ゆるゆる比較レビュー:「あったらいいけど、なくてもいい」トレッキンググローブ。選ぶなら、どれいっとく?
普段、ベテランの山仲間と登るとき、意外と素手で登っている人が多いことに気づきます。でも! 登山はしたいけど、擦り傷だとて怪我は絶対したくない! という心もボディもわがままな私。頂上での寒さ対策にも、やはりトレッキンググローブはひとつあって損はありません。とくに、足元にまだ自信がない初心者の方や、皮膚が薄い女性は、つける価値があると思います。そこで、今までは細かい滑り止めがついた、手にフィットする軍手の延長のようなものを使っていたのですが、いい加減きちんとしたものが欲しいということで4点のアイテムを使い比べてみました。
今回は編集長から声をかけていただきはじめての寄稿です。普段の男気満載・ギア熱高めな実に細かいレビューのファンの方にはちょっと物足りない内容になっているかもしれませんが、なんといっても今は紅葉シーズン真っただ中。もしよかったら旅レポ感覚でお付き合いいただき、アウトドア気分を盛り上げていただければ幸いです。ストイックな山遊びをされている方には尊敬の念しかありませんが、たまにはゆるゆる~りと景色を眺めるのもいいものですよ! ザックにピンポン玉詰め込んで重量測るのもいいと思いますが、女から見たらなかなか異様な光景です(いい意味で)。
目次
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第一印象 ~まずはおさえたい基本スペック~
登山やトレッキングでは、実際のところトレッキンググローブは”あったらいいけど、なくてもいいもの”でもあります。そこで、手にしやすい¥1,000台のアイテムから、なくてもいいものに払うにはちょっと気が引ける¥5,000台まで、機能や素材もバラバラのアイテムを選んでみました。しかも、編集長が自腹を切って購入していると聞いて、高すぎるものを選ぶのは完全に気が引けるっていう。ところが3点選んだことを伝えて数日してから、「これも使ってみてほしい」と追加の1点が送られてきました。どうやら編集長は本気のようです。皆さん、応援してあげてください。
さて今回は、羅臼岳から硫黄岳への縦走に4つのトレッキンググローブを連れていきました。他のメンバーが絶景を楽しむ中、こそこそグローブを付け替えるという何とも地味なテストです。気持ち的には、これからの登山の相棒を決めるつもりで選んでみました。
まずは基本スペックがこちら。
スペック比較表
価格が抜群に安いプロモンテは、その名の通り冬場はインナーグローブとして使用できるもので、防水や防風などの機能はありません。
どうでもいいかもしれませんが、その辺はタグを見ても明らかです。
ファイントラックとフォックスファイアが防水を声高にアピールする一方で、パイネは売りのWIND STOPPERを真っ赤なタグで伝えます。そんな中、いわゆる機能素材を使用していないプロモンテのタグには「あったかフイット! トレッキングに最適!」とゆる~く書かれたシールが……。個人的にはこの昭和な感じがたまらなかったりします。
相性診断 ~北の大地で着用テスト~
『富士山に登って、山岳の高さを語れ。大雪山に登って、山岳の大さを語れ』という大町桂月の言葉もありますが、北海道の山はひとつの山頂に到達するのにいくつもの山を越えていくため、高度はあまり関係なく山頂に到達するまで結構時間がかかります。去年登ったトムラウシも、ヘナチョコ山婦人(ガールとはもう言えない……)の私にはかなりきつい旅でした。恐らく今回も最後はへとへとで、グローブを付け替えるのなんて忘れちゃいそう……なんて思いながら、どうにかこうにか実験してまいりました。
北海道での2日間は有難いことに天候にも恵まれたため、まずは快晴時での着用結果をレポートしたいと思います。
相棒候補1:finetrack エバーブレストレイルグローブ
