First Look:2017シーズン最注目”レインウェア” Rab(ラブ)Kinetic Plus Jacket(キネティックプラスジャケット)
雨対策としてアウトドアに欠かせないジャケットといえばレインウェアですが、多少着心地はよくなったとはいえまだゴワゴワ・シャカシャカが気になる。そうなると当然、晴れている間はバックパックの中で荷物になってしまいます。
それじゃってことで、晴れているときでも快適に羽織れ、最低限の雨なら耐えてくれるアウターとして生み出されたのがソフトシェル。ただしこれは「防水」ジャケットではないので、日本ではよほどのことがない限り結局のところ、レインウェアを携帯せざるを得なかったのが現状でした。
そんなわけで行動中でも普通に(快適に)着られ、なおかつ雨でも慌てなくてすむ完全防水のジャケットというのは長らくハイカーたちの夢であったといっても言い過ぎではないでしょう。その夢を叶えてくれる日が遂に来ました。イギリスが誇るハイエンド・アウトドアブランドRabの最新ジャケットKinetic Plus Jacketの登場です。
昨年の新製品見本市(@ドイツ)で初めて見た瞬間「これはヤバい事件だ」と直感。もちろんこれまでにもストレッチするレインウェアというのは存在していましたが、ここまで快適性と防水性を高いレベルで両立したモデルはぼくの知る限りはじめて。ソフトシェルでもあり、レインウェアでもある。その両方ともいえるし、そのどちらでもない。発売されるや否や、果たして米Backpacker誌でもEditor’s Choice Award 2017を受賞するなど今年のアウトドアギアのなかでも注目度はピカ一です。一方、日本では輸入代理店の大きさからか扱われ方もひっそりしているみたいなので、まだこのジャケットを知らない人たちのために、しなやかで動きやすく雨具にもなる、今年最も注目すべきジャケットについて紹介します。
目次
Rab Kinetic Plus Jacket ファーストインプレッション
スリムなシルエット(外観)
主な仕様
項目 | Rab Kinetic Plus Jacket |
---|---|
生地 | ポリエステル100%(Proflex) |
サイズ | S/M/L |
カラーバリエーション | Ink/Maple/Steel |
重量 | 275g(Sサイズ) |
ポケット | 止水ジッパー付ハンドウォーマーポケットx2 |
フード | 後頭部で調整可能な密着式フード |
耐水性 | 10,000mm |
透湿性 | 35,000cc/sqm/24h |
付属品 | スタッフサック |
快適さと動きやすさを両立した着心地と雨でも安心の高プロテクション
まず袖を通した直感ですが、レインウェア感ゼロ。
スリムフィットにもかかわらず、耐久性とストレッチ性のバランスを見定めるのに9ヶ月を費やしたというその絶妙な動きやすさ、微細なニットによる裏地のソフトな肌触りなどは「まるでロングスリーブのTシャツを着ているよう(Rabディレクター Scott Yorko)」といっても許されるレベルです。 重さも実測275gって、今では驚きこそないものの、普通に軽すぎ。
それを可能にしたのが独自開発の伸縮性・透湿性・防水性を備えた独自素材「Proflex」。数字だけで単純な評価はできませんが、防水レベルを表す数値で10,000mmというと、Polartec Neoshellなどと同じ値で、レインウェアと名乗れる最低限の防水性を備えているといえます。長時間・長期にわたる本降りでは厳しいかもしれませんが、昨今の活用方法ではそこまでの備えは必要ない場合が多く、日帰り~1泊中心の山行であれば問題なさそう。もちろん裏地にはシームテープが貼られていますし、ジッパーはメインが耐久性の高いビスロンジッパー、ポケットは止水ジッパーです。
一方透湿性を表す数値は35,000cc/sqm/24h。レインウェアで考えた場合、この数値はこれまでであったら10,000以上でかなり高いと思われるくらいなので、ここまで高ければ雨天時はもちろん、好天時にアウターとして羽織っていてもムレて不快ということはまずないんではないでしょうか。
細かく行き届いた快適・軽量・丈夫さへの配慮
袖口はベルクロ留め。甲側がやや伸びており水滴が浸入しにくい形状です。さらに袖や裾の表地は防水性を高めるため(?)に縫い目を極力排したステッチフリーな仕立てになっており、その細部まで徹底された品質へのこだわりはさすが。
フードは頭に密着するような小さいサイズで、後頭部には調節用のベルクロが、額には伸縮性の生地が配置されている(下写真)ので浸水を防いでくれるだけでなくフィット感も非常にいい(ヘルメットはフードの上に被る)。
ここが気になる
正直期待しかないのですが、一応まだ使い込む前なので現状でやや気になる点をあえて挙げると、生地の耐久性については未知数なところがあります。使う時間も長くなるのでバックパックなど擦れる部分は多少気になります。表地はソフトシェルのようにしっとりして、微妙に起毛して滑りにくくなっているため尖ったモノには要注意です。
まとめ:どんなシーンにおすすめ?
ソフトシェルとしては考えられない程のプロテクション、レインウェアとしても信じられないほどの快適さと柔らかさ、動きやすさを可能にした革新的なKinetic Plus Jacketは、春~秋口にかけて、激しい行動と厳しい気象環境が同居する、短い日数のアクティビティにピッタリです。さらに洗練されたシルエットと着心地のよさは、街で普段使いしても違和感なく活躍してくれます。
たとえば梅雨時や長期縦走を除いた3シーズンのハイキング。ちょっと肌寒い朝にコイツを羽織って家を出てしまえば、その先晴れようが、風が吹こうが、雨が降ろうが脱ぐ必要はありません。万が一これで寒かった場合には、この上からダウンジャケットをさっと重ね着するでしょう。もちろんこれまで携帯していた雨具は家でお休み(これ以上の軽量化策はあるでしょうか!)。上手くすればそんなバラ色の未来が待っているかもしれません。ソフトシェルとレインウェア(ハードシェル)の境界を鮮やかに取り去ってみせた、正真正銘の次世代レインジャケットを、みなさんもぜひ体感してみてはいかがでしょうか。