【双眼鏡嫌いが試す!】防振双眼鏡 「ケンコー VCスマート14×30WP」防水機能付きで初春の北海道の森を歩いてみた結果
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筆者は野生動物や野鳥などを超望遠レンズで撮影するのに、なぜか双眼鏡は苦手。そんな筆者に「防振双眼鏡にすると劇的に見やすくなりますよ」とのアドバイスがありました。そこで防振双眼鏡にすると本当に見やすくなるのか? 「VCスマート14×30WP」で試してみます。
目次
ケンコー防振双眼鏡「VCスマート14×30WP」とは
ケンコーブランドのフラッグシップモデルとなる防振双眼鏡
北海道でレンズやカメラのレビューやテストをしている筆者は、カメラ用の超望遠レンズで野生動物や野鳥を撮ることが多くあります。そんなときに双眼鏡を併用すれば、便利なのはわかっているのですが、どうも双眼鏡が苦手なのです。
そんな相談をしたところ、エントリー機ではなく中級機以上を使うことをおすすめするというアドバイスを受けて、実際に中級モデルケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」を試した様子を過去記事「【双眼鏡嫌いの筆者がおすすめ】エントリー機との光学性能の違いに驚く軽量高性能の中級機ケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」はすごくいい」で紹介したのですが、それでも普段から見慣れていないからか? 双眼鏡を使っていると自分の構え方が悪いのか、画像の細かな揺れとぶれが気になると相談したところ「手ぶれ補正機構付きの防振双眼鏡を試したことはありますか?」との回答が……。
カメラ用の望遠レンズにおいては、クルマにおけるパワステ並みに普及しており、すでにその恩恵にあやかっていることすら忘れはじめている手ぶれ補正機構。カメラ用レンズの場合は○段というように、その効果を記載するのですが、5段くらいは当たり前で、7段や8段といった効果のあるレンズも存在します。おかげで、最近では1000mm前後という超望遠レンズも三脚なしの手持ちで撮影できるほどです。
しかし、確かに筆者は手ぶれ補正機構を搭載した双眼鏡を使ったことはありません。双眼鏡でも本当に効くのかはかなり半信半疑だったのですが、そんな流れでケンコー・トキナーが取り扱う、防振望遠鏡のフラグシップモデルケンコー防振双眼鏡「VCスマート14×30W」(実勢価格:87,000円前後)をテストする機会を得たのです。
「VCスマート14×30WP」がどんな双眼鏡かといえば、倍率は14倍、防振補正角±3°にまで対応する手ブレ補正機構を搭載した防水仕様の双眼鏡。名称からもわかるとおり対物レンズの有効径は30mmです。
また、フラッグシップモデルにふさわしくすべてのレンズとプリズム透過面に光の透過を最大限に上げるフルマルチコート(高透過多層膜)仕様。また、女性や手の小さな方でも握りやすいように仕上げられたフラット設計のボディは眼幅最大時で約147×51×124mm、重さは約535gと小型軽量に仕上げられているといいます。
14倍と高倍率で防振機構を搭載した小型でコンパクトな防水仕様の望遠鏡というわけです。そんな「VCスマート14×30WP」をシマエナガやエゾリス、オジロワシなども観察できる筆者お気に入りのお散歩コースで実際に試してみました。
おすすめのポイント
- 防振角±3°で大きなぶれに対応
- 倍率14倍とより大きく対象を観察できる
- 単3形アルカリ乾電池1本で連続約10時間駆動
- 10分パワーオフや遮光スライドシャッターを搭載
- 防水設計で突然の雨や雨天の野外ライブにも対応
気になったポイント
- 電池残量がわかるとより安心感がある
- ピントリングがもう少し滑らかだとうれしい
主なスペックと評価
項目 | ケンコー VCスマート14×30W |
---|---|
倍率 | 14倍 |
対物レンズ有効径 | 30mm |
コーティング | フルマルチコート |
実視界 | 4.4° |
ひとみ径 | 2.1mm |
明るさ | 4.4 |
1000m先の視野 | 76.8m |
アイレリーフ | 14.0mm |
眼幅 | 53.5~75mm |
最短合焦距離 | 3.5m |
サイズ(眼幅最大時) | 147×51×124mm |
質量 | 535g |
材質 | 本体ボディ:ポリカーボネイト樹脂/本体カバー:ABS樹脂/目当てラバー:NBR/転輪ラバー:ABS樹脂 |
付属品 | ポーチ、ストラップ |
Outdoor Gearzine評価 | |
デザイン | ★★★☆☆ |
見やすさ | ★★★★★ |
使いやすさ | ★★★★☆ |
携帯性 | ★★★★☆ |
コストパフォーマンス | ★★★★☆ |
満足度 | ★★★★★ |
詳細レビュー
愕然とするくらい効く「手ぶれ補正」に感動する