まず手に取った瞬間わかるのが、その軽さ。UL重視派はひとつの判断材料になるかもしれません。手にはめた瞬間も、防水グローブのいわゆるごわつきはそこまで感じられず、想像以上に薄くスムーズな肌触りです。ただ、いちばんのネックはカフにベルクロがついていない点。フィット感を売りにしているものの、手首に安定感がなく、ちょっと心許ない印象です。ベルクロがない分強めのゴムが入っていて、着脱にやや手間取ります。手首から雨が侵入する可能性もあるので、ワンステップが面倒でも、個人的にはベルクロはあるほうがいい気がしました。また、基本的にはレイングローブなので、透湿生地を使用しているとはいえ、やはり快晴の日にずっとつけているとやや不快感が否めません。グリップ力は悪くないのですが、もしかしたら雨の日に使ってこそ、いろいろな効果が実感できるのかな……という印象でした。冬のインナーグローブにも向いている気がします。
相棒候補2:Foxfire グラベルグリッパー
こちらも防水仕様ですが、撥水シェル、透湿防水インサート、吸汗速乾メッシュライナーの3層構造が特徴。一枚の薄手の生地でしかも防水、というファイントラックと比べると、その違いは一目瞭然です。正直、3層構造ということで、つけ心地はあまりよくないのではないかと思ったのですが、メッシュライナーの肌あたりがいいせいか、想像以上に快適でした。ただ、ストックを握っていると、3層になっているせいか、やや中で滑る感覚があり、グリップ力はファイントラックのほうが高いと思われます。ライナーがマイクロフリースになっているタイプもありますが、これでも十分温かいです。ちなみに今回選んだ4点の中で、唯一つけたままスマホを使うことができるタイプなのですが、実際は暗証番号を押すだけで結構大変。私が不器用なだけかもしれませんが、登山の休憩中も、これをつけたまま細かい物の出し入れをしたり、食事の準備をしたりするのはなかなか困難でした。なお、今回はあえてすべて黒を選びましたが、デザイン的にはこれが一番イマドキな雰囲気です。
相棒候補3:PAINE ゴアテックストレッキンググローブ
パイネといえば、石井スポーツのオリジナルブランドとしてすっかりおなじみの存在ですが、今回の山旅で4つのアイテムを全部試してみてから後半の数時間は、ずっとこれをつけていました。ボンディングのような柔らかいけどハリのある素材感で、つけた瞬間しっくりフィット。この4つの中では一番肉厚で薄いわけではないのですが、汗の不快感はなく、ムレもほとんど感じませんでした。グリップ力も高く、ストック運びも非常にスムーズ。晴れていたということが大きいとはいえ、もっともストレスフリーにつけることができました。頂上は結構風もありましたが、そこはさすがのWINDSTOPPER。汗を放出して、さらに風を防いでくれるので、手が冷えることもなく快適でした。防水性こそありませんが、価格的にも妥当かなと思われます。
相棒候補4:PUROMONTE インナーグローブ
トレッキング用というより、タウンユースの手袋感覚で手軽につけられるのが特徴。春~秋は一枚で、冬はインナーグローブとして使用するのがスマートかと思われます。裏毛起毛のフリースのような軽やかでぬくもりを感じる素材は、つけた瞬間心地よさ満点! フィット感を高めるために、指のマチ部分だけ極薄い生地が使われているなど、ディテールにもこだわっていてコストパフォーマンスは抜群です。ただ、設計でひとつ気になったのが、ベルクロが手の甲側ではなく、手首の内側についていること。そこまで気にはならないとはいえ、ストックを握っているとたまにチクッとする感覚があったので、単純になんで内側にしたんだろうと疑問でした。グリップ力はまあまあといったところ。ただ、長時間歩いていると多少のムレはあります。機能素材を積極的に使っているわけではないので、価格を考えるとこれくらいは致し方ないといったところでしょうか。また、下山してからのくたびれ方もなかなかでした。擦れによって毛玉も散見されたので、長く愛用というわけにはいかなそうです。
最終診断 ~“雨ニモ負ケズ”防水テスト~
ということで、快晴の日は個人的にはPAINEがフィットしたのですが、ここで終わりにさせてくれないのがアウトドアギアジンでして、既に山からは下りて来たものの、防水性についてもテストをさせていただきました。
