MONTURA PAC MIND JACKET & 2024春夏レインウェアレビュー:ユニークで計算された細部へのこだわりが相変わらずエグイ
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登山やハイキングなどでの必携アイテムのひとつであるレインウェア(雨具)には、単に雨風を防ぐだけにとどまらず多くの機能が求められます。ましてや四季や梅雨といった複雑な気候の日本ではなおさら。雨風を防げることはもちろん、多湿な気候で動いても快適さをキープするための透湿性や通気性、さらに幅広い寒暖差にも耐えられるような(ある程度の)断熱性。もちろんタフなルートに対応する丈夫さや携帯性に加えて着用時の着心地や動きやすさも重要な要素です。ことほど左様に、日本の山岳エリアで年間を通じて着用したいなら、レインウェアには軽さや防水性だけでなく、さまざまな機能が高いレベルでバランスよく備わっていることが理想です。
そんなレインウェアにおける「エリート級の一着」を考えたときに候補のひとつに上がるであろう一着が、今回紹介するMONTURA PAC MIND JACKETです。「絶対的な快適さ」を追求し、アルピニストや山岳ガイドからレスキュー部隊までホンモノを求めるユーザーに支持されてきたモンチュラが仕上げた最新防水ジャケットは、過酷な状況でアクティブに活動する際に必要なプロテクションと軽快はもとより、持ち運びやすい軽量コンパクトさまで細部にわたる作り手のこだわりが詰め込まれた一着。今回はこのPAC MIND JACKETに加えて、さまざまな用途にマッチするモンチュラのレインジャケットファミリーの代表モデル2着を含めた3着を試してみることができたので、併せてさっそくレビューしていきたいと思います。
目次
MONTURA PAC MIND JACKET(パック マインド ジャケット)の主な特徴
MONTURA PAC MIND JACKET(パック マインド ジャケット)は厳しいアウトドア環境での多様なアクティビティに最適なレインジャケット。軽量で収納性の高い2.5層構造のGORE-TEX Paclite Plus プロダクトを採用し、軽量・コンパクトながら優れた対候性・耐久性を両立。裏地には耐摩耗処理を施した立体的な表面で、快適な肌触りとしなやかな着心地を実現。モンチュラならではの巧みな立体裁断により最小限の重量で抜群の動きやすさを提供します。さらに後頭部にストレッチ素材を配置して被るだけで頭にフィットする独自設計のフード、快適さと気密性を両立した袖口と裾、スムーズで密閉性の高いフロントビスロンジッパー、内側のメッシュポケットを裏返すことで収納できるパッカブル仕様など、クライミング、登山、トレッキングなど本格的なアウトドアアクティビティに求められる高い水準をミニマムな重量で実現しました。
お気に入りポイント
- 軽量にもかかわらず優れた耐候性と耐久性
- 高透湿でTシャツの上からでも心地よい滑らかでドライな肌触り
- 調節不要でフィットする後頭部のストレッチ生地、長いツバと防風フラップによって優れた防水性のフード
- 動きやすさ抜群の立体裁断
- 内ポケットに収納可能なパッカブル仕様
- ストレッチ素材によって密閉性とフィット感の両立した袖口
- スムーズかつ軽量な防水仕様のフロントビスロンジッパー
気になるポイント
- より換気性を高めるための脇下ベンチレーション(ピットジップ)、あるいはフロントダブルジッパーがあればなお良し
- 後頭部のストレッチ素材が濡れると乾きにくい
- 胸ポケットがあるとより行動中にも便利
主なスペックと評価
項目 | MONTURA PAC MIND JACKET | MONTURA TRIBUTE JACKET | MONTURA DANUBIO G JACKET |
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重量 | 275g | 350g | 330g |
カラー |
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サイズ | XS / S / M / L | XS / S / M / L / XL | S / M / L |
レディースモデル | ◯ | ― | ― |
防水透湿機能 | GORE‑TEX PACLITE® PLUS(2.5層) | GORE-TEX active(3層) | GORE-TEX active(3層) |
表地 |
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裏地 | 滑らかで肌触りの良い耐摩耗加工を施したコーティング | GORE® C-KNIT バッカー(100%PA) | GORE® C-KNIT バッカー(100%PA) |