カメラや写真を趣味にしている方ならわかってくれるかと思うのですが、カメラ用のレンズにとっては、手ぶれ補正はすでに当たり前過ぎるくらいに、当たり前の機能なのです。あまりにも日常的過ぎて「このレンズは手ぶれ補正が付いているかな?」などは思わず、意識するにしても「このレンズ手ぶれ補正は何段?」と手ぶれ補正搭載が前提の疑問だったりします。そのため、双眼鏡の手ぶれ補正が付いたくらいでそんなに違うの? というのが素直な気持ちでした。
しかし、実際に使ってみると「ちょっと愕然とするくらい手ぶれ補正のオンオフで違うのです」。
ケンコー・トキナーの公式WEBサイトなどでは「VCスマート14×30WP」のキャッチコピーが「手ブレが消えると、感動が現れる!」なのですが、実際に試すまでは筆者はかなり大げさじゃないかと思っていました。ですが、実際に「VCスマート14×30WP」で手ぶれ補正のオンオフを試すと、本当にこんなに違うのだと感動するのです。
「VCスマート14×30WP」の手ぶれ補正はスライドスイッチで簡単にオンオフできるのですが、オンにすると、オフの状態では双眼鏡で観察している画像が細かく揺れており、微振動する画像を観察しているのでどうも疲れるのですが、手ぶれ補正をオンした途端、この細かな揺れが急に解消されるのです。大きな揺れもゆっくりとしたものになります。
すると、双眼鏡で眺めている対象を細部まで詳細に観察する余裕が生まれます。野鳥であれば、それまでは姿全体を眺めていたのに「VCスマート14×30WP」では、その表情であったり、細かな仕草であったりと細部を観察することができるのです。さらにいうなら、遠くの時計を双眼鏡で眺めたときに手ぶれ補正なしの双眼鏡でも時間を確認することはできるのですが、その時計の文字盤の細部や秒針の動きなどを確認する余裕はないことが筆者は多いのですが、手ぶれ補正ありだとそれらが詳細に確認できます。
ちなみにスライドスイッチでオンオフできる「VCスマート14×30WP」の手ぶれ補正ですが、10分のオートオフ機能がついているので、切り忘れによる電池の消耗を予防してくれます。また、手ぶれ補正機構の電源も単3形アルカリ乾電池なのでコンビニなどでも簡単に入手できますし、1本で連続約10時間も駆動するので長時間の使用も安心です。ただし、電池残量表示がないので、できれば予備の電池を1本用意しておくと安心でしょう。電池残量表示が付くことにも期待したいです。
なお、ケンコー・トキナーの公式動画で「VCスマート14×30WP」の手ぶれ補正の効果を動画で確認できるものが下記になります。こちらも確認してもらうと、より筆者が感動した手ぶれ補正の効果を実感してもらえるかと思います。
倍率14倍、約700mm相当? でもとても見やすい
筆者だけなのかもしれませんが、双眼鏡の倍率というスペックがいまいちピンときておりません。よくいわれるのが倍率14倍だと140m先の人物が10m先のいるように見えるのが倍率14倍だと説明されるのですが、肉眼で見た10m先の人物も、140m先の人物もいまいちピンとこないのです。
そこでいくつかの資料をみていると、人間の普段見ている視野などが50mmレンズの画角だとすると14倍の双眼鏡で眺めた状態は14倍の700mm相当のレンズで眺めている状態だというものがありました。カメラ業界ではすでに50mmが人間が普段見ている視野という言い方に疑問視があるので、微妙な説ですが、筆者にとっては、こちらのレンズの焦点距離に換算しての言い方のほうがピンとくるのです。
この説で考えると「VCスマート14×30WP」は700mmの超望遠レンズ相当、前回使用した「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」は400mmの超望遠レンズ相当と考えることができるのです。ちなみに明るさは「VCスマート14×30WP」は14倍で対物レンズの有効径が30mmなので、明るさは4.4、これに対して「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」は8倍で対物レンズの有効径が32mmなので明るさは16。「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」のほうがかなり明るい双眼鏡といえます。
双眼鏡の明るさも違い、望遠倍率も異なるのですが、手ぶれ補正機構を搭載した「VCスマート14×30W」が非常に安定して対象を観察できることに感心するわけです。逆に考えるなら700mmクラスの超望遠で手ぶれ補正なしのカメラレンズといわれたら、筆者はかなり手ぶれを心配して躊躇すると思います。ちなみに「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」も「VCスマート14×30WP」もエントリー機などとは異なりすべてのレンズとプリズム透過面に光の透過を最大限に上げるフルマルチコート(高透過多層膜)仕様であることも、見やすさに大きく影響しているのでしょう。
