比較レビュー:距離に負けない。悪路に怯まない。ロングディスタンス向けトレイルランニングシューズ履き比べ
前ページでは比較したモデルのランキングと、評価・スペックの一覧、そしてそれに基づくおすすめを紹介しました。ここからはその評価について、どのような基準で評価したのか、なぜそのような評価になったのかについて補足していきます。
各項目詳細レビュー
快適性
快適性のバランスが高いのはTerraultra G 260。アウターソールに縦横に入ったスリットのおかげで、しなやかな走りが可能で、ゼロドロップなのも相まってまさに裸足感覚で快適に走り続けられます。スピードゴート3・カルドラドIIIもホールド感、ソールのしなやかさのバランスがよく、ストレスなく快適性は高め。水につけた時の水はけは、5種の中ではカルドラドIIIがもっともよく、通気性の高さを伺わせてくれました。
重量
重量はTerraultra G 260が260gと軽く、実重量・実走ともにとても軽快です。これの重量であれば長距離モデルではかなり軽量な分類です。実走ではスピードゴート3が実重量以上の軽さを感じます。これはソールのフォア側が反り上がっているメタロッカージオメトリーのおかげで、足運びが軽くなっているからでしょう。モーメンタスは公式重量こそ283gとなっていますが、実測値は339gとかなりかけ離れて、実走の感覚も確かにこんなもんかな、といった重量感でした。
グリップ
ビブラム・メガグリップ採用のスピードゴート3・モーメンタスと、G-GripのTerraultra G 260。この3足のグリップは安心感を与えてくれます。下りでも安心して足を置きに行けます。しかしメガグリップはG-Gripに比べると耐久性の点で劣るので、★1つマイナスとしましたが、両ソールともに、ドライでもウェットでもしっかり噛み付いてグリップしてくれます。ウルトララプターもグリップは良いのですが、今回のテストで他のシューズに比べ削れが目立ったので、耐久性の低さが心配なところ。
クッション
スピードゴート3が圧倒的。さすがマシュマロシューズと呼ばれていることだけあります。ただ柔らかいだけでなく、適度な反発性もあるので、力が逃げずソールのソリのおかげもありそのまま推進力となり、グイグイ進ませてくれます。特に下りでのダメージ低減は非常に高いです。ウルトララプターも硬めですが、クッションニングはしっかりあり、硬い路面でもダメージを軽減してくれます。
インソールは、スピードゴート・ウルトララプターは、サロモンやナイキも採用しているOrtholite社のインソールを採用。カルドラドIIIはアーチサポートのついた、かなりしっかりとしたインソールを使用しています。
安定性
安定感ではウルトララプターが圧勝です。靴全体のホールド感、接地時の安定感は抜群です。踵のホールド、アッパーの側面強化、つま先のプロテクションなど、やはり軽量性とトレードオフしたこの安定感は捨てがたい。比較的走りやすいトレイルでは持て余してしまいそうですが、突き上げの多いガレ場の様なトレイルで真価を発揮してくれます。モーメンタス・カルドラドIIIも踵部分の高いホールド感得られるので、接地時の安定感は高めです。
まとめ
よほどのトップ選手でない限りは、長距離を走るために重要なのはやはり快適性です。どれだけクッション性など他の性能が優れていても、非常に長い時間履き続けることになるので、いかにストレスを減らして履き続けられるかが重要になってきます。
今回レビューしたなかで、その快適性が高かったのはinov-8 Terraultra G 260、Columbia Montrail カルドラドIIIでした。この2モデルはアッパー・ソールがとてもしなやかで通気もよく、長い時間はいてもストレスが非常に少なかったです。これらのシューズを選んでおけば間違い無いでしょう。
しかし長距離レースでは、途中で荷物を預けられる(ドロップバッグ)ことがほとんどです。先ほどのシューズを標準シューズとして捉えて、岩がゴロゴロしているような路面が悪い場面ではウルトララプターのようなプロテクションの高いモデル、クッションに頼りたい人はHoka one one スピードゴート3のようなクッション性の高いシューズと、コースの高低差・路面などの情報からシューズを使い分けることができれば、完走へも繋がります。
シューズは自分の足りない部分を補ってくれるし、持っているものを伸ばしてくれる道具でもあります。レースのためにあれこれ迷いながら道具を選ぶのも長距離レースの醍醐味。普段から自分を見つめて道具と向き合ってみれば、自ずと自分にぴったりなシューズが見つかるはずです!