ポケット |
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その他機能 |
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Outdoor Gearzine 評価 | |||
対候性(防水・防風性) | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
透湿性・ムレにくさ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
快適性・動きやすさ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
重量 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
機能性 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
多用途性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
春のトレイルで着用した詳細レビュー
着心地:軽くてしなやか、スリムで無駄のないシルエットなのに動きやすい
持ってみてすぐ、まずそのふわっとした軽さに胸躍ります。300グラムを切る重量は伊達じゃない。厚みも非常に薄いのですがそれでいて微妙なコシは残っているので、軽いとはいえシェルとしての頼もしさは感じられます。
胴回りはやや細身のシルエット。アームホールも引き締まっておりダボつき感がなく、イタリアらしい洗練されたルックスです。とはいえ中にミッドレイヤーが着れないというほどスリム過ぎということもありませんので通年通して幅広いアクティビティに対応するレインウェアとして心配ありません。相変わらず肩から腕にかけての立体裁断は見事で、腕の上げ下げをはじめ上半身の動きに対しての抵抗感もなく、裾が引っ張られる感じもありません。
GORE-TEX PACLITE® PLUSの裏地は耐久性を高めつつ肌離れをよくするために特別なコーティング加工が施されており、裏地表面には微細な凸凹が感じられます。この立体的な構造によって一昔前の一般的な2.5層レインジャケットにあったようなビニールライクなペタペタ感は影を潜めており、サラサラとした肌触りは着ていて心地良いです。
縫い目に施されたGORE-TEXシームテープは圧着の丁寧さはもちろんですが、幅も15mm以下で非常に細く薄く(下写真)、縫い目のゴワつきといった着心地への影響も、また透湿性への影響も極限まで少なく、ウェアとしての快適さをとことん追求した質の高い作りには感心します。
耐候性と透湿性:確かな防水防風性、十分な透湿性によってドライな肌触りが続く
着心地はもちろんですが、レインウェアの基本としての防水性能については誰もが当然気になるところ。防水透湿生地であるGORE-TEX PACLITE® PLUSは、基本的に表生地(耐久性の高いナイロンを採用)とメンブレンの2層構造+裏面の特殊コーティング(0.5層)と、GORE-TEXラインナップの中でも極力薄くて軽い構造になっています。ただしスタンダードなGORE-TEXプロダクトと同じように厳しいストームテストをしっかりとクリアし、高い防水基準を満たしているため、その防水防風性は厳しい登山にも十分に耐え得るレベルが証されています。
※GORE-TEXのストームテストについては、以前GORE-TEXへインタビューしたこちらのページで詳しく紹介しています。
実際に雨の降る5月のトレイルで着てみましたが、期待通り防水性、防風性は万全でした。その雨に対する強さの要因は大きくいって二つ。
まず当然ですが生地が優秀。降り注ぐ雨が生地を通り抜けて浸透してくる気配はまったくないばかりか、生地に落ちた水滴もボロボロ落ちていき、さらにそれが雨の中でも比較的長い時間続いてくれます(下写真)。つまり撥水性も素晴らしいということ。現在世界的にPFCフリー素材への移行が進んでいますが、撥水加工についても例外ではなく、新しいPFCフリーの撥水加工を施したレインジャケットは有機フッ素化合物不使用ながら(2024年現在の性能だけで言うと)どうしてもまだ若干パフォーマンスが落ちてしまいます。このPAC MIND JACKETは、そうしたPFCフリーへの移行前、つまりは従来の撥水加工を採用していることもあってか(決して大きな声で言えることではないのですが)撥水パフォーマンスは非常に高いものを有していることは事実です。
もう一つの要因として、ウェアの作り自体が細部にわたって雨の侵入をしっかりとシャットアウトする構造になっているということも大きい。
