MONTURA バーティゴパンツシリーズ レビュー:あまりの動きやすさに脳がバグる。プロたちに選ばれる山岳向けトレッキングパンツが無敵すぎる理由
Discord始めました
MONTURAのウェアが山岳ガイド・レスキュー部隊御用達である理由が知りたい
MONTURA(モンチュラ)といえばヨーロッパアルプスのお膝元、イタリア北部はロベレートで生まれたアウトドアメーカー。2000年生まれと比較的新しいブランドながら、今では登山をはじめクライミング・アイスクライミング、スノースポーツ、ランニング、サイクリングといった幅広いアウトドア・アクションスポーツ向け製品を欧州のみならず北米・アジアにも展開するまでに成長を続ける、新進気鋭のブランドです。日本でも大きな登山専門店で取り扱っていたりするので、一度は見かけたことがあるという人も多いのではないでしょうか。そんなMONTURA(モンチュラ)の一押しトレッキングパンツ「VERTIGO(バーティゴ)シリーズ」を今回自由に使って書いて良しとの条件で試してみることができました。
このブランドもちろん知ってはいたのですが、実際のフィールドで試すのは実は今回が初めて。以前から山岳ガイドやレスキュー部隊をはじめとしたプロフェッショナルからの支持が厚い確かなブランドであるという噂を聞いてはいて、毎回お店で手に取るまではしてみるものの、眼の中に飛び込んでくる鮮やかな蛍光色と大胆な切り返しのデザイン、そして飛び抜けてタイトなシルエットがどうしても「自分のような”ゆるハイカー”ごときが着るなんて恐れ多い汗」なんて気おくれの方が先に立ってしまい、結局購入まで至らなかったという思い出が何度もあります。
いや案外と、実際そんな印象を持っている人はきっと僕だけではないのではないでしょうか。ということで、今回はそんなモンチュラ未体験の人でも比較的入りやすく、彼らのコンセプトやクオリティを実感しやすい「トレッキングパンツ」をチョイスしてみました。早速レビューしていきたいと思います。
目次
MONTURA バーティゴパンツの主な特徴
世界的なアルピニストやプロフェッショナルたちが求める妥協のない「絶対的な快適さ」を追求し、たしかな機能をもった製品をていねいに作り続けることをブランド哲学にもつモンチュラ。「バーティゴパンツ」は、そのブランド創設初期から今でも世界中の山岳愛好家に愛され続ける不動のロングセラー・マウンテニアリング(トレッキング)パンツです。
人間工学に基づいて計算された立体裁断と4方向へのストレッチ性を備えた生地は、スタイリッシュでバタつきを抑えたタイトなシルエットにも関わらず動きを妨げるストレスを極限まで軽減し、常に快適なフィット感を提供。表地には耐久撥水加工が施され、さらに部位によって伸縮性・通気性・耐摩耗性といった強みの異なるさまざまな素材をバランスよく組み合わせることで、過酷なフィールドに耐え得る高いレベルの機能性をバランスよく最小限の重量で備えます。他にもポケットやウエスト、裾周りなど細部にわたり実際の使いやすさを想定したギミックを凝縮。シリーズには最厚手の「バーティゴ(以下、バーティゴ)」中厚の「バーティゴ ライト 2(以下、ライト)」最薄・最軽量の「バーティゴ テクノ(以下、テクノ)」の3ラインにそれぞれショート丈モデルを合わせた全6モデルがラインナップ。
お気に入りポイント
- すっきり細身のスタイリッシュなシルエット
- 見事な立体裁断とストレッチ性によるストレスフリーの動きやすさ
- 圧力のかかる部位では縫い目を排ししてゴロつきを防いだ圧着処理(テクノ)
- 快適さを妨げず適材適所に施された膝やヒップ、裾周りなどの補強素材
- 邪魔にならないようにオフセットされた背面ポケット
- シルエットを壊さず自然と足首にフィットする裾の伸縮ゴム
- 必要な機能をバランスよく高いレベルで備えながら、平均以上の軽さを実現
気になるポイント
- ウェストは平バンドを細い丸ゴム紐によって締めるため、強く締めるとキツさを感じる(バーティゴ・バーティゴテクノのみ)
- 広くて傾斜の緩いトレイルを歩くことが多い人にとってはややオーバースペック
スペックと評価
アイテム名 | バーティゴ テクノ -5センチ | バーティゴ ライト 2 -5 センチ | バーティゴ -7 センチ |
---|---|---|---|
実測重量(g) | 275 (Mサイズ) | 365 (Mサイズ) | 449 (Mサイズ) |
