NEWS:中国アウトドアブームは本物か?『Asia Outdoor Trade Show 2017』レポート

中国では(多少の調整は入りつつも)数年前から空前のアウトドアブームが続いているといわれています。

それはかつての日本もそうであったように、経済発展による生活水準の向上が大きな要因になっているであろうことはひとまず容易に想像がつきます。おまけに中国にとってさらなる追い風は、2022年の北京冬期五輪開催です。政府はウィンタースポーツ人口を現在の1,000万人程度から3億人以上にまですると打ち出しているらしく、既に全国でスキー場をはじめホテルなど関連施設の開発が急ピッチで開発が進んでいるとか。まぁさすがに順調な右肩上がりではないにしても、まだしばらくはこの大きな流れが続きそうです。

一方、このサイトではおなじみとなっていますが、海外特にヨーロッパにおける複数のアウトドア見本市では、数年前から中国や韓国のアウトドア・ブランドが、アジアという枠を超えて賞を獲っていたりしています。それもアパレル製品やらバックパックといったアウトドア・ギアのなかでも一丁目一番地にあたるカテゴリで。ブームによって確実に品質も向上してきているようです。

とはいえこれらの情報はどこまでいっても、正直二次的な情報の集積という域を出ていません。中国のアウトドア・ブームは実際のところどうなのか?そして彼らのつくる製品は、話題先行ではなく、クオリティでも本物なのか?政府やメディアが作り上げた虚像ではないだろうか。中国をはじめとした(日本を除く)東アジアのアウトドア産業の実態を知る人は、今のところどこにもいないようです。

個人的には、曲がりなりにも日本だってこれまでアジアのアウトドア文化を引っ張ってきているわけで、この状況をまったく無視してよいわけは無いと思うのです。ただ、そんな危機感にも似た感情よりもむしろ、もし本当に中国が新たなアウトドア文化の発信源となってくるのであれば、そこには凡百のコピーまがいの中に(日本にもかつてあったような)世界を席巻する野心をもった未来のアウトドア・ギアの原石がひと粒でも埋もれているに違いない。そんな期待がモゾモゾと湧いてくるのを抑えられません。

日本から知ることのできる情報はこれが限界。だとしたら、実際に行って見てみるしかないでしょう。

ということで、こんなに近くで起きていたのにこれまで日本からはベールに包まれてきたといってよい中国のアウトドア産業・文化の”今”を確かめに、Outdoor Gearzineははじめて中国最大のアウトドア見本市『ASIA OUTDOOR TRADE SHOW』を取材してきました。ほとんどの人がはじめて目にするであろうイベントの模様をできる限り現場の熱をそのままに、早速ご紹介していきたいと思います。

ASIA OUTDOOR TRADE SHOWとは

『Asia Outdoor Trade Show』は中国四大古都の一つであり、北京・上海・深圳などに次ぐ大都市である南京で2006年から毎年行われている中国最大規模のアウトドア用品展示会です。既に欧州でアウトドア用品展示会『The OutDoor Show Friedrichshafen(OD)』を長く運営してきたドイツの運営企業と中国の運営会社との共同プロジェクトにより、アジア初となる大規模な業界向け展示会として実現しました。

2006年の第一回では174社の出展者が参加しましたが、当時はまだその半数以上を海外出展ブランドが占めていました。それが2016年には総数716社、驚くことにそのうち国内メーカーは74%にまで増加。またイベント4日間を通しての訪問者数でも2006年の16カ国6,743人から2016年には19,520人と、およそ3倍の規模を集めるまでに成長しています。本場ドイツODの現在の来場者数でさえ2万人弱ですから、この数は決して少なくはありません。

全体的なイベントのプログラム・構成内容はドイツのODをそのままもってきているようです。各ブランドの展示ブースをメインに、各種アワード、フォーラム、ファッションショーなどの一連のプログラムが展開されています。

その他「ランニングビレッジ」や「ウォータービレッジ」のような新しいアクティビティをフィーチャーして紹介・普及するスペースなどがちりばめられているのもドイツのODと同じ建て付け。

次からは他のアウトドア展示会と違った中国ならではの側面や、中国のアウトドア文化・産業の最新事情について紹介していきます。

熱気と混乱、中国アウトドア業界はゴールドラッシュの真っ只中

会場となる南京国際展示場周辺は、歴史と現在が入り混じる中心街から少し離れた場所に位置しています。そこは巨大な新興ビルが建ち並び、だだっ広くてよく整備された舗装道路が分断するように街を横切る、いわゆる中国の大都市にはよくある風景。

一日目の開場時間ちょうどに入場ゲートに着きました。すると何やら不穏な人だかりがゲート前を塞いでいます。のっけからハプニング発生か?

