比較レビュー:これから登山をはじめる人に最適な入門バックパックを比べてみた

各項目詳細レビュー

快適性(フィット感・肌当たりのよさ・通気性)

重い荷物を背負っていかに気持ちよく、いかに疲れずに運べるかということはバックパックの最も基本的な役割。そうだとすればバックパックにおいて最重要ポイントのひとつはまず快適性で、主に背中・肩・腰といったパックと接触する部分のフィット感や肌当たり(クッション性)、そして長時間背負っての通気性の良さを中心に評価しています。

この項目では背面メッシュ構造をもつフューチュラプロ36の気持ちよさが頭ひとつ抜けていました。同じ背面メッシュのズール40も同じくらい快適であったものの、肩や腰のつなぎ目部分のスムーズさではフューチュラの方がまだやや上。その底力には感服です。その他、背面メッシュ以外のモデルではイントレピッド40リチウムクレスト40+7のようなクッション性の高いパッドを荷重がかかる部分に効果的に配置しているモデルの優秀さが目立ちました。特に重荷状態での違和感の少なさが秀逸で、ハードな使用であればこちらの方が快適さを実感できるのではないでしょうか。

背面の快適性・通気性は高いに越したことはないが、それによって失う性能もある。自分の着ている装備や季節などとの相性も考えて、必要最低限にとどめるのが賢い選択。

安定性(適正な荷重位置・重心のブレにくさ)

登山では、ほんの短い距離だとしても絶対に足を滑らせてはならないポイントがちょくちょく存在します。そんな場所を10kg近くの荷物を背負って通過するとなると、一瞬の突風や突出した岩・木の枝によるふらつきには想像以上に気をつけなければなりません。もちろんそれ以前に荷重がしっかりと腰・背中・肩に分散してくれないバックパックは必要以上に疲れやすく、長時間背負う気にもなれません。

そうした安全な行動にとって大切なのがこの安定性です。背負って立ったときに身体の近くに荷重がかかるように背負えるか、身体が左右に振られたり、下りでの強い衝撃でもブレずに安定した歩行ができるかどうかがこの項目での評価ポイント。今回最も安定性の高さが目立ったのは、他のどのモデルにもない背面システムをもったイントレピッド40。背面のフレーム・PEプレートが背中にフィットしてくれるだけでなく、PEプレートを内蔵したヒップベルトが連動して背面フレームの荷重をしっかりと伝達するため、必要以上に肩に負担がかからず、腰にしっかりと荷重が乗ってくれます。がっちりと背中~腰を固定するため、身体が大きく揺れても簡単に振られることはまずありません。

一方、背面メッシュのパックは構造的に背中の空間の分だけ重心がやや後方よりになってしまうことから、安定性に関しては不利と言わざるを得ません。5kg前後の比較的軽い荷物までならばあまり気にする必要はありませんが、10kgを超えるようになってくると徐々に後ろに引っ張られるように感じられてくるので、重荷が多くなる可能性が高い人はよくよく考慮するべきでしょう。

収納性

大きな意味でいえばパッキングのしやすさですが、もちろんそれは単に容量が大きければ大きいほどいいということではありません。今回の比較はすべてのモデルが35~45Lとそこまで容量差があるわけではなく、パッキングのしやすさはその容量差以上に各所に取り付けられたジッパーやポケット、アタッチメント類によるものが大きいといえます。そこで試しに食糧や燃料を含めた春秋1泊2日のソロテント泊の荷物(with一眼レフカメラ機材)を実際に収納してパッキングのしやすさ、収容能力や利便性、拡張性を比較してみました。その様子収めたのが下の写真です。

1泊2日テント泊の荷物を詰めてみた(正面・右側面)。上段左からOsprey ケストレル38、karrimor intrepid 40、MAMMUT LITHIUM CREST 40+7、MILLET サースフェー40+5、GREGORY ズール 40、下段左からGREGORY スタウト 35、deuter フューチュラプロ36、mont-bell キトラパック 40、karrimor ridge 40、GRANITE GEAR LUTSEN 45

結果はおすすめのところでも触れましたが、ケストレル38の多彩な収納によるパッキングのしやすさが特に際立っていました。38Lと決して今回のなかでは大きくはない容量にもかかわらず、外部ポケットの収納性とストラップ・ループ類の万能性がハンパないです。その他次点では、メイン収納が大きめでフロントの収納も便利なリチウムクレスト40+7、メイン収納は小さいながらも余裕のあるトップポケットや外部アタッチメントが揃っているスタウト35、メイン収納が大容量なうえに便利なポケット・ストラップが豊富なルツェン45などが挙げられます。

一方でフューチュラプロ36などは一見ギリギリおさまっている様に見えますが、スリーピングパッドに関しては天蓋のストラップの間に挟むという、ハッキリいって苦しまぎれの方法(キトラパック40リッジ40も同様で、これらのパックを選ぶ場合はエアマットを選ぶとか、パッドを切って分割するといった工夫が必要でしょう)。これ以上荷物が増えると天蓋は伸びないし、外部のポケットもあまり伸縮しないので入るものも限られてくるので正直ギリギリです。

