比較レビュー:”ある”と”ない”とで世界が違う。アウトドアで使えそうなサングラスをいろいろかけ比べてみた
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上質なモデルを使ってみてはじめて分かる、サングラスの威力
登山のための道具をそろえようとなると、どうしてもまずはバックパックやウェア、シューズなどを思い浮かべる人が少なくないでしょう。それはそれで間違いではありませんが、それだけで終わらないのが山道具の奥深いところ。アウトドア・ギアのなかには、地味だけど、あるだけでこれまでの世界を一変するような効果をもったアイテムが、少なからずあります。今回紹介するサングラスは、まさにそんな隠れた必需品です。
筆者自身、サングラスがまぶしさを軽減するだけの役割しかないと思っていた時期も正直ありました。登山では地上よりも多い紫外線を浴びるため、白内障や角膜炎になるリスクが増えるといわれています。また、強風などで砂埃や虫などの異物が混入するリスクもあります。それらから眼を守るということはサングラスの重要な役割。さらにサングラスの効果はそれだけではありません。確かな品質のサングラスを装着することで、裸眼で見るよりもさらに良好な視界を確保することができるのです。
そこで、今回は各スポーツ用に特化したサングラスをかけ比べてみて、登山やトレイルランニングなど、山に使えるサングラスには一体どういう要素が必要なのかを検証してみました。
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今回比較したサングラスについて
各ブランドから発売されているサングラスをみてみると、ランニングをはじめサイクリング、ゴルフ、フィッシングなどの各種目に特化したモデルなども実際には多く見受けられます。今回は登山向けど真ん中のモデルから、登山にも使えるといったギリギリのモデルまで、多少強引に範囲を広げて候補を選び、最適モデルの検証だけでなく、登山やトレイルランニングなどに使える・使えないの基準を考えてみたいと思います。
レンズの種類については、後ほど説明しますが、4つのサングラスはどれもUVカット率99%以上、なおかつ視界の上下・斜めからくる反射光をカットし、日常世界がより鮮明に見える「偏光レンズ」モデルとなっています。レンズカラーや濃淡によっても効果は大きく変わってきますが、今回は景色やトレイルの陰影・コントラストを強調してくれるブラウン(レッド)系で、日影でも見えにくくならないよう濃すぎないレンズをできる限り揃えました。ということで今回比較したサングラスは以下の4モデル。
- KAENON HARD KORE (Matte Black , C28 Silver Mirror)
- mont-bell PLトレッキンググラス(ブラウン×ライトブラウン)
- Oakley latch (Asia fit) Prizm Tungsten Polarized
- SWANS STRIX I-0151
モンベルは名前の通りトレッキング向けに作られたモデル。SWANSは国産スポーツグラスのメジャーどころとして、典型的な形状と性能を意識した、ベンチマーク的な位置づけ。Oakleyももちろんスポーツ向けに特化したモデルが数多く出されているのですが、同時にファッション性にも長けていることから、普段使いにも評判のモデルがどこまで使えるか、Oakleyファンには申し訳ないですがあえてのチョイスです。最後に、耳慣れないブランドKAENONは、ヨットやセーリングの世界では有名な、知る人ぞ知るカリフォルニア発のブランド。日本でもこだわりの強いアウトドア・セレクトショップなどでごく少量取り扱われているのみで、前々から気になっていたモデルです。このサイトでも以前、TOAD3レポートで紹介しています。
評価項目については以下の6項目を設定しました。
- 視認性・・・レンズを通してみる視界の見えやすさのこと。紫外線透過率、可視光線透過率、雑光カット率(偏光度)などから評価。
- 視野の広さ・・・もちろん視界は広ければ広い方が良いです。特にオフロードを走るときなどは特に足元が重要になってきます。
- 収納性・・・どれだけコンパクトになるか。収納時にストレスはないか。
- 耐久性・・・今回は衝撃を加えるなどのテストは行わず、フレームの太さやレンズの厚さ等のインプレッションで評価しています。
- ホールド力とフィット感・・・サングラスを着用した状態で激しい運動やランニングをしました。また、強風時に流入してくる風の度合いを検証するために扇風機を使用しました。