どうやらみんなの視線の先にはスマホ画面。実はこれ、事前登録をしていない人々の入場申請風景でした。業界向けにもかかわらずこのルーズな感じ、そしてスマホへの抵抗感のなさは、何というか新鮮。老若男女誰もが抵抗なく素直にスマホとQRコードとWeChatを駆使して次々と登録を済ませて次々と入口へ突入する様子は今の日本でもなかなか考えにくいです。

いよいよ開場、期待通り初日の開始時間からかなりの混み具合です。ざっと見た感じですがやはり若い世代が多いというのがベースとしてあります。そしてアウトドア関係者かよというテイストの人々、なんか子ども連れ、自撮り棒もったレポーター風のグループなど、日本や欧米では味わえないどことなくカオスな自由な感じがなかなかに刺激的です。

欧州と同じ構成であったとしても、ドイツのODと異なるのがやはり会場の空気感。各ブランドの展示ブースの雰囲気は欧米のガツガツしない、洗練されたそれとは基本的に別物です(特に国内メーカーのブース)。欧米のメジャーなアウトドアブランドを押しのけるようについ最近に産声を上げたばかりの国内メーカーなどが数多く軒を連ね、荒削りで熱気に溢れ、清濁入り混じったような百花繚乱の様相を見せています。

「アウトドアしてる俺カッコいい」なんて気取っている人は皆無、むしろこの波に乗って一山当ててやろうというギラギラしたオーラがダダ漏れです。中には下の写真のようなバーゲンセール風の商談風景も確認できました。

展示以外のイベントやセミナー風景でも(すべての時間帯がそうではないものの)他の展示会に比べて熱心なオーディエンスが多かった印象です。

グローバルブランドはやはり欧州が強い!?展示ブースの様子

やはり他の産業と同様にアウトドアでも欧州の影響が強く、特にドイツは大きなスペースで展開しているブランドが多かったですね。

今回アメリカ大陸のブランドで目立っていたのはKEENとGREGORYぐらい。ただこのイベントには出店していなかったものの、例えばアークテリクスなんかは中国で大人気のブランドですから、実際には日本と同じようにユーザーもそこまで欧・米と意識しているわけではないようです。

中国の展示を見ていて多く見られた業態が、海外ブランドの輸入代理やOEMなどを行ないながら、同時に自社ブランドを平行して育てているというパターン。海外ブランドの取扱いで実力やノウハウを身につけてから満を持して自社ブランドを開発していくという、ある意味ムダのない発展が可能なワケです。さすが世界の工場羨ましいわ。

欧米のブランドと比べても遜色ない、中国のメジャーなブランド

ここからはお待ちかね、現地で出会った「これは」と思う中国発のアウトドア・ブランドを紹介していきます。まずは現地の事情にある程度詳しい人から聞いてみて分かった、2017年、中国国内「勝ち組」大手ブランドから。

KAILAS

2003年、クライミングや登山、バイクの愛好家であったBaggio Zhongによってこのブランドが立ち上げられた当時、国内にはクライミングの専門ブランドはまったくといっていいほど存在していませんでした。彼は素材や生地の選択からデザイン、マーケティングなどあらゆるプロセスに携わりブランドを丁寧に育てていき、今では世界の最先端と肩を並べてもおかしくないレベルのプロダクトを幅広く開発する、中国屈指のプレミアムなクライミング・総合アウトドアブランドにまで成長しました。

ISPO・ODでダブル受賞したクライミングバックパック「EDGE」の実物を見て、確かにその質の高さには納得でしたが、実際にブースを一望して何よりも驚きだったのは、受賞アイテム以外のすべてのプロダクトも総じて素晴らしいクオリティであったことです。

先進的な機能と信頼性が求められるクライミングやトレイルラン、U.L.ハイキングなどの尖ったアクティビティにおいてしっかりとこだわりを感じさせてくれるプロダクトは尊敬に値します。それとなく漢字のあしらわれたデザインにはクールさすら感じました。

TOREAD

中国名「探路者=Path Finder=先駆者」を意味する名が冠せられたブランドは、1999年に創業するや否や着実に拡大をつづけ、彼らのHPによると現在中国国内で最大の規模を誇ります。ハイキングからランニングやスキーまで多様なアクティビティに対応するアパレル・シューズを中心に、バックパックやテントなど総合的なラインナップを揃え、国内に1,600以上の実店舗を展開していることなどから”中国のモンベル”と呼ぶ声も。今年はゴビ砂漠400kmで行われる世界で最も過酷なレースにおけるレーシングウェア開発での提携を発表するなど、量だけでなく先進的な技術への投資アピールにも余念がないという印象でした。