例えばフードの作りをとってみても、顎まで覆う高めの衿にフォームの入った長いツバ、さらにフード内側の額部分にはストレッチ素材のフラップが配置されています(下写真)。
また後述しますが、後頭部に当てられた独自のストレッチ生地は調整不要で常にちょうどよいフィット感を保ってくれるため、顔回りの雨を防ぎながら、快適な被り心地と広い視界を確保してくれるというスマートな設計です(下動画参照)。
さらに袖口には防水ストレッチ素材とベルクロを組み合わせ、優れた密閉性と快適なフィット感を両立させています。細かい部分ですがこの袖のベルクロも一般的なものよりも薄くて丈夫、型崩れしにくい樹脂製だったりと、些細な部分でもできる限り妥協せず機能性と快適性を突き詰める姿勢が反映されています(下写真)。
透湿性は及第点(脇下ベンチレーションがあればさらに完璧)
透湿性(蒸れにくさ)に関しては、体感の印象では極端に蒸れやすいと感じることもなく、まずまずといったところでしょうか。標準的な防水透湿ジャケットと同様、汗をかかない程度の環境であれば中が蒸れてくることはありませんが、登り坂など活動量が上がれば衣服内の蒸れはどうしても出てきます。そもそもGORE-TEXメンブレンの特性上、ウェア内外の温度差・湿度差が小さいこの時期はあまり得意ではありません。ただ生地自体は薄くて熱を放出しやすいため、その点では蒸れやすさは抑えられています。
ただ、透湿性は悪くないとはいえ、脇下のベンチレーションが備わっていないことはやや残念。自分の経験上、ウェアの蒸れにくさは生地の性能差よりもベンチレーションの有無の方がよほど大きな違いをもたらします。このジャケットには左右ハンドポケットの裏地がメッシュ生地になっていることである程度換気を促すことができますが、それでもやはり十分とはいえません。もちろんベンチレーションによって若干の重量増とゴワつきというトレードオフも発生しますので、きっとその点も含めて慎重に検討した結果なのだとは思いますが、蒸れにくさという面から言えばベンチレーションがあった方が絶対的に有利であることは間違いありません。
機能性:フロントジッパー、フード、袖口、ポケット、パッカブル仕様とユニークで細部まで工夫を凝らした匠の作り
このウェアの細部に目をやると、見れば見るほどその丁寧で計算された作りの良さに気づかされます。
高品質なフロントジッパー
軽くて耐久性がある防水性のビスロンタイプを採用しているフロントジッパーは、一般的なレインウェアの止水ファスナーに比べて格段にスムーズで操作性がよく、非常に気に入っています(下写真)。
収納性十分で多機能なポケット
ポケットは左右2つの止水ジッパー付きハンドポケットと、左裏のインナーメッシュジッパーポケットが備えられています。左右ハンドポケットは大きさも十分で、雨の侵入を遮断してくれる止水仕様であり、ポケットの裏地はメッシュ状になっているため開けておけば換気にもなります(下写真)。
左側にはインナーメッシュポケットが付いており、そのポケットは裏返してウェアを丸めて詰めると収納できるというパッカブル仕様です(下写真)。
調節不要で絶妙なフィット感を提供するフード
そして前述したフードはこのジャケットの最もユニークで機能的な部分のひとつ。
後頭部は通常であればドローコードやベルクロによって手動で調節するようになってるものですが、このモデルは円形のストレッチ素材が配置されているのみ(もちろん水は侵入してこない)。ただこのストレッチがかなり上手いことできており、被るだけで絶妙にちょうどいい具合にフィットしてくれます。首を動かしても伸縮によって自然に追従してくれるため視界を妨げることもなく、この快適さは眼からウロコもの。しかもヘルメット対応(若干ぎりぎり)なのでさまざまなアクティビティでも使いやすいです(下動画)。
ただ一点だけ、このストレッチ素材は濡れてから乾くまでが全体の生地に比べると遅く、ここだけ濡れていてやや不快な時間が続きます。それだけは玉に瑕です。
下からの浸水や冷気を防ぐための裾はストレッチ素材によって軽量化。背面の丈が少し長くなっており、行動中もずり上がりにくく常に自然に腰へフィットします(下写真)。
その他のレインジャケットもチェック
これまで見てきたPAC MIND JACKETの他にも、モンチュラのレインウェアには季節やシーン、アクティビティに合わせて興味深いラインナップが用意されています。今回はそんな他モデルも同時に試すことができましたので、それぞれがどのように違ってどんなシーンにマッチするのか、感じた印象を書いていきます。
ライト&ファストな冬山にも対応できる軽量・堅牢・高透湿「TRIBUTE JACKET(トリビュート ジャケット)」
TRIBUTE JACKETは一見すると同じように軽量なレインウェアですが、じっくり見ていくと、それがより厳しい登山やアルパインンクライミング、冬期スキー登山など厳しい地形や寒冷な気候まで含めたハードなアクティビティのために開発されたジャケットであることが分かります。
