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Review:MILLET TYPHON 50000 「軽量・防水・透湿・ストレッチ」すべてを備えた全天候型ジャケット&パンツがまあ未来

「雨具」終了の足音が聞こえる

実用性と耐久性を兼ね備えながら、常に仕掛けることを忘れず、登山用具の新しい地平を切り開いてきたミレーがまたもやってくれました。

もはや300g程度の軽量なレインウェアは驚きもしなくなった昨今。各メーカーでは軽さに加えてこれまで以上にムレにくくなる高い透湿性や、より動きやすくするためにストレッチ生地を採用するなどして魅力を競い合っています。ここに来てレインウェア競争は「軽さ+α」というステージに入ったといって差し支えないでしょう。

そんななかミレーが2016SSに発売して好評を博した「W7」シリーズを早くもバージョンアップ。後継として今シーズン大幅にアップデートされた防水シェルは、軽くて動きやすく、しかもムレにくいだけでなく、何とジャケットに合わせる防水パンツがレインパンツ・トレッキングパンツ・イージーパンツの3タイプから選べるという、相変わらずの独特なアプローチの意欲作。名実共に晴れ・雨関係なく着続けられるウェアの登場は、もはや「雨具」や「レインウェア」という概念を超える「全天候型ウェア」市場の幕開けといえます。

新しもの好きの編集部がこのジャケットに手を伸ばさないわけがありません。さっそく今シーズン最も注目すべきジャケットのひとつ、テイフォン50000シリーズについて紹介します。

詳細レビュー

TYPHON 50000 ST JKT外観

TYPHON 50000 ST TREK PANT外観

主なスペックと評価

スペック
項目TYPHON 50000 ST JKTTYPHON 50000 ST TREK PANT
生地ドライエッジ™ ティフォン 50000 3層 天竺バック ナイロン100% 耐久撥水ドライエッジ™ ティフォン 50000 3層 天竺バック ナイロン100% 耐久撥水
サイズXS,S,M,L,XLXS,S,M,L,XL
カラーバリエーション7317(SAPHIR)
0247(BLACK-NOIR)
1458(KHAKI-VT ARGILE)
7360(BRIGHT ORANGE)
7365(CLOUD DANCER)
7317(SAPHIR)
0247(BLACK-NOIR)
1458(KHAKI-VT ARGILE)
重量(実測)289g(UK Sサイズ)210g(UK Mサイズ)
ポケットベンチレーションを兼ねた止水ジッパー付ハンドウォーマーポケットx2サイドジップポケットx2、バックジップポケットx1
フード上・後・前部で調整可能な密着式立体裁断フード
耐水性20,000mm20,000mm
透湿性50,000g/m2/24h50,000g/m2/24h
付属品ウェストベルト
評価
防水性★★★☆☆
透湿性★★★★☆
快適性★★★★☆
機動性★★★★☆
重量★★★☆☆
収納性★★★☆☆
耐久性★★★★☆
使い勝手★★★★★

ココがスゴイ

スタイリッシュなデザイン

前作「W7」シリーズでは良くも悪くも胴回り・袖周りのゆったりした日本モデル的サイズ感でした。最新モデルでは全体的に見直され、より細身・袖長に。海外モデルに多いスタイリッシュなフォルムへと変貌を遂げています。これは「自然も街も」とブランドが謳っていることから、普段使いでも違和感がないようにと意識していることが伺えます。

晴れでも雨でも着続けられる快適さ

独自素材の極薄メンブレン「ドライエッジ ティフォン50,000」は、20,000mmというレインウェアとして十分な耐水圧を備えていながら、50,000g/m2/24hという驚異的な透湿性を実現。ちなみにこの数字、例えばここ最近の軽量レインウェアでよく見かける「Pertex Shield+」が20,000g/m2/24hですから、数字だけ見るとケタ違いの成績です。そのメンブレンがしなやかな表地とサラサラで肌触りの良い15Dのニット状裏地で挟まれた3レイヤー構造は、軽くて柔らかくて自然な着心地。スリムなシルエットながら立体裁断とストレッチ効果によって動きやすさも抜群です。ゴワゴワ・シャリシャリといったかつての雨具はもはやそこにはありません。

全体的にストレッチの効いたつくりは歩行時の自然な動きを妨げず、どんな状況においても快適な着心地を提供してくれる。

レインウェアとは思えない、とびきりの快適さを得たジャケットを、雨の時だけしか着ないなんてもったいない。実際4月の晴れの日にハイキングで使いましたが、ハイクアップ時の汗だくの中でも着続けられる快適さと、ちょっとした風や寒さも防げるプロテクションの両立という使い勝手の良さを実感しました。

肌当たりの良いニット状の裏地は現時点レインウェアのなかではトップレベルの快適さ。ポケットの裏地はメッシュになっており、ベンチレーションの役割も兼ねている。

脇下のベンチレーションはないが、ポケットのメッシュ裏地の他フロントのダブルジッパーによって大きく前を開けることができ、通気性・快適性を確保。

ついにここまで来た!完全防水のトレッキングパンツ

時間と手間の短縮のために、軽量化のために、多くのハイカーが密かに待っていたであろう「レインウェアにもなるトレッキングパンツ」が、遂に実用レベルまで到達していました。これまであったような「撥水力の高いトレッキングパンツ」ではなく、正真正銘「完全防水」です。