MOBI GARDEN

2003年に創業されたブランドであるという以外あまり詳細な情報がないのですが、アパレル・バックパック・テント・シュラフ・マット・ポール・チェアなど幅広い製品を扱う総合アウトドア・キャンピング用品ブランドで、toreadと同じように直営店での販売展開を行っているようです。こちらも一つ一つの製品がデザインやパーツの選択まで含めて丁寧に作られているのが印象的で、一見しただけでは中国のブランドだなんてまったく想像つきません。ロゴも含めて、普通にカッコいいです。

シュラフ、クックウェア、BtoB製品…。まだまだある注目の最新ブランド・アイテム

上に挙げた総合アウトドアブランド以外の専門ブランドでも、キラリと光るクオリティを感じさせるブランドが一握りですが確実に存在していました。中でも思わず足を止めずにいられなかったものの一つが、スリーピングバッグやダウンジャケットなどダウン製品を扱うブランドです。

中国の羽毛は欧州に比べて品質が劣るなんていわれていますが、平均としてはそうであったとしても、トップレベル同士で品質を比べれば決して劣るわけではありません。確かにまだ欧米の模倣という印象もなくはありませんが、とはいえ羽毛の品質へのこだわりはもちろんのこと、独自の撥水ダウン技術や外側生地やファスナーにも世界基準のブランドを採用したり、低温からウルトラライトまで多様なラインナップを揃えたりと、やっていることはヘタをすると現時点で日本よりも丁寧でバラエティに富んでいたりします。これにオリジナリティが加わり、デザインも洗練されてくるのは時間の問題です。要注目!

AEGISMAXはシュラフしか作っていないようですが、一つ一つのクオリティは群を抜いていました。特にU.L.系の製品なんかは今日本でも確実に売れるレベル。キルト欲しい。

総合ダウン製品ブランド、BLACK ICEはロゴも含めてビジュアル的には欧米のブランドと見紛うレベル。

正直ウェアに関してはまだまだイケてないデザインが多い中国にあって、かなり健闘していたのがSKYWARDSという北欧風なブランド。

もうひとつ、既にやばいレベルに達していると感じたのがチタン製品を扱うブランドです。細かいことは不明ですが、中国には質・量ともに豊富で多彩なラインナップを揃えたチタン・クックウェアメーカーが複数ありました。しかも日本や欧米では見ないであろう独自の食文化に対応したさまざまなアイテムが取り揃えられているのが面白い。

バーナーからカップまでの総合クックウェアブランド、Fire Mapleからは中国茶仕様の急須と酒器がシャレオツ。

洗練されたデザインが特徴のKeithからはお米が炊けるチタンクッカー。二層構造になっているため水の対流を妨げず、おいしいご飯が炊けるとか。

ストーブメーカーBRSの、ゴトクがチタン製の超軽量シングルガスストーブ。バーナー部分の形状も面白い。

清々しいくらいに◯EKIをパクっているようなトレッキングポール。でも確かにクオリティは高い。

靴紐に通すだけでしっかりと締められるシューレースストッパー。今年のアワード受賞プロダクトです。

展示されているテントのなかには、中国でしか絶対お見かけできなかったであろう、モンゴルの遊牧民が住む「ゲル」型テント。ある意味優雅。

こちらも今年のアワード受賞プロダクト、見ての通り水上自転車ですが何か。

展示会では縫製マシンのような工業用のBtoB製品も数多く見ることができました。こちらは縫製せず超音波によって生地同士を結合させてしまうという最新機械。昨年あたりからあのブランドで出てたあの製品はまさにこの技術なんじゃないでしょうか。

まとめ

道具のカテゴリによって多少の凸凹はありつつも、ハイエンドなブランドに関していえば、中国には既に想像以上に高いクオリティのブランドがゴロゴロと存在している、そう実感せざるを得ませんでした。日本に届く「作りが雑・コピー横行・ダサい」といった、いわゆる中国製品の固定概念は間違いなくあらためなければなりません。そうした未熟なブランドも少なくないことは確かですが、もはやそうしたブランドにはユーザーが振り向かなくなってきていることは、人の流れを見れば分かります。中国のアウトドア産業は爆発的な成長期から、徐々に成熟期に入ろうとしている、そんな機運も感じとることができた気がします。

いずれにしても、雑なブランドから激安ブランド、ツッコミどころ満載のブランド、ガチガチのハイエンドブランドと、今の中国アウトドアにはその物理的なパワーを最大限に活かし、多様なブランドが芽吹いては淘汰されるという非常に活発な、見逃せない市場であることは確かで、これからも中国ブランドには要注目です。引き続きOutdoor Gearzineでは今回眼を付けたブランドたちの最新状況をウォッチしていきたいと思います。

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