の両サイドにはドローコードが配置され、ここを絞れば雨や冷気の侵入を防ぐことができます。
プロテクションと登山での実用性をしっかりと兼ね備えた機能性抜群のオーバーパンツ
あわせて販売されるパンツについては、オーバーパンツとしてトレッキングパンツの上から着用することを前提としたゆとりのあるストレートフィットでありながら、安定のすっきりとキレイなシルエットです。
ジャケットと同様に、股や膝周りの立体裁断と適度な伸縮性によって、(サイドのジッパー部分がややごわつくとはいえ)自然な動きやすさを提供してくれます。
このサイドのジッパーは足元から腰部分までフルオープンすることができますので、分厚いトレッキングブーツを履いたままでも難なく着用可能。雨が降ってきたときには重宝します。
ウエストは左右のベルクロで絞ることができますので、かなり幅広いサイズにフィットします。
ポケットは前後ともに左右1つずつ、合計4つもついており、ワークマンらしく収納性は抜群です。
まとめ:防水性よりも快適性を重視する日帰り~1泊程度の登山ならおつりがくる高機能&高コスパレインウェア
1万円を軽く切る価格で、最大70,000g/m2/24hというこれまで本格山岳ブランドでもありえなかったパフォーマンスを実現できてしまうのが2025年なのかと、感慨深いものがあります。十分満足のいく着心地と素材の性能、そして細かな部分まで行き届いた機能性は、この価格において肩を並べられる製品はまず存在しません。欲を言えば重量があとほんの少し軽く、フロントジッパーの防水性さえ万全であればという惜しい部分もありますが、自分が着用した限りでは数日間の本格縦走などでない限りはそこまで深刻に問題となるほどではないと感じました。
もっとも、そもそもそのようなタフで長いルートではワークマンではなく本格アウトドアブランドの確かなモデルを使うべき。当初からこのサイトでは、ワークマンはあくまでもライトな登山や初心者が本格モデルを買う前にエントリーモデルとして、もしくは特徴を理解できるベテランが割り切って使用するのに最適な製品だと言ってきました。その意味ではあくまで上記の範囲内で考えたとしても、これ以上コストパフォーマンスの高いレインウェアがあっただろうかというほど十分な満足が得られるのではないでしょうか。