メイン生地 |
|
|
|
ポケット |
|
|
|
ウエスト | アジャスターコード付ウェスト | アジャスターコード付ウェスト | ベルトループ付ウェスト |
裾 | 裾ジッパー(マチ付) | 裾ジッパー(マチ付) | 裾ジッパー(マチ付) |
Outdoor Gearzine 評価 | |||
快適性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
機動性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
保温性 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
通気速乾性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
機能性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
★★★★★素晴らしい/★★★★よい/★★★悪くない/★★良くはない/★ちょっと厳しい
詳細レビュー
外観と快適性:驚きの「すっきりシルエット × ストレスフリーの動きやすさ」で脳がバグる
モンチュラウェアの魅力を語るうえで、どう考えても外せないのがまず動きやすさ。ただそれは単に動きやすいというだけでなく、シルエットや穿き心地など、気持ちよく快適に使うために必要な要素のどれもが驚くほど高いレベルにあるという、山岳環境におけるアクションパンツとしての完成度の高さです。
日本やヨーロッパアルプスなどの急峻な山岳地帯で行動する場合、そこにはただ単に歩くだけでなく、時には壁をよじ登るために腰の高さまで足を上げたり、段差のある岩の下に足を投げ出したりすることは日常茶飯事。このため山岳向け(トレッキング)パンツには下半身の大きな動きに対応する動きやすさが大前提といえます。
ただ、だからといってゆったりルーズフィットなら動きやすいから良いかというと、今度はバタバタと風に煽られたり、裾に足を引っかけて転倒する恐れがあるため、フィールドはパンツはできる限りタイトである方が好ましい。つまり求められるのはできる限りスリムでかつ動きやすく、美しいシルエット。この複雑な課題を解決するのが、単に2枚の生地を貼り合わせるのではない、人間工学的に計算された立体裁断と、ストレッチ生地使いです。もちろんこれも「ただ取り入れていれば良い」という分けでは決してありません。そこには考え抜かれた複雑なカッティングパターンと、高度な縫製技術の組み合わせが必要となり、高い機能性を有したトレッキングパンツの多くは必ずといっていいほどこれらすべてが高いレベルで盛り込まれているものです。
「立体裁断 × 4WAYストレッチ生地」による圧倒的な動きやすさ
それを踏まえたうえで、このモンチュラのトレッキングパンツのスキのなさはハンパなかった。
身体のラインに沿って下半身全体を包み込むようにフィットし、足のラインがきれいに見え、立っているだけで仕立ての良さがにじみ出てくるような上品なストレート。通常であればここまで完璧なシルエットを求めれば、どうしても動きやすさとのトレードオフが生じてしまってもおかしくありません。
それにもかかわらず、バーティゴパンツには下半身の関節を動かしたときに感じるはずのストレスが驚くほど、無い。それは試着室で足を入れた瞬間からすぐに感じられ、このパンツを穿いたことのある人ならばきっと「このスリムさでこの動きやすさってアリなのか?」という、頭が一瞬バグる感覚に共感してもらえるはず。
ちなみに今回試させてもらった3モデルは、基本的には同じようなスリムさと動きやすさを備えつつ、季節性や用途を考慮してフィット感に若干の違いがありました。
「テクノ」は肌に吸い付く程度にスキニーなフィットであるのに対し、冬向けの「バーティゴ」は前者に比べると中にインナータイツも履ける程度にゆとりをもった幅に、「ライト」はその中間といった穿き心地になっています(下写真)。
また丈の長さは海外モデルということもあってかなり長めに作られており、176cm / 65kgの自分は(微妙に短めが好みだったこともあり)全モデルショート丈モデルでちょうどよい感じでした。ショート丈といっても海外基準でなので、下写真のようにほぼピッタリサイズです。