軽ければ、軽いほどうれしいが予想以上に使いやすい「VCスマート14×30WP」
「VCスマート14×30WP」は眼幅最大時で約147×51×124mm、重さは約535g。手ぶれ補正機構がなく、倍率が低いとはいえ手ぶれ補正機構を搭載しない、前回使用した「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」が約108.5×49.5×124mm、重さ約375gであることを考えるとやはり少し大きく重い印象です。しかし、大きくサイズが異なるのは全長であり、横幅や厚みはほとんど変わりません。
そのため、実際に使用するときに構えても双眼鏡を握る感覚はほとんど変わらず、筆者のように成人男性としては手の小さい方や女性でも手ぶれ補正機構を搭載していることをほとんど意識することなく使用できると思います。重さについては約160gの差がありますので、気にならないといいませんが、手ぶれ補正の脅威的な効果を考えると許容範囲でしょう。ただし、構えるにしても、持ち歩くにしても軽くて困ることはないので、どうしてもより軽い防振双眼鏡がほしい場合は同じVCスマートシリーズの「VCスマートコンパクト ブラック 12×21」などを検討するのもありです。
筆者の場合は、野生動物や野鳥と出会えるお気に入りのお散歩コースをだいたい1時間から2時間程度かけて歩くのですが、首に掛けているときも、構えているときも、双眼鏡として特別重いと感じることはありませんでした。また、屋外を歩いていると気になるのが突然の雨や雨上がりに枝などから落ちてくる水滴ですが、これらも「VCスマート14×30WP」は防水仕様なので、気になることはありません。これは大きなアドバンテージです。
まとめ:10倍を超える高倍率双眼鏡を考えるなら手ぶれ補正機構を検討したい
価格の問題はあるが、圧倒的に見やすい防振双眼鏡が非常におすすめ
価格.comの売上ランキングのシャア率などをみていても、手ぶれ補正機構付きの防振望遠鏡として、かなり高いシェア率を誇るケンコーVCスマートシリーズですが、今回はそのフラッグシップモデルである「VCスマート14×30WP」を試したわけです。
この素直な感想は「手ぶれ補正機構付きの防振双眼鏡ってこんなにすごいんだ!」というもの。普段から手ぶれ補正機構付きのカメラ用超望遠レンズを使い慣れている筆者は、手ぶれ補正機構が付くだけで、そんなに差があるの? と、使い慣れ過ぎているからこそ逆にその効果に半信半疑だったわけです。
しかし、「VCスマート14×30WP」で、その効果をオンオフしてみると、観察している被写体が細かい揺れがないだけで驚くほどクリアに、細部まで観察できることに驚愕します。いままで双眼鏡をのぞいているときにこんなに揺れていることを意識していなかったのだとびっくりするくらいです。
実勢価格が87,000円前後といいお値段ですが、カメラレンズなどの光学機器の価格に慣れてしまっている筆者にとっては700mm相当の手ぶれ補正機構付きのレンズ、もしくは望遠撮影時に使用する光学アクセサリーと考えれば、さほど高額とも思えません。手ぶれ補正機構なしの状態と比較するとある意味正統とも思えるのです。
筆者にとって700mm相当の超望遠で安定した画質で対象を観察できる「VCスマート14×30WP」は野生動物や野鳥の超望遠撮影の頼もしい相棒となってくれそうで、基本的に絶賛なのですが、気になった点がひとつあります。それはピントリング。「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」と比べると直径が小さく、回転動作がややしぶい。この点が改善されると「VCスマート14×30WP」がもっと好きになれるのにと思った次第です。
筆者の結論としては双眼鏡においても手ぶれ補正機構、防振機構は絶大な効果を発揮するので、店頭などで試用できるチャンスがあれば、ぜひ試していただきたい。10倍を超えるような高倍率の双眼鏡で、対象を細部まで観察するには絶大な効果を発揮するので、その効果だけでも実感しておくことをおすすめします。
ケンコー「VCスマート14×30WP」の詳細と購入について
製品の詳細についてはケンコー・トキナーの公式サイトをご覧ください。
齋藤千歳(サイトウ チトセ・Saito Titoce)
元月間カメラ誌編集者。北海道の絶景や野生動物の姿を追い求めているうちに、キャンピングカー・車中泊でのアウトドアライフにどっぷりハマっていました。現在2歳の息子、そして妻と全道を巡っているうちにカメラ・レンズはもちろん、アウトドア・キャンプ、子育て、PCガジェット、料理に、ダイエットまで経験したすべてを撮影し、執筆するフォトグラファーライター。OUTDOOR GEARZINEではキャンプ及びキャンピングカーでの生活クオリティを上げる「QOCL(Quality of camping life)向上委員会」を中心にさまざまな記事を執筆していく予定です。