そもそもこれまでのレインウェア(パンツ)を晴れの日に履いていたら、ムレるし、ゴワゴワするし、肌触りも悪いしでとてもではないですがすぐ脱いでしまうでしょう。そうした一般的なレインウェアの防水性能に「透湿性・伸縮性・(裏地の)快適性」が加わったことによってはじめて「普通に晴れの日にも穿けるレインパンツ」が実現しました。ジャケット同様ストレッチ性の高い生地を採用し、股・膝部分を中心に効果的な立体裁断が施され、下半身の大きな動きでもまったく快適な履き心地です。

裏地の肌触りについては素肌に穿いて十分違和感なしですが、肌触りや寒さが気になるという人は中にタイツを穿けばまったく問題ありません。トレッキングパンツとして考えるとかなり薄手の部類に入るため、これ1枚を素肌の上に着るだけなら夏限定がおすすめです。

雨の侵入を防ぐ調節部分

フードはヘルメットの上から被れるような大振りサイズながら、後頭部と両サイドにベルクロやドローコードが配置され、さらに額にも密着するよう伸縮性の生地が配置されているため顔の周りにすき間ができないように絶妙なサイズ調整が可能です。その他袖や裾周りも浸水を防ぎ、フィット感を高める仕組みがきちんと備わっています。

どんな大きさ・形でもフィットする細かい調節機能がついたフード

袖口は伸縮+ベルクロで、調節が便利なだけでなくフィット感も良い。

裾のドローコードを引くとウェストのバタつきを押さえられる。元に戻すためのボタンも押しやすい。

軽量・コンパクト・パッカブル

289g(ジャケットUK Sサイズ)という数字はもう驚きにはあたらないかもしれませんが、十分に軽量な部類に入ります。さらにジャケットはスタッフサックがなくても下の写真のように丸めてフードに収納、トレッキングパンツも後ろのポケットに収納することができるという嬉しい仕様です。

ここが気になる

撥水性

新品の状態から1分程度滝に当たっている時の様子。使い始めはしっかりと撥水をしてくれるので、やはり手入れは重要。

客観的なテストをしたわけでは無いのであくまでも印象ですが、風合いと着心地を高める表面の微細な起毛によって、撥水力の落ちるスピードがやや速い気がしました。シャワーや滝にある程度さらされてみたところ、はじめこそ見事に水滴をはじき返してくれたものの、数分で徐々に表面の起毛に引っかかってか水滴が残りやすくなり、結果、表面生地の濡れが早く訪れます。このときもちろん内側への浸水は起きていませんが、これによって表面の水分が水蒸気の通り道を狭めるため、透湿性は落ちると考えられます。この結果からの予測ですが、長い期間の降雨に関しては快適性にも限界がある可能性が高いです。

ベンチレーションを兼ねたジップポケットは扱いに困る場面も

ポケットを全開すれば通気性が高まるとはいえ、ポケットはポケットなワケで、通気性のためにポケットのジッパーを開けていると中の物が外へ落ちてしまう恐れがあります。やはりここをベンチレーションとして計算することはできません。もちろん、このウェア自体の透湿性能は優秀なのでベンチレーションがなければムレやすいというほど気になるわけではないのですが、せっかく付けるのであればやはり脇下やその他別の良き方法で実現して欲しいと思います。

「トレッキングパンツ」としてのさらなる機能向上を

ここまで十分に進歩だと思いますが、やや厳しいことを言うとトレッキングパンツとしてはまだまだ向上の余地があります。たとえば耐久性。薄くて軽い一方で、常に穿いているようなトレッキングパンツとして考えると、これ以上重くなっても構わないのでより丈夫さが欲しい。

あるいはウェスト周りのフィット感やサイズ調整機能。現状はどちらかというとレインウェア寄りの簡易なつくりですが、もう少しウェスト部分のクッション性・フィット感を高めたり、現行の付属ベルトではない、ずり落ちにくいウェスト調整機構にするなどしてよりフィット感や履き心地が向上すれば、トレッキングパンツとしてさらに完成度が高まります。

まとめ:どんなシーンにおすすめ?

レインウェアと行動着の垣根を超えていく「全天候型」ウェアTYPHON 50000は、3シーズンの防水アウターとしてはもちろん、晴れの日に羽織ってちょっとした防寒や、稜線上の風よけとしても最適。垢抜けたシルエットは家の玄関からピークまで違和感なく着られます。その意味で、使う人の目的を選ばず、これ1枚でさまざまなニーズに対応してくれる汎用性の高い使い勝手抜群のアウターといえるでしょう。

そのうえで、パンツに関しては3つのタイプからより用途に合った選択をするのがおすすめです。

まず雨具としてしか考えていないなら、パンツの上から穿くことが前提のゆったりとしたベーシックなレインパンツタイプを。ただこのレインパンツはいわゆるオーバーパンツ(従来の形)ではなく、エンジニアパンツをベースとしているため身体の動きに追随する、創造よりも快適な履き心地を提供してくれます。

その他通常のハイキングに1枚で(あるいはタイツと合わせて)穿いていきたいならば今回レビューしたトレックパンツを、同じ1枚で穿くけどより可動範囲を広く、動きやすさ優先ならばイージーパンツを選ぶのが基本的な選び方。3つのうちで個人的なおすすめは何といっても1枚でほぼ何でもこなせるトレックパンツですが、なにはともあれ実際にお店で試着してみて、この革命的な一着を体感してみてください!

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