すべてのモデルはこのすっきりとしたシルエットを保ちつつ、動きを妨げないように人間工学を考慮した複雑で立体的なカッティングが施されています。
例えば下の写真のように膝の前後に必要に応じてダーツが入れられていたり、その他にも一見して理解できないような手の込んだパターンや切り返しがそれぞれのモデルで独自にデザインされ、曲げ伸ばし時のツッパリ感が最小限に抑えられています。
加えて最新モデルの「テクノ」に至っては、屈伸時に特に圧力のかかる部分の縫い目を排し、替わって「ULTRA SONIC」という超音波を使った圧着と裏側からのシーリング加工による新しい接着方法が用いられています(下写真)。複雑なカッティングによって生地の繋ぎ目が縦横無尽に通っているにもかかわらず、足を曲げても縫い目のゴロつき感がないため、結果、飛び抜けた動きやすさと快適さが共存するという分けです。
この計算された立体裁断を、さらに4方向に伸縮しつつ軽量かつ通気・速乾性に優れた化繊混紡素材が動きやすさをサポート。肌面に触れる裏地は滑らかでサラサラと乾いた肌触り。夏場などでは膝を大きく曲げた時に汗ばんだ生地が肌と引っかかって非常に不快でストレスフルですが、そんなときでも余計な突っ張り感はありません。
膝をグイっと曲げても、屈伸運動でしゃがんでも、とにかく、身体にかかる抵抗感・不快感のなさが逆に快感です。
これは危険な岩場や鎖場などでは本当に助かります。緊張を有する場面でも足の上げにくさを感じたりツッパリ感もほとんど感じない。どんな状況であっても自分のムーブに集中できることは地味ですがとても大切。
季節に応じて最適化された、高い通気速乾性のソフトシェル生地
生地の種類も、ターゲットとする季節に応じて3モデルで微妙な違いがあります。最軽量のテクノは最も薄くて清涼感のある生地であるのに対し、ライトの裏地は若干起毛感のある薄手二重織りを採用(下写真)。
そしてバーティゴは軽量・速乾ながら最も厚手で保温性のあるメイン生地に加えて、さらに背面には軽くて暖かい「サーモライト」のフリース裏地が当てられています(下写真)。
また表地にはDWR(耐久撥水)加工がしっかりと施され、ちょっとした水滴や汚れも心配ありません。出発直後の朝露をのせた木々をかきわけて進んだトレイルでも濡れずに済みました(下写真)。
耐久性:必要最低限の部位に巧みに配置された「高耐久 × ストレッチ」補強
ぼくがバーティゴパンツをマウンテニアリングパンツとしてとびきり完成度が高いといいたくなるのは、この卓越した動きやすさだけではありません。それはしっかりと山ウェアとしての快適さと丈夫さがまったく損なわれていないという点にあります。
そのことを裏付けるひとつの例が、岩で擦れやすい膝から腿にかけて、あるいはかかとやクランポンによって引っ掛けやすい裾の内側にかけて施された「高耐久 × ストレッチ」生地による補強です。高い引裂き強度や耐摩耗性を持ち合わせた高強度・高耐久素材に、快適なフィット感と動きやすさを提供する適度なストレッチ性を備えた繊維をブレンドした生地を適材適所の部位にマッピングすることで、必要最低限の重量で十分な耐久性と快適な着心地を両立することができています。
ただ穿き心地がいいだけじゃない、ただ動きやすいだけじゃない、そしてもちろんただ丈夫なだけでもない。過酷なフィールドで行うヘビーな活動に必要なあらゆる要素が、互いを邪魔することなく高いレベルで融合していることのスペシャルさ。世界中のガイドやレスキュー達から支持される理由が、ここに垣間見えた気がします。
機能性:細部にわたって実用性とデザイン性を両立
あらゆる面で機能性を追及する姿勢を貫くブランド哲学はポケットやウエスト回りなどの細部にも当然のように宿っていました。
実用性の高いポケット
まず3モデルに共通してある左右のハンドポケット(下写真)はすべてがジッパー付きポケットとなっており、行動中に中の物が落ちたりしないような安全性が十分考慮されています。
ここまではトレッキングパンツとしてはまぁ当然として、個人的に最も気に入ったポイントは背面にあるバックポケット。バーティゴシリーズのバックポケットは、位置が真後ろではなく微妙にサイドにオフセットされています(下写真)。
真後ろに配置された一般的なバックポケットの場合、立ったり座ったりする行動中には使い難いものですが、オフセットされることで座った時にお尻とポケットとが干渉することがないため、実用性のある便利なポケットとして活用できます。しかも大型スマホも十分に入る十分な大きさ(下写真)。