使いやすさ

ここ数年でバックパックは単なる袋としての機能だけでなく、さまざまな面でスムーズな行動をアシストしてくれる機能が増えてきました。そうした収納性以外での使い勝手を評価したのがこの項目です。例えば荷物へのアクセスしやすさ、荷物の多少によってパックサイズを柔軟に調節できるか、身長や体型に合わせて背面長を調節できるか、パックカバーの有無、その他このモデルにしかない便利な機能があるかなどが評価基準です。

するとここでもケストレル38のクオリティの高さが目立つ結果に。背面調節機能をはじめ、メイン収納にダイレクトにアクセスできるサイドジッパー、立ったままトレッキングポールを一時的に固定できるアタッチメント、メイン収納とは別にハイドレーションポケットを設けるなど、あったら便利という機能がもれなく搭載されているという抜け目なさには、ただただ感嘆するしかありません。

またここまでではないにしても、グレゴリーのズール40も使い勝手の良さでは負けてはいません。よりアクセスしやすい逆U字型のジッパーによるメインアクセスや、開閉が容易なバックルやコードロック、固定しやすく飲みやすいハイドレーションチューブホルダーなど、モダンで小気味よい機能たちは使っていて楽しくなります。その他モンベルのキトラパック40には、このパックにしかない便利な機能が多く注目です。たとえばボトルが取り出しやすいように斜めに開いたサイドポケットや、雨水が浸入しにくいように肩まで覆えるパックカバーなどは、さすが日本の気候を前提に作っているなと感心してしまいます。

メイン収納にアクセスしやすいフロントのジッパーアクセス。ただしアクセスできるのが下部だけ(左端)だと実際には意外と使えない。

トップリッド(天蓋)の高さを上下できると(左)、荷物が多くなった時に上に伸びなかったりして型崩れすること(右)が少なくて済む。

自分の体型にフィットさせることは中型以上のバックパックでは特に重要なので、背面長調節(左)は是非とも欲しい機能。

あると益々便利な機能の数々。キトラパック40のサイドポケット(左上)とパックカバー(左下)、ケストレル38のハイドレーションポケット(中上)とポールアタッチメント(中下)、ズール40のメイン収納コードロック(右上)とハイドレーションチューブホルダー(右下)

耐久性・重量

限られたリソースでなおかつ短期間でテストするには現実的に難しい項目である耐久性に関しては、正直、評価項目に加えることも躊躇われました。ただバックパックにとって欠かせない部分であることは確かなので、ここでは生地素材のスペック的な比較、そして縫製やストラップ類の体感による丈夫さを見ることによって評価としています。

その上で、長くアルパイン向けのザックを製造してきた実績を誇るミレーのサースフェー40+5は強度に優れたコーデュラナイロンを採用するなど耐久性の高さは間違いないと言っていいでしょう。一方でグラナイトギアのルツェン45は軽量化を意識している向きもあり、採用されている生地は100D&210Dの薄手素材であったりストラップは非常に細くバックルの強度も脆いため、あまり過大な信用は禁物と感じました。

次に重量について、そりゃ軽い方がいいに決まっています。軽さを追求したウルトラライト系のバックパックなどは40L近くの容量で1kgを切るのがデフォ。ただ、今回のカテゴリのようなオーソドックスな機能・快適性を求めるとどうしても1.5kg前後にはなってきてしまう、それがこれまでの常識でした。

そんななか今シーズンリニューアルされたのスタウト35の登場はちょっとした事件といっていいでしょう。公称1130g(カバー含めて実測1220g)という重量は昨年比較レビューを行った軽量バックパックと比べても遜色ない程の軽さ。今回候補の比較でいっても、イントレピッド40の1700gと比較してペットボトル1本以上の重量差となるとさすがに無視できない程度になってきています。

現段階ではさすがに前モデルほどのラグジュアリーさは失われてしまったのも事実ですが、ただこれだけの機能・性能を備えながらここまで軽くなるのだという実物が出てしまった事実は重い。今後はこの重量ラインでの快適性競争がはじまってもおかしくはありません。まさに「軽さ」はあらゆる道具における競争の火種というわけです。

まとめ

はじめの方にも書いたとおり、今回のテストで取り上げたアイテムたちはどれも良くできたおすすめ候補であることは間違いありませんが、こうして多角的に比較することで一見同じようなベーシックな作りであってもさまざまな得意・不得意があるということが分かってもらえたかと思います。今回の候補たちはバックパックのなかでも最もベーシックで最も利用範囲が広いといえるカテゴリであるだけに、その微妙な向き・不向きの違いまで考慮して選べると非常に満足のいく選択ができるはずですので、是非とも自分の実力や志向と照らし合わせて参考にしてみてください。

ただバックパックというヤツはどこまで机上で頭を悩ませても、実際に背負って歩いてみなければ自分にとって最適かどうかは分からないという厄介な性格のギアであることも確か(その辺の失敗しないバックパックの選び方についてはこちらの記事にまとめています)。その意味でこの結果はあくまでも参考にしてもらったうえで、購入に際してはまず実際にお店でフィッティングしてみることが何よりも重要であるということを最後にアドバイスとして付け加えておきます(とか言っておきながら身も蓋もない話ですが、実際にはお店に行って餡子がつまっただけのサンプルを背負っても本当の性能は分からず、こればかりはどんな人間でもTry&Errorで経験を積むしかありません!)。

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