生地は高耐久なナイロン素材で3層構造のGORE-TEX Activeを採用しており、3層構造とは思えないほど薄くて軽量ながらしなやかでサラッとした最高級の着心地の良さと耐久性、そして何よりも非常に高い透湿性を実現しています。丈は今回の中では最も長めで見幅もスリム過ぎず、冬のアウターとして中間着を着ても余裕があるようにデザインされています。
中央には2ウェイに開閉するビスロンジッパー(下写真左上)、脇下にはベンチレーションが配置されており(下写真右上)、1年を通して発汗の多いアクティブな活動でも最大限に空気の循環を促進することができます。当然ですが、今回着用したなかで最も透湿性(換気性)があり、蒸れ知らずでした。
またヘルメットに対応するフードは防水ストレッチ生地の範囲が広く、さらにドローコードもついているため、パックマインドよりもさらに一歩進んだ柔軟性と調節性を備えています(下写真左下)。また、左右2つのジップポケットにはマチが付いているため、スキーシールなどより大きなものも収納できたりします(下写真右下)。
ちなみにこのモデルもインナーメッシュポケットに丸めて収納できるパッカブル仕様。超軽量ながら確かなプロテクションと高い透湿性を確保したTRIBUTE JACKETは、通年のハードな縦走やバリエーションルートだけでなく雪山やBCスキーなど、より過酷なシチュエーションで快適さと最高のプロテクションを提供し、最も実力を発揮してくれるでしょう。
本格アウトドアと日常使い、どちらで着ても超快適な「DANUBIO G JACKET(ダヌービオ G ジャケット)」
DANUBIO G JACKETは他のジャケットと一線を画したシンプルで落ち着いたカラーリングで、街から山小屋、そしてフィールドまでシームレスに使い勝手の良いモデルといえます。とはいえ使用している素材は軽量で透湿性の高いGORE-TEX Activeと、舐めてかかるとけがをするほど高機能なハイエンド本格派ジャケットです。
基本的には細身のシルエットながら、他の2着と比べるとジャケットは気持ちゆったりオーバーサイズ目。フードの作りもストレッチ生地ではなくオーソドックスなベルクロとタイトなゴムバンド仕様です(下写真左上)。ポケットは左右のハンドポケット(下写真左下)の他は内側にセキュリティポケットで、他2モデルのようにパッカブルではありません(下写真右上)。袖・裾の作りも極端に軽量化を目指すというよりはバランスの良さを重視しています(下写真右下)。その他含めて全体的に穏やかなシチュエーションでリラックスして着れるような配慮がそこかしこに見て取れます。
とはいえ、高いレベルで軽さとプロテクション・透湿性を兼ね備えた優れた生地素材に、基本的な着心地のよさ動きやすさは健在で、ハイキングに使ってもまったく問題ありません。その意味では今回の3着の中で最も幅広いシーンで着用できる一着といえるでしょう。
まとめ:どのモデルも快適で動きやすい「着心地の良さ」が秀逸。シーンと目的に合わせて選べぶべし
PAC MIND JACKETは、軽さとコンパクトさ、防水透湿性、快適性といった登山向けのレインウェアに必要な多くの要素をハイレベルで備えた素材を使い、スタイルと着心地、動きやすさを考慮した巧みなパターンによって仕立て、そして行動中の使い勝手に配慮したスマートな機能を細部まで突き詰めることで、防水ジャケットとしてスキのない完成度の高さを見せていました。唯一(多湿な日本を考慮すると)脇下ベンチレーションがあれば、1年を通してさらに幅広いアクティビティで持ち出せたかもと惜しい気もしますが、それにも重量増などのデメリットが生じますので、絶対ではありません。
いずれにせよここまでよくできた雨具であれば、どんなアクティビティであっても一定以上に満足いく安心と快適さ、便利さを提供してくれることはまず間違いありません。
他の2着についても、「絶対的な快適さ」を追求するモンチュラならではの着心地良さ・動きやすさはしっかりとある上で、それぞれがよりハードなアクティビティなり、マルチなシチュエーションなりに最適化されているので、どれが一番ということではなく、自分の用途に最もフィットするモデルを選ぶのがよいでしょう。
いずれにせよこれからアウトドアを本格的に楽しみたいすべての愛好家におすすめであるだけでなく、数年後に迫ってきたPFCフリー時代を前に、ある意味「レインウェアのひとつの到達点」としてこの2024年に入手しておくべき一着であるといえるかもしれません。
「MONTURA PAC MIND JACKET」の詳細と購入について
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