幅広いスタイルの登山靴に対応した裾回り
もうひとつ気に入っているのは、裾回りの作り。裾の後ろ部分はゴムのストレッチ仕様になっているため足首にフィットし、足を引っかけにくくするだけでなく小石や砂などの侵入を防ぐゲイター的な効果もありました(下写真)。
またどのモデルもジッパーによって裾幅を広げることができ、ハイカットブーツに対応しています。ただ、これで靴を履いたまま脱ぎ履き出来るかなと思い試してみましたが、さすがにそれは無理で、そこまで広げることはできませんでした。
快適さと調節しやすさを考えたウエスト周り
ウェスト・フロント周りに関しては、「ライト」が秀逸でした。ウエスト全体は緩い平ゴムとベルトホール仕様になっていますが、フロントジッパーは目立たないコンシールファスナーを使用し、上部は引っ掛かりにくいフラップのついたベルクロ留め仕様となっています(下写真)。ボタンが無いことによって厚みが出ないようになっているため、バックパックのベルトやハーネスによって圧迫されにくいデザインになっています。こういうの、本当に使っている人でないと絶対に気づけないし考えられない工夫であり、こういったところに配慮があるだけで製品への信頼感が増してきます。
一方テクノ・バーティゴモデルの方はよりクライミングパンツを意識して、緩い平ゴムに加えて丸ゴムのアジャスターコードによる調整システムになっています(下写真)。特に最新のテクノに採用されているコードロックは厚みもなく操作性も高く、非常に使いやすいパーツでした。ただベルトが不要な分、使い勝手はいいのですが、細い丸ゴムはどうしてもしっかり締めると肌当たりがやや快適性を欠き、個人的にここだけは好きになれませんでした。平ゴムか、もしくは内蔵式のベルト(バックル)仕様でのアジャスターの方が自分は好きです。
まとめ:トレッキングパンツとしてある意味での完成形。3つのモデルはそれぞれどんな人・シーンにおすすめ?
MONTURA バーティゴパンツは、どのモデルも噂に違わず驚異的な動きやすさと快適さ、美しいシルエット、そして実際のフィールドに根ざした使い勝手のよさを兼ね備えた、過酷な状況での行動に対応する、高いパフォーマンスを極めたトレッキングパンツでした。素材の選定からパターニング、細部の仕様に至るまで「冒険家やアスリートの、専門的でわがままな多くのリクエストの結晶」であるといううたい文句は、まさにそのスキの無い完成度の高さから十分な説得力を持って響いてきます。
このパンツの得意分野としては、アルプス縦走に代表されるような岩稜帯の通過を伴うような急峻な高山でのトレッキング・クライミングにがもちろん主戦場ですが、「ライト」や「テクノ」のような軽量で通気速乾性高めなモデルならば低山のハイキングやファストパッキング、沢登りなどでも十分に高いパフォーマンスを発揮してくれるはずです。
ただ唯一、もし暖かい時期に緩やかなトレイルをひたすら長い距離歩くようなロングトレイルでしか穿くつもりがないのであれば他の最適な選択肢を探した方がいいかもしれません。いずれにせよ日本のように森林限界の上下を行き来し、時には樹林帯、時には稜線とアップダウンの激しいエリアが多い地域でのアウトドアにはうってつけであることは間違いありません。
各モデルそれぞれが持つ得意分野を理解して穿き分けるならば、季節や用途を問わずあらゆる山岳アクティビティに対応することができるでしょう。そこで最後にそれぞれを穿き比べて感じた、各モデルの強みと弱み、そしておすすめシチュエーションについてまとめてみましたので、購入の際の参考にしてもらえればと思います。
アイテム名 | バーティゴ テクノ | バーティゴ ライト2 | バーティゴ パンツ |
---|---|---|---|
一言でいうと | 軽快・アクティブ志向のための爽やか夏パンツ | 1年通してこれ1着でいけなくもない、オールラウンドパンツ | 高山、岩稜、アルパイン志向のための本格パンツ |
強み |
|
|
|
弱み |
|
|
|
向いている季節 | 夏(前後含む) | 春・夏・秋・冬(雪なし) | 春(残雪・高山)・秋・冬 |
向いているアクティビティ |
|
|
|
「MONTURA バーティゴパンツシリーズ」の詳細と購入について
最新モデルの入荷情報や製品の詳細については、MONTURA公式サイト、またはバーティゴパンツシリーズ各製品ページご確認ください。