- 重量・・・カタログ数値と実際に感じた重さで評価。
テスト結果&スペック比較表
各モデルのインプレッション
今回の一押しサングラス:KAENON HARD KORE
今回筆者が圧倒的に惚れ込んだのが、KAENON HARD KOREです。正直なところ、このサイトで取り上げられるまでこのブランドを聞いたことも見たこともありませんでした。あまり期待していなかった分、その品質の高さには驚きを隠せずにはいられませんでした。
最も気に入った点が、視界が格段に鮮明になる点でした。コントラスが高められ、物や風景の境界線がはっきりと見えやすくなり、雑光や反射光が全てカットされるので、裸眼のときよりも格段に視界が良好になります。眩しいときのみ着用するのではなく、アクティビティのときは常に着用していたいと思わせるモデルでした。KEANON独自開発のレンズ素材SR-91とわずか30ミクロンの薄さで開発された偏光フィルムGlare86の組み合わせがこの視界を作り出してくれているのです。また、フレーム、レンズともに頑丈であり傷がつきにくくガシガシ使えるためノンストレスで使用できます。重量は42gと決して軽い方ではないですが、ノーズパッドとテンプル部分の滑り止めによりしっかり頭部にホールドされ、さらには前後のバランスが良く、頭を下げ足元を見たり、頭を思いっきり振るような激しい運動をしない限り走ったりしてもずれることはありませんでした。大きめのフレームとレンズで眼が全て覆われるためピッタリとガードされ、隙間から入る風、埃、虫、紫外線からも守ってくれます。もともとKAENONは米国でセーリング競技のために開発されたサングラスですので激しい運動にも耐えられる作りとなっているわけです。
良好な視界、頑丈な作り、ホールドの良さ、これらを総合してみると登山にうってつけのサングラスだと思います。百聞は一見にしかず。ぜひ試して見てください。
登山での使い勝手を追求、コスパも◎:mont-bell PLトレッキンググラス
フレーム部分が折り畳み式になっているため、驚くほどコンパクトになりポケットにも入るサイズで収納できるのでかなりの高ポイントです。軽量でかけ心地も文句なし。しかし、折りたたむことができる一方で片手のみで収納・装着することが困難になってしまうデメリットもあります。フィールドでは両手で操作することよりも圧倒的に片手操作の方が多いため、どうしても見過ごすことができない減点ポイントですね。また、レンズが全てフレームで覆われているため、視野が狭く足元の視界も遮られてしまうこともあります。やはり、KAENON、SWANSのようにアンダーリム がないモデルだと足元の視界も良好です。パッキングの際にスペースを取らないため予備のサングラスとして携行していくのもありかと思います。
登山だけでなくランニングにも最適:SWANS STRIX I-0151
手軽にレンズ交換、アンダーリム脱着ができます。ホールド力に関して4モデル中トップクラスです。特にノーズパッドの形状を自分の鼻の形に合わすことができることはかなりの高評価。おかげで、走ってもサングラスがグラついたりすることは一切ありませんでした。また、レンズが大きくアンダーリムも取り外すことができるため視野を広く維持することができます。アンダーリムを装着することにより視野は狭くなりますが、風の流入は減少させることができます。マイナスポイントとして、テンプル部分のラバーが外側にまで及んでいることによって、収納時に擦れて引っかかる煩わしさがありました。通常の登山やトレイルランニングに最適なモデルかと思います。
日常使いを中心に考えたいならば:Oakley latch (Asia fit) Prizm Tungsten Polarized
ヒンジ部分にクリップシステムが搭載され、Tシャツのネック部分などにラッチ(かけ止め)しておくことができるため、latchというモデル名になっているみたいです。ちょっとサングラスを外したいときには有難い機能ですね。今回の検証で激しい運動をしても振り落とされることなくしっかりとラッチしてくれました。レンズがボストン型でフレームが全周覆われているため視界は決して広いとは言えません。また、レンズにカーブがなく隙間が生じてしまうため、風、埃、虫、光の侵入も防ぐことはできませんでした。軽量ですが、フィット感はなく、どうしても走るとサングラスがズレて動いてしまいます。しかしながら、レンズの視認性については素晴らしく、KAENON HARD KOREと同様、裸眼時よりも視界が良好になりました。以上のことを踏まえると、どちらかというと登山よりも日常使いにオススメしたいモデルとなります。