セルを着た上でグローブを着用、ストックを持った状態で30秒間弱いシャワーを上からかけ、前後でどのくらい重さが変わるのか調べました(片手のみ)。シャワーの後は、タオルでしっかりと水気を拭き取ってから測定しています。
相棒候補1:finetrack エバーブレストレイルグローブ
これにいくら水をかけたところで、濡れることはないなという安心感がムクムク湧いてくるといいますか。環境が変わるとまた違うかもしれませんが、少なからず実験の最中はまるでムレそうにもない感じでした。そして何より、グリップ力がまったくと言っていいほど変わらないことに感動。
相棒候補2:Foxfire グラベルグリッパー
30.4g → 32.5g …… 2.1g増
つけていると、あれ? 染みてきてる? と一瞬思うのですが、実際にはまったく濡れていないという不思議な感覚。最終的に3層構造の真ん中が水を防いでいるのか、水との距離は近い感じがします。滑り止めがついている部分は表面的には濡れているので、重さの変化はその分かと思われます。グリップ力は少しダウン。
相棒候補3:PAINE ゴアテックストレッキンググローブ
27g → 32.4g …… 5.4g増
晴れている状態では一番のお気に入りだったPAINEですが、やはり防水性がない分、じんわりと水が染みるのを感じます。ただ、増加したグラム数を見てもわかるとおり、びしゃびしゃという状態ではなく、湿っているグローブをつけているという感覚です。さすがに快適とはいえませんが、グリップ力は意外とキープしました。
相棒候補4:PUROMONTE インナーグローブ
20.6g → 35.6g …… 15g増
あっという間に水が染み込んできて、山では不快でつけていられる状態ではありません。晴れていてこその柔らかな肌触りということで……。
まとめ ~どんなときにおすすめ?~
ということで、果たしてやる意味があったのかというくらい、想像した通りの結果となりました。今さら言う必要もありませんが、ちょっとやっぱりすごすぎないですか、防水素材! なんといっても水を浴びている間の快適さがまったく違います。雨でも写真が撮りたいという気丈な方は、防水を選んでおいて間違いないかと。
トレッキンググローブ必須の私としては、ひとつだけ買うならバランスのいいPAINEがイチオシです。
天気に心配がない日は、この子を相棒に快適な登山を楽しみたいと思います。
ただし、雨が怪しいときは防水機能があったほうが確実なので、Foxfireが活躍しそう。真夏の登山だと多少快適さは劣りますが、いざというときの雨に備えて損はありません。
こちらのモデルは、これからの季節にあったウォームタイプもあるみたいです。
一方これからの冬登山に向けて対策をとるなら、インナーグローブを用意しておきたいところ。そんな欲張りな人には、防水性と透湿性に優れているfinetrackがおすすめです。とくに、インナーグローブとして使用する場合は、手首にベルクロがないことが活きてきます。
機能よりも肌触りや価格重視なら、間違いなくPUROMONTE! 普段トレッキンググローブを使っていない人にも、違和感なく使いこなせると思います。
気候や好みに合わせて選べば、「あったらいいけど、なくてもいい」トレッキンググローブが、絶対にないと困る存在になるかもしれません。
藤原 綾
某出版社勤務を経て、2007年よりフリーのエディター/ライターに。女性誌やブランドムック、書籍、カタログなど紙媒体を中心に活動中。ファッション、ライフスタイル、カルチャーと、幅広いジャンルを手掛ける。プライベートでは、たまたま美ヶ原に行ったことをきっかけに開眼し、現在は日本各地の自然を巡るのが趣味に。北海道から鹿児島まで、大小関わらず美しい山に登り、壮大な滝を眺め、各地の秘湯につかる。地方移住を目